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インターネットの普及に伴い、かつては一般的ではなかったクラファン(クラウドファンディング)と呼ばれる資金調達法が一般化してきました。クラファンは、銀行の融資のように返済義務のない資金を調達できる場合もあるなど、利用にはさまざまなメリットがあります。
しかし、クラファンで資金を調達した場合、資金を提供してくれた人と資金を調達した人の間で金銭のやり取りが発生するため、税金の納付義務が生じます。また、利用したクラファンの種類によって課せられる税金も変わってくるため、クラファンを利用して資金調達をする際には、税金や確定申告について十分に確認しておくことが大切です。
今回は、クラファンで資金調達をした場合に発生する税金の納付義務や確定申告の方法などについて解説します。
目次
クラファンに関連する税金について説明する前に、まずはクラファンの仕組みについて確認しておきましょう。
クラファンとは、クラウドファンディングを略した言葉であり、クラウドファンディングは、群衆を表す「クラウド」と資金調達を意味する「ファンディング」を合わせた造語です。クラファンは、クラファンサイトを通じて支援を募り、賛同した不特定多数の支援者から資金を調達する仕組みとなっています。
これまで、資金調達の方法としては、金融機関に融資を申し入れ、借り入れを行うケースが中心でした。金融機関に融資を申し入れるためには、事業計画書などを準備し、審査を受けたうえで審査に通過する必要があります。一方、クラファンでは実現したい思いやアイデアを訴え、支援者からの共感を得ることで、複数の人から資金を集めることができるという特徴があります。事業計画書などを作成する必要もなく、審査もないため、スピーディーに資金を集められる点が魅力となり、クラファンは新たな資金調達手段として人気を集めているのです。
クラファンは、クラウドファンディングサイトにどのような目的で資金を調達したいのか、資金調達者が情報を掲載します。その際、資金調達期間を設定し、期間内で資金調達を試み、資金調達ができた場合には、支援者に対して活動報告やリターンを行います。
クラファンはクラウドファンディングサイトを通じて資金を調達するため、資金調達状況に応じてサイトに手数料を支払わなければなりません。
クラファンの方式には「All or Nothing方式」と「All in」方式の2種類があります。
All or Nothing方式とは、目標金額に達し多場合のみ、プロジェクトが成立し、支援金を受け取るというものです。目標となる資金が集まらなければ計画を実行できないプロジェクトの場合などに適した方式で、プロジェクトが成立した場合に、運営サイトに手数料を支払い、支援金を受け取ります。
一方、All in方式は、目標金額に達するか達しないかにかかわらず、一人からでも支援を受けることができればプロジェクトが成立する方式のことです。All in方式は、少しでも資金を集めたい場合や集まった資金の範囲で計画を調整できるプロジェクトなどを実施する場合に適しています。
クラファンはいくつかの種類に分類することができますが、活用されるケースが多いのは「購入型」、「寄付型」、「投資型」の3つです。それぞれの特徴についてご説明します。
購入型のクラファンとは、資金提供者に対して、商品やサービスの提供をリターンとする形式です。商品やサービスの開発などを目標に資金調達を行う場合に用いられることが多くなります。
寄付型クラファンは、プロジェクトに対し、賛同した人がお金を寄付する形式のものです。商品やサービス、金銭等によるリターンは行われず、資金調達者は活動報告やお礼状などを送付します。
被災地支援など、社会貢献を目的としたプロジェクトの資金調達時に用いられることの多いクラファンのスタイルです。
資産運用をしたい投資家などから資金の提供を受け、リターンとして事業収益からの分配金を提供する形式です。事業性の高いクラファンであり、ある程度、利益が出る見込みがあるプロジェクトに用いられるケースが多く、不動産クラウドファンディングなどが該当します。
また、投資型クラファンには出資や融資という形で資金を集める融資型のほか、株式型、ファンド型などもあります。
クラファンで資金調達をした場合、資金提供者からお金を受け取ることになるため、税金が課税されます。しかし、クラファンの種類によって課される税金が変わってくるため、クラファンによる資金調達を検討する際には、事前に税金についても確認しておくことが大切です。
クラファンの3つの種類ごとに課せられる税金と確定申告の方法についてご説明します・
購入型クラファンの場合、資金提供者から受け取ったお金は、商品やサービスの売買によって生じた金額として扱います。そのため、資金調達者が個人の場合には「所得税」、「住民税」、法人の場合には「法人税」、「法人住民税」などの課税対象となります。
ただし、クラファンで集められた資金を全額受け取れるわけではありません。クラウドファンディングサイトには手数料を支払う必要があります。また、資金提供者には商品やサービス利用権を提供する必要があるため、これらの制作料や配送料なども発生します。クラファンのために支出した費用は経費として計上することが可能です。したがって、クラファンの場合、資金調達額から経費を差し引いた額が、課税対象となる所得額となります。
個人事業主としてクラファンを行った場合には事業所得、個人としてクラファンを行った場合は雑所得として扱い、確定申告を行います。
ただし、購入型クラファンの場合、資金を受け取るタイミングではまだリターンとして商品やサービスを提供していません。そのため、資金を受け取ったタイミングでは前受け金として処理し、商品やサービスのリターンの提供が完了したタイミングで売上として計上する点に注意が必要です。
寄付型クラファンの場合は、購入型クラファンのように商品やサービスなどのリターンを行うことはありません。資金提供者から受け取った資金は、寄付として扱われることになります。
寄付型クラファンの場合、資金の提供者が個人であるか、法人であるかによって課せられる税金が異なります。個人の資金提供者からお金を受け取った場合は、贈与とみなされ、「贈与税」の課税対象となる可能性があります。一方、資金提供者が法人であった場合には、受け取ったお金は一時所得とみなされ、「所得税」の課税対象となります。また、法人が寄付型クラウドファンディングで資金を調達した場合、調達した資金には「法人税」が課されます。
贈与税は、年間110万円を超える贈与を受けた場合に課せられる税金です。したがって、寄付型クラファンで110万円を超える資金を受け取った場合は、贈与税の確定申告をし、税金を納めなければなりません。
贈与税は、調達した資金の額から基礎控除額である110万円を引いた額が課税価格となり、基礎控除後の課税価格によって税率が異なります。
クラファンの場合、他人からの贈与となるため、一般贈与財産用の計算を行います。一般贈与財産用の速算表は次のとおりです。
参照:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
例えば、クラファンで個人の資金提供者から300万円の資金を調達できた場合の贈与税は、次のように計算できます。
(300万円-110万円)×15%-10万円=33万5,000円
つまり、納税すべき贈与税の額は33万5,000円です。
寄付型クラファンで法人から資金提供を受けた分については、一時所得として扱います。一時所得の金額は次の式で算出します。
総収入金額-必要経費-特別控除額(最高50万円)
また、一時所得は、所得金額の1/2に相当する額をその他の所得と合計したうえで、納税額を計算します。クラファンで法人の資金提供者から300万円の資金を調達できた場合、必要経費がなかったと仮定すると、課税対象となる額は次のように計算できます。
(300万円-50万円)÷2=125万5,000円
したがって、この場合は、その他の所得に125万5,000円を加え、納税額を算出することになります。
投資型クラファンの場合、資金調達者はリターンとして分配金を資金提供者に提供します。投資型クラファンで集めた資金は資金を受け取ったタイミングでは、出資金として扱われるため、税金は課せられません。ただし、出資をもとに事業を行い、利益が生じた場合には、個人の場合は「所得税」、法人の場合は「法人税」が課税されます。
また、投資型クラファンでは、資金提供者にも税金が課せられるケースがあります。融資型とファンド型の場合、資金提供者がリターンとして受け取った分配金は雑所得に該当し、「所得税」の課税対象となるのです。ただし、分配金にかかる所得税については、受取時に源泉徴収がなされているため、確定申告をすると税金の還付を受けられる可能性があります。
また、資金提供者が法人の場合は、分配金を受け取った場合に収入として扱わなければなりません。
クラファンで資金調達をした場合、原則として、集めた資金には税金が課税されます。税金の納付額を抑えれば、プロジェクトの実現のために充当できる資金が増えるため、適切な節税対策を実施しましょう。
クラファンの資金調達者ができる節税対策には次のようなものがあります。
個人事業主として資金を集める場合、青色申告を行えば、青色申告特別控除を受けることで最大65万円の控除を受けることが可能です。青色申告を行うためには、青色申告をしたい年の3月15日まで税務署に青色申告承認申請書を提出しなければなりません。白色申告者の人がクラファンで資金調達を検討している場合は、青色申告承認申請書の提出スケジュールも鑑みながら計画的にクラファンを実施するようにしましょう。
所得税や法人税の額は、収入ではなく、収入から必要経費を差し引いた所得に対して課税されます。したがって、経費として扱える支出は漏れなく経費に計上すると課税所得額を抑えられ、節税効果を得られます。クラウドファンディングの場合、次のような費用は経費として計上することが可能です。
・クラウドファンディングサイトの利用手数料
・資金提供者に送付するリターンの配送料や制作費
・インターネットの通信料金
クラウドファンディングのためにかかった費用は原則として経費に計上することが可能ですが、関係のない費用まで経費に計上することはできません。経費は正しく計上することが大切です。
クラウドファンディングによって調達する資金の額を、確定申告が不要な範囲に抑えることも節税対策として有効です。
例えば、所得税の場合は年間95万円以下であれば、確定申告は不要となり、税金の納付義務も発生しません。また、贈与税についても年間110万円以下であれば、課税対象とはなりません。
ただし、所得税の場合はクラウドファンディングも含めて、年間の所得額が95万円以下である必要があります。また、贈与税についてもクラウドファンディング以外の贈与も含め、年間の贈与額が110万円以下でなければならない点に注意が必要です。
クラファンで資金調達を行うケースが増加しています。しかし、クラファンで資金調達をした場合、所得税や法人税などの税金の課税対象となるケースがある場合があります。納税の義務が生じる場合、確定申告をし、税金を納税しなければなりません。
クラファンの資金調達では、利用したクラファンの種類や資金提供者の違いによって課される税金が変わってくる点にも注意が必要です。また、せっかく集めた資金を有効活用するためにも、クラファンで資金調達をした場合には適切な節税対策を実施するようにしましょう。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者16万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
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