メニュー
読了目安時間:約 6分
仮想通貨取引で利益が出た場合、税金を納めなければなりません。しかしながら、利益額が大きくなればなるほど納めるべき税金の額も高くなります。せっかく得た利益をできるだけ多く手元に残したいと思うのは当然のことです。そのため、何とか税金の負担を抑えられる抜け道はないのかと模索する人もいるのではないでしょうか。
では、実際に税金の負担を抑える抜け道はあるのでしょうか。今回は、仮想通貨取引の税金の仕組みや税金の負担を抑える抜け道などについて解説します。
目次
仮想通貨を保有しているだけでは、利益が発生したことにならないため、税金は課されません。しかし、利益が生じた場合は税金の納付が必要です。
仮想通貨取引によって税金の納付が必要になるのは、以下のようなケースです。
・仮想通貨を売却して現金を受け取った
仮想通貨を売却し、20万円以上の利益が発生した場合、確定申告を行い、納税しなければなりません。
・仮想通貨で商品代金を支払った
仮想通貨を使用して商品代金を支払った場合は、支払いのために仮想通貨を売却したものとみなされます。そのため、商品代金の額から仮想通貨の取得価額を差し引いた額が20万円を超える場合、確定申告と納税が必要です。
・仮想通貨で別の仮想通貨を購入した
仮想通貨で別の仮想通貨を購入した場合も、新たな仮想通貨を購入するために保有していた仮想通貨を売却したとみなされます。したがって、新しく取得した仮想通貨の交換時の時価と保有していた仮想通貨の取得価額との差が20万円を超えている場合、確定申告を行い、納税する必要があります。
・レンディングやステーキングで報酬を受け取った
仮想通貨を売買しない場合でも、レンディングやステーキングで報酬や利息を受け取った場合も、その額が年間20万円を超えれば確定申告と納税が必要です。
仮想通貨で得た利益は、雑所得に分類されます。雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得のいずれにも該当しない所得のことです。
仮想通貨で得た利益のほか、公的年金や原稿、講演料として受け取る所得などが雑所得となります。
雑所得は、総合課税の対象となります。総合課税とは、給与所得やその他の所得と合算した所得の合計額に対して、所得税の税率をかけ、所得税額を算出する課税方式です。
所得税は、以下の表のように、所得額が多くなるほど高い税率が課される累進課税制度が採用されています。そのため、給与所得など、仮想通貨取引以外にも高額な所得を得ている場合は、納付すべき税金が高額に上がる可能性がある点に注意しなければなりません。
<所得税の税率>
参照:国税庁「所得税の税率」
損益通算とは、同じ年に発生した利益と損失を相殺することです。例えば、不動産投資をしている会社員の場合、リフォーム工事などを行うと、空室期間が長くなるうえ、リフォーム費用も発生するため損失が発生するケースがあります。そのような場合、損益通算をし、給与所得から不動産所得で生じた損失を差し引くことが可能です。給与所得から不動産所得の損失を差し引けば、課税所得が圧縮されるため、課される税金を低く抑えることができます。
しかし、損益通算が行える所得は、不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得の4つの所得のみです。雑所得は損益通算の対象とはならないため、会社員が仮想通貨取引において損失を生じても、給与所得と損益通算を行い、税金の負担を抑えるといった抜け道は用意されていません。
仮想通貨取引の利益は雑所得となり、総合課税の対象となるため、課税所得は給与所得などと合わせて計算されます。所得税の税率は、最大45%です。さらに、課税所得に応じて、住民税も課されるため、住民税の負担も考えなければなりません。給与所得の額も大きく、仮想通貨の利益も大きかった場合、納めるべき税金は多額になります。
では、仮想通貨の税金負担を減らす抜け道はあるのでしょうか。
抜け道とは、本道を外れた近道を指す言葉でもありますが、何かから逃れるための手段や方策という意味合いもあります。例えば「法の抜け道」とは、法の網をかいくぐり、道理に反した行いをすること。法律の盲点を突く行為などを指し、良い意味では用いられません。
税金負担の抜け道というと、たとえそれが違法行為ではないとしても、法律を悪用し、不正に税金の負担を抑えるようなイメージを与えてしまいます。
抜け道には、マイナスのイメージがあることから、ここでは税金の負担を抑える抜け道ではなく、合法的に仮想通貨の税金負担を減らす節税対策をご紹介します。
もし、不正な抜け道によって仮想通貨に関連する税金の負担を逃れようとした場合は、無申告加算税や過少申告加算税などのペナルティを課される恐れがあります。無申告加算税や過少申告加算税の納付が求められた場合、本来よりも多くの税金を支払わなければならない点に注意が必要です。
さらに、抜け道と呼ばれる手法が脱税と判断されるような、悪質な手法であった場合は、所得税法違反の疑いで検挙される恐れもあります。裁判で有罪が確定すれば、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、もしくはその両方が科される可能性もあるのです。
何とかして仮想通貨取引にかかる税金の負担を抑えたい場合は、抜け道ではなく、合法的に税負担を軽くする節税対策を行うようにしましょう。
仮想通貨取引の税金の負担を軽減できる可能性がある節税テクニックを5つご紹介します。
仮想通貨を保有しているだけで税金が課されることはありません。税金の負担が発生するのは、利益を確定させたタイミングです。そのため、含み益のある仮想通貨を一気に売却した場合は、大きな利益が発生し、納めるべき税金の額も高額に上ります。
したがって、含み益のある通貨は、1年でまとめて売却するのではなく、複数年に分けて売却すると、納税額を抑えられる可能性があります。
仮想通貨に対して課される雑所得は、他の所得との損益通算を行うことはできません。ただし、複数の仮想通貨を保有している場合、含み損のある仮想通貨を売却することで、他の仮想通貨の売却等による利益を圧縮し、節税につなげることができます。つまり、仮想通貨取引の中で、利益と損失の損益通算を行うと、課される税金の額を低く抑えることができるのです。
したがって、保有している仮想通貨が取得時よりも値上がりし、利益が出ているときにその通貨を売却し、取得時よりも値下がりしている通貨を売却すると、課税所得を低く抑えられます。
所得税は、所得に対して課される税金です。収入から必要経費を差し引いた金額を所得といいます。必要経費の額が大きければ、収入からより多くの額を差し引けるため、課税所得は圧縮され、課される税金も低くなります。
仮想通貨取引のためには、パソコンの購入費用やインターネット回線の通信料などの費用が発生します。仮想通貨取引のためだけに購入したパソコンであれば、購入費用の全額を経費として計上することが可能です。また、インターネットの回線費用についても、仮想通貨取引のためだけにインターネットを使用しているのであれば、回線料金を全額経費として計上できます。
しかし、プライベートにおいてもパソコンやインターネット回線を使用している場合もあるはずです。その場合、パソコンの購入代金やインターネット回線費用を全額経費に計上することはできません。仮想通貨取引とプライベートでパソコンやインターネット回線を兼用しているときには、仮想通貨取引に使用している割合とプライベートの使用割合を算出し、仮想通貨取引に使用している分だけを経費に計上することが可能です。
また、仮想通貨取引に関する書籍を購入したり、セミナーに参加することもあるでしょう。仮想通貨取引に関連する書籍の購入代金やセミナーの参加費用、セミナー開催場所に行くためにかかった交通費などは、経費計上が可能です。
ただし、経費に計上する支出に関しては、領収書など、支払いがあったことや支払金額を証明する書類を保管しておく必要があります。もし、領収書がない場合、架空の支出を経費として計上していると判断される可能性もあるため、領収書は必ず保管しておくようにしましょう。
ふるさと納税は、住民票のある自治体ではなく、任意の自治体に寄附をする行為です。ふるさと納税を行った場合、原則として自己負担額の2,000円を除いた額が控除の対象となります。
ふるさと納税は、税金の支払い額が減るわけではないものの、寄附を行った自治体から返礼品を受け取ることができます。ふるさと納税をしない場合、同じ税額を納税しても返礼品を受け取ることはありません。そのため、直接的な節税ではないものの、お得な納税方法になるといえます。
ただし、ふるさと納税は所得額によって控除できる額の上限が定められている点に注意しなければなりません。上限額を超え、ふるさと納税を行っても、超えた分については控除対象外となり、かえって自己負担額が増えることになります。そのため、ふるさと納税を利用する際にはしっかりと自身の控除上限額を把握しておくことが大切です。
法人化し、法人として仮想通貨取引を行うことが、税金の負担軽減につながる場合があります。個人で仮想通貨取引を行っている場合、仮想通貨取引の利益は総合課税の対象となり、所得税が課されます。前述のように、所得税には累進課税制度が採用されているため、所得額が大きくなるほど課される税率も高くなり、納税額も増える仕組みです。所得税の最高税率は45%にも上ります。さらに、課税所得に応じて住民税や社会保険料の額も変わってくるため、実質的な負担は45%以上になるといえます。
法人化し、法人の事業として仮想通貨取引を行った場合、仮想通貨で得た利益には、所得税ではなく、法人税が課されます。法人税の税率は、原則として23.2%です。また、資本金1億円以下の企業の場合は、年800万円以下の部分について適用される税率は15%となっています。法人税は、所得税のような累進課税制度はないため、課税所得が大きくなっても税率が23.2%を超えることはありません。つまり、法人化し、法人として仮想通貨取引を行うと、税金の負担を大きく軽減できる可能性があるのです。さらに、経費として計上できる費用の幅も広がるため、役員社宅として住居の家賃を経費に計上することもできます。その点でも節税効果を得られるのです。
しかし、法人化するにあたっては、費用と手間がかかるのも事実です。また、法人化した場合、投資家は仮想通貨取引で得た所得をすべて個人の所得として扱うことはできません。会社のお金と個人のお金は区別し、会社から役員報酬という形でお金を受け取ることになります。そして、役員報酬は個人の所得になるため、役員報酬の額に応じた所得税や住民税の支払いは必要です。そのため、仮想通貨取引をしている人が法人化すべきかどうかは慎重に判断しなければなりません。
仮想通貨取引における税金の負担を抑える抜け道ではなく、節税方法をご紹介しました。
節税対策のうち、法人化は、高い節税効果を得られる可能性がある手段です。ただし、得ている所得によっては、個人事業主として仮想通貨取引を続けた方が、かえって負担する金額が少なく抑えられる場合もあります。そのため、法人化すべきかどうか、タイミングに悩む場合には、税理士など、専門家への相談をおすすめします。
税理士法人松本では、仮想通貨取引を行っている方からのご相談も受け付けています。法人化すべきかお悩みの場合はお気軽にお問い合わせください。
-免責事項-
当ブログのコンテンツ・情報について、できる限り正確な情報を提供するように努めておりますが、正確性や安全性を保証するものではありません。内容は記事作成時点の法律に基づいています。当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者16万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
税理士法人松本の強み
30秒で完了かんたん税務調査リスク診断
←前の記事
健康診断の費用は経費にできる?人間ドックの場合はどうなる?
あわせて読みたい記事
税務調査
税務調査は対応次第で結果が大きく変わります!
専門家があなたの税務調査に関する不安を一つ一つ丁寧に解決。初回有料相談は返金保証付きで、どんな小さなご相談も全国から承ります。