2025.09.20

確定申告を忘れたらさかのぼって申告すべき?やり方や注意点を解説

読了目安時間:約 6分

確定申告は毎年、1月1日から12月31日までの1年間の所得を、翌年の2月16日から3月15日までの間に申告するルールです。しかし、うっかり確定申告を忘れてしまった場合や提出した確定申告の内容が誤っていたことに気が付いた場合などは、過去にさかのぼって申告をすべきなのでしょうか。

今回は、過去の確定申告分についてさかのぼって申告をするべき理由や申告のやり方、さかのぼって申告をする際の注意点などについて解説します。

 

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さかのぼって確定申告をする主なケースとは

過去の分までさかのぼって確定申告をするケースとしては、次の4つのケースが考えられます。

 

確定申告をしていなかった分をさかのぼって申告する

確定申告の期限内に確定申告をしていなかった場合、過去にさかのぼって申告をすることができます。このケースを「期限後申告」と言います。期限後申告を行った場合、過去の年分の所得額に課される税金を納めなければなりません。

 

誤って申告した内容をさかのぼって申告し、修正する

確定申告は行ったものの、申告内容に誤りがあったことに気が付き、さかのぼって申告をし直すことを「修正申告」と言います。所得を本来よりも低い額で申告していた場合や経費の計上漏れが発覚した場合は、確定申告書を提出した後に修正申告を行い、正しく申告をし直します。

この場合、当初申告した所得額よりも修正申告によって所得額が高くなるため、税額が不足します。そのため、修正申告後は不足分の税額を納めなければなりません。

 

納め過ぎた税金の還付を求めてさかのぼって申告する

期限内に確定申告をしたものの、本来よりも多く税額を申告してしまった場合も、納め過ぎた税金の還付を求めて申告することができます。このケースを「更正の請求」と言います。更正の請求は、修正申告とは異なり、納税額が不足していることはないため、更正の請求をしなくてもペナルティが科されることはありません。

 

還付を受けるために過去にさかのぼって申告するケース

確定申告は、税金を納めるためだけでなく、還付を受けるために行うケースもあります。確定申告によって適用できる控除の申告を忘れていた場合、本来よりも高い額の税金を納めている状態となります。その場合には、過去をさかのぼって申告をする還付申告を行うと、本来より多く納税していた税金の還付を受けることが可能です。

 

確定申告はさかのぼって申告すべき?

確定申告をしていない場合や確定申告をしたものの申告内容が正しくなかった場合などは、過去にさかのぼって申告をすべきです。なぜなら、過去の分について正しく確定申告をしていないことで次のようなリスクが生じる恐れがあるからです。

 

確定申告をしていない場合のリスク

申告期限内に確定申告をしていない場合、無申告加算税の納付が課されます。無申告加算税の税率は、納税額が50万円以下の部分については15%、50万円超300万円以下の部分については20%、300万円を超える部分については30%です。さらに、納税が遅くなったことのペナルティとして延滞税の納税も求められます。

確定申告の必要性があるにもかかわらず、確定申告をしていない場合、本来よりも多くの税金を納めなければならなくなるのです。

 

確定申告の内容に誤りがあった場合のリスク

確定申告をしていない場合だけでなく、確定申告の内容に誤りがあり、納税額が不足した場合にもペナルティが科されます。本来よりも低い所得額を申告した場合、課される税金も低くなります。そのため、税金が不足したことのペナルティとして過少申告加算税の納税が求められるのです。

過少申告加算税の税率は、不足分の税額の10%ですが、期限内に申告した税額と50万円のうち、いずれか多い方を超える部分については15%の税率が適用されます。過少申告加算税が課される場合も、合わせて延滞税も課される点に注意が必要です。

 

還付申告や更正の請求をしない場合のリスク

住宅ローン控除や医療費控除など、適用される控除があるにもかかわらず、確定申告をしていなかった場合、ペナルティを科されることはありません。また、本来よりも多い額の納税をしてしまった場合も同様です。

控除の申告や更正の請求をしていなかった場合、納め過ぎた税金が還付されることはありません。そのため、結果として、負担すべき税金よりも多い額を負担した状態となってしまいます。

 

さかのぼって申告をすることのメリット

確定申告をしていない場合や申告内容が正しくなかった場合、さかのぼって申告をすると科されるペナルティが軽減されます。たとえば、確定申告をしていなかった場合に課される無申告加算税は、税務調査の事前通知を受けずに自ら期限後申告を行った場合、5%にまで軽減されます。また、申告内容が誤っていた場合、税務調査の事前通知を受ける前に自ら修正申告を行うと、過少申告加算税が課されません。つまり、さかのぼって申告をすると、課されるペナルティを軽減できるのです。

還付申告をさかのぼってした場合は、そもそもペナルティの対象となりませんが、税金の還付を受けられる点がメリットだと言えるでしょう。

 

確定申告をさかのぼって申告する場合のやり方

さかのぼって確定申告をする場合のやり方について、期限後申告、修正申告、還付申告の順にご説明します。

 

期限後申告のやり方

確定申告をしていない分についてさかのぼって申告をする場合、期限内に確定申告する場合と同様に、確定申告書を作成します。たとえば、国税庁の確定申告書等作成コーナーを使っても過去分の確定申告書の作成が可能です。確定申告書等作成コーナーでは、作成する申告書の年分を選ぶことができるため、さかのぼって申告をしたい年分を選択することで、期限後申告の書類を作成することが可能です。

確定申告書等作成コーナーで作成した確定申告書は、e-Taxを使ってオンラインで提出することができます。また、作成した書類をダウンロードし、プリントアウトして税務署に郵送したり、持ち込んだりすることも可能です。

 

そのほか、確定申告書を手書きで作成し、提出することもできます。税務署では、過去年分の確定申告書も配布しているため、税務署を訪れ、用紙を入手することも可能です。また、国税庁のWebサイトには、過去年分の確定申告書がダウンロードできるようになっています。対象年分の確定申告書をダウンロードし、印刷することで、手書きで申告書を作成することもできます。手書きの確定申告書を作成した場合は、税務署の窓口に直接持参するか郵送して提出するようにしましょう。そのほか、市販の確定申告書作成ソフトを使って、過去の年分の確定申告書を作成することも可能です。

 

修正申告と更正の請求のやり方

修正申告も更正の請求も、確定申告をした内容に誤りがあり、正しく申告をし直す手続きです。修正申告と更正の請求をする場合も、確定申告書等作成コーナーを使い、手続きを進めることができます。確定申告書等作成コーナーにアクセスし、提出した申告書に誤りがあった場合」の箇所にある「新規に更正の請求書・申告書を作成する」を選択します。次に、更正の請求や修正申告を行いたい年分を選択できるため、対象の年分を選び、作成するようにしましょう。

また、税務署や国税庁のWebサイトから対象の年分の書類を入手することも可能です。紙で修正申告や更正の請求を行う場合は、確定申告書等作成コーナーを使う場合と異なり、それぞれ違う用紙を使用しなければなりません。まず、修正申告の場合は確定申告書を使用します。ただし、令和3年分については、令和3年分以降の申告書第五表(修正申告用・別表)を使わなければなりません。また、更正の請求については、更正の請求書を利用します。

修正申告書と更正の請求書についても、提出方法は期限後申告の提出方法と同じく、e-Taxまたは郵送で提出します。

参照:

国税庁「A1-1 申告書・申告書付表と税額計算書等 一覧(申告所得税)」

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/1557_2.htm

 

国税庁「A1-2、H1-1 所得税及び復興特別所得税の更正の請求手続」

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/01.htm

 

還付申告のやり方

さかのぼって還付申告をする場合も、確定申告書等作成コーナーから確定申告書を作成することで手続きができます。期限後申告をする場合と同様に対象の年分を選択し、必要事項を入力して確定申告書を作成し、提出しましょう。また、紙の確定申告書を作成する場合も、期限後申告の手続きと同様です。振込を希望する場合には、確定申告書内にある「還付される税金の受取場所」の欄に本人名義の口座情報を記入しておきましょう。

 

さかのぼって確定申告をする際の注意点

さかのぼって確定申告をする際には、次の点に注意するようにしましょう。

 

さかのぼって申告できる期間は5年

過去にさかのぼって確定申告ができる期間は、5年です。還付申告についても5年分までしかさかのぼることはできず、たとえ、その前から適用できる控除があった場合でも、5年を過ぎて還付申告をすることはできません。また、期限後申告、修正申告、更正の請求においてもさかのぼることができるのは5年分です。

 

更正の請求は必ず受理されるわけではない

さかのぼって申告をするもののうち、税金を納付し過ぎたために、税金の還付を求める更正の請求は必ず受理されるわけではありません。税務署では、更正の請求書を受け取ったら、請求の内容が正しいかどうか詳細なチェックを行います。更正の請求の内容が正しいと判断されなかった場合、税金が還付されないケースもある点を理解しておきましょう。

 

税務調査の通知を受ける前の期限後申告・修正申告が大切

税務調査の通知を受ける前に、自らさかのぼって期限後申告や修正申告をし、不足分の税金を納税した場合、無申告加算税は軽減され、過少申告加算税は加算されません。しかし、税務調査の事前通知を受けてからさかのぼって期限後申告や修正申告をした場合、ペナルティは軽減されるものの、軽減率は自主的な申告よりも低くなります。

税務調査の事前通知を受けてからの期限後申告の場合、無申告加算税の税率は、税額が50万円以下の部分については10%、50万円超300万円以下の部分は15%、300万円超の部分については25%です。事前通知を受ける前に期限後申告をする場合、税額に関わらず一律5%の無申告加算税が課されることに比べると、軽減率は大きく減少することが分かります。

一方、事前通知を受けた後に修正申告をした場合はどうなるのでしょうか。事前通知を受ける前の修正申告では、過少申告加算税は免除されますが、事前通知後になると、5%または10%の過少申告加算税が課されます。

 

事前通知を受ける前と後では、さかのぼって確定申告を行っても、受けられるメリットに差が生じるのです。過去に確定申告をしていない、または誤った内容の申告書を提出したという自覚がある場合には、事前通知を受ける前にできるだけ早く、期限後申告や修正申告をすることが大切です。

また、早めに期限後申告や修正申告を行うことで、延滞税の負担も軽減できます。

 

確定申告は期限内に行うことが最も大切

確定申告は、過去5年までさかのぼって申告することが可能です。確定申告をしていない期間や正しく申告していない期間があると、無申告加算税や過少申告加算税が課されます。さかのぼって期限後申告や修正申告をすることで、無申告加算税や過少申告加算税の負担は軽減されますが、そもそも期限内に確定申告を行っていれば、これらのペナルティを科される心配はありません。

確定申告の時期は毎年2月16日から3月15日までと決まっています。この時期が繁忙シーズンにあたり、十分な準備ができないために確定申告を期限内に行えないという場合は、税理士への相談も検討してみましょう。

 

まとめ

確定申告をしていないことや確定申告の内容が誤っていることに気が付いた場合は、できるだけ早くさかのぼって申告をすべきです。さかのぼって申告をする方法は、期限内の確定申告を行う場合とやり方に大きな違いはありません。確定申告書等作成コーナーは、過去5年にさかのぼって申告ができるよう整備されています。インターネット上で確定申告書を作成し、e-Taxで申告書を送付できれば、手間をかけずに簡単に手続きを済ませることが可能です。

また、長年にわたり確定申告をしてこなかった場合などは、税理士への相談も検討した方が良いかもしれません。税務調査の対象となる前に、できるだけ早く期限後申告や修正申告を済ませるようにしましょう。

 


 

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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

登録者16万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。
国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。
なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。

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