2026.10.15
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会社売却の税金はどう違う?株式譲渡と事業譲渡の手取り

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会社売却では、同じ売却価格でも、株式譲渡と事業譲渡で税負担やオーナー個人の手取りが変わります。違いを生むのは、代金を受け取る人と納税する人、税金の計算に使う取得費・簿価、会社から個人へ資金を移す際の課税です。

目次

最大の違いは、売却代金を受け取る人と納税する人

個人株主の株式譲渡では、株主個人が代金を受け取り、売却価格から株式の取得費や売却手数料等を差し引いた譲渡益に対して納税します。法人の事業譲渡では、会社が代金を受け取り、譲渡資産の税務上の簿価などを基に売却益を計算し、その年度の他の損益と合わせて法人税等を計算します。

「会社売却」という呼び方だけでは、税金の扱いを判断できません。まずは、誰が何を売却する取引なのかを確認する必要があります。

項目 個人株主の株式譲渡 法人の事業譲渡
売主 株主個人 会社
代金の受取人 株主個人 会社
課税対象 株式の譲渡益 売却益を含む会社の所得
主な税金 所得税・復興特別所得税・住民税 法人税等
個人への追加課税 会社から個人への資金移転は不要 個人へ配当すると課税が生じる

会社に残るお金と、オーナー個人の手取りは別

事業譲渡後の会社に残る税引後資金は、個人の手取りとは別です。会社からオーナー個人へ配当すると、個人側でも配当への課税が生じます。

以降では、税率だけでなく、売却価格1億円の計算例や売却前の確認事項も示します。売却方法を決める際は、会社と個人それぞれの税負担を税理士に確認し、最終的な手取りを比較してください。

株式譲渡の税金はいくら?税率20.315%と譲渡益の計算

個人株主が株式譲渡で会社を売却する場合、税金は原則として譲渡益に20.315%をかけて計算します。売却価格だけでなく、株式の取得費や控除できる売却費用を確認すると、税額を見積もれます。

税金がかかるのは売却価格ではなく譲渡益

課税対象は、売却価格から取得費と売却手数料等を差し引いた譲渡益です。個人株主の非上場株式の売却も、原則として他の所得と分けて税額を計算する申告分離課税となります。

譲渡益=売却価格-株式の取得費-売却手数料等
税額=譲渡益×20.315%

2026年時点の通常の税率と内訳は次のとおりです。課税方法と計算の根拠は、国税庁「株式等を譲渡したときの課税」で確認できます。

税目 税率
所得税 15%
復興特別所得税 0.315%
住民税 5%
合計 20.315%

取得費が分からないとき・相続した株式を売るとき

取得費が不明の場合は、売却代金の5%を取得費とする方法があります。相続・贈与で受け取った株式は、原則として前所有者の取得費を引き継ぎます。

取得費には、株式の払込代金・購入代金・購入手数料等が含まれます。5%で計算する前に、出資時の資料や過去の契約書を確認し、実際の取得費を把握しましょう。

相続した株式では、前所有者が保管していた資料も確認してください。取得費の扱いは、国税庁「株式等の取得費」に示されています。

仲介手数料や顧問料はすべて差し引ける?

売却手数料等は控除対象ですが、M&A関連費用がすべて自動的に対象になるわけではありません。相談料や顧問料などは、株式売却との関係、契約内容、支払者を確認する必要があります。

控除の判断に迷う費用は、契約書や請求書を税理士に提示してください。税額を見積もる際は、費用ごとに控除対象となるか確認しましょう。

事業譲渡で会社にかかる法人税と、個人に渡す際の税金

会社を事業譲渡で売却すると、売却益に対して会社に法人税等がかかります。税引後の資金をオーナー個人へ配当する場合は、個人側にも税金が生じるため、会社に残る資金と個人の手取りを分けて試算する必要があります。

売却益は会社の資産の簿価を使って計算する

売却益の計算に使うのは、会社が保有する譲渡資産の税務上の簿価です。株主個人が株式を取得した際の費用ではありません。

売却益の概算式は、次のとおりです。

売却益=税抜売却価格-譲渡資産の税務上の簿価-損金算入できる売却費用

計算前に、譲渡する資産の税務上の簿価と、売却費用を損金に算入できるかを確認します。実際の課税所得は、この売却益だけでなく、その事業年度の他の損益も含めて算定します。

「法人税等は約30%」をそのまま使えない理由

法人税等の負担は、法人の条件・所在地・所得などによって変わります。国税の法人税に加え、地方法人税や地方税も含めて計算するためです。

2026年時点の国税の法人税率は通常23.2%です。一定の資本金1億円以下の普通法人では、年800万円以下の所得部分に原則15%の軽減税率が適用されますが、除外・例外があります。

「法人税等は約30%」は概算の仮定であり、全国一律の法定税率ではありません。

2026年4月1日以後開始する事業年度には、防衛特別法人税が適用されます。基本的には基準法人税額から年500万円を控除した額に4%を乗じるため、売却益が大きい場合は影響も確認してください。

売却後の資金を配当すると、個人側でも課税される

法人税等を支払った後の資金を配当すると、受け取る個人にも課税されます。非上場株式の配当は原則として総合課税であり、株式譲渡と同じ20.315%で完結するわけではありません。

2026年時点では、非上場株式の配当から所得税等20.42%が源泉徴収されますが、これは最終税率ではなく、原則として確定申告で他の所得と合算して精算します。資金の受取方法によって課税関係が変わるため、個人へ渡す段階まで含めた手取りを税理士と試算してください。

売却価格1億円なら手元にいくら残る?計算例で比較

以下の仮定では、株式譲渡で個人に残る金額は約8,375万円、事業譲渡で会社に残る金額は7,600万円です。ただし、受け取る主体が異なるため、金額だけで売却方法の有利・不利は判断できません。

比較の前提をそろえる

売却価格は1億円とし、株式取得費と譲渡資産の税務上の簿価を、それぞれ2,000万円と仮定します。売却費用・借入金返済・他の損益・消費税の影響は計算から除外します。

法人税等は説明用に30%と仮定しますが、実際に適用される税率ではありません。株式取得費と資産簿価は本来別の数字であり、実案件では一致するとは限りません。

株式譲渡では、個人の税引後受取額は約8,375万円

個人株主が株式を売却する場合、この試算の税引後受取額は8,374万8,000円です。譲渡益には、2026年時点の通常の税率20.315%を用います。

  • 譲渡益:1億円-2,000万円=8,000万円
  • 税額:8,000万円×20.315%=1,625万2,000円
  • 個人の税引後受取額:1億円-1,625万2,000円=8,374万8,000円

事業譲渡では、会社に残る税引後資金は7,600万円

法人が事業を売却する場合、仮定税率30%で計算すると、会社に残る資金は7,600万円です。会社から個人への配当等に伴う税金は、この金額に含めていません。

  • 売却益:1億円-2,000万円=8,000万円
  • 法人税等:8,000万円×仮定税率30%=2,400万円
  • 会社に残る税引後資金:1億円-2,400万円=7,600万円

比較するときは、金額だけでなく「誰の手元か」を確認

個人の8,374万8,000円と会社の7,600万円は、同じ意味の手取りではありません。事業譲渡後の資金を経営者個人へ渡す場合は、渡し方に応じた税金も含めて試算する必要があります。

売却方法 売却益 税額 税引後資金 資金の所在 未反映項目
株式譲渡 8,000万円 1,625万2,000円 8,374万8,000円 個人 費用・返済・他の損益・消費税
事業譲渡 8,000万円 2,400万円 7,600万円 会社 上記項目・個人への配当等の税金

自社の試算では、取得費・簿価を実額に置き換え、費用と借入金返済額も反映してください。実際の税率や個人へ渡す際の課税を税理士に確認し、最終的に使える資金を比較しましょう。

会社売却に消費税はかかる?譲渡対象と手数料の扱い

会社売却の消費税は、株式を売るか、事業の資産を売るかで扱いが異なります。売却代金と仲介手数料も、分けて確認する必要があります。

株式の売却代金と、仲介手数料の消費税は別

株式の譲渡代金には、通常、消費税を上乗せしません。有価証券の譲渡は原則非課税であり、個人が事業として行わない取引は、そもそも消費税の課税対象外です。

一方、仲介会社等へのサービス料金は、原則として標準税率10%の対象です(2026年時点)。株式代金が非課税でも、仲介手数料まで非課税になるわけではありません。見積書では税込・税抜の表示を確認してください。

事業譲渡は、資産ごとに課税・非課税を分ける

事業譲渡では、建物・機械・営業権等は原則課税、土地・有価証券等は原則非課税です。事業譲渡全体に一律10%をかけるものではありません。

譲渡する資産 消費税の扱い
建物・機械・営業権等 原則課税
土地・有価証券等 原則非課税

例えば、土地と建物をまとめて売る場合でも、対価を合理的に区分する必要があります。売主・買主で資産ごとの金額を確認し、契約書には税込価格か税抜価格かを明記しましょう。非課税資産は国税庁の「消費税がかからない取引」で確認できます。

受け取った消費税が、そのまま最終負担になるわけではない

通常、納付額は売上げに係る消費税から控除対象の仕入税額を差し引いて計算します。売却代金への上乗せ額、税務署への納付額、売主の実質的な負担は区別してください。

売却価格の10%が、そのまま売主の最終負担になるとは限りません。契約前に、対価の区分と納付見込みを税理士に確認しましょう。

会社売却前に確認したい、手取りを左右する項目

会社売却の手取りは、税金に加え、費用の負担者や売却後の資金の使い道で変わります。契約前に、次の項目を確認しましょう。

税率より先に、取得費・簿価・費用を確認する

まず、税額計算の基になる取得費・税務上の簿価・売却費用を資料で確認します。借入金返済や売却後に確保する資金も、税金とは別に使える金額へ影響します。

  • 株式の払込・購入代金が分かる取得資料と、譲渡資産の税務上の簿価が分かる資料を集めます。
  • 仲介契約・請求書をそろえ、個人負担と会社負担を区別します。相談料などは自動的に控除できないため、売却費用として控除できるか確認します。
  • 返済予定額と売却後に必要な資金を一覧にします。

個人で使うのか、会社に残すのかを決めて試算する

生活・資産形成に使うなら、個人への資金移転まで含めた手取りを試算します。会社で再投資するなら、会社に残る資金を基準に検討します。

  • 税率だけで売却方法を決めず、買主の意向や契約上の条件も比較します。

契約前に税理士へ確認したいこと

税理士には、売却方法別の税額と資金の受取方法を確認してください。納税資金を確保できるよう、受取時期と納付時期も照合します。

  • 株式譲渡・事業譲渡それぞれの税額と必要な納税資金を確認します。
  • 消費税の資産別区分と、契約価格の税込・税抜条件を確認します。
  • 申告・納付時期と、売却後の資金受取方法を確認します。

よくある質問

Q. 会社売却で赤字が出ても税金はかかりますか?

赤字でも税金がかかる場合があり、株式譲渡と事業譲渡では扱いが異なります。個人の株式譲渡は譲渡益、法人の事業譲渡は年度全体の損益で課税を判断し、売却以外の所得・損益や消費税も確認が必要です。

Q. 株式譲渡と事業譲渡は、どちらが節税になりますか?

一概には決められません。株式の取得費、譲渡資産の税務上の簿価、法人の損益、個人への資金の渡し方で手取りが変わるため、税理士に両方式の試算を依頼しましょう。

Q. 法人が保有する株式を売る場合も税率20.315%ですか?

20.315%は、2026年時点の個人株主の通常の株式譲渡に関する税率です。法人の株式売却には、この税率ではなく法人税等の課税関係が適用されます。

まとめ

会社売却では、株式譲渡と事業譲渡で代金の受取人・課税対象が異なり、会社から個人へ資金を移す際の課税にも注意が必要です。売却価格だけでなく、税金・費用・借入返済を反映した手取りで比較しましょう。

契約前に税理士へ売却方法別の試算を依頼し、会社の状況に合う方法や手続きを相談しましょう。相談先の検討には、事業承継・M&Aの支援内容もご参照ください。

この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

事業承継・M&A、融資や補助金による資金調達など、中小企業の経営サポートに特化して活動。
税理士法人松本は国の認定支援機関で、M&A支援機関登録制度の登録支援機関。元銀行員が在籍し、金融機関の目線を踏まえた資金調達を支援しており、融資の調達実績は累計50億円以上。

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