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外注費として支払う報酬や短期アルバイトへの給料を現金手渡しで渡すケースがあるかもしれません。現金手渡しで金銭のやり取りをしている場合、領収書を受け取っていますか?銀行振込で外注費や給料を支払う場合には、銀行に振り込んだ記録が残るため、領収書なしでも問題になることはありません。しかし、現金手渡しで領収書がない場合、お金のやり取りがあったことを示す証拠を残せないため、税務調査が入ったときに調査官から指摘を受ける可能性があります。
今回は、外注費や給料などを現金手渡しで支払っている場合に領収書がないことがどのような影響を及ぼすのかについてご説明します。
目次
今は、現金手渡しでお金のやり取りをするケースは少なくなっています。しかしながら、業種によっては現金手渡しで報酬や給料を支払う習慣が根強く残っている場合もあるようです。では、現金手渡しはどのようなシーンで見られるのでしょうか。
現金手渡しでお金の受け渡しが発生する主なシーンをご紹介します。
個人事業主として建設業を営む方の中には、従業員を雇用せずに、一人で仕事を受けているいわゆる一人親方の方がいらっしゃいます。一人親方は、会社などに所属せず、個人として施主と直接請負契約を結び、仕事を行う形態です。大工や電気工事、内装仕上げ工事、左官工事、塗装工事などでは一人親方として働く方が多く見られます。
一人親方は、組織に所属しないため、自分の基準で仕事を選ぶことができ、自分の技術を生かしてお金を稼ぐことができます。企業に所属する場合よりも自由な活動ができるとともに、技術力があれば、より高い報酬を得られる可能性があるなど、さまざまなメリットがあります。
しかし、一人親方として仕事を請け負ううえで、自分一人だけでは対応できない業務に出会う可能性もあります。その場合、請け負った業務の一部を行える人を集めなければなりません。しかし、建設業は深刻な人出不足に陥っており、なかなか作業を任せられる職人を探せないケースもあります。そこで、企業のように翌月などに報酬を振り込むという形ではなく、作業が完了したら、その場で報酬を現金手渡しで支払うという形をアピールして、人を募集するケースがあるのです。報酬をすぐに受け取れる現金手渡しの支払い方法に魅力を感じる人もいます。このような事情も関係し、建設業を営む一人親方の中には、外注費を現金手渡しで支払い、職人を集めるケースが多いのです。
従業員には、銀行振込で給与を支払っていても、日雇いのアルバイトや短期アルバイトとして働く人には、現金手渡しで給与を支払っているケースも見られます。イベントのときや繁忙シーズンだけ人手が必要な場合は、単発や短期の仕事に対応できるアルバイトの人材を募集するでしょう。
短い期間で多くの人を雇用する場合などは、1日しか働かない人にも銀行口座の情報を聞き出し、後日、振り込みをするとなると膨大な手間がかかります。また、日雇いや短期のアルバイトを希望する人の場合も、仕事が終わったらその場で給与を受け取れる現金手渡しであることを歓迎するケースが少なくありません。したがって、日雇いや短期のアルバイトを雇用する場合も、現金手渡しで支払うケースがよく見られます。
キャバクラやホストクラブ、スナックなどでも、働くキャストに現金手渡しで報酬を支払っているケースが多く見られます。水商売で働く方は、お店と雇用契約を結んでおらず、従業員ではない場合がほとんどです。また、短期間でキャストが入れ替わることも少なくありません。そのため、管理が煩雑になることも関係し、銀行口座への振り込みではなく、現金手渡しで報酬を支払っているケースが多いようです。
Webクリエイターやシステムエンジニアなどとして働く人の中には、フリーランスとして活動している人や空いている時間を使って副業をしている人が少なくありません。Web制作会社やシステム開発会社にWebサイトの制作やシステム開発を依頼することもできますが、個人で活動をしている人に依頼をした方がコストを抑えられる可能性があります。
特に個人事業主として業務を営んでいる人や小規模な事業者などは、フリーランスとして活動している人にWebサイトの制作やアプリの開発などを依頼するケースが見られます。銀行振込にする場合、振込手数料も発生し、振り込みを行う手間もかかります。そのため、納品のタイミングで現金手渡しをするケースもあるようです。副業をしている人の中には、会社にバレることを恐れて銀行振込を避けるケースもあり、発注側ではなく、受注側の要望によって報酬を現金で支払う場合もあると考えられます。
現金手渡しで報酬を支払っている人が相手から領収書をもらっていない場合、税務調査時にリスクが生じる可能性があります。
領収書とは、お金を受け取った側が作成する書類です。企業の場合、金銭を受け取った場合には、領収書を発行するケースが多いでしょう。しかし、現金手渡しで給与や報酬を渡す相手は、企業ではなく、個人です。また、給与や報酬を渡すタイミングは依頼した業務が終わったり、完成したときであり、そのタイミングで相手が領収書を持っているとは限りません。そのため、現金手渡しで給与や報酬を支払ったときには領収書なしで取引を終えるケースが少なくないのです。
現金手渡しで給与や報酬を支払った場合、お金を支払ったという事実や支払った金額を証明する手段がありません。例えば、業務を委託した相手や短期のアルバイトをした相手から、まだ報酬や給与を受け取っていないと主張されたり、支給された金額が足りなかったと言われてしまった場合、実際には支払った場合でも、支払いの証拠を示すことができないのです。
知り合いに頼んでいる場合などは、そのようなトラブルが起こる心配はないでしょう。しかし、ピンポイントで仕事を依頼する相手に、正社員の採用時のように厳しい選考を行うケースは稀です。領収書なしの現金手渡しであることを逆手に取り、悪意を持って、金銭の請求をする人がいないとは言い切れません。そのため、現金手渡しでお金を渡し、領収書を受け取っていない場合、金銭の支払いを巡るトラブルに巻き込まれる可能性があるのです。
領収書なしで現金手渡しをしていた場合のもう一つのリスクは、税務調査で指摘される可能性があることです。事業を営む場合、1年間の売上から必要経費を差し引き、所得額を算出したうえで、所得に応じた税金を納めなければなりません。短期のアルバイトや日雇いのアルバイトを雇用し、給与を支払った場合、支払った給与は人件費として経費に計上が可能です。また、職人やフリーランスのWebデザイナーなどに報酬を支払った場合も、支払った金額は外注費として経費に計上することができます。
しかし、領収書がない場合、短期や日雇いのアルバイト、フリーランスのクリエイターや職人などに、給与や報酬を支払ったという事実を証明することができません。経費を多く計上すれば、売上から差し引ける額が増えるため、課税所得額を圧縮でき、納税額を低く抑えられます。そのため、正しく確定申告をしていない人の中には、経費を水増しし、本来よりも多額の経費を計上して、税金の負担を逃れようとする事例が少なくないのです。したがって、税務調査の際には、調査官は経費の内容とその証憑書類である領収書を細かくチェックしていきます。
現金手渡しで給与や報酬を支払い、領収書を受け取っていない場合、給与や報酬を支払ったという事実を証明することができません。つまり、税務調査時には、支払っていない架空の人件費や外注費を経費に計上しているのではないかと疑われる可能性があるのです。
税務調査時に、領収書なしの人件費や外注費が否認されると、経費としての計上が認められなくなります。実際に支払いをした報酬や給与でも、領収書なしのために、支払いの証拠を示すことができず、架空の経費計上として捉えられてしまうのです。経費としての計上が認められなければ、売上から差し引ける額が減ってしまうので、課税所得額が高くなり、課される税金も高くなります。
しかし、税務調査後に、納付を求められるのは、経費が否認されたことで生じる不足分の税金だけではありません。確定申告の内容が正しくなかったことに対するペナルティとして、過少申告加算税も加算されるのです。また、税金の納付が遅れた分の利息の意味合いを持つ延滞税も課されます。
過少申告加算税の税率は、不足分の税額が期限内申告の税額と50万円のいずれか一方よりも低い場合は10%、期限内申告の税額と50万円のいずれか一方よりも多い場合は15%となります。また、延滞税の税率はその年によって変わりますが、2022年1月1日から12月31日までは年2.4%または年8.7%です。延滞税は、法定納期限の翌日から納付を完了した日まで課される性質を持ち、納期限の翌日から2ヶ月を経過するまでと、2ヶ月を経過した日以降で税率が変わってきます。納税が遅れるほど、延滞税の額は増え、税率も高くなる仕組みです。
現金手渡しは、銀行口座を確認する必要も、振り込み手続きも必要がないため、手軽に支払える方法です。しかしながら、現金手渡しをする場合は銀行振込のように客観的な記録を残すことができません。そのため、現金手渡しのリスクを抑えるためには次のような対策を行うようにしましょう。
現金手渡しで給与や報酬を支払う際には、相手に領収書の発行を依頼すると安心です。領収書には、金銭の授受を行った日付、宛名、金額、但し書き、発行者の氏名、住所、連絡先などを記載してもらうとよいでしょう。
WebクリエイターやSEなどの場合は、簡単に領収書を作成できるはずです。業務を委託する際、納品をし、現金手渡しで報酬を受け取る際には領収書を準備してほしい旨を事前に伝えておくとよいでしょう。しかしながら、日雇いのアルバイトや短期のアルバイトの人、単発の業務を依頼する職人などに領収書を準備してもらうのは難しいケースが多いかもしれません。
本来、領収書は金銭を受け取る側が発行するものです。しかし、単発の仕事などで、相手に領収書の準備を依頼することが難しい場合などは、業務を依頼する事業主が領収書を準備してもよいでしょう。ただし、領収書を偽造するという意味ではなく、領収書に金額を書き、相手に報酬や給与を支払ったときに、発行者の欄に氏名や住所、連絡先、その日の日付などを書いてもらうのです。
領収書は事業主が受け取り、控えを相手にも保管してもらうようにしましょう。領収書があり、本人が住所や名前を記載していれば、後々、報酬や給与の未払いを巡ってトラブルになる心配もありません。また、税務調査時に経費の架空計上を疑われることもないでしょう。
領収書がない場合でも、相手が発行した請求書を保管していたり、支払った金額や日付を記載したメモに相手のサインをもらっていた場合は、支払いの事実を証明できるかもしれません。
給与や報酬を現金手渡しで支払った場合は、領収書を受け取ることが一番ですが、どうしても領収書を受け取れない場合などは、取引の記録を残しておくようにしましょう。
今後、現金手渡しで外注費や給与を支払う可能性がある場合には、できるだけ領収書を受け取るようにすることが大切です。しかし、すでに、現金手渡しで給与や報酬を渡し、領収書を受け取っていないというケースもあるかもしれません。さらに、そのような状況下において税務署から税務調査の通知を受けている場合は、できるだけ早めに税理士に相談することをおすすめします。
税務調査の対応実績を豊富に持つ税理士の場合、現金手渡しで領収書なしのケースにおいて、どのような対応をすればリスクを最小限に抑えることができるのか、適切なアドバイスを受けられるはずです。税務調査の事前通知を受けた際には、信頼できる税理士への相談をおすすめします。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
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