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給与所得者の所得税のように、法人税は、天引きされることはありません。そのため、売上が順調に伸びているときなどは、今年はどのくらいの法人税を支払う必要があるのか気になるケースも多いでしょう。法人税がざっくりでも、どのくらいの額になるかを計算できれば、設備や人件費などに利益を投資するなどして、効果的な節税対策ができる可能性があります。
そこで今回は、法人に課される税金や法人税のざっくりとした計算方法についてご説明します。
目次
法人税とは、法人に対して課せられる税金です。法人税は、会社の所得額に法人税率を乗じて算出するため、法人税をざっくり計算するにあたっては、まず、法人税の税率と所得について理解しておく必要があります。
法人税の税率は、法人の区分によって細かく分けられていますが、ここでは株式会社、合同会社、合資会社、合名会社などが含まれる普通法人の法人税率についてご説明します。
<普通法人の税率(令和4年4月1日以降)>
国税庁:法人税の税率
普通法人の税率は、上の表のように定められています。法人税の税率は原則として23.20%です。ただし、資本金1億円以下の法人は、年間所得額が800万円以下の部分については、低い税率を適用することができます。しかし、適用除外事業者であるか、それ以外の法人であるかによって税率は異なります。
適用除外事業者とは、過去3年事業年度の平均所得金額が15億円を超える法人のことです。これらの情報を整理すると以下のようにまとめることができます。
・所得が800万円以下の部分は15%
・所得が800万円を超える部分は23.20%
・所得が800万円以下の部分は19%
・所得額に関わらず一律23.20%
法人税を計算する際にもう一つ確認しておきたいのが、利益と所得の違いです。法人税は、所得×法人税率で計算をします。
法人の所得金額は、益金の額から損金の額を引いた金額を指します。益金とは、商品や製品の販売、サービスの提供等による売上で得られた収入のことです。また、土地や建物を売却した場合も、その収入は益金に該当します。一方、損金とは、原材料費や人件費、支払利息、減価償却費、災害等による損失などにあたる金額のことです。所得額は、これらの益金から損金を差し引いて計算をし、算出した課税所得額に法人税率を乗じて算出します。
企業会計上、賞与引当金などは費用として計上できますが、税務上は損金として扱うことができません。また、反対に会計上は費用としては扱えない欠損金の繰越控除や租税特別措置などは、税務上では損金として扱えます。所得といえば利益に該当する金額だと捉えがちですが、会計上の費用と税務上の損金、会計上の利益と税務上の益金は、同じ額とはならない点に注意しなければなりません。この調整を税務調整といいます。
法人税をざっくり計算する場合、次のような方法で計算を進めます。
課税所得額は「会計上の税引き前利益+税務調整(加算項目・減算項目)」で計算します。
加算項目には、次の2つの項目が該当します。
・益金算入
会計上は収益にならないものの、税務上は益金に算入する項目
・損金不算入
会計上は費用として扱えるものの、税務上は損金として扱えない項目
減算項目には、次の2つの項目が該当します。
・益金不算入
会計上は収益として扱うものの、税務上は益金に算入しないもの
・損金算入
会計上は費用として扱えないが、税務上は損金として扱える項目
課税所得額を求めたら、課税所得額に適用される法人税率をかけると、法人税の額を算出することができます。
上の計算方法に当てはめ、次のような条件の企業の法人税を計算してみましょう。
・3年間の平均所得額が15億円以下の法人
・資本金8,000万円
・会計上の利益 5,000万円
・加算項目2,000万円
・減算項目1,000万円
課税所得は「会計上の利益+加算項目-減算項目」で計算できます。上の条件の課税所得の額を当てはめると、次の式が成り立ち、課税所得額は6,000万円となります。
5,000万円+2,000万円-1,000万円=6,000万円
次に、法人税を計算します。資本金が8,000万円のため、税率は800万円以下の部分は15%、800万円を超える部分は23.20%となります。
したがって、800万円までの部分については、
800万円×15%=120万円
残りの5,200万円については、
5,200万円×23.20%=1,206万円となります。
合わせると、120万円+1,206万円=1,326万円となり、法人税の額は1,326万円です。
法人税については、課税所得額を算出できれば、課税所得額に税率をかけて法人税の額を算出できます。しかし、法人が納める義務がある税金は法人税だけではありません。そのため負担する税額をざっくりでも計算したいときには、ほかの税金についても考慮する必要があるでしょう。法人に課される法人税以外の税金とその税率についてご説明します。
法人も、地域社会の構成員です。そのため、個人同様、法人にも事業所が存在する都道府県や市区町村に住民税を納める義務があります。法人住民税は、個人の住民税と同じく、均等割と法人税割の2つで構成され、その合計額を納税します。
均等割は資本金の額と従業員の数に応じて負担額が決められているものであり、法人税のように課税所得額が税額の計算に用いられないため、たとえ事業が赤字であっても納税の義務が発生する点に注意が必要です。
法人住民税は、均等割と法人税割を合算して算出します。
均等割は、資本金の額や従業員の数に応じて一定の負担を求めるものです。均等割は以下の表のように、定められています。
総務省:法人住民税
法人税割は、法人税額に一定の割合を乗じて算出します。計算式は次のようになります。
都道府県民税:法人税額×1.0%
市町村民税:法人税額×6.0%
法人は事業活動を行うにあたり、道路や上下水道など、さまざまな行政サービスを利用しています。そのため、法人にも行政サービスの費用負担を求める税金が法人事業税です。法人事業税は、都道府県に納める地方税となっています。
また、法人事業税は、付加価値割、資本割、所得割、収入割の4つに区分されています。
付加価値割は「収益配分額+単年度損益」で求められる付加価値額を課税標準として計算されるものです。付加価値割の税率は付加価値額の1.2%ですが、加算されるのは資本金1億円超の法人のみです。
資本金の額を課税標準として計算されます。資本割の税率は、資本金額の0.5%ですが、資本割が加算されるのも資本金1億円超の法人のみです。
資本金1億円超の法人の所得割の税率は、所得の1.0%です。また、資本金1億円以下の法人の場合は年間所得のうち400万円以下の金額については3.5%、400万円超800万円以下の金額については5.3%、年800万円を超える金額については7.0%となっています。
収入割は、電気供給業者やガス供給会社、保険会社など所得額を課税標準にすることが適当でない法人に適用されるものです。
法人事業税は、法人区分によって計算方法が異なります。
・資本金1億円超の普通法人
付加価値割+資本割+所得割
・資本金1億円以下の普通法人
所得割
・電気供給業者(小売電気事業等・発電事業等を除く)、ガス供給業(導管事業)、保険業を営む法人
収入割(1.0%)
・電気供給業(小売電気事業等・発電事業等)を営む資本金1億円超の法人
収入割(0.75%)+付加価値割(0.37%)+資本割(0.15%)
・電気供給業(小売電気事業等・発電事業等)を営む資本金1億円以下の法人
収入割(0.75%)+所得割(1.85%)
・ガス供給業(特定ガス供給業)を営む法人
収入割(0.48%)+付加価値割(0.77%)+資本割(0.32%)
2019年に法人事業税の一部を分離して創設された国税です。法人事業税の所得割(または収入割)に税率をかけて算出しますが、税率は、業種や資本金の額などによって変わってきます。
地方法人税は、法人税額の10.3%を適用して算出される税金です。地方法人税という名称ですが、地方税ではなく、地方自治体の財源格差を縮小するために創設されました。
前述のように、法人は、法人税に加えて、地方法人税や法人住民税、法人事業税などの負担も必要です。そのため、法人が負担する税額をざっくりと把握するためには、法人税だけでなく、これらの税金も含めたトータルの税額を計算しなければなりません。それぞれ、税率が異なるため複雑な計算が求められますが実質的に法人が負担することとなる実効税率を把握しておくと、計算がしやすくなります。
実効税率とは、企業が負担する実質的な税率のことです。事業税は損金算入が認められている税金であり、法律や条例などで定められている税率を単純に合計していくと、実際に負担する税額とは異なる額になってしまいます。事業税を損金に算入すると、課税所得額が減るために、実際に納付する実効税率は、単純に税率を合計した表面税率より低くなるのです。
そこで、実効税率を使うと法人が負担する税金の額をざっくりと把握できるようになります。
実効税率が分かっていると、負担する税金の計算をより簡単に行うことができます。実効税率は、次の式で計算ができます。
{法人税率×(1+地方法人税率+法人住民税率)+法人事業税率+特別法人事業税率}÷(1+法人事業税率+特別法人事業税率)
この式に標準税率を当てはめて計算すると、2025年度の東京都の場合、資本金1億円超の法人の実効税率は30.62%、中小法人(標準税率)の実効税率は33.58%、中小法人(超過税率)の実効税率は34.59%となります。
実効税率を課税所得額に乗ずることで、ざっくりとした法人税や法人事業税、法人住民税などの負担額を把握することができます。しかし、会社の規模や所得額によって法人税率は変わり、事業所の所在地ごとに地方税の税率も変わります。さらに、税率は随時改正される可能性があります。そのため、実効税率で計算できる税額は、おおよその額であることを十分に理解しておく必要があります。
法人が負担する税額は、課税所得額に実効税率をかけることでざっくりと計算できます。おおよその納税額を把握できると、資金繰りなどの見通しや節税対策なども立てやすくなるでしょう。ただし、事業所の所在地や資本金などによって実効税率は変わり、また、税率が改正された場合にも実効税率が変わってくる点には注意が必要です。
法人税を含めた税金の負担額を正確に知りたい場合や税負担をできるだけ抑えたい場合などは、税の専門家である税理士への相談をおすすめします。
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実効税率31.52%の計算トリック(2025年/2026/2027年度版)-防衛特別法人税
https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/account/tips/topic_52.html
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
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