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事前確定届出給与で役員賞与を損金算入する要件と期限
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目次
事前確定届出給与とは?役員賞与を損金算入する仕組み
設立初年度から役員賞与を損金(法人税を計算する際の費用)に算入したい場合、オーナー経営者の同族会社では、原則として事前の届出が必要です。事前確定届出給与とは、役員の職務に対し、あらかじめ定めた所定の時期に確定額を支給する給与をいいます。
法人が役員に支給する給与は、原則として次の3類型のいずれかに該当しなければ損金算入できません。
| 類型 | 仕組み |
|---|---|
| 定期同額給与 | 定期的に同額を支給する給与 |
| 事前確定届出給与 | 所定日に確定額を支給する給与 |
| 一定の業績連動給与 | 業績に連動する一定の給与 |
このうち、毎月の役員報酬とは別に支給する一般的な役員賞与は、事前確定届出給与として期限内に届け出ることが基本です。非同族会社が定期給与を支給しない役員に支給する一定の金銭給与など、届出不要の例外もありますが、設立初年度のオーナー会社には通常該当しません。
届出を提出しただけで、役員賞与が必ず損金になるわけではありません。不相当に高額な部分や、届出内容と実際の支給日・支給額などが異なる給与は、損金不算入となる可能性があります。
したがって、事前確定届出給与では、決議内容、届出期限、実際の支給を一致させることが重要です。詳しい取扱いは国税庁「No.5211 役員に対する給与」を確認し、個別の判断は税理士などの専門家へご相談ください。
役員賞与を損金算入するための要件と決議内容
役員賞与を事前確定届出給与として損金算入するには、会社法上適切な機関で、対象者・支給日・支給額などを事前に確定させる必要があります。経営者が支給額や支給日を後から変更できる決め方ではなく、届出書と議事録の内容を一致させることが重要です。
| 会社形態 | 決定方法 |
|---|---|
| 株式会社 | 株主総会や取締役会などで決議 |
| 合同会社 | 社員総会や総社員の同意などで決定 |
株式会社では、機関設計や定款に応じた適切な決議が必要です。合同会社では一律の役員任期がないため、定款、社員総会等の決定、従来の運用を踏まえ、職務執行期間も明確にします。
決議では何を確定させる必要がある?
決議時には、誰に、いつ、いくら支給するかを具体的に確定させます。設立初年度であっても、次の事項を決議書や議事録に残してください。
- 対象役員の氏名・役職
- 支給日または具体的な支給時期
- 支給日ごとの金額
- 決議日・決議機関
- 対象となる職務執行期間
「業績に応じて支給する」「100万円以内」「12月ごろに支給する」といった内容は、支給時期や金額が確定していないため避けます。支給額や支給日を経営者の判断で後から変更できる内容も、事前確定届出給与の要件と整合しにくくなります。
株主総会で役員報酬の総額を決議し、各役員の具体額を取締役会へ委任する方法も、国税庁通達上の「株主総会等の決議」に含まれます。この場合は、委任決議と取締役会の具体的な決定内容をそれぞれ記録し、届出書と一連の議事録を整合させて保存しましょう。
詳細は国税庁の「事前確定届出給与に関する届出書の記載要領等」および「役員給与等」で確認できます。個別の機関設計や職務執行期間によって扱いが異なるため、決議前に税理士などへ相談すると安心です。
事前確定届出給与の提出期限はいつまで?
通常法人の事前確定届出給与は、原則として決議日等から1か月を経過する日と、職務執行期間が始まる会計期間の開始日から4か月を経過する日のうち、早い日までに届け出ます。新設法人が設立時に開始する役員の職務について定めた場合は、原則として設立日から2か月を経過する日が期限です。
具体的な日付ではどう数える?
期限は「決議後1か月」だけで判断せず、会計期間の開始日から4か月という上限と比較します。決議日が職務執行開始日より後なら、1か月の起算日は決議日ではなく職務執行開始日です。
| ケース | 起算日 | 提出期限 |
|---|---|---|
| 4月1日開始・5月20日決議 | 5月20日 | 6月20日 |
| 4月1日開始・7月20日決議 | 決議日と会計期間開始日 | 8月1日 |
| 3月1日職務開始・3月15日決議 | 3月1日 | 4月1日 |
| 8月10日設立の新設法人 | 8月10日 | 10月10日 |
たとえば7月20日の決議だけを見れば8月20日までと思えますが、4月1日から4か月を経過する8月1日のほうが先です。決議前に職務が始まっている場合も含め、必ず両方の期限を日付で確認してください。
新設法人の2か月期限は、その役員の設立時に開始する職務について定めた場合が対象です。設立後に新たな役員が就任したケースへそのまま適用できるとは限らないため、個別の確認が必要です。
合同会社の職務執行開始日はいつ?
合同会社の業務執行社員も、税法上の役員に該当すれば対象です。ただし株式会社の取締役のような一律の任期規定がないため、定款、社員総会決議、従来の運用を整合させる必要があります。
東京国税局の文書回答事例では、定時社員総会日を職務執行開始日とする運用を前提に、同日から1か月を経過する日を期限としています。期限の根拠は、国税庁「C1-23 事前確定届出給与に関する届出」および「No.5211 役員に対する給与」で確認し、判断に迷う場合は税理士へ相談してください。

【実務の流れ】役員賞与の決定から支給まで何をすればよい?
事前確定届出給与は、賞与額の検討、社内決議、期限判定、届出、支給、証憑保存の順に進めます。設立初年度は、支給時点から逆算するのではなく、設立日や決議日を起点に早めに準備することが重要です。
役員賞与の実務はどのような手順で進める?
次の5ステップで進め、決議内容・届出内容・実際の支給内容を一貫させます。税務上の取り扱いは個別事情に左右されるため、決議前に税理士へ確認すると安心です。
- Step1|賞与額と資金繰りを検討する
利益見込みだけでなく、支給日に必要な現金を確保できるか確認します。届出後に資金不足となっても自由な減額は難しいため、役員個人の所得税・住民税や社会保険への影響も含めて検討します。 - Step2|支給日・支給額・対象役員を決議する
対象役員ごとに具体的な支給日と金額を決めます。株式会社なら株主総会・取締役会議事録、合同会社なら社員総会議事録など、会社の機関設計に応じた議事録を作成します。 - Step3|提出期限を判定する
決議日、職務執行開始日、会計期間の開始日、設立日を時系列で並べ、適用される期限のうち最も早い日を確認します。新設法人には設立時に開始する職務について設立日以後2か月という期限があるため、国税庁の提出期限も確認してください。 - Step4|届出書と付表を作成・提出する
議事録と届出書、付表に記載した役員名・支給日・金額が一致しているかを照合します。提出後は書面の控え、またはe-Taxの受信通知を保存します。 - Step5|届出どおりに支給する
支給日直前に預金残高を確認し、銀行振込など支給事実を確認できる方法で、届出どおりの日付・金額を支給します。給与台帳、源泉徴収、会計仕訳、振込記録も整合させて保存します。
支給前に何を確認すべき?
手続きの漏れだけでなく、各書類間の不一致がないかを確認します。少なくとも次の項目を決議時、提出時、支給直前の各段階で見直してください。
- 決議日と決議機関が適切か
- 対象役員ごとの金額と支給日が確定しているか
- 適用される提出期限を確認したか
- 支給日に必要な資金を確保できるか
- 議事録・届出書・給与台帳の内容が一致しているか

届出書の書き方と提出方法
事前確定届出給与を金銭で支給する場合は、届出書と付表1を作成し、納税地の所轄税務署長へ提出します。決議内容と記載事項に食い違いがないよう、議事録などを確認しながら作成することが重要です。
提出書類には何が必要ですか?
主に「事前確定届出給与に関する届出書」と、付表1「事前確定届出給与等の状況(金銭交付用)」を用意します。臨時改定事由がある場合などは、必要に応じて決議内容や改定事由を確認できる資料も準備します。
- 事前確定届出給与に関する届出書
- 付表1「事前確定届出給与等の状況(金銭交付用)」
- 決議内容や改定事由を確認できる資料
届出書と付表1には何を記載しますか?
届出書には、株主総会等の決議日、決議機関、職務執行開始日、事前確定届出給与とする理由、その支給時期とした理由を記載します。臨時改定事由に基づく届出では、その内容と発生日も必要です。
付表1には、役員の氏名・役職、職務執行期間、支給日または支給時期、支給金額、定期同額給与など他の役員給与の状況を記載します。議事録、届出書、付表の支給日・金額・対象役員は、相互に一致しているか提出前に確認しましょう。
どこへ、どのように提出しますか?
提出先は納税地の所轄税務署長で、e-Taxまたは書面を利用できます。書面は原則1部ですが、調査課所管法人は2部とされ、原則として事前確定届出給与に係る「定め」ごとに作成します。
国税庁の手続ページでは、手数料の記載は確認されていません。様式や最新の取扱いは、国税庁「C1-23 事前確定届出給与に関する届出」および「事前確定届出給与に関する届出書の記載要領等」で確認し、判断に迷う場合は税理士へ相談してください。

届出額と実際の支給額が違うとどうなる?
事前確定届出給与は、届け出た支給額・支給日に従わないと、原則として実際の支給額が損金不算入となります。届出額の範囲内なら経費になるわけではないため、振込前の照合が重要です。
| 相違の内容 | 原則的な取扱い |
|---|---|
| 届出額より増額 | 支給額全額が損金不算入 |
| 届出額より減額 | 支給額全額が損金不算入 |
| 支給日のずれ | 要件を満たさない可能性 |
| 支給しない | 権利・税務処理を要確認 |
増額した場合は増額部分だけでなく、実際の支給額全額が原則として損金不算入です。減額も同様で、資金繰りの悪化を理由に少なく支払っても、当然に救済されるものではありません。
支給時期も要件であるため、数日程度のずれを安易に問題ないと判断しないようにします。不支給へ変更するときは、役員側に給与請求権が残っていないか、源泉徴収や債務免除の問題が生じないかを確認してください。
同一の職務執行期間に年2回以上支給する場合は、原則としてすべての支給が定めどおりかで判定します。例えば、届出が「12月200万円・翌年6月200万円」で、実際は「12月100万円・翌年6月200万円」なら、実際の支給額300万円が損金不算入となる考え方です。
支給が別事業年度にまたがる場合についても、国税庁の「定めどおりに支給されたかどうかの判定」では、同じ職務執行期間に係る複数回の給与として扱う質疑事例が示されています。実務では次の事項を支給前に確認し、相違が見込まれる場合は税理士へ相談しましょう。
- 決議・届出書と振込予定日が一致しているか
- 役員ごとの支給額が一致しているか
- 同一職務執行期間の過去の支給に相違がないか

会社設立初年度に一緒に確認したい費用・税金・届出
設立初年度は、設立費用だけでなく、税務届出、社会保険、消費税の判定を並行して管理する必要があります。特に事前確定届出給与は他の届出と期限が異なるため、設立日を起点とした期限一覧を作成しましょう。
株式会社と合同会社の設立費用はどう違いますか?
合同会社は定款認証が不要で、登録免許税の最低額も株式会社より低いため、法定費用を抑えやすい形態です。主な違いは次のとおりです。
| 費用 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 資本金×0.7%、最低15万円 | 資本金×0.7%、最低6万円 |
| 定款認証 | 必要 | 不要 |
| 定款認証手数料 | 資本金等により3万~5万円 | なし |
| 紙定款の印紙税 | 4万円 | 4万円 |
| 電子定款の印紙税 | 不要 | 不要 |
このほか、定款の謄本代などが発生します。司法書士等へ定款作成や登記申請を依頼する場合は、法定費用とは別に専門家報酬が必要です。
設立後はどの届出を管理すればよいですか?
税務署には法人設立届出書、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書などを提出します。提出漏れを防ぐため、次の書類を期限一覧で一元管理してください。
- 法人設立届出書:原則、設立日から2か月以内
- 青色申告の承認申請書:原則、設立日から3か月経過日と第1期末日の前日のいずれか早い日まで
- 給与支払事務所等の開設届出書:開設から1か月以内
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書:給与支給人員等の要件を確認して提出
- 都道府県・市区町村への法人設立関係書類:各自治体の期限と添付書類を確認
事前確定届出給与は、これらとは別の期限で管理しなければなりません。設立時に開始する役員の職務について定めた場合は、原則として設立日以後2か月を経過する日が期限です。
役員賞与には社会保険料がかかりますか?
法人税上の損金算入と社会保険上の取扱いは別に判定します。役員賞与が標準賞与額の対象となる場合は、保険料計算に加え、年金事務所への賞与支払届などを確認してください。
名称が「賞与」でも、支給回数や支給方法によって報酬として扱われる場合があります。決議前に税理士と社会保険労務士へ確認すると安全です。
設立初年度は消費税が必ず免税になりますか?
新設法人でも必ず免税になるわけではありません。資本金、特定新設法人への該当、課税事業者の選択、インボイス登録の有無などにより取扱いが変わります。
また、法人税上、役員賞与を事前確定届出給与として損金算入できるかどうかと、消費税上の課税仕入れに該当するかは別問題です。給与・賞与は原則として仕入税額控除の対象にならないため、設立前後の資金計画を含め、税理士等へ個別にご相談ください。

事前確定届出給与でよくある質問
届出を忘れた後から提出できますか?
原則として、提出期限を過ぎてから届出をしても、役員賞与を通常どおり損金算入することは難しいと考えられます。個別事情や臨時改定事由の有無によって判断が変わる可能性があるため、税理士または所轄税務署へ確認してください。
毎年提出する必要がありますか?
職務執行期間ごとの定めや、その都度の決議内容に応じて届出の要否を判断します。前年の届出が自動的に翌年も有効になるとは考えず、事業年度ごとに決議内容と提出期限を確認しましょう。
赤字でも届出どおり支払うべきですか?
業績悪化を理由に減額や不支給とすると、損金算入の要件を満たさなくなる可能性があります。事前確定届出給与を決める前に、保守的な利益予測を行い、賞与支給後も資金繰りに無理がない金額を設定することが重要です。
提出前に税理士へ相談した方がよいケースは?
- 合同会社で職務執行期間が明確でない場合
- 会社設立後に役員が就任した場合
- 複数回または事業年度をまたいで支給する場合
- 届出後に支給額の変更や不支給を検討している場合
重要なのは「具体的な決議」「期限内の届出」「届出どおりの支給」の3点です。届出書を提出しただけで損金算入が確定するわけではなく、決議内容と実際の支給状況を一致させる必要があります。
設立初年度は、事前確定届出給与を他の税務・社会保険手続と併せて期限管理しましょう。個別判断が必要な場合は税理士や所轄税務署へ確認し、決議手続に迷う場合は司法書士・行政書士などの専門家にも相談してください。
よくある質問
Q. 新設法人の事前確定届出給与はいつまでに提出しますか?
設立時に開始する役員の職務について定めた場合は、原則として設立日から2か月を経過する日が期限です。設立後に新たな役員が就任した場合は同じ期限が適用されるとは限らないため、税理士などへ確認してください。
Q. 事前確定届出給与の支給日や金額を変更するとどうなりますか?
届出額より増額または減額した場合、原則として実際の支給額全額が損金不算入となります。支給日のずれでも要件を満たさない可能性があるため、変更前に税理士へ相談することをおすすめします。
Q. 事前確定届出給与の届出にはどの書類が必要ですか?
金銭で支給する場合は、主に「事前確定届出給与に関する届出書」と付表1「事前確定届出給与等の状況(金銭交付用)」を用意します。臨時改定事由がある場合などは、決議内容や改定事由を確認できる資料も必要に応じて準備します。
Q. 役員賞与を年2回支給する場合、一部だけ金額が違っても損金にできますか?
同一の職務執行期間に複数回支給する場合は、原則としてすべての支給が定めどおりかで判定されます。一部の支給額が届出と異なると、同じ職務執行期間に係る実際の支給額が損金不算入となる可能性があるため、支給前に税理士へ確認してください。
Q. 事前確定届出給与はe-Taxで提出できますか?
届出書は、納税地の所轄税務署長へe-Taxまたは書面で提出できます。提出後は、書面の控えまたはe-Taxの受信通知を保存してください。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

