2025.05.19
  • 税務調査

製造業の税務調査で指摘されやすいポイントは?工場も調査される?

読了目安時間:約 6分

どのような業種であっても税務調査を受ける可能性はあり、製造業も税務調査の対象となるケースがあります。税務調査では、売上や経費の額が正しく計上されているかをチェックし、正しい額の税金を納めているかの確認がなされます。そのため、税務調査では、売上や経費に関わる資料をチェックされることになりますが、製造業ではどのような点を重点的にチェックする傾向があるのでしょうか。また、製造業の場合、オフィスと工場が別に位置する場合もありますが、工場も調査の対象となるのでしょうか。

今回は、製造業の税務調査でチェックされやすいポイントや工場での調査などについてご説明します。

 

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製造業の税務調査では何を調べる?

製造業に関わらず、税務調査では、申告内容が正しいものであるか、納税額が正しい金額であるか、関係書類を詳しくチェックしながら調査が行われます。

法人の場合、法人税の課税対象となるのは、売上から経費を差し引いた収益部分です。したがって収益部分が小さくなれば、納税額も小さくなるため、収益を小さく見せかけることで納税額を低く装うケースが見られます。そのため、税務調査では売上を過少に申告していないか、経費を水増ししていないかの2点について重点的な調査が行われます。

売上の過少申告につながる恐れがあるポイントや経費の水増しにつながる恐れがあるポイントは、業種ごとに変わってきます。それゆえ、税務調査では業種ごとに調査のパターンが決まっており、当然、製造業の税務調査でも一定のパターンに従った調査が行われるケースが多くなっています。

 

製造業の税務調査でチェックされやすいポイントとは

製造業の税務調査では、次のような点を念入りにチェックされることが多くなります。

 

棚卸資産の計上が正しいか

製造業の税務調査では、棚卸資産が正しく計上されているかについての詳しいチェックが行われる傾向にあります。

製品を製造するためには、必ず材料を仕入れます。また、製造した製品を出荷するための梱包資材も購入するでしょう。製造業では、材料がなければ製造ができず、梱包資材がなければ出荷ができません。そのため、材料や資材を使い切ってから追加を発注するのではなく、工場が常に稼働している状態を維持できるよう、在庫や資材がなくなる前に補充します。したがって、製造業の場合、必ず在庫を抱えている状態であり、多くの場合、その在庫の額は高額になります。

棚卸資産は社内だけで調整できるものであり、尚且つその額が高額になることから、製造業では利益操作に使われやすいといった特徴があります。本来、材料などの製造原価を経費として計上できるのは、当期の売上に対応する部分のみです。在庫として期末に残った分については、棚卸資産として扱わなければなりません。

そのため、税務調査では、具体的に次のような点がチェックされます。

 

・棚卸数量を意図的に少なく計上していないか

・翌期に架空の仕入れを計上して期末の棚卸高を調整していないか

・棚卸評価方法が届け出た方法によって正しく計算されているか

・評価損の計上額は妥当なものであるか

・廃棄損の計上額は妥当なものであるか

 

仕掛品を資産として計上しているか

製造に時間がかかる製品を取り扱っている場合などは、期末に必ず製品が完成しているわけではありません。製造に取り掛かっているものの、期末時点で未完成の状態のものを仕掛品と言います。

仕掛品は、期末時点で未完成のものであるため、売上は発生していません。しかしながら、仕掛品の製造にも、材料費や製造に携わる人材の人件費などがかかっています。そのため、製造業を営む企業の中には、まだ売上が立っていない仕掛品にかかった費用を当期の経費として計上するケースがあるのです。

仕掛品は、本来は資産として計上すべきものです。しかし、仕掛品にかかった材料費や人件費を経費として計上してしまうと、売上より先に経費を計上することとなるため、必然的に所得額が低くなります。所得額が低くなると課せられる法人税の額も低くなるため、納税額が不足するといった事態に発展するのです。

そのため、税務調査では仕掛品についてどのように処理をしているか、工場の状態もチェックしながら調査するケースが多くなっています。

 

外注加工費を正しく計上しているか

製造業の中には、材料を支給して、別の会社などに製造の一部作業を委託するケースがあります。この場合、製造加工の委託費用は外注加工費として経費計上が可能です。外注加工費も製造のために発生する費用の一つであるため、外注加工費は製造原価に含まれると考えられます。

外部に加工を発注した場合、当期に販売できたものの外注加工費については、当期の経費として計上することが可能です。しかし、期末の在庫の部分について支払う外注加工費については、当期に経費計上することはできず、期末棚卸高として扱わなければなりません。

そのため、製造業を対象とした税務調査では、外注加工費の計上時期についても詳しくチェックがなされます。

 

工場や製造設備の固定資産の取り扱いが正しいか

製造業では、工場や製造機械、器具などを保有しています。これらは固定資産として扱うことになるため、取得費用は減価償却によって耐用年数に分けて経費計上しなければなりません。したがって、これらの固定資産の取得価額が正しい金額であるか、減価償却費を耐用年数に合わせて正しく計上しているかなどについても税務調査ではチェックされるケースが多くなっています。

例えば、製造機械を取得した場合、製造機械の搬入にかかったコストや買い入れした際の手数料、設置の費用、試運転の費用といった附随費用も取得価額に含める必要があります。万が一、附随費用を経費として一括計上した場合、所得額が圧縮され、法人税額が低くなってしまいます。そのため、製造業の税務調査では、工場や製造機械などの取得価額を正しく計算しているか、固定資産の取り扱いについて細かくチェックがなされるケースが多くなっています。

 

製造用機械の修理費用や工場の修繕費用を正しく計上しているか

製造業では、製品を製造するための機械を導入しているケースが多くなります。事業のために使用している機械は資産として扱うことになり、資産の修繕にかかった費用は修繕費として計上することが可能です。しかしながら、修繕内容によっては、修繕費としてではなく資本的支出として扱わなければならないものがあります。

資本的支出とは、修繕にかかった費用のうち、資産の使用期間を延長するためにかかった費用や資産の価値を増大させるためにかかった費用のことです。製造機械の修理を行った場合、資本的支出に該当する費用が発生した場合には、経費として処理するのではなく、減価償却費として複数年に渡って費用計上をしなければなりません。

また、製造業では製造機械だけでなく、製造機械を設置している工場にも何らかの修繕が必要になるケースがあります。この修繕費用も、工場の価値を増加させるために実施したものや工事をすることで使用できる期間を延長させるものであった場合、資本的支出として扱わなければなりません。

例えば、機械を修繕する際により高性能な部品を使用した場合には、これまでの部品と交換した場合の差額については資本的支出として扱う必要があります。また、工場の修繕を行った際に、より快適に作業ができるよう工場の壁に断熱材を入れる工事を行った場合なども、資本的支出として減価償却しなければなりません。

しかしながら、1回の修繕金額が20万円未満の場合や3年以内の周期で修繕を行っているような場合など、一定の要件を満たす場合には資本的支出に該当する修繕でも、修繕費として経費計上することが認められています。

反対に、維持管理目的の修繕ではないものの、建物を移動や解体、移築にかかった費用や機械を移設する費用、土地の水はけをよくするための工事費用などについては、修繕費として計上することが認められています。

修理費用や修繕費用の計上方法も税務調査時にチェックされやすいポイントです。

 

金属製品を製造する際に発生する作業くずの売却収入を計上しているか

金属製品を取り扱う製造業の場合、作業の過程で金属の作業くずが発生するケースがほとんどです。銅や鉄、アルミなどの金属くずが発生すると、多くの企業では作業くずを売却します。作業くずの売却によって発生した収入も、売上や雑収入として計上しなければなりません。しかしながら、製造業を営む事業者の中には、作業くずの収益は計上しなくてもバレないのではと考え、作業くずの売却収入を収入として計上していないケースがあります。

税務調査の際、調査官が工場を確認する際には、金属製の作業くずが発生しているかについても目を光らせています。作業くずが発生している場合には、どのように作業くずを処理しているのかについての質問がなされ、帳簿上でも正しく処理が行われているか確認されることになるでしょう。

 

工場内に設置した自動販売機の販売手数料を計上しているか

従業員が昼食や休憩の際に利用できるよう、工場の中に飲み物やパン、お菓子などを購入できる自動販売機を設置しているケースは少なくありません。その場合、企業は契約によってメーカーから手数料を得られます。この自動販売機の販売手数料も、雑収入や受取手数料などとして計上しなければなりません。

 

製造業の税務調査では工場も調査対象になる?

税務調査は、帳簿などが置かれているオフィスを中心に調査が進められます。しかし、製造業の税務調査においては、工場にも調査官が足を運び、工場内をチェックされるケースが多くなっています。任意調査と呼ばれる税務調査であっても、調査官から調査のために工場を確認したいという申し出があれば、納税者は対応する必要があります。では、なぜ製造業の税務調査では工場も調査の対象となるのでしょうか。

 

棚卸資産のチェックのため

棚卸資産となる原材料や出荷前の製品などが、工場にストックされている場合もあります。製造業の場合、オフィスをチェックするだけでは棚卸資産の数量や評価額が正しいかどうかはチェックできません。なぜなら、ほとんどの企業において原材料や出荷前の製品は、工場や倉庫などで保管しているからです。

したがって、棚卸資産についてチェックするためには、工場や倉庫も確認する必要があります。調査官が工場を訪れた際、原材料が大量にストックされていた場合や未使用の梱包資材が大量にストックされていた場合、帳簿に正しく記載されているかが調べられます。

 

金属くずなどが発生していないかをチェックするため

製造の過程で生じた金属くずは、リサイクル率が高く、多くの場合、業者に販売されて換金されています。しかし、製造業の事業者の中には、金属くずの販売で得た収入を経費計上していない場合があります。そのため、税務調査時に工場内を確認し、金属くずがどのように処理されているかをチェックされることが多くなります。

 

工場内に自動販売機が設置されていないかをチェックするため

自動販売機の設置によって得られる手数料は、設置する場所によって変わります。製造業の工場には自動販売機が置かれているケースが多くなります。工場内に自動販売機が設置されていれば、休憩の際にわざわざ敷地外にまで足を延ばし、飲料などを購入する必要がありません。そのため、工場内の自動販売機の売上は高くなる傾向にあり、飲料メーカーから得られる手数料も高い割合に設定されているケースが少なくありません。

事業者の中には、工場内の自動販売機の手数料を収入として計上していないケースがあります。そのため、製造業の税務調査をする際には、工場を訪問した際に自動販売機が設置されていないかどうかをチェックしているケースもあります。

 

まとめ

製造業では原材料を仕入れるため、多くの棚卸資産を抱えます。そのため、製造業の税務調査では、棚卸資産を正しく計上、管理しているかについてのチェックが重点的に行われるケースが多くなっています。また、仕掛品や外注加工費の計上タイミングがずれていないかという点も製造業の税務調査でチェックされやすい点です。そのほか、工場や機械などの固定資産の取得価額が正しいものであるか、資本的支出に該当する費用を経費計上していないか、金属くずの販売によって生じた収入、自動販売機の収入なども漏れなく計上されているかなどについてチェックされることになるでしょう。

税務調査の対象になった場合でも、落ち着いて対処できるよう、製造業の税務調査で指摘されやすいポイントを把握し、日頃から正しく収入や経費を計上しておくようにしましょう。

 

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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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