2026.06.4

会社設立

会社設立時の社名決定で失敗しない!商標権侵害のリスクと調べ方

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読了目安時間:約 11分

目次

はじめに:会社設立時の社名決定に潜むリスクとは

会社設立に向けた準備の中で、社名(商号)を決めるプロセスは、起業家にとって最もワクワクする瞬間のひとつです。自社のビジョンや想いを込めた名前を考える時間は、これからの事業展開への期待を大きく高めてくれるでしょう。

しかし、この社名決定は、会社設立の手続きにおいて最も慎重に行うべきプロセスでもあります。なぜなら、十分な調査を行わずに安易に社名を決定してしまうと、後々になって会社を揺るがす重大なトラブルに発展する可能性があるからです。

起業家の多くが陥りがちな誤解として、「法務局で登記が通ったから、この社名は安全に使える」というものがあります。実は、法務局での商号登記が完了したからといって、その名称を日本全国で独占的に使用できる法的な保証を得たわけではありません。

もし、他社がすでにその名称や類似する名称を特許庁で商標登録していた場合、意図せず他社の「商標権」を侵害してしまうことになります。その結果、ある日突然、社名の使用差止や多額の損害賠償を請求されるという、深刻な事態を招きかねないのです。

商号登記(法務局) 商標登録(特許庁)
目的 会社の基本情報を公証するため 商品・サービスの名称を独占するため
効力が及ぶ範囲 同一住所(本店所在地)のみ 日本全国
独占排他権 なし(他社の使用を原則止められない) あり(他社の無断使用を差し止め可能)

このようなリスクを回避するためには、会社設立の手続きを進める前に、候補となっている社名が他社の商標権を侵害していないかをしっかりと調査することが不可欠です。事前の確認を怠ると、看板やウェブサイトの作り直し、さらには社名変更の手続きなど、多大なコストと手間に見舞われることになります。

本記事では、これから会社設立の準備に入る起業家の皆様に向けて、安全に社名(商号)を決定するためのロードマップを解説します。具体的には、以下のポイントについて詳しく紐解いていきます。

  • 商号(社名)と商標の法的な違いとそれぞれの役割
  • 商標権侵害が引き起こす深刻な経営リスクとペナルティ
  • 無料データベース「J-PlatPat」を使った具体的な調べ方
  • 安全に社名を決定し、自社のブランドを守るための対策

本記事をお読みいただくことで、会社設立における「社名」と「商標権」の関係を正しく理解し、将来の法的トラブルを未然に防ぐための具体的なアクションを起こせるようになります。大切な自社ブランドを守り、安心して事業をスタートさせるための第一歩として、ぜひ本記事のノウハウをご活用ください。

2. 似ているようで全く違う!「商号登記」と「商標登録」の決定的な違い

会社設立の準備を進める際、多くの方が混同しやすいのが「商号登記」と「商標登録」です。

どちらも自社の名称やブランドを守るための制度に思えますが、管轄する役所も、根拠となる法律も全く異なります。

ここでは、これから社名を決定しようとしている起業家に向けて、両者の違いと注意すべきリスクについて詳しく解説します。

商号登記(法務局)とは:同一住所でなければ登記可能

商号登記とは、会社法に基づいて法務局へ自社の社名(商号)を登録する手続きのことです。

会社設立において、商号登記のルールは意外なほど緩やかに設定されています。原則として、「同一住所(本店の所在地)に同一の商号がない限り」、基本的にはどのような社名でも登記が受理されます。

つまり、近隣に全く同じ名前の会社があったとしても、住所の番地や部屋番号さえ異なれば、登記の手続き自体は問題なく通ってしまうのです。

しかし、商号登記が完了したからといって、その社名を日本全国で独占的に使える権利を得たわけではありません。

商号登記は、あくまで「その住所にその名前の会社が存在する」という事実を公的に記録し、一般に公開したに過ぎない点に注意が必要です。

商標登録(特許庁)とは:日本全国で独占的に使用できる権利

一方、商標登録は、商標法に基づいて特許庁に対して、商品やサービス、社名のロゴなどを登録する手続きです。

厳しい審査を経て無事に登録されると、同一または類似する業界において、その名称やロゴを日本全国で独占的に使用できる強力な権利である商標権が発生します。

商号登記と商標登録は、管轄も根拠となる法律も完全に独立した別の制度です。そのため、「法務局で社名が登記できたから、他社の商標権を侵害していない」とは決して言えません。

登記が受理され事業をスタートした後になって、実は他社がすでにその名称を商標登録していたことが発覚し、深刻なトラブルに発展するケースが後を絶ちません。

比較項目 商号登記 商標登録
管轄する役所 法務局 特許庁
根拠となる法律 会社法・商業登記法 商標法
権利の効力範囲 同一住所での同一商号を排除 日本全国で独占的に使用可能
主な目的 会社の存在や基本情報を公示 ブランドや商品・サービスの保護
登録の基準 同一住所・同一商号でなければ可 類似商標がないか厳格に審査

登記が通っても発生する「商標権侵害リスク」

もし、自社の社名やサービス名が他社の商標権を侵害していた場合、企業活動において致命的なダメージを受ける可能性があります。

法務局での登記が完了していても、商標権者から以下のような厳しい要求を受けるリスクが想定されます。

  • 看板、ウェブサイト、パンフレット、商品パッケージなどの使用中止と廃棄(使用の差止請求)
  • 他社の権利を侵害したことによる多額の損害賠償や不当利得の返還請求
  • 社名変更に伴う登記費用や、販促物の作り直しによる多大なコストの発生
  • 突然の社名変更やトラブル表面化による、取引先や顧客からの信用失墜

また、相手が商標登録をしていなかったとしても、世間に広く知られた他社の名称(周知・著名なブランド)と類似している場合は注意が必要です。

このようなケースでは、不正競争防止法に基づいて、名称の使用差止や損害賠償を請求されることがあります。

事前に「J-PlatPat」等を使って類似商標を調べる方法

会社設立時の社名決定で失敗しないためには、登記手続きに入る前の事前の調査が不可欠です。

特許庁が提供する無料のデータベースである「J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)」を活用して、候補となる社名がすでに登録されていないかを確認しましょう。

調査を行う際の基本的なチェックポイントは以下の通りです。

  • 商標検索メニューから、候補となる社名(文字)を入力して検索する
  • 完全一致だけでなく、読み方(称呼)や表記が似ている「類似商標」がないか確認する
  • 自社が行う事業領域(指定商品・役務の区分)において競合する商標がないかチェックする

J-PlatPatでの簡易検索だけでは、表記違いや類似性の判断を見落とすリスクがあります。商標の類似判断は非常に専門的であるため、自己判断だけで進めるのは危険です。

最終的な社名の決定や、自社での商標登録をあわせて検討する際は、知的財産権の専門家である弁理士に相談し、正確な判断を仰ぐことをお勧めします。

「商号登記」と「商標登録」の違いをまとめた比較表

3. 登記が通ってもNG?他社の商標権を侵害した際のリスクと代償

会社設立の準備を進める中で、法務局で商号(社名)の登記が無事に完了したからといって、決して安心はできません。法務局での会社登記と、特許庁が管轄する商標登録は、まったく異なる目的を持った別の制度だからです。

もし、決定した社名が他社の商標権を侵害していた場合、法務局での登記が通っていたとしても、企業存続を揺るがす深刻なトラブルに発展する可能性があります。ここでは、商標権侵害が発覚した際に企業が負うことになる4つの大きなリスクと代償について詳しく解説します。

1. 社名やロゴの使用差止請求(看板・サイト・パンフレットの廃棄)

他社の商標権を侵害していることが発覚すると、まず商標権者から社名やブランド名の「使用差し止め」を内容証明郵便などで請求されるのが一般的です。特許庁の商標制度においても、権利者が侵害者に対して侵害行為の停止を求める権利が明確に認められています。

使用差し止めが認められた場合、自社の社名やロゴが記載されているすべての媒体の使用を直ちに中止しなければなりません。これは単にウェブサイトから名前を消すだけでは済まず、物理的な回収や廃棄を強制されることを意味します。

対象物の種類 具体的な影響と対応
店舗・オフィスの看板 直ちに取り外し、新しい社名での看板の作り直し
ウェブサイト・SNS ドメインの変更、サイト内の表記修正、アカウント名の変更
印刷物(パンフレット等) 名刺やパンフレットの在庫全量廃棄とデザイン修正・再印刷
商品・パッケージ 市場に出回っている商品の回収、パッケージの廃棄・刷り直し

これらの対応には多大な労力と時間がかかります。事業の立ち上げ期にこのようなトラブルに見舞われると、本来注力すべき営業活動やサービス開発が完全にストップしてしまう恐れがあります。

2. 多額の損害賠償請求や不当利得の返還

使用の差し止めに加えて、過去に遡って多額の損害賠償や不当利得の返還を請求されるリスクもあります。「他社の商標とは知らなかった」「意図的ではなかった」という言い訳は法的には通用しません。

商標権は特許庁のデータベース等で公開されているため、事前に調査を怠った「過失」があったと推定されるためです。賠償額は、侵害していた期間の長さ、相手方が被った逸失利益、あるいは自社がその名称を使って得た利益などをベースに算出されます。

特に、創業期のスタートアップや設立間もない企業にとって、予期せぬ多額の賠償金支払いは資金繰りを一気に悪化させます。場合によっては、この一撃だけで倒産に追い込まれかねない致命的な打撃となることを強く認識しておく必要があります。

3. 社名変更に伴う多大なコストと社会的信用の失墜

商標権侵害に関する争いで敗訴したり、和解によって社名変更(リブランディング)を余儀なくされた場合、金銭的なコストだけでなく、目に見えない「信用」も大きく失うことになります。

社名を変更するためには、法務局での商号変更登記が必要となり、株式会社の場合は国税庁が定める登録免許税として3万円の法定費用がかかります。しかし、影響は登記費用だけにとどまりません。

  • 法務局での商号変更登記(登録免許税の納付)
  • 税務署・年金事務所・自治体への異動届出の提出
  • 銀行口座の名義変更および法人クレジットカードの再発行
  • ウェブサイトのドメイン変更とロゴマークの再デザイン
  • 看板、名刺、パンフレットなどすべての販促物の作り直し

さらに恐ろしいのは、社会的信用の失墜です。取引先や金融機関、顧客からは「知的財産の管理がずさんな企業」「他社の権利を平気で侵害する企業」というレッテルを貼られてしまいます。一度失った信用を取り戻すには、社名を変更する以上の長い時間と実績が必要になります。

4. 商標未登録でもアウト?不正競争防止法による規制

「データベースで検索して商標登録されていなかったから大丈夫」と安心するのは早計です。相手方が商標登録を行っていなかったとしても、その名称が世間に広く知れ渡っている(周知・著名なブランドである)場合、類似する名称を使用することは不正競争防止法に抵触する可能性があります。

経済産業省が所管する不正競争防止法では、他人の有名な商品等表示(社名、ブランド名など)と同一または類似の表示を使用し、消費者に混同を生じさせる行為を厳しく規制しています。

不正競争防止法では、周知な商品等表示の混同惹起行為や、著名な商品等表示の冒用行為に対して、差止請求や損害賠償請求が認められています。(参考:経済産業省 不正競争防止法

つまり、商標権の有無にかかわらず、すでに広く認知されている他社のブランド名にタダ乗りするような社名の付け方は、法的なペナルティを受けるリスクが高いということです。

会社設立に向けた社名決定のプロセスでは、商標登録の有無だけでなく、インターネット検索などを通じて同名や類似のサービスがすでに存在していないかを慎重に調査することが求められます。最終的な判断に迷う場合は、自己判断せず、弁理士や弁護士などの専門家に相談することを強く推奨します。

他社の商標権を侵害した際のリスクと代償(使用差止、損害賠償、社名変更)のイメージ図

4. 社名決定前に必須!「J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)」を使った商標の調べ方

会社設立にあたり、社名を決定するプロセスで欠かせないのが、商標権の事前調査です。法務局での商号登記が問題なく完了したとしても、それはあくまで「同一住所に同じ社名がない」ことを確認したに過ぎません。

もし他社がすでにその名称やロゴを商標登録していた場合、後から商標権侵害として使用の差止や損害賠償を請求される深刻なリスクがあります。そのため、設立手続きを本格化させる前に、特許庁のデータベースを活用して自ら簡易調査を行うことが強く推奨されます。

ステップ1:商標メニューから候補となる社名(文字)を検索

まずは、独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)が特許庁と連携して提供している無料のデータベース「J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)」にアクセスしましょう。誰でも無料で、登録されている特許や商標を検索できる公的なシステムです。

トップページを開いたら、上部のメニューから「商標」を選択し、「商標検索」の画面を開きます。検索窓(キーワード入力欄)に、候補としている社名を文字入力して検索ボタンを押すのが基本の手順です。

検索結果の一覧が表示されたら、自社の候補名と同じ、あるいは似ている名称がすでに登録されていないかをざっと確認します。まずは完全一致する名称がないかを探すことから始めましょう。

  • J-PlatPatのトップページにアクセスする
  • 上部メニューの「商標」から「商標検索」を選択する
  • 「検索キーワード」の欄に候補の社名を入力して検索する
  • 検索結果の件数と、一覧に表示された商標名を確認する

ステップ2:表記や読み方(称呼)が似ている「類似商標」の有無を確認

会社設立時の社名調査で陥りやすい失敗が、「完全一致する名前がないから大丈夫」と安易に判断してしまうことです。商標権の侵害は、名称が完全に一致している場合だけでなく、読み方や見た目が「類似」している場合も対象となります。

商標の世界では、名称の読み方を「称呼(しょうこ)」と呼びます。J-PlatPatの検索画面では、検索項目を「称呼(類似検索)」に変更し、カタカナで読み方を入力して検索することが可能です。これにより、発音が似ている他社の商標を洗い出すことができます。

たとえば、漢字・ひらがな・カタカナ・アルファベットといった表記が異なっていても、称呼(読み方)が同じであれば「類似商標」と見なされる可能性が高くなります。以下の表のように、さまざまなパターンを想定して検索することが重要です。

自社の候補社名 登録済みの他社商標(類似の例) 類似と判断される理由
株式会社ミライ MIRAI 表記は異なるが、称呼(読み方)が同じ
サクセスサポート さくせす・さぽーと カタカナとひらがなで見た目は違うが発音が同じ
エクセルシオ エクセルシアー 称呼(読み方)が非常に似ており混同されやすい

表記違いや発音の類似を含めて調査することで、将来的な商標トラブルのリスクを大幅に減らすことができます。

ステップ3:自社の事業領域に対応する「区分(指定商品・役務)」をチェック

候補の社名と類似する商標が見つかった場合でも、ただちにその社名が使えないわけではありません。商標権は、すべての商品やサービスに対して無制限に効力を持つのではなく、「区分」と呼ばれる特定のカテゴリーごとに権利が認められる仕組みになっています。

区分は、第1類から第45類まで分類されており、第1類〜第34類が「商品(モノ)」、第35類〜第45類が「役務(サービス)」に関する区分です。商標を出願する際は、自社の事業がどの区分に該当するかを指定(指定商品・指定役務)する必要があります。

商標権の効力は、原則として登録した商標と同一または類似の商標を、指定した商品・役務(サービス)と同一または類似の範囲で使用する場合に及びます。

つまり、候補の社名がすでに登録されていても、自社が行う事業領域(区分)と全く異なる業界の商標であれば、法的に問題なく登録・使用できるケースもあるのです。J-PlatPatの検索結果画面で該当の商標をクリックすると、詳細情報として「区分」や「指定商品・指定役務」を確認できます。

自社の事業内容と、他社が登録している区分が重複していないかを丁寧にチェックしましょう。ただし、類似性の判断や区分の解釈は非常に専門的な知識を要します。J-PlatPatでの調査はあくまで簡易的な一次チェックと位置づけ、最終的な社名決定や商標出願の判断は、知的財産権の専門家である弁理士に相談することを強くおすすめします。

J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)での商標検索手順の解説図

簡易検索で見落としがちな「類似」の判断基準

会社設立に向けて社名を検討する際、J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)を使った簡易検索は非常に有効な手段です。しかし、一般の起業家が検索結果を見て「同じ名前がないから大丈夫」と安心してしまうのは、実は大きなリスクを伴います。

なぜなら、商標権の侵害にあたるかどうかは、完全一致だけでなく「類似しているかどうか」も含めて厳密に判断されるためです。ご自身で「類似なし」と判断しても、プロの目から見ると「類似(侵害)」と判定されるケースが多々あります。

特許庁における商標の類似判断は、主に以下の3つの要素(商標の3要素)を総合的に勘案して行われます。この判断基準が非常に複雑であることが、専門知識を要する理由です。

類似判断の要素 概要 具体例・注意点
称呼(音・読み方) 商標を声に出して読んだときの発音や響き 一文字違いや、濁音・半濁音の違いでも類似とみなされることがあります。
外観(見た目) 文字のフォント、デザイン、図形などの視覚的な印象 アルファベットとカタカナの違いでも、全体のデザインが似ていれば類似となります。
観念(意味合い) 商標から連想される意味や概念 「王様」と「KING」のように、言語が違っても意味が同じであれば類似と判断される可能性があります。

例えば、J-PlatPatで「称呼」が似ているものを検索した場合でも、膨大な検索結果から自社の事業領域(指定商品・役務)と競合するかどうかを正確に見極めるのは至難の業です。

会社設立時に決定した社名が、後になって他社の商標権を侵害していると判明した場合、社名変更や損害賠償といった致命的なダメージを受ける可能性があります。そのため、最終的な類似判断は慎重に行う必要があります。

商標の類否は、対比される両商標が同一または類似の商品・役務に使用された場合に、商品の出所または役務の提供者について誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって判断されます。(参考:特許庁「商標審査基準」

中核事業を守るための商標出願と弁理士への依頼メリット

事業の主軸となる重要な社名やサービス名については、ご自身での簡易検索にとどめず、事前に弁理士などの専門家に詳細な調査を依頼するのが最も安全です。弁理士は最新の審査基準や過去の審決例を熟知しており、精度の高いリスク評価を行ってくれます。

また、調査を依頼するだけでなく、将来的に競合他社から自社の社名やブランドを守るために、自社でも「商標出願・登録」までを視野に入れることを強くお勧めします。

商標権を取得しておけば、日本全国でその名称を独占的に使用できる強力な権利を得られます。会社設立後に事業が軌道に乗り、ブランド価値が高まったタイミングで他社に商標を先取りされてしまう「フリーライド(ただ乗り)」を防ぐためにも、早期の出願が有効です。

商標調査から出願・登録までの手続きを弁理士に依頼することで、以下のような多くのメリットが得られます。

  • 自社の事業内容に最適な「区分(指定商品・役務)」を過不足なく選定してくれる
  • 登録可能性が低い場合でも、ロゴ化や文字の追加など、登録の可能性を高める代替案を提案してくれる
  • 特許庁から拒絶理由通知(審査で引っかかった場合の通知)が届いた際、適切な反論や補正などの対応を任せられる
  • 出願書類の作成ミスによる手続きの遅延や、権利範囲の抜け漏れを防ぐことができる

会社設立の準備段階は、資金調達や事業計画の策定などやるべきことが山積みです。しかし、社名や商標権に関するトラブルは、事業の根幹を揺るがしかねない重大な経営リスクとなります。

長期的な視点で会社を成長させていくためにも、商標に関する手続きは自己判断で済ませず、知的財産権のプロフェッショナルである弁理士への相談をぜひ検討してみてください。

7. まとめ:万全な商標調査で、安心して会社設立の一歩を踏み出そう

会社設立において、社名(商号)は単なる法人の名称にとどまらず、企業の「顔」となる非常に重要な要素です。商品やサービスのブランドイメージと直結し、将来にわたって育てていく大切な資産となります。

しかし、本記事で解説してきたように、「法務局で商号登記ができたから大丈夫」という油断は禁物です。登記が通ったとしても、他社がすでにその名称を商標登録していた場合、深刻なトラブルに発展する可能性があります。

「登記完了=安全」ではない!商標権侵害のリスクをおさらい

会社設立時の社名決定において、最も注意すべきは商標権侵害のリスクです。他社の商標権を侵害してしまった場合、以下のような甚大なダメージを受ける恐れがあります。

  • 社名やブランド名の使用差止請求(看板・ウェブサイト・パンフレット等の差し替えや廃棄)
  • 多額の損害賠償請求や不当利得の返還請求
  • 社名変更に伴う登記費用や販促物の再作成による多大なコスト負担
  • トラブル表面化や突然の社名変更による取引先・顧客からの信用失墜

たとえ悪意がなかったとしても、これらのリスクは免れません。商標権の侵害は、創業間もない企業の存続を脅かす致命的な事態になり得るということを、しっかりと認識しておく必要があります。

設立前の調査と専門家への相談が、安全な経営の土台を作る

このようなリスクを回避するためには、会社設立の手続きを進める前の段階で、事前の商標調査を徹底することが不可欠です。

まずは、独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)が提供する無料のデータベースである特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)を活用し、候補となる社名やロゴがすでに登録されていないかを確認しましょう。完全一致だけでなく、読み方(称呼)が似ている類似商標や、自社の事業領域(指定商品・役務の区分)に競合する商標がないかを慎重にチェックします。

しかし、J-PlatPatでの簡易検索だけでは、類似性の判断が難しいケースも多々あります。最終的な判断を誤らないためにも、商標を専門とする弁理士などの専門家に相談することを強くお勧めします。

事前の調査や専門家への相談にかかる費用や手間は、将来のトラブル解決にかかる莫大なコストや信用失墜に比べれば、はるかに安価です。結果的に最もコストパフォーマンスが良く、安全な経営の土台を作ることにつながります。

会社設立という大きな挑戦を成功させるためには、社名と商標権の関係を正しく理解し、適切な対策を講じることが重要です。万全な商標調査を行い、安心して起業の第一歩を踏み出してください。ご自身の事業を守るためにも、迷った際はぜひ専門家への相談を検討してみましょう。

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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

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