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日本国民には納税の義務があります。税金は、年金や医療などの社会保障や福祉、水道・道路などの社会的資本の整備、教育、警察、防衛などの公的サービスを運営する費用に充てられるお金です。税金にはさまざまな種類があり、税金は国税と地方税の二種類に区分できることをご存じでしょうか。また、税金を納めなければならない人が不正に税金逃れをする行為を脱税といいます。脱税の疑いがもたれた場合、国税局査察部による調査が行われます。
では、国税にはどのようなものがあり、脱税の疑いで国税局に告発された場合はどのようなリスクがあるのでしょうか。今回は、国税の種類や脱税のリスク、脱税がバレる理由などについてご説明します。
目次
税金にはいくつかの種類があり、それぞれ国に納める国税と地方自治体に納める地方税に分けられます。
国税に該当する税金には次のようなものがあります。
・所得税
・法人税
・地方法人税
・特別法人事業税
・復興特別所得税
・森林環境税
・相続税
・贈与税
・登録免許税
・印紙税
・消費税
・酒税
・たばこ税
・たばこ特別税
・揮発油税
・地方揮発油税
・石油ガス税
・航空機燃料税
・石油石炭税
・電源開発促進税
・自動車重量税
・国際観光旅客税
・関税
・とん税
・特別とん税
・住民税
・事業税
・不動産取得税
・固定資産税
・特別土地保有税
・法定外普通税
・事業所税
・都市計画税
・水利地益税
・共同施設税
・宅地開発税
・国民健康保険税
・法定外目的税
・地方消費税
・地方たばこ税
・ゴルフ場利用税
・軽油引取税
・自動車税(環境性能割・種別割)
・軽自動車税(環境性能割・種別割)
・鉱区税
・狩猟税
・鉱産税
・入湯税
納める義務がある税金を意図的に納めなかったり、不正に納税額を少なく抑えたりする行為を脱税といいます。
脱税に似た行為に所得隠しや申告漏れなどがありますが、申告漏れとは、意図せず、ミスによって申告額が少なくなったケースや確定申告の必要性を知らなかったために申告をしなかった例などが該当します。
一方、確定申告の必要性を理解しながら、意図的に所得を隠したり、確定申告をしないケースが所得隠しです。所得隠しのうち、特に悪質な場合や金額が大きいケースを脱税とみなすことが多くなっています。
脱税は犯罪に該当し、絶対に行ってはいけない行為です。国税庁が公表している「令和6年度査察の概要」によると、脱税が多い税目は法人税、所得税、消費税、相続税、源泉所得税となっています。
脱税が行われる場合、次のようなパターンがよく見られます。
所得税や法人税は、売上から経費を差し引いた所得額に対して課せられる国税です。所得額が低くなれば、課せられる税金も低くなるため、脱税行為としては売上を本来よりも低く装うケースがよく見られます。
銀行振り込みなどを介する取引の場合は、一部の取引を別の銀行口座への振り込みとし、その分を売上として計上しない例もあります。一部の売上を除外することで総所得額を減らし、納税の負担を軽減しようとする脱税のパターンです。
経費の水増しも脱税のよくある手口です。所得額を圧縮する方法としては、売上を低く装うか、経費を過剰に計上するかの2つの方法が考えられます。プライベートな支出を経費として計上したり、実際には取引が発生していない事例の架空の領収書を作成し、経費を水増しするケースなども、よく用いられる脱税の手口です。
また、国税庁が発表している令和6年度査察の概要では、令和6年度に告発の多かった業種として建設業と不動産業、人材派遣業を挙げています。建設業や不動産業などでは、複数の企業が共謀し、架空の請求書や本来の額よりも多く記載した請求書を作成させ、経費を水増し計上することで納税額を低く抑える脱税の手口が多く確認されています。
二重帳簿とは帳簿を2つ作る行為です。正しい帳簿とは別に、脱税を目的に所得額を小さく装った帳簿を作成し、その帳簿をもとに確定申告をするケースが見られます。二重帳簿は、当然、売上や経費などの仮装・隠蔽に該当する行為です。二重帳簿を作成していたことが発覚すれば、脱税とみなされます。
脱税が疑われる場合、国税局査察部による調査が行われます。また、脱税の疑いで国税局査察部による調査を受けた場合、60~70%の割合で検察庁に告発されています。
国税局が査察調査から脱税の疑いで調査を開始してから、脱税の罪が確定するまでの流れをご説明します。
一般的な税務調査は、税務署の調査官によって実施されます。しかし、多額の脱税が疑われる事案や悪質な隠蔽行為などが見られる事案の場合にはマルサと呼ばれる国税局査察部が調査を担当します。国税局査察部では、取引先や銀行、納税者本人の行動、家族の行動、SNS、などから調査を始め、怪しい動きはないか、脱税を裏付けるような行為が見られないか、内偵調査を行い、脱税の疑いが強まった時点で査察調査を実施するのです。
税務署による任意調査の場合、原則として、調査日時や調査対象税目、調査対象期間などを伝える事前通知が行われます。そのため、突然、オフィスや店舗などに調査官が訪れ、調査を実施することはありません。しかし、国税局査察部が実施する査察調査は強制力を持つ調査です。そのため、国税局査察部の査察調査は事前連絡がなされることなく、突然開始されることとなります。
査察調査は、裁判官が発布する令状をもとに調査を実施するものです。納税者の立場からすると、突如、国税局査察部の査察官が訪れ、脱税に関連する帳簿や書類、電子データなどが押収されます。また、査察官から売上の隠蔽や経費の水増しなどに関する詳細な質問がなされ、取り調べの内容に応じた調書が作成されます。
国税局の査察調査の結果、脱税の疑いが強いと判断された場合には、検察庁に告発することとなります。国税局から告発を受け取った検察庁では、刑事事件として脱税が疑われる納税者に対する調査を行います。また、検察官は関係者からも事情聴取を行い、調書を作成します。
取り調べの結果によって起訴をすべきか、起訴を見送るべきかの判断が下されますが、起訴されると地方裁判所において、裁判が実施されることとなります。
裁判では、通常の刑事事件と同様に検察官による論告や求刑、弁護人による意見陳述などが行われ、判決が言い渡されます。脱税事件の一審判決の有罪率は100%です。したがって、脱税をし、裁判にまで持ち込まれることになったら、基本的には有罪になると考えた方がよいでしょう。
所得税法違反、法人税法違反、消費税法違反など、脱税の税目によって罪名は異なりますが、脱税の有罪判決を受けた時には10年以下の懲役、もしくは1,000万円以下の罰金に科されます。しかしながら、状況に応じて、懲役と罰金の両方が科されるケースもあります。また、脱税額が1,000万円を超える場合は、罰金の額も1,000万円以上になる可能性がある点も覚えておかなければなりません。
脱税事件として国税局に告発された場合、逮捕されるのではないかと思われるケースもあるでしょう。脱税の疑いがかけられた時には逮捕にいたるのでしょうか。
実は、国税局に告発され、検察による捜査が始まると逮捕される可能性があります。検察が捜査を行う際、納税者が逃亡する恐れがある場合や罪証隠滅の恐れがある場合は逮捕・勾留が認められているのです。
例えば、検察の捜査に非協力的な場合などは、逃亡の恐れがあると判断され、逮捕になる可能性が高くなるでしょう。また、逮捕・勾留をしないことで関係者と口裏合わせをする恐れがある場合なども、証拠となる品を隠蔽したり廃棄する恐れがあるため、逮捕される可能性が高くなります。
脱税の疑いで逮捕されると、拘置所に身柄を拘束されます。その間、検察官は裁判所に勾留請求を行い、裁判所によって勾留が認められると10日間の勾留がなされますが、この間に捜査が終了しない場合は、勾留期間を延長される場合もあります。この勾留期間中に、起訴や不起訴が確定することになるのです。
脱税はなぜバレるのでしょうか。脱税がバレるのは、主に次のような理由からです。
申告内容をチェックした際に、同業他社に比べて経費の割合が異常に大きい場合や一年前の申告内容に比べて急激に売上が低下している場合などは、不審に思われるケースが多いでしょう。特に規模の大きな企業や高額な納税を行っている人などは、申告内容をもとに細かいチェックがなされ、疑わしい場合に調査が実施され、脱税が発覚します。
以前に法人の関係者だった役員や従業員などから、脱税行為についてタレコミがなされるケースも少なくありません。特に、経理や財務に関する情報を把握している人材などは、良心の呵責から脱税の疑いがあることを税務署に密告するケースがあるのです。
そのほか、個人の脱税については、納税者と親しい特殊関係者からタレコミされるケースも少なくありません。
SNSが隆盛の今、多くの人がアカウントを開設し、自身の生活の様子をアップしています。ブランド物を揃えたり、タワーマンションの最上階で暮らす様子などがアップされている場合、なぜ、そのような生活ができるのか、資金をどこから得ているのかという疑念がわくでしょう。
税務署ではSNSもチェックしています。SNSの情報から個人を特定し、確定申告の内容を確認した際、多額の脱税が疑われるような場合は、国税局の査察部門に案件が引き継がれるのです。
ここまで国税局査察部の脱税調査についてご説明してきましたが、税務署の調査官が実施する税務調査と国税局査察部が行う査察調査ではどのような違いがあるか疑問に思った方もいらっしゃるかもしれません。
税務調査と国税局査察部による査察調査の違いについてご説明します。
税務署が実施する税務調査は国税通則法に規定されている調査ですが、査察調査は、元々国税犯則取締法に規定されていた調査法です。平成29年の税制改正によって国税犯則取締法は廃止され、平成30年4月から、国税通則法に編入されました。
また、国税局が実施する調査は、税務署が実施する任意調査とは異なり、納税調査の意思を確認することなく強制的に実施する調査です。強制的に調査を行い、資料などを差し押さえするためには、事前に裁判所の審査を経た令状が必要になります。そのため、国税局査察部が実施する調査では、必ず裁判所の令状をもとに実施されます。
事前通知のある税務調査の場合、原則として、税務署から事前通知が行われるため、調査が行われる前に税理士などに相談しながら対策を練ることが可能です。しかし、国税局査察部による調査は事前通知なく、突然実施されるため、事前に対策をすることはできません。
国税局では、大規模な法人の調査を担当します。基本的には、資本金1億円以上の法人が国税局の調査担当となりますが、その中でも、国税局の査察部は、悪質かつ多額な脱税が疑われる事案を担当する部署です。
したがって、税務署ではなく、国税局査察部が調査を担当するとなると、大規模な脱税を疑われている事案だと考えて間違いありません。
多額の脱税が疑われる事案や悪質な所得隠しが疑われる事案は、税務署ではなく、国税局査察部が調査を行うこととなります。国税局査察部が実施する査察調査は、裁判所の令状をもとに行われる強制調査であり、納税者は調査を拒否することはできません。また、国税局査察部の査察調査を受けた場合は、6割から7割の確率で検察に告発がなされ、検察の捜査や取り調べも受けることになり、地方裁判所に脱税の罪で起訴される可能性が高くなります。その際、逃亡や証拠隠滅の恐れがある場合には逮捕・勾留されるケースもあるのです。
脱税は、犯罪であり、脱税の罪が確定すれば、刑事罰が下され、罰金だけでなく、懲役が科される恐れもあります。日頃から確定申告は正しく行い、売上の隠蔽や経費の水増しなどは決して行わないようにしましょう。また、正しく確定申告をしていない自覚がある場合には税理士にも相談しながら、国税局査察部の調査が入る前の自主的な修正申告をおすすめします。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
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