2026.10.23
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介護事業のM&Aで指定は引き継げる?譲渡方式別の注意点

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介護事業のM&Aでは、指定の扱いは運営法人が変わるかどうかで異なります。株式譲渡で法人が同じままなら原則として既存の指定は存続しますが、事業譲渡で別法人が運営する場合は、原則として新規指定が必要です。指定とは、介護保険サービスの事業者として、指定権者である自治体から認められることです。

指定は、事業とともに買主へ自由に移せるものではありません。大阪府の案内でも、運営法人が変わる場合は変更届ではなく、新規申請と事前相談が必要とされています。合併・会社分割についても、自動的に引き継げると考えず、個別に確認する必要があります。

訪問介護・通所介護などのサービスを途切れさせないためには、売主・買主が早めに指定権者へ相談し、手続きの日程、人員確保、利用者との契約承継を確認しておく必要があります。この記事では、譲渡方式ごとの違いを比較し、必要な届出・申請と承継前の確認事項を解説します。

株式譲渡なら指定はそのまま使える?必要な変更届

介護事業のM&Aを株式譲渡で進める場合、運営法人が変わらなければ、既存の指定は原則として存続します。ただし、代表者・法人名・管理者などが変わる場合は、必要な変更届を確認してください。

運営法人が同じなら既存の指定は原則存続する

株式譲渡は、指定を買主へ移すのではなく、指定を受けた法人の株主が変わる仕組みです。契約当事者・雇用主である法人が変わらなければ、利用契約や職員の雇用関係も基本的に継続します。

代表者・法人名・管理者などの変更を確認する

売主・買主は、譲渡に伴う変更予定事項を洗い出し、指定権者に届出と添付書類を確認します。大阪府の案内では、対象となる変更事項について変更日から10日以内の届出が必要です。

  • 代表者・役員の変更予定と、届出対象となる範囲を確認する
  • 法人名の変更の有無と、必要な届出を確認する
  • 管理者の交代予定と、必要な届出を確認する
  • 変更事項ごとに、変更日・提出期限・添付書類を一覧にする

届出対象・期限・添付書類は、指定権者やサービス種別ごとに確認してください。売主・買主で提出担当者を決め、判断に迷う場合は指定権者や税理士などの専門家へ事前に相談しましょう。

事業譲渡では指定の取り直しが必要?廃止届と新規申請

介護事業のM&Aで別法人へ事業を譲渡する場合は、原則として売主の廃止届と買主の新規指定申請が必要です。売主のサービス終了と買主のサービス開始が途切れないよう、指定権者への事前相談で日程を確認します。

別法人への事業譲渡では新規指定が原則必要

譲渡契約を締結しても、売主の指定が買主へ当然に移るわけではありません。運営法人が変わる場合は、変更届だけでは対応できません。

大阪府の案内でも、運営法人の変更には新規申請と事前相談が必要とされています。既に訪問介護や通所介護を営む法人が買主でも、売主の指定をそのまま使えるとは考えず、譲り受ける事業所の手続きを確認してください。

譲渡日・廃止日・指定日を整合させる

売主のサービス終了と買主のサービス開始に空白が生じないよう、譲渡日・廃止日・指定日を調整します。契約上の譲渡日だけを先に確定せず、指定権者に次の事項を確認してください。

  • 売主の廃止届の提出期限
  • 買主の新規指定申請の締切と指定予定日
  • 審査や書類の補正に必要な期間

新規指定前に、買主が指定事業者としてサービスを提供し、介護報酬を請求できると考えないよう注意が必要です。申請期限は全国共通ではないため、契約の日程は指定権者や専門家と相談して決めましょう。

日程の具体的な組み方は、後段の手続きセクションで図解します。売主・買主双方の手続きを並行して確認する際の参考にしてください。

合併・会社分割でも指定は自動的に引き継げる?

合併・会社分割でも、介護保険の指定が自動的に引き継がれるとは限りません。介護事業の再編を進める前に、指定権者へ新規指定の要否を確認してください。

法人上の承継と介護保険の指定は分けて考える

合併・会社分割による権利義務の承継と指定の扱いは別に確認が必要です。法人上の権利義務を引き継ぐだけで、指定も当然に承継されるとは限りません。

  • 再編後に運営する存続法人・新設法人などを明らかにする
  • 訪問介護・通所介護など、対象サービスと事業所を指定権者へ伝える

申請の簡素化や加算実績の通算が認められる場合

新規指定が必要でも、実質的な運営継続を指定権者が認める場合は、申請の簡素化や加算実績の通算が認められることがあります。厚生労働省「介護保険最新情報Vol.862」(2020年8月3日)は、合併・会社分割に伴う取扱いを示しています。

この通知を事業譲渡へ一律に当てはめることはできません。対象となる再編方法や適用条件を指定権者に確認し、再編に伴う法務・税務は専門家にも相談してください。

サービスを途切れさせずにM&Aを進める手順

介護事業のM&Aでは、指定権者への相談を先に行い、手続きの日程に合わせて譲渡日を決めます。相談→契約条件調整→申請・同意取得→指定確認→切替の順で進め、サービス提供に空白が生じない計画を売主・買主で共有しましょう。

契約前に指定権者へ相談する

売主・買主は、契約前に現在の指定権者を確認し、必要な届出・申請と審査日程を問い合わせます。相談結果を踏まえて、契約条件や譲渡日を調整してください。

  • 売主・買主の法人情報
  • 対象事業所のサービス種別と所在地
  • 譲渡方式と希望する譲渡日
  • 変更予定事項と加算の取扱い

運営法人が変わる場合の手続きは、事前相談で確認します。廃止届・新規申請の期限や受付日程は全国一律と考えず、対象自治体の案内を確認し、売主の廃止日と買主の指定開始日を調整しましょう。

指定準備と職員・利用者への対応を並行して進める

買主は人員配置、設備・平面図、運営規程などの申請資料を準備し、売主と協力して職員・利用者への説明を進めます。申請上の予定と切替後の実際の運営体制を一致させることが必要です。

事業譲渡では、職員ごとの承諾取得や利用者の同意・再契約の準備も並行して進めます。予定した職員を確保できない場合や申請書類の補正に備え、説明・同意取得・審査にかかる日程には余裕を設けてください。

切替前後に指定・届出・請求の状況を確認する

新規指定が必要な場合は、切替前に指定通知と指定開始日を確認し、必要な廃止届・変更届の提出状況も点検します。指定開始に合わせて、契約書類、連絡先、請求関連の設定を切り替えます。

事業所番号の扱い、国保連への請求設定、振込口座に加え、加算の体制届も確認してください。従前の加算が自動継続するとは限らないため、指定権者への確認と、税理士など専門家への相談を踏まえて最終日程を決めましょう。

売主・買主・指定権者の対応を並べた、相談からサービス切替までの時系列図

M&A後も満たすべき人員・設備・運営基準

介護事業のM&Aでは、譲渡方式にかかわらず、承継後も人員・設備・運営の各基準を満たす必要があります。売主と買主は、現在の書類だけでなく、承継後に予定する職員配置や事業所の使い方を照合してください。

職員の離職で人員基準を満たせなくなるリスク

引継ぎ予定の職員が離職すると、同じ事業所でも人員基準を満たせなくなるおそれがあります。買主は、職員の資格、常勤換算、兼務の状況、管理者の要件を確認し、離職した場合の代替人員を検討しておく必要があります。

常勤換算は、勤務時間を常勤職員の人数に換算して確認するものです。人数だけで判断せず、承継後の勤務予定で必要な配置を維持できるか、職員ごとに確認しましょう。

設備・運営規程と自治体独自の基準を確認する

設備や平面図、運営規程は、承継後の実態と一致しているか確認してください。地域密着型サービスでは、国の基準に加え、指定する市町村の条例も確認する必要があります。

既存事業所であることを理由に、基準確認を省略しないよう注意が必要です。売主と買主は、次のチェックリストで書類と現場を照合してください。

  • 人員:資格・勤務時間・常勤換算・兼務・管理者の要件を確認する
  • 設備:設備の状況と平面図が、承継後の使い方に合うか確認する
  • 運営:運営規程と実際の運営、市町村の条例との整合を確認する

確認事項は大阪府の指定申請等に関する資料も参考になります。基準の適合判断に迷う場合は、指定権者や介護事業の手続きに詳しい専門家へ相談してください。

利用者との契約と職員の雇用はどうなる?

介護事業のM&Aでは、株式譲渡なら利用契約・雇用関係は通常継続します。事業譲渡では、利用者の同意や再契約、職員ごとの承諾が必要になるため、売主と買主で手続きを分担して進めます。

利用契約の継続・同意取得・再契約を整理する

株式譲渡では、契約当事者の法人が同じなら通常は既存契約が継続します。事業譲渡では利用契約が当然に移転するわけではなく、契約上の地位の移転への同意、または買主との再契約を検討します。

  • 利用者に、運営法人や名称・連絡先・料金の変更内容を説明します。
  • 変更に伴う書類更新と、事業譲渡で必要な同意取得・再契約を進めます。

吸収合併について示された「再締結不要」の取扱いを、事業譲渡に当てはめないでください。売主・買主で契約内容を確認し、利用者ごとに必要な手続きを確認します。

事業譲渡での雇用承継には職員ごとの承諾が必要

事業譲渡では、労働契約の承継に職員ごとの承諾が必要です。株式譲渡では雇用主が変わらず、雇用関係は基本的に継続します。

  • 買主の概要、業務、勤務地、労働条件を職員に説明し、承継の承諾を得ます。
  • 労働条件を変更する場合は、その変更への同意も取得します。

雇用承継は指定準備と並行して進め、申請で予定した職員を確保できるか確認します。契約や同意の進め方は、税理士や労務・法務の専門家に相談してください。

よくある質問

Q. 介護事業のM&Aに伴う指定手続きは、どこへ相談すればよいですか?

対象サービス・事業所の所在地を管轄する指定権者へ、譲渡方式や変更予定事項を伝えて事前相談してください。複数の事業所を承継する場合は、事業所ごとに管轄と必要な手続きを確認しましょう。

Q. 新規指定の申請には、どれくらいの期間がかかりますか?

新規指定までの期間は、全国共通ではありません。買主は指定権者の申請締切や審査日程を確認し、書類の補正が必要になる可能性も踏まえて、希望する指定日に間に合うか相談してください。

Q. 事業譲渡後も、売主が算定していた加算をそのまま請求できますか?

売主の加算が自動的に継続するとは限りません。買主が算定要件を満たすか、必要な体制届や処遇改善加算の手続き、売主の過去実績を通算できるかを指定権者へ確認してください。

まとめ

介護事業のM&Aでは、株式譲渡は運営法人が同じなら原則として指定が存続し、事業譲渡で別法人が運営する場合は原則として新規指定が必要です。合併・会社分割も自動承継を前提にせず、指定権者へ確認してください。

契約・譲渡日を確定する前に指定権者へ相談し、自治体の最新の公式情報で届出期限・申請日程を確認しましょう。人員基準の充足、利用契約の引継ぎ、雇用承継も並行して準備します。会社の状況で方法や手続きは変わるため、迷う場合は事業承継・M&Aの支援内容も参考に、税理士などの専門家へ相談してください。

この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

事業承継・M&A、融資や補助金による資金調達など、中小企業の経営サポートに特化して活動。
税理士法人松本は国の認定支援機関で、M&A支援機関登録制度の登録支援機関。元銀行員が在籍し、金融機関の目線を踏まえた資金調達を支援しており、融資の調達実績は累計50億円以上。

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