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NPO法人は非営利活動を目的とするため、法人税が免除されると誤解されることがあります。しかし、NPO法人にも法人税が課される場合もあるため、必ずしもNPO法人の法人税が免除されるわけではありません。また、NPO法人の場合、みなし寄附金と呼ばれる法人税法上の軽減措置も用意されているなど、特有のルールがあります。そのため、NPO法人を運営していくうえでは、法人税を初めとした税金のルールについて正しく理解しておくことが大切です。
そこで今回は、NPO法人と法人税の関係についてご説明します。
目次
法人税とは、法人の活動によって生じる所得に対して課される税金です。法人の所得金額は益金の額から損金の額を差し引いて算出します。
益金とは商品や製品の販売、サービスの提供、土地や建物の売却などによって得られた収入のことです。一方、損金とは、売上原価や販売費、人件費、社会保険料などの費用や損失を指します。
法人税の納税義務者には株式会社等の一般企業のほか、医療法人、公益法人(公益社団法人等)、人格のない社団等、協同組合などが含まれます。NPO法人は法人税法上、扱いの対象となるため、一定の場合には法人税の申告・納税義務が生じます。
NPO法人も法人税の納税が必要です。しかし、公益法人等に区分される法人については、すべての事業所得に対して法人税が課されるわけではなく、収益事業から生じた所得に対してのみ課税がなされます。
つまり、NPO法人は、公益性の高い事業を行っていることから、収益事業以外の所得については法人税が課税されないのです。
法人税法上の収益事業とは、法人税法施行令第5条に列挙されている34の事業です。
1.物品販売業
2.不動産販売業
3.金銭貸付業
4.物品貸付業
5.不動産貸付業
6.製造業
7.通信業
8.運送業
9.倉庫業
10.請負業
11.印刷業
12.出版業
13.写真業
14.席貸業
15.旅館業
16.料理店業・その他の飲食店業
17.周旋業
18.代理業
19.仲立業
20.問屋業
21.鉱業
22.土石採取業
23.浴場業
24.理容業
25.美容業
26.興行業
27.遊技所業
28.遊覧所業
29.医療保健業
30.技芸教授事業
31.駐車場業
32.信用保証業
33.無体財産権の提供などを行う事業
34.労働者派遣業
ただし、以上の34業種に含まれる事業であっても収益事業としては扱われないものもあります。それは、身体障がい者及び生活保護者等が事業に従事する者の総数の2分の1以上を占め、かつ、その事業がこれらの者の生活の保護に寄与している場合です。
身体障がい者及び生活保護者等とは、具体的に以下の要件に該当する人のことです。
・身体障害者福祉法に規定されている身体障がい者にあたる
・生活保護法によって生活保護を受けている
・児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センターなどから知的障がい者と判定されている
・精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている
・年齢が65歳以上である
・母子家庭の母である
NPO法人の場合、法人税は収益事業で得られた所得のみに課されるため、行っている事業が収益事業に該当するのか、適切に判断することが重要になります。万が一、収益事業を収益事業とみなさず、法人税の納税をしなかった場合、法人税の申告漏れとして税務署から指摘を受ける恐れもあります。反対に、収益事業に該当していないにもかかわらず、収益事業として扱うと、本来は負担する必要のない法人税まで納税することとなり、納税負担が大きくなります。
法人税法上の収益事業に該当するかどうかは、次のポイントで判定を行うようになります。
・34業種に含まれているか
・継続性があるか
・事業所を設けて行われているか
まず、34業種に該当しない事業、あるいは対価を受け取っていない事業は収益事業に該当しません。
次に、34業種に含まれる業種であっても、継続性がない場合には収益事業として扱う必要はありません。継続性とは、年間を通じて事業を行っていることだけでなく、特定の期間継続して事業を行うケースや反復して行う事業なども含まれます。
また、事業所を設けて事業を行っているかという点も収益事業を判定するうえで重要なポイントです。店舗を設けて物品の販売を行っている場合、事業所を設けているために収益事業に該当しますが、テントなどの移動可能なものであっても、事業所とみなされる点に注意が必要です。
NPO法人は、特定非営利活動を行うために設立された法人です。非営利活動を目的とした法人ですが、非営利活動を行うためには資金も必要となります。そのため、NPO法人でも収益事業を行うことが認められています。
ただし、NPO法人が収益事業を行うことは可能ですが、収益の使途は限定される点に特徴があります。株式会社の場合、事業によって得られた収益は、株主に配当金という形で分配されます。しかし、NPO法人の場合は、収益事業で得られた収益を構成員に分配することはできません。得られた収益は、定款で定める特定非営利活動に充てなければならないのです。
また、NPO法人の場合、収益事業は、特定非営利活動に係る事業に支障のない範囲で行わなければなりません。
NPO法人が収益事業を開始する際には「収益事業開始届出書」を提出しなければなりません。提出期限は、収益事業を開始した日から2ヶ月以内です。提出先は、事業所を管轄する税務署です。また、都道府県税事務所や市町村役場にも異動届出書の提出が必要になります。
また、法人税の課税対象となった場合、法人税の申告を行わなければなりません。その際、青色申告を希望する場合には「青色申告承認申請書」の提出も必要です。
青色申告を行った場合、赤字を最長10年間繰り越すことができ、30万円未満の減価償却資産を取得した年の損金として扱えるといったメリットがあります。収益事業開始届出書を提出する際には青色申告承認申請書も合わせて提出するようにしましょう。
NPO法人に課される法人税の税率は、所得金額によって変わります。年800万円までの部分は15%、年800万円を超える部分については23.2%です。
法人税の申告書は、事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内に提出し、納税を行わなければなりません。ただし、収益事業を行っていない場合は、法人税の申告をする必要はありません。
NPO法人のうち、要件を満たす法人には「みなし寄附金制度」と呼ばれる法人税の優遇処置を受けることができます
NPO法人が収益事業を行った場合、収益事業で得た収益を、特定非営利活動に該当する事業のために使用した場合、その金額を収益事業から特定非営利活動への寄附とみなす制度を「みなし寄附金制度」と言います。
みなし寄附金制度を適用した場合、特定非営利活動に使用した収益は損金として算入することが可能です。みなし寄附金分を損金として扱うことができれば、益金から差し引ける損金の額が大きくなるため、課税所得額が圧縮され、結果として法人税の税額を低く抑えることができます。
みなし寄附金として扱える上限は利益の50%と200万円のいずれか多い額までです。例えば、収益事業による利益が200万円で全額を特定非営利活動に充てたと仮定します。この場合、利益の50%が100万円となり、100万円と200万円を比較すると200万円の方が多い額となるため、200万円-200万円は0円となり、法人税は課税されません。
すべてのNPO法人に対し、みなし寄附金制度の適用が認められているわけではありません。みなし寄附金制度を適用できるのは、所轄庁から認定を受けた認定NPO法人に限定されます。
認定NPO法人制度とは、NPO法人への寄附を促し、NPO法人の活動を支援するために設けられた制度です。認定NPO法人は、NPO法人のうち運営組織や事業活動が適正であり、公益の増進に資する法人につき、一定の基準に適合したものとして所轄庁の認定を受けたNPO法人のことです。
認定NPO法人を受けようとするNPO法人は所轄官庁に認定申請書等を提出し、所轄庁による実態確認などを受けたうえで、認定を受けるようになります。
認定NPO法人の基準は以下のとおりです。
また、以下の欠格事由に該当していないことが要件となります。
1.認定又は特例認定を取り消された法人において、その取消しの原因となった事実があった日以前1年以内に当該法人のその業務を行う理事であった者でその取消しの日から5年を経過しない者
2.拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
3.特定非営利活動促進法(NPO法)、暴力団員不当行為防止法に違反したことにより、もしくは刑法204条等若しくは暴力行為等処罰法の罪を犯したことにより、又は国税若しくは地方税に関する法律に違反したことにより、罰金刑に処せられ、その執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
暴力団又はその構成員等
認定NPO法人となった場合、法人税の軽減につながるみなし寄附金制度を適用できます。しかし、そもそも認定NPO法人制度はNPO法人への寄附を促し、NPO法人の活動を支援するための税制上の優遇措置として設けられた制度です。そのため、NPO法人の法人税の優遇措置も認められますが、認定NPO法人に寄附を行った人に対しても税制上の優遇措置が設けられています。
例えば、個人の寄付者に対しては、寄附金控除(所得控除)または税額控除のいずれかの控除を選択することが可能です。また、法人の寄附者に対しては、一般寄附金の損金算入限度額とは別に、特定公益増進法人に対する寄附金の額と合わせて、特別損金算入限度額の範囲内で、損金算入が認められます。
したがって、認定を受けたNPO法人は、寄附者に対する税制面でのメリットがあるため、寄附を受けやすいといったメリットがあるのです。また、認定を取得することで社会的な信用度も高まるため、NPO法人を運営しているのであれば難易度は高いものの、認定の取得も視野に入れた方が良いかもしれません。
NPO法人の場合、特定非営利活動のみを行っており、収益事業を行っていない場合、法人税の納税義務はありません。法人税法施行令第5条で定められている34の業種を継続的かつ事業場を設けて営んでいる場合、収益事業とみなされ、収益事業で得た所得については法人税の納税義務が生じます。
ただし、認定NPO法人となった場合は、みなし寄附金制度を適用できます。みなし寄附金制度は、収益事業で得た利益を特定非営利活動に充てた場合、その費用は寄附金とみなし、損金に算入することを認める制度です。損金算入によって課税所得が圧縮されれば、法人税の納税額を軽減することができます。
NPO法人の税務は複雑であり、収益事業に該当するかを確実に判断しなければ、申告漏れが生じる恐れがあります。正しく税務処理を行うためにも、NPO法人を運営する場合は税理士への相談をおすすめします。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者16万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
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