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会社法の改正に伴い、資本金1円からでも会社の設立は可能になりました。しかし、会社設立時には、設立登記などに費用がかかるため、ある程度の費用を準備する必要があります。また、会社設立後も、オフィスの賃料や社会保険料など、会社を維持するための費用が必要です。では、会社設立の際には、どの程度の資金を準備しておくと安心なのでしょうか。
今回は、会社の形態ごとの会社設立費用の相場、会社設立後の維持にかかる費用について分かりやすくご説明します。
目次
会社設立時にかかる主な費用は以下の6つです。
・資本金
・会社設立の登記費用
・定款にかかる費用
・印鑑や印鑑証明書の費用
・専門家に支払う費用
・オフィスの賃料や備品の購入代金
それぞれの項目ごとにご説明します。
資本金とは会社設立時に出資者から払い込まれたお金であり、事業を運営するにあたっての元手となる資金のことです。株式会社であっても合同会社であっても、会社設立時には1円以上の資本金を用意しなければなりません。
資本金は、企業の体力とも呼ばれる会社の純資産です。1円から会社設立は認められるものの、資本金1円の会社は体力がないに等しい状態と判断されるため、対外的な信用を得にくくなる可能性もあります。
資本金の額を抑えれば、会社設立費用も当然安く抑えることができますが、一般的には少なくとも初期投資の額に数ヶ月分の運転資金を合わせた金額を準備するケースが多くなっています。取引先の獲得はもちろん、金融機関へ融資を申請する際にも資本金の額は影響を与えるため、適切な金額を設定することが大切です。
会社設立時には、法務局で設立登記の手続きを行わなければなりません。設立登記とは、会社の基本情報を法務局に登録し、法人格を取得する手続きです。設立登記が完了することで、会社の情報は登記され、登記情報は一般に公開されるようになります。法人格を取得することで初めて、会社として契約や取引を行えるようになるため、会社設立時には必ず法務局での登記手続きが必要です。
また、登記手続きの際には登録免許税の支払いが求められます。登録免許税の額は、設立する会社の形態によって異なりますが、株式会社と合同会社の場合は次のようになります。
・株式会社の場合
15万円または資本金の額×0.7%のいずれか高い方の額
・合同会社の場合
6万円または資本金の額×0.7%のいずれか高い方の額
つまり、株式会社の場合は少なくとも15万円、合同会社の場合は少なくとも6万円の費用が設立登記に必要になるということです。
定款とは、社名や事業目的、本店所在地といった基本情報のほか、会社を運営するうえでのルールを記載した書類です。会社設立時には定款を作成しなければならず、設立登記の際には定款の写しの提出が必要です。
定款には、紙で作成する方法と電子的に作成する方法の2つの選択肢があります。紙で定款を作成した場合、定款には4万円分の収入印紙を貼付しなければなりません。一方で、電子定款の場合は収入印紙を用意する必要はありません。
また、株式会社設立の場合は、定款完成後に公証役場で認証を受ける必要があります。定款の認証には手数料の支払いが必要です。
定款認証手数料の額は以下のとおりです。
・資本金100万円未満の場合 3万円
・資本金100万円以上300万円未満の場合 4万円
・資本金300万円以上の場合 5万円
ただし、発起人が3名以下の個人であり、発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨を定款に記載している、取締役会を設置しない資本金100万円以下の株式会社の場合、手数料は1万5,000円になります。
会社設立時には、会社の印鑑を作成するケースが一般的です。会社の印鑑には、会社名と代表取締役など役職名の入った法人実印(代表印)、金融機関に登録する銀行印、会社の認印と呼ばれる角印の3種類があります。このうち、代表印は法務局に印鑑届出書を提出し、印鑑登録を行います。
印鑑の作成費用は材質によって大きく異なりますが、3本セットで数千円~1万円程度で作成することが可能です。また、印鑑登録には費用はかかりませんが、印鑑登録証明書の発行時には手数料が発生します。
印鑑登録証明書の発行手数料は申請方法によって変わってきますが、1通あたり390円~450円です。会社設立後、銀行で法人口座を開設する際や融資の申し込みを行う際などに印鑑登録証明書の提出が必要になります。
会社設立時の手続きは、専門家に代行を依頼することが可能です。例えば、定款の作成や認証は行政書士や司法書士に、設立登記手続きは司法書士に代行を依頼できます。また、会社設立後の社会保険関連の手続きについては社会保険労務士、税金に関する手続きは税理士に依頼できますが、専門家にサポートを依頼する場合には費用が必要です。
依頼する業務の内容にもよりますが、一般的には5万円~20万円程度が目安になるでしょう。
会社設立時には、オフィスを借りるための費用やデスク、パソコンなどの備品を購入する代金も必要です。個人事業主が法人化し、これまでの事務所や備品をそのまま使用する場合には新たにオフィスやデスク等の備品、設備などを準備する必要はありません。しかし、法人の立ち上げとともに事業をスタートする場合などは、ある程度の初期費用が必要になるでしょう。
事業の内容によって必要となる費用の額は異なりますが、見積もり等を取得しながら必要になる額をある程度把握しておくことをおすすめします。
ここまで会社設立にかかる費用についてご説明してきましたが、株式会社を設立するか、合同会社を設立するかによって必要となる費用の額は変わってきます。資本金や専門家に支払う報酬、家賃等の初期費用など、変化しやすい項目を除いた、その他の会社設立費用について比較してみましょう。
株式会社を設立する際にかかる費用は、次のとおりです。
・登録免許税 15万円~
・定款認証手数料 1.5万円~5万円
・定款の謄本手数料 約2,000円
・定款の収入印紙代 0~4万円
・印鑑作成代 数千円~1万円
合計すると、株式会社を設立する際には、最低でも約17万円~25万円の費用がかかります。
・登録免許税 6万円~
・定款認証手数料なし
合同会社の場合は、合計すると約7万円~11万円程度の費用が必要になります。
会社設立時には、資本金も含め、一定以上の費用が必要です。自己資金を十分に準備してから会社設立をした方が、経営を進めるうえでは安心かもしれません。しかし、会社設立にはタイミングも重要です。資金が十分ではない状況であっても、ビジネスチャンスを逃さず、このタイミングで会社を設立し、事業を始めたいというケースもあるでしょう。そのような場合、会社設立費用をできるだけ安く抑えたいと考えるのは当然のことです。では、会社設立費用を低く抑えるためにはどのような対策を実施できるのでしょうか。
会社設立費用を節約する際のポイントを5つご紹介します。
合同会社の場合、定款の認証を受ける必要がありません。また、登録免許税の最低金額も低く設定されていることから、会社設立費用は株式会社に比べて低く抑えることができます。
株式会社は、日本で広く認知されている会社形態であるため社会的信用を得やすいというメリットがあります。また、株式の発行によって資金調達を行うことも可能です。しかし、会社設立の初期費用をできるだけ抑えたいのであれば、初めは合同会社で設立し、事業が軌道に乗ってから会社形態を株式会社に変更することもできます。その際、登記変更の手続きが必要になり、費用はかかるものの、設立当初の費用を抑えたい場合は合同会社としての設立を検討してみてもよいでしょう。
前述のように定款の作成方法には、紙で作る方法と電子定款を作る方法の2パターンがあります。電子定款とは、紙ではなくPDFなどの電子ファイル形式で定款を作成したものです。電子定款を作成した場合、収入印紙の貼付が不要となるため4万円の印紙代の負担がかかりません。また、電子定款の場合、オンラインでの申請が可能になるため、公証役場まで足を運ぶ手間と時間の節約にもなります。
会社設立時だけでなく、会社設立後は、会社を維持するための費用が発生します。その一つが税金です。資本金が1,000万円未満の会社は、原則として設立から2年間は消費税の納税義務が免除されます。なぜなら、消費税の課税判定は、前々事業年度の課税売上高で判定されるからです。しかし、資本金が1,000万円を超える企業の場合、設立1期目から消費税の課税事業者として扱われるため、会社設立をした事業年度から消費税の納税が必要になります。
インボイス制度のスタートに伴い、インボイス発行のために初めから課税事業者として事業をスタートする予定であれば、関係ありません。しかし、インボイスの発行予定がないのであれば、資本金は1,000万円未満に設定しておいた方がよいでしょう。
また、会社設立後は法人住民税の納税義務も生じます。法人住民税は、均等割と法人税割の2つに区分されており、法人税割については、法人税の額によって納めるべき税額が変わります。一方、均等割は資本金の額と従業員の数によって金額が区分されるもので、たとえ赤字の場合であっても納税が必要な税金です。法人住民税の均等割額は、資本金の額が1,000万円以下の場合、もっとも低い税額に設定されています。そのため、資本金は1,000万円未満に設定すると法人住民税の負担も軽減することが可能です。
会社を設立し、従業員を雇用した場合、従業員に支払う給与のほか、社会保険料の半分を負担しなければなりません。また、従業員の採用にも費用がかかるため、アウトソーシングや外部への業務委託を検討すると、人件費や社会保険料の負担に比べ、費用を抑えられる可能性があります。
従業員の雇用予定がある場合には、アウトソーシングや業務委託との使い分けも検討してみた方がよいでしょう。
会社設立の手続きを専門家に依頼するのではなく、自分で行った場合、専門家に報酬を支払う必要がないため、会社設立費用の節約が可能です。ただし、自分で会社設立手続きをすべて行う場合、分からないことも多く、調べながらの作業には相応の時間と労力がかかります。そのため、専門家に依頼せず自力で会社設立手続きを行う場合、直接的な費用は抑えられますが、時間や手間、手続きミスなどのリスクも考慮する必要があります。
慣れない作業には時間もかかり、ストレスも生じます。専門家に依頼をすれば、費用はかかるものの、設立準備に必要な時間を本業に充てることも可能です。業務や活動にかかる時間をコストとして捉えれば、専門家に依頼して事業開始前の時間を有効活用した方がかえって業務効率を高める可能性もあるでしょう。
会社設立手続きにかかる費用を節約したい場合には、定款の作成など、専門知識が必要な作業は専門家に依頼し、簡単な作業は自身で行うなど、サポートが必要な業務を見極めて依頼した方がよいかもしれません。
会社を設立する際には、設立費用に加え、会社を維持するための費用についても考えておく必要があります。会社設立後は、次のような費用が発生します。
・オフィスの賃料、水道光熱費、通信費
・従業員の人件費、社会保険料
・税金(法人税、法人住民税、法人事業税、消費税)
・税理士費用
会社設立後は、会社の事業年度に合わせて決算を行い、事業の収益を確定させたうえで申告と納税を行わなければなりません。企業会計は複雑であり、多くの企業は税理士に対応を依頼しています。そのため、会社設立後は、税理士に支払う報酬も必要になると考えておいた方がよいでしょう。ただし、税理士と顧問契約を結んだ場合は、節税方法や資金調達についてのアドバイスを受けることもできるため、費用以上のメリットを得られる可能性もあります。
会社設立費用は、会社の形態によって変わりますが、株式会社の場合は17万円~25万円程度、合同会社の場合は7万円~11万円程度が目安になるでしょう。そのほか、資本金、専門家に支払う報酬、備品等の購入に必要な費用なども含め、初期費用を準備しておくと安心です。
また、会社設立費用をできるだけ抑えたい場合には、資本金を1,000万円未満に抑え、合同会社の形態で会社設立を行う、電子定款を作成するなどの方法が有効になります。自力で会社設立手続きを行うことも可能ですが、時間と労力がかかるため、上手に専門家にサポートを依頼しながら設立手続きを進めるようにしましょう。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者16万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
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