2026.10.4
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M&A仲介の利益相反とは?売り手が契約前に確認すべきこと

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M&A仲介の利益相反とは、双方を支援する仲介会社の立場や報酬上の利害が、売り手または買い手の利益と衝突することです。仲介会社は通常、売り手・買い手双方から報酬を受け取りますが、双方から報酬を受け取ること自体が、直ちに不適切となるわけではありません。

仲介会社は、売り手だけの利益を最大化する代理人ではありません。売却の相談に応じているからといって、必ず自社の条件を最優先する立場だと思い込まず、契約前に支援の立場を確認する必要があります。

売り手が高く売りたい一方、買い手が安く買いたいと考えることは、通常の交渉で生じる利害対立です。注意したいのは、仲介会社が中立・公平な立場を外れ、不当に一方へ便宜を図る行為であり、継続取引のある買い手や追加報酬が存在するだけで、不適切とは判断できません。

この記事では、売り手に不利益が生じる利益相反の具体例と、仲介契約前に確認したい質問、回答に不安がある場合の対応を整理します。説明や契約内容に疑問が残る場合は、税理士や弁護士などの専門家にも相談したうえで判断しましょう。

売り手に不利益が生じる利益相反の具体例

M&A仲介の利益相反では、買い手の優遇や重要情報の隠蔽により、売り手の候補選びや価格交渉、売却の判断が妨げられる場合があります。以下は、中小M&Aガイドライン(第3版)の禁止事項に関係する例です。

リピーターの買い手を優先し、候補や価格を誘導する

継続取引のある買い手との関係を優先し、売り手の希望に反する候補選定や価格誘導をするケースです。リピーターであること自体ではなく、候補選定・条件交渉への影響が問題になります。

  • 売り手が重視する雇用継続などの条件より、買い手との継続取引を優先して候補を選びます。
  • 価格の根拠を十分に説明せず、売り手を不当に低い譲渡価格の受け入れへ誘導します。

追加報酬を支払う買い手に有利な条件へ誘導する

買い手からの追加報酬の対価として、売り手に不利な便宜を図るケースです。報酬の有無だけで判断せず、対価となる業務と推薦・交渉との関係を確認する必要があります。

  • 追加報酬を受け取る見返りに、売り手に不利な価格や支払条件を受け入れるよう誘導します。

売り手の判断に必要な重要情報を伝えない

仲介者が把握している有利・不利な情報を隠し、売り手の判断を妨げるケースです。秘密保持の対象や開示手続と、判断に必要な情報を売り手へ伝える問題は分けて確認します。

  • 候補の比較に必要な有利な情報や、買い手に関する懸念を把握していても伝えません。

秘密保持を理由に必要な情報まで伏せられていないか、注意が必要です。利益相反に当たるか判断に迷う場合は、税理士や弁護士などに相談してください。

M&A仲介とFAはどう違う?売り手が支援方法を選ぶ基準

M&A仲介は売り手・買い手の双方を支援し、FAは片側の依頼者を支援します。仲介の利益相反が気になる場合は、誰の立場で交渉を支えるのかを確認し、自社が求める支援に合わせて選びましょう。

双方を支援する仲介と、片側を支援するFA

仲介は双方の間で条件を調整する立場であり、売り手だけの利益を最大化する代理人ではありません。売り手が依頼するFAは、売り手側の条件交渉を支える助言を行う立場です。

比較項目 仲介 FA
支援する相手 売り手・買い手の双方 売り手か買い手の片側
交渉上の立場 中立・公平に双方を調整 依頼者側の交渉を支援
報酬を支払う相手 通常は売り手・買い手の双方 依頼者

自社が求める支援に合っているかを確認する

候補探索や双方の調整を求めるのか、自社側の条件交渉を支える助言を求めるのかを整理してください。例えば、譲渡価格や雇用継続の条件について売り手側から交渉するための助言を重視するなら、FAの業務範囲が希望に合うか確認します。

呼称だけで判断せず、契約上の立場・業務範囲・報酬体系を照合しましょう。FAでも利益相反リスクが一切ないとは限らないため、契約内容を踏まえた選択について税理士や弁護士などに相談してください。

買い手側の報酬・追加報酬は何を確認すべき?

買い手側の報酬は、算定基準・発生条件・支払時期に加え、追加報酬の業務内容と契約後の変更時の説明方法を確認します。中小M&Aガイドライン(第3版)は、仲介契約前の相手方報酬の説明と、契約後の説明を求めています。

算定基準・発生条件・支払時期を確認する

仲介会社が買い手から受け取る報酬について、売り手側の報酬とは別に説明を求めましょう。回答は口頭だけでなく、書面やメールで残すことをおすすめします。

  • 買い手から受け取る報酬は、何を基準に計算しますか。
  • どのような条件で報酬が発生し、どの時点で支払われますか。

追加報酬の業務内容と、契約後の変更説明も確認する

通常報酬以外の追加報酬があれば、何の業務の対価なのかを確認します。契約後に買い手側の報酬が変更・増額される場合についても、説明の時期と方法を確認してください。

  • 通常報酬以外の追加報酬はありますか。ある場合、どの業務への対価ですか。
  • 契約後に買い手側の報酬が変更・増額される場合、いつ、どのような方法で売り手に説明しますか。

説明を踏まえて売り手が検証するのは、報酬が売り手に不利な誘導につながっていないかです。報酬額の大小だけで判断せず、追加報酬を払う買い手への便宜として、希望に反する価格や条件を勧められていないかを確かめましょう。判断が難しい場合は、説明資料を税理士などの専門家に確認してもらってください。

仲介契約前に確認したい質問と、回答の見極め方

契約前には、買い手との関係、推薦の根拠、報酬、情報管理、重要情報の報告方法を確認してください。仲介会社の回答は、自社の希望を踏まえた根拠と具体的な手順が示されているかで見極めます。

契約前の確認項目を一覧でチェックする

下表をコピー・印刷し、質問への回答と資料がそろっているか確認しましょう。中小M&Aガイドライン(第3版)を踏まえ、説明内容を検証するための確認項目をまとめています。

確認項目 質問例 残してもらう資料 回答に不安がある場合の対応
買い手との関係 候補の買い手との過去の成約・継続取引はありますか。
その関係をどう管理しますか。
取引関係と利益相反管理方法についての回答 曖昧なら、候補選定への影響と管理方法を追加確認する。
推薦・比較の根拠 なぜこの買い手を推薦するのですか。
他候補と何を比較しましたか。
候補比較表、推薦理由、不利な点・未確認事項の一覧 「最適です」と結論だけ示されたら、比較対象と根拠資料を求める。
買い手側の報酬 追加報酬はありますか。
何の業務の対価ですか。
報酬の算定基準・発生条件・支払時期の説明 業務内容や変更時の説明が不明確なら、前節の項目に沿って再確認する。
情報開示と秘密保持 会社名・決算書・顧客情報を、誰に、いつ、どの範囲で開示しますか。 秘密保持契約、開示手順、売り手の承諾を得る方法 開示範囲が曖昧なら、資料提供前に手順を明確にする。
重要情報の報告 買い手への懸念や、売り手に不利な情報を把握した場合、どう報告しますか。 報告方法・時期・担当者についての回答 秘密保持を理由に説明が限定されるなら、判断に必要な情報の提供方法を確認する。

買い手との継続取引があるという回答だけで、不適切とは判断できません。売り手の希望より取引関係を優先していないか、候補選定の根拠と利益相反の管理方法を併せて確認してください。

価格以外の希望条件も比較表に入れる

候補比較表には、譲渡価格に加えて雇用継続、事業の維持、支払条件、経営者保証の扱いを入れてもらいましょう。売り手自身が希望条件の優先順位を示し、仲介会社の推薦理由と一致しているか確認します。

回答は口頭だけで済ませず、書面・メールで残すことを推奨します。条件が未確認の場合は、確定している条件と区別して比較表に記載してもらってください。

このチェック表は説明内容の検証用であり、適法性や取引の安全性を保証するものではありません。契約するかどうかの最終判断は、回答や契約書を税理士・弁護士などの専門家に確認してもらったうえで行ってください。

説明に不安があるときはどうする?契約前後の対応

仲介会社の説明に不安があれば、疑問点を記録し、書面で回答を求めましょう。利益相反が疑われる場合も、説明と資料を照合してから次の対応を判断します。

契約前は不明点を解消してから判断する

質問への回答、契約条項、報酬説明に食い違いがないか確認してください。説明不足だけで不適切な行為と断定せず、まず追加説明を求めます。

  1. 食い違う箇所を示し、書面・メールで追加説明を求めます。
  2. 疑問が解消しなければ契約を急がず、他社との比較や、仲介会社から独立した専門家への相談を検討します。

契約後に疑問が生じたら、経緯と資料を整理する

契約後は、説明内容と条件変更の経緯を時系列で整理して回答を求めます。回答期限と、それまで保留したい判断事項も明確に伝えましょう。

  1. 買い手の推薦理由、候補比較、報酬説明の資料やメールを保存します。
  2. 「いつ、何を説明され、どの条件が変わったか」をまとめ、例えば譲渡条件への同意を保留したい旨と回答期限を伝えます。

解除・相談を検討するときに確認すること

解除や支援先の変更を考えるときは、まず契約書の制限と費用を確認してください。一方的に解除や買い手との直接交渉を進めず、必要に応じて独立した弁護士などへ相談します。

  1. 解除条件、専任条項、直接交渉の制限、契約終了後の成約に関するテール条項、費用精算を確認します。
  2. 中小M&Aガイドライン上の禁止事項と、個別の法的責任・解除可否は別に判断される点を踏まえ、資料を専門家に示して相談します。

よくある質問

Q. M&A仲介が売り手・買い手の双方から報酬を受け取るのは違法ですか?

双方から報酬を受け取ることだけで、直ちに違法・不適切とはいえません。中小M&Aガイドラインでも、仲介者は通常、双方から報酬を受け取るとされています。個別の行為、説明内容、契約内容を分けて確認し、法的な判断に迷う場合は弁護士などに相談してください。

Q. 買い手が仲介会社のリピーターなら避けるべきですか?

リピーターであることだけで、候補から外す必要はありません。売り手の希望より買い手との取引関係が優先されていないかを確認し、希望に反する候補紹介や、不当に低い譲渡価格への誘導がないかを見てください。

Q. 買い手から追加報酬を受け取っていたら利益相反ですか?

追加報酬の存在だけで、利益相反行為とは断定できません。何の業務に対する報酬なのか、その対価として売り手に不利な便宜を買い手へ図っていないかを確認してください。報酬の説明と実際の対応に食い違いがあれば、書面やメールで説明を求めましょう。

Q. 仲介会社の推薦する買い手を断ってもよいですか?

推薦された買い手を、そのまま受け入れる必要はありません。希望条件との違いや不明点を伝え、候補の再検討を求められます。断る場合の費用や契約上の扱いは個別の契約内容を確認し、不明点が残る場合は税理士や弁護士などに相談してください。

まとめ

M&A仲介の利益相反は、売り手と買い手の利害の違いと、仲介者が不当に一方を優遇する行為を分けて理解する必要があります。

契約前には、買い手との取引関係、買い手側の報酬・追加報酬、推薦・比較の根拠、情報開示と重要情報の報告方法を確認しましょう。チェック表は説明内容の検証用であり、適法性や取引の安全性を保証するものではありません。

参照資料は「中小M&Aガイドライン」の第2版(2023年9月22日公表)と第3版(2024年8月30日公表)です。公開前に改訂状況を確認する必要があります。

会社の状況によって選べる方法や必要な手続きは異なります。判断に迷う場合は、事業承継・M&Aの支援内容も参考に税理士などへ相談し、質問への回答を書面で残して、不明点を解消してから契約しましょう。

この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

事業承継・M&A、融資や補助金による資金調達など、中小企業の経営サポートに特化して活動。
税理士法人松本は国の認定支援機関で、M&A支援機関登録制度の登録支援機関。元銀行員が在籍し、金融機関の目線を踏まえた資金調達を支援しており、融資の調達実績は累計50億円以上。

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