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取引先への税務調査で芋づる式に不正が発覚?無申告はバレる?

読了目安時間:約 6分
「取引先に税務調査が入って、関係先も芋づる式に調査された」という話を耳にしたことはありませんか?税務調査では、申告内容が正しいものであるかを確認するために、契約書や請求書、領収書、納品書など、売上や経費に関連する書類を細かくチェックします。税務調査の対象となる法人や個人事業主の帳簿や書類をチェックするだけでは、正しく申告が行われていたかどうか判断できない場合もあります。その際には、取引先に対しても調査が行われ、芋づる式に不正が発覚する場合があるのです。
今回は、税務調査で芋づる式に不正が発覚する理由や税務調査で無申告が発覚した場合のリスクについてご説明します。
目次
税務調査が芋づる式に行われる背景
税務調査が芋づる式に行われるというのは、どういうことなのでしょうか。
税務調査における芋づる式とは
芋掘りをしたことがありますか?芋は、一本のつるにたくさんの芋がなるため、つるをたどると、次々と芋が見つかります。同じように、一つのことから次々に関連した出来事が発覚することを芋づる式と表現します。
税務調査に当てはめると、一つの法人や個人事業主に税務調査が入ったことで、関連する取引先にも調査が及び、次々に不正が見つかることがあります。このような場合「芋づる式に税務調査が実施された」、「芋づる式に不正が発覚した」ということができるでしょう。
芋づる式に税務調査が実施される理由
税務調査とは、納税の義務がある納税者が正しく申告し、正しい額の納税を行っているかを調べる調査です。事業を営んでいる場合、納税額は所得額によって変わりますが、所得額は売上から経費を差し引くことで算出します。そのため、申告内容が正しいものであるかをチェックするためには、売上の金額が正しいものであるか、売上がすべて計上されているか、経費を過剰に計上していないかを確認する必要があるのです。
売上が発生する場合、必ず商品やサービスを提供した相手、つまり取引相手が存在するはずです。税務調査の対象となった納税者のもとに、申告された売上額を証明する十分な書類や入金の履歴などが残っていない場合、取引相手を調査し、取引内容をチェックします。この調査を反面調査といいます。
反面調査の目的は、税務調査の対象となっている納税者の申告内容を確認することです。しかし、反面調査を実施すると、取引先にも不審な状況が発覚し、本格的な調査が実施され、芋づる式に不正が発覚するケースがあります。
税務調査で芋づる式に無申告が発覚する理由
税務調査が実施されることで、芋づる式に無申告が発覚するケースも少なくありません。税務調査を実施した場合、売上と同様に、経費として計上されている支出もチェックの対象となります。企業や個人事業主が、企業や個人事業主に対して何らかの報酬や料金を支払った場合、1年間に支払った報酬や料金の額と支払った相手の情報を税務署に報告する義務があります。この報告書類を「支払い調書」といいます。
支払い調書には、支払いを受ける法人や個人事業主の法人番号やマイナンバー、商号、氏名、住所、報酬や料金の区分、支払った金額、そして源泉徴収税額が記載されます。支払い調書をたどっていくと、確定申告が必要であるにもかかわらず、確定申告をしていない無申告状態の納税者にたどり着きます。無申告状態が疑われれば、当然、税務調査が実施されることになるでしょう。
芋づる式の税務調査以外にも無申告がバレる理由がある
芋づる式の税務調査によって、無申告状態が発覚するケースが少なくありません。所得がないと偽り、確定申告をしていない場合でも、支払い調書の内容を確認すれば、所得を受け取っていたことがバレるのです。しかし、無申告は芋づる式の税務調査だけでバレるわけではなく、その他の理由によってもバレる可能性があります。
税務調査にかかわらず支払い調書はチェックされる可能性がある
支払い調書の提出は義務であり、支払い調書を提出しない場合は罰則が科せられる恐れもあります。そのため、取引先は、報酬や料金を支払っている相手が無申告状態であるかにかかわらず、当然の義務として支払い調書を提出します。
税務署に提出される支払い調書がチェックされるのは、税務調査の対象になったときだけではありません。企業や個人事業主が確定申告書を提出した際、税務署では申告内容をチェックします。この際、支払い調書と合わせて確認を行うケースもあります。そのため、取引先が税務調査の対象になった場合だけでなく、支払い調書の内容チェックから芋づる式に無申告が発覚するケースもあるのです。
銀行口座のお金の動きがチェックされる
税務署は、無申告の疑いがある納税者や不正に税金を逃れようとしている疑いがある納税者が見つかった場合、金融機関に依頼し、納税者の預金口座の動きをチェックすることが可能です。銀行振込による取引は、すべて取引内容として記録されます。そのため、確定申告をしていないにもかかわらず、入金の履歴が確認された場合、無申告状態であることがバレてしまいます。
特に、近年ではデジタル化が進み、銀行口座のチェックや税務署とのやり取りもオンライン上で進められるようになりました。そのため、無申告の疑いがある場合などは、より迅速に銀行口座の動きをチェックできるようになっています。
不動産を購入した際に無申告がバレる
一戸建てを購入した場合やマンションを購入した場合などには、大きなお金が動きます。税務署では、不動産を取得した際に、購入資金をどのように準備したのか、資金の出どころをチェックするケースがあります。
親などから贈与を受けて不動産を取得した場合、贈与税の支払いが必要になります。しかし、贈与を受けても、贈与税の申告をしていないケースは少なくありません。そのため、贈与税の申告漏れがないか、税務署では不動産取得時の資金の出どころを詳しくチェックする場合があるのです。
贈与を受けていない場合でも、納税が行われていない場合、高額な不動産を取得する資金をどのように用意したのか不審に思われるでしょう。その結果、税務調査が実施され、無申告の状態が発覚するケースは少なくありません。
第三者からの密告で無申告がバレるケースもある
国税庁では、ホームページ内でも無申告をはじめ、不正に税金を逃れようとしている納税者に関する情報の提供を呼び掛けています。「売上や経費を実際とは異なる処理をして不正に納税額を低く抑えている」、「事業が繁盛しているにもかかわらず税の申告をする必要はないなどと公言している」、「他人名義での取引や他人名義の口座を利用している」など、具体的な事例も記載されています。サイト内には情報提供フォームも用意されており、情報提供者の個人情報は秘匿することが明記されているうえ、匿名でも情報提供ができるような配慮がなされています。また、電話や郵送、面接での情報提供も受け付けている旨が記載されています。
実は、第三者からの密告で無申告がバレるケースは少なくありません。例えば、同業者同士が集まったときに、話題が税金に及ぶケースもあるでしょう。その際、申告をしていないことを匂わせれば、当然、正しく申告している納税者は不満を抱くはずです。また、友人など、近しい関係にある人が無申告を疑うケースもあります。
所得を得ているにもかかわらず、確定申告をせず、納税をしていない行為は、正しく納税をしている人に大きな不満や不公平感を抱かせる行為です。そのため、第三者からの情報提供をもとに税務調査が実施され、無申告が発覚するケースは思っている以上に多くなっています。
国税庁は無申告者への税務調査を強化している
国税庁では、次のように無申告者に対する税務調査を強化する姿勢を示しています。
「無申告は、申告納税制度の下で自発的に適正な納税をしている納税者に強い不公平感をもたらすこととなるため、的確かつ厳格に対応していく必要があります。こうした無申告者に対しては、更なる資料情報の収集及び活⽤を図るなどして、実地調査のみならず、簡易な接触も活⽤し積極的に調査を実施しています」
令和5事務年度では、所得税の無申告者に対する税務調査の実地件数は5,274件、消費税の無申告者に対する税務調査の実地件数は7,827件にも上っています。
無申告がバレた場合のリスク
芋づる式の税務調査にかかわらず、無申告がバレた場合には次のようなリスクが生じます。
過去5年に遡って税務調査が実施される
一般的な税務調査では、過去3年分の申告内容について調査が行われます。3年分の調査を行い、何かしらミスや不正が発覚した場合には、過去5年分にまで遡って調査をします。
しかし、無申告状態の場合は、必ず過去5年分を遡って税務調査が実施されることとなります。つまり、税務調査では前年分の所得の状況だけを調べられるわけではないのです。無申告者の場合には少なくとも過去5年分の所得状況を調べられることになるため、税務調査によって発覚する納税逃れの額は、5年分の額になるというわけです。
無申告加算税が課せられる
確定申告が必要であったにもかかわらず、確定申告をしていなかった場合には、納めていなかった分の税金の納税を求められるだけでなく、ペナルティとして無申告加算税の納税も求められます。
無申告加算税の税率は、税額が50万円以下の部分については15%、税額が50万円を超え300万円以下の部分については20%、300万円を超える部分については30%となっています。
前述のように、無申告者に対する税務調査では過去5年分の所得が調べられます。例えば、税務調査によって、5年間で納めるべき所得税の額が1,000万円に上ったと仮定します。
この場合を例に、無申告加算税の税率を計算すると以下のようになります。
・50万円までの部分
50万円×15%=7万5,000円
・50万円超300万円以下の部分
250万円×20%=50万円
・300万円超の部分
700万円×30%=210万円
・合計
7万5,000円+50万円+210万円=267万5,000円
この例では、正しく確定申告を行い、納税していた場合の税負担は1,000万円であったところ、無申告状態であったために267万5,000円も多く納税をしなければならなくなるのです。さらに、後述する延滞税の納税も求められるため、追徴課税額はより大きな金額となります。
延滞税が課せられる
無申告加算税は、確定申告をしなかったことに対するペナルティですが、延滞税は納税が遅れたことに対する利息的な性格をもつ付帯税です。令和4年1月1日から令和7年12月31日までの延滞税の税率は、以下のように定められています。
・納期限の翌日から2ヶ月を経過する日まで 年2.4%
・納期限の翌日から2ヶ月を経過して以降 年8.7%
延滞税は、納税が完了するまで1日単位で課され続けます。5年間無申告であった場合、課される延滞税の額も高額になるでしょう。
重加算税が課せられる
確定申告をする必要があることを分かっていながら確定申告をせず、多額の所得を隠蔽したり、所得がないように装っていたりした場合などは、無申告加算税に代えてより税率の重い重加算税が課されます。無申告加算税に代えて重加算税が適用される場合、その税率は最大で40%になります。
先ほどの例のように1,000万円の納税が不足していた場合、重加算税が課されると納税額は1,400万円に膨れ上がります。さらに、延滞税の納税も求められるため、より高額な税負担が必要になるのです。
脱税の罪で起訴される可能性もある
納税の必要性を理解していたにもかかわらず、仮装・隠蔽などの悪質な行為が見られ、多額の税逃れを行っていた場合、重加算税が課されるだけでなく、脱税の罪で起訴される恐れもあります。裁判によって脱税の罪が認められた場合、重加算税や延滞税の支払いといった行政罰だけでなく、刑事罰も科せられる可能性があるのです。脱税の場合、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科せられます。
まとめ
一つの事業所や一人の個人事業主を対象に実施された税務調査から、芋づる式に調査対象が広がり、次々に不正や無申告状態が発覚するケースがあります。それは、税務調査を実施した場合、申告内容の真偽を確かめるために取引先にまで調査を実施するケースがあるからです。また、取引先が税務署に提出した支払い調書をきっかけとし、無申告状態が発覚するケースも少なくありません。
税務調査によって無申告状態であることがバレると、多額の追徴課税がなされる恐れがあるだけでなく、脱税の罪に問われる可能性もあります。税務署はさまざまなルートで情報収集を行っています。無申告状態であれば、芋づる式の税務調査で発覚する前に、税理士に相談し、自主的に期限後申告を行い、少しでも追徴税額の負担を軽減することをおすすめします。
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この記事の監修者

税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
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