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個人事業主必見!自宅兼事務所の家賃や費用を経費にする方法とは

読了目安時間:約 6分
自宅とは別に事務所を借りている場合などは、事業に必要な費用として事務所の家賃や光熱費などを経費として扱うことが可能です。そのため、自宅兼事務所で業務を行っている個人事業主の中には、自分も家賃や光熱費などを経費にすることはできないのだろうかと考える方も少なくないでしょう。自宅兼事務所の家賃や光熱費なども、経費計上は可能です。しかしながら、自宅兼事務所の場合は、全額を経費計上することはできません。では、自宅兼事務所の場合に経費を計上する際にはどのような処理が必要になるのでしょうか。
今回は、自宅兼事務所を持つ個人事業主の方が、自宅兼事務所の家賃や費用を経費に計上する方法や経費計上時の注意点などについて詳しくご説明します。
目次
個人事業主が自宅兼事務所の費用を経費にする方法
個人事業主が自宅兼事務所の費用を経費にするためには、事業として使う分とプライベートで使用する分を分けなければなりません。そのため、自宅兼事務所の費用を経費にしたい場合には、事業分とプライベート分を分ける方法から理解する必要があるでしょう。
家事按分とは
自宅兼事務所は、自宅としても、事業の場としても使用することになります。そのため、自宅兼事務所では家賃や光熱費といった費用に生活のための費用と事業のための費用が混じった状態となっています。しかし、自宅兼事務所であっても、事業のために使った費用は経費計上が可能です。そのような場合に事業用として使用した分を経費として計上するために用いる計算方法を家事按分と言います。
家事按分をするためには、プライベートと事業の使用割合を算出しなければなりません。プライベートと事業の比率を按分比率と言いますが、按分比率は決められているわけではないため、状況に応じて個人事業主が独自に設定することが可能です。しかしながら、按分比率を決定する際には、現実に即した適正な割合である必要があります。不適切と判断されるような按分比率で家事按分をした場合、税務調査時に指摘を受ける可能性があるため注意しましょう。
自宅兼事務所で家事按分による経費計上ができる費用とは
自宅兼事務所で事業をしている個人事業主が、家事按分によって経費に計上できる費用には次のようなものがあります。
・家賃
・電気料金
・ガス料金
・水道代
・スマートフォン代
・インターネット回線代
・自動車関連の費用 など
自宅兼事務所の家賃を経費にする方法
自宅兼事務所として使用している場所が、賃貸の場合、毎月の家賃を家事按分することで経費に計上することができます。
家賃については、仕事で使用しているスペースの面積をもとに、按分比率を決定するケースが多くなっています。例えば、マンションの1室を仕事用に分けている場合は、全体の面積を仕事用の部屋の面積で割って、家事按分比率を算出するケースが一般的です。例えば、60㎡のマンションのうち、10㎡の部屋を事務所として使用している場合、家事按分比率は約17%です。月々の家賃が15万円であった場合、経費として計上できる金額は15万円の17%分である25,500円となります。年間にすると306,000円分を経費として計上することができます。また、勘定科目に「地代家賃」を用いるケースが一般的です。
自宅兼事務所の電気料金を経費にする方法
自宅兼事務所の電気料金についても、家事按分によって一部を経費として計上することができます。電気料金の按分方法にはいくつかの方法がありますが、事業に携わっていた時間や日数で算出する方法、使用しているコンセントの数で算出する方法などが考えられるでしょう。
例えば、1日24時間のうち仕事をしている時間が10時間だった場合、電気料金の家事按分比率は42%程度となります。月々の電気料金が1万円だったと仮定すると、家事按分によって経費計上できる電気代は4,200円です。電気料金は「水道光熱費」の勘定科目で経費計上するケースが多くなります。
自宅兼事務所のガス料金を経費にする場合
事業の内容によっては、自宅兼事務所でガスを使う場合もあるでしょう。例えば、料理教室を自宅で開いている場合や飲食店を開いている場合、お総菜などの販売をしている場合などは、事業のために使用した分のガス料金は経費計上が可能です。しかしながら、ガスはキッチンだけでなく、風呂やシャワーなどのお湯を沸かすためにも使用します。そのため、ガス料金を家事按分する際には、事業に費やした時間や日数などをもとに、適切な按分比率を導くことが大切です。
自宅兼事務所の水道料金を経費にする場合
自宅兼事務所の水道料金も家事按分によって経費に計上することができます。しかし、ガス代と同様、飲食店や惣菜店、料理教室などを事業として営む場合や染色などの水を多く使う事業を営んでいる場合を除き、水道料金を計上することは難しいケースが多くなっています。水を使用しない事業を営んでいる場合、自宅兼事務所で事業のために使用する水はほとんどないからです。
事業で水を使っている場合には、仕事の時間や営業日数などから適切な按分比率を導き、事業分を経費に計上するようにしましょう。
自宅兼事務所のスマートフォン代・インターネット回線費を経費にする方法
今やどの業種を営むにあたっても、スマートフォンやインターネットは欠かせないツールとなっています。自宅兼事務所で事業を営む個人事業主の場合、自宅で使用しているインターネット回線も家事按分によって経費計上が可能です。
インターネット回線の家事按分をする際には、仕事をしている時間を目安に考えます。例えば、1日の仕事時間が10時間、プライベートでインターネットを使う時間が2時間の場合、83%程度を計上することができるでしょう。インターネット回線の使用料が月々6,000円だった場合は、4,980円ほどを経費として計上できることになります。
また、スマートフォンを事業用とプライベート用に分けて、2台所有している場合は、事業用のスマートフォンの料金を経費計上できます。また、1台で事業用とプライベート用を兼ねて使用している場合には、事業で使用している分のみを経費として計上することができます。
スマートフォンやインターネット回線の料金は、通信費として経費に計上します。
自宅兼事務所の火災保険料を経費にする方法
自宅兼事務所の火災保険料も家事按分することで経費計上が可能です。火災保険料の按分比率は、事務所として使用している割合に合わせて算出します。例えば家賃の家事按分比率が17%であった場合、経費計上できる火災保険料も火災保険料の17%分となります。火災保険料は、保険料、または損害保険料の勘定科目を使用するケースが一般的です。
事務用品や備品を経費にする方法
仕事で使用するためのデスクや椅子、パソコン、文房具なども経費計上が可能です。ただし、自宅兼事務所で仕事以外でも使用するものの場合は、全額を経費として計上することはできません。例えば、パソコンを購入した場合であっても、事業専用のものであれば全額経費として扱えますが、プライベートでも使用する場合には家事按分をして事業用として使用する分だけを計上しなければなりません。
また、パソコンも含め、取得価額が10万円以上で使用可能期間が1年以上のものは、固定資産として扱わなければなりません。固定資産を取得した場合、一括して経費計上をするのではなく、法定耐用年数に応じて減価償却をする必要があります。したがって、10万円未満の備品や事務用品等を購入した場合には、消耗品費として経費計上が可能ですが、10万円以上の場合には、固定資産として正しく減価償却をするようにしましょう。
また、10万円以上20万円未満の備品等を購入した場合には、一括償却資産として扱うことも可能です。一括償却資産として扱う場合、法定耐用年数に関わらず、3年間で償却をすることができます。一般的なパソコンの法定耐用年数は4年ですが、一括償却資産として扱うと、4年ではなく、3年に分けて購入代金を減価償却費として計上ができるのです。そのため、1年あたりに経費として計上できる額が高くなり、節税につなげられます。
さらに、青色申告をしている個人事業主の場合は、取得した備品が30万円未満であれば、少額減価償却資産の特例を利用することもできます。少額減価償却資産の特例を利用すると、取得価額の全額を経費として一括計上できるようになります。
10万円以上の備品等を購入した場合は、事業の状況に合わせ、適切な方法で処理するようにしましょう。
自宅兼事務所の駐車場代やガソリン代を経費にする方法
自動車を使用する事業を営んでいる場合、事業専用の車であれば、駐車場代はそのまま経費計上が可能です。また、事業とプライベートの両方で使用する車を所有している場合は、事業で車を使用した割合を算出し、駐車場代を家事按分することで経費に計上することができます。ただし、経費に計上する際には、確実に車を使用したという証明が必要になります。そのため、業務で車を使った日時と使用目的、訪問場所、走行開始時と走行終了時のオドメーターの値などの記録を残しておくとよいでしょう。月極駐車場代の勘定科目には、地代家賃を使います。
また、ガソリン代についても、事業で使用した分については経費計上が可能です。事業専用車の場合は、全額を経費計上して問題ありませんが、1台の車を事業とプライベートで兼用している場合は、事業用の分を家事按分します。ガソリン代の家事按分は、車を使用した日数や走行距離に応じて算出するケースが一般的です。ガソリン代を経費にする際にも、自動車の使用記録は重要になるため、業務で使用をした場合は記録を残しておくことが大切です。ガソリン代を計上する際には車両費や燃料費、旅費交通費などの勘定科目で計上をするケースが多くなっています。
自宅兼事務所の個人事業主が確定申告をする際の注意点
自宅兼事務所で事業を営んでいる個人事業主の場合、事業のための支出は、正しく家事按分をすれば経費に計上ができます。しかし、経費としては扱えないものを経費として計上していたり、家事按分比率が不適切な場合、税務調査で否認される恐れがあります。
経費計上できない費用とは
経費として計上できる費用は、事業のために必要となった支出のみです。事業をするうえで必要ではない支出は経費として認められません。したがって、自宅兼事務所で仕事をしている場合、仕事の休憩中に見るテレビや仕事の休憩のために使うソファーなどの購入費用は、経費の対象外です。また、仕事のために必要となる作業着や制服であれば、その衣服代を経費計上することはできます。しかし、仕事でもプライベートでも着用できる衣服の購入費用は家事按分の対象とはなりません。
経費や家事按分比率が否認された場合のリスク
税務調査とは、確定申告書の内容に問題がないか、正しく納税を行っているかをチェックする税務署の調査官による調査です。個人事業主の場合、毎年1月1日から12月31日までの1年間の所得について翌年の2月16日から3月15日までに確定申告を行わなければなりません。
税務調査では、提出された申告書の内容が正しいか、詳細な調査を行います。したがって、経費として計上できない支出を経費計上していたり、現状に比べて家事按分比率が高すぎる場合などは、税務調査で否認される可能性があります。
税務調査で経費を否認された場合、所得額が増加することになるため、納税額が不足する事態となります。そのため、否認された経費の部分を修正する修正申告を行い、不足分の税額を納税しなければなりません。また、申告内容が正しくなかったことに対するペナルティとして過少申告加算税の納税が求められる恐れもあります。つまり、経費として計上できない支出を経費計上したり、家事按分比率を偽って申告していた場合、本来よりも多い額の税金を負担しなければならなくなるのです。
自宅兼事務所で仕事をしている個人事業主の場合、事業用の支出とプライベートの支出の線引きが曖昧になりがちですが、しっかり説明できる家事按分比率を算出し、正しく経費を計上することが大切です。
まとめ
自宅兼事務所で業務を営んでいる個人事業主の場合、家賃や駐車場代、水道光熱費、通信費など事業で使用した分の支出については、家事按分をすることで経費計上することが認められています。しかし、家事按分比率は客観的に証明できる割合でなければなりません。税務調査で経費を否認されることがないよう、家事按分比率はデータなどを用いて、適切に算出することが大切です。税務調査で指摘を受けた際にもしっかり説明できるよう、家の面積が分かる図面や作業時間の記録など、家事按分比率の根拠となる資料を準備しておきましょう。
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この記事の監修者

税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
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