メニュー
読了目安時間:約 6分
キャッシュレス決済の普及に伴い、PayPayのようなスマホアプリ決済を利用し、支払いをするケースが増えています。しかし、PayPayのようなキャッシュレス決済の場合、領収書は発行されないケースがほとんどです。現金を持ち合わせておらず、事業に必要なものの支払いをPayPayで行った場合、確定申告時には領収書がなくても経費として計上することはできるのでしょうか。
今回は、PayPayやスマホアプリ決済で支払い、領収書がない場合の確定申告時の対応方法についてご説明します。
目次
PayPayでは、公式サイトにおいて「バーコードやQRコードでの支払いに対し、領収書は発行しておりません」と明言しています。しかし、実店舗でPayPayによる支払いをした場合、領収書を受け取った経験がある方も多いのではないでしょうか。
PayPayのアプリからは、領収書を発行することはできません。現在は、税金などもPayPayで支払うことができますが、その際、領収書が発行されることもないでしょう。しかし、実店舗では、PayPayで支払ったときに領収書やレシートが発行されることがあります。それは、POSレジと連携している場合などは、PayPayなどのスマホアプリ決済で支払っても、POSレジから領収書が発行できるようになっているからです。この場合、紙で発行されたものを領収書として取り扱うことができます。
インターネットで取引をした場合やPOSレジを導入していない店でPayPayによる支払いを行った場合、紙の領収書は発行されない場合があります。では、領収書がない場合にはどのように対応すべきなのでしょうか。
電子帳簿保存法では、電子取引における証憑の保存を義務化しています。そして、PayPayなどのスマホアプリ決済の利用明細データも、証憑として取り扱えることが認められるようになりました。
PayPayで支払った場合、アプリの「取引履歴」を選択すると、詳細を表示することが可能です。支払先、支払い日時、支払額を確認できるため、この画面のスクリーンショットを保存しておくと、確定申告の際に、紙の領収書と同様、支払いの証憑として利用できるようになります。
また、PayPayの場合、銀行口座を登録し、アプリからチャージする方法やATMで現金をチャージする方法、クレジットカードを登録して支払う方法、銀行口座から即時引き落としがなされるPayPayデビットなどがあります。クレジットカードで支払う場合には、クレジットカードの利用明細を領収書の代わりに使用することができる場合もあります。PayPayカードを登録している場合は、PayPayのアプリ上から月ごとの利用明細をダウンロードできます。
PayPayには、領収書の発行機能はないものの、取引履歴から詳細を確認することは可能です。しかし、支払先などの確認はできるものの、購入した商品の内容までを表示させることはできません。そのため、PayPayで支払ってからすぐに経費として処理しない場合、何のために支払った支出なのかが分からなくなる恐れもあるでしょう。そのような場合、PayPayのレシート登録機能が役立ちます。
実店舗でPayPayによる決済を行った場合、紙の領収書が発行されるケースがあります。レシート登録機能は、紙のレシートをカメラで撮影し、画像を登録することでPayPayの支払いの内容まで確認できるようにする機能です。
また、経費精算や請求書管理などのクラウドシステム「Concur」と連携させると、入力する手間を省き、より簡単に経費精算システムに必要な情報を登録できる機能も付加されています。
PayPayのアプリ自体には領収書の発行機能はないため、経費をPayPayで支払っても領収書が発行されない場合があります。しかし、領収書がない場合でもPayPayの取引明細を保管しておけば証憑として利用することが可能です。
PayPayの領収書を使って確定申告をする方法についてご説明します。
確定申告書の作成方法には、国税庁の確定申告書作成コーナーを使ったり、確定申告書作成ソフトを使って、デジタルで作成する方法と税務署から確定申告書を入手するなどして、手書きで作成する方法があります。
パソコンを使って確定申告書を作成した場合は、e-Taxを利用して電子申告することが可能です。また、作成した確定申告書をプリントアウトして、郵送や手渡しなどで提出することもできます。手書きで確定申告書を作成した場合には、郵送や手渡しで税務署に提出することになります。
確定申告の際には、領収書を提出する必要はありません。インボイス制度の導入に伴い、領収書の取り扱いが変更となり、領収書の提出は不要となっています。しかしながら、確定申告書には添付が不要であるものの、領収書は支払いがあったことを証明する書類です。したがって、法人の場合は原則として7年間、個人事業主の場合、青色申告者は7年間、白色申告者は5年間、保管しておかなければなりません。
紙の領収書はもちろん、PayPayの利用明細のスクリーンショットについても、一定期間は保管しておくようにしましょう。
e-Taxで確定申告を行う場合は、次の手順で作業を進めます。
まず、PayPayアプリから取引履歴をダウンロードします。取引履歴を選択し、右上にあるボタンを押すと、取引履歴のダウンロードができるページに遷移します。期間を選択し、ダウンロードを申請すると、準備でき次第、準備完了の通知が届きます。準備完了の通知を受けたら24時間以内にダウンロードを実行すると、CSVファイルで取引履歴のデータをダウンロードすることができます。
取引履歴は、電子帳簿保存法の要件を満たす形で保存しなければなりません。電子帳簿保存法の2大要件は「真実性の確保」と「可視性の確保」です。真実性を確保するためには、タイムスタンプを付したり、訂正や削除を防止する事務処理規定を定め、それに沿った運用を行うなどの対応が求められます。一方、可視性の確保のためには、いつでも書面に明瞭に出力できる状態にするとともに、データの検索ができるような状態にしておかなければなりません。
パソコンから確定申告書など、必要書類を作成します。PayPayの支払いについても確認しながら経費をまとめ、所得額を算出していきます。青色申告を行う場合には、確定申告書と青色申告決算書の作成が必要です。白色申告の場合は、確定申告書と収支内訳書を作成します。
確定申告の書類が完成したら、e-Taxで送信します。送信方法には主に以下の3種類があります。
・マイナンバーカード方式(2次元バーコードを使用)
・マイナンバーカード方式(ICカードリーダライタを使用)
・ID・パスワード方式
マイナンバーカードがある場合には、パソコンに表示される2次元バーコードをマイナンバーカード読み取り機能が付いているスマートフォンで読み取り、確定申告書を送付します。対応するスマートフォンがない場合やICカードリーダライタを持っている場合は、ICカードリーダライタでマイナンバーカードを読み取らせ、データの送信をします。
また、マイナンバーカードを取得していない場合などは税務署で発行されたID・パスワード方式の届出完了通知を利用し、e-Taxで送信を行います。
送信確認後、審査結果が記載された受付確認メールが届いているかe-Taxにログインして確認し、送信が完了していれば、所定の方法で納税を行い、手続きは終了となります。
紙で確定申告を行う場合は、次の手順で準備を進めます。
まず、PayPayアプリから取引履歴をダウンロードします。ダウンロードの手順は、e-Taxで申告する場合と同様です。CSVファイルのダウンロードが終わったら、プリントアウトして領収書として使用します。
紙で確定申告を行う場合であっても、電子取引の履歴を証憑に使う場合は、電子データとして保管しておかなければなりません。CSVファイルは適切な形で5~7年間、保管しておくようにしましょう。
紙の確定申告書は税務署の窓口で配布しています。また、郵送で取り寄せることや国税庁のWebサイトからダウンロードし、印刷することも可能です。紙の確定申告書を使う場合は、手書きで申告書を作成していきます。計算ミスがないよう、慎重に確認しながら作成していきましょう。
また、パソコンで確定申告書を作成した場合は、完成後にプリントアウトをします。
書類が完成したら、税務署に提出をします。紙の確定申告書の場合は、税務署の窓口に持参して提出する方法のほか、郵送で送付する方法があります。また、税務署が開いていない時間の場合は、外にある時間外収受箱に投函することも可能です。
確定申告の提出期限は毎年、3月15日です。3月15日が土日に重なる場合は、翌平日が期限となります。郵送で提出する際、消印が提出期限であれば期限内の提出とみなされますが、ポストに投函後、翌日に集荷されるような場合、消印は期限後の日付になってしまうため注意が必要です。
PayPayやスマホアプリ決済の利用記録を記帳する際、仕訳方法や勘定科目に迷うことがあるかもしれません。仕訳や勘定科目に悩む場合は、以下のパターンを参考にしてください。ここでは、PayPayを例にご説明しますが、楽天ペイやゆうちょPay、メルペイ、au PAY、d払いなどを使用した場合も同様の処理となります。
普通預金からPayPayに残高チャージをした場合は、借方に「仮払金」や「預け金」の勘定科目で金額を記載します。また、貸方には「普通預金」の勘定科目で金額を記載します。チャージをしただけでは、経費は発生していないため、資産の移動という形で記帳をすることになります。
また、PayPayへのチャージであることが分かるように借方科目に「PayPay」と記載しても問題はありません。
次に、チャージしたPayPay残高を使用して支払いをした場合の仕訳を確認していきましょう。
ここでは、PayPay残高で5,000円の雑貨を購入した場合を例にご説明します。この場合は、借方に「消耗品費」の勘定科目として5,000円と記載し、貸方には「仮払金」や「預け金」として5,000円を記載します。また、チャージをした際の借方に「PayPay」と記載した場合は、貸方には「PayPay」と記載するようにしましょう。
PayPayでの決済をクレジットカードによる後払いで支払った場合の処理は、クレジットカード決済を利用した場合と全く同じ方法で行います。例えば、PayPayで会議用のドリンク代3,000円を支払ったと仮定します。この場合、まだドリンク代の3,000円は、口座から引き落とされていません。したがって、借方には「会議費」の勘定科目で3,000円と記載し、貸方には「未払金」の勘定科目で3,000円と記載します。
また、引き落としのタイミングで、借方に「未払金」3,000円を記載し、貸方に「普通預金」3,000円と記載すれば仕訳は完了です。
PayPayアプリの支払い方法ではないものの、PayPay銀行アプリを利用している場合は、銀行口座から直接PayPayの支払いができるPayPayデビットを利用できます。PayPayデビットで5,000円の雑貨を購入した場合の仕訳は、借方に「消耗品費」5,000円とし、貸方に「普通預金」5,000円と記入します。
PayPayなどのスマホアプリ決済が普及する中、領収書が発行されない取引で、経費の計上が認められるのか不安になるケースもあるかもしれません。PayPayで決済をしても、お店によっては領収書を発行するケースがあります。その場合は、店が発行した領収書を使用することが可能です。
また、紙の領収書が発行されない場合でも、PayPayの取引履歴を領収書の代わりとして使用することもできます。取引履歴の画面をスクリーンショットで保管しておいても問題ありませんが、PayPayでの支払い回数が多い場合などは、定期的に取引履歴をダウンロードしておくことをおすすめします。ただし、すぐにCSVファイルのダウンロードができるわけではなく、申請後の通知を受けてからのダウンロードとなるため、時間の余裕を持って処理を進めるようにしましょう。
-免責事項-
当ブログのコンテンツ・情報について、できる限り正確な情報を提供するように努めておりますが、正確性や安全性を保証するものではありません。内容は記事作成時点の法律に基づいています。当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者16万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
税理士法人松本の強み
30秒で完了かんたん税務調査リスク診断
←前の記事
業務委託で得た収入も確定申告が必要?必要書類や申告方法を解説
次の記事→
按分比率が50パーセント以下だと経費計上ができないって本当?
あわせて読みたい記事
税務調査は対応次第で結果が大きく変わります!
専門家があなたの税務調査に関する不安を一つ一つ丁寧に解決。初回有料相談は返金保証付きで、どんな小さなご相談も全国から承ります。