2025.08.29
  • 税務調査

家事按分の割合の決め方は?税務署にバレる?家事消費との違いも解説

読了目安時間:約 12分

個人でビジネスをしていると、プライベートの携帯電話を仕事に使ったり、余った商品を個人的に使用したり、プライベートの携帯電話を仕事に使ったりすることがあります。

仕事とプライベートの境界線を引くのは難しいですが、税務調査で問題が生じないために適切に処理することが重要です。

この記事では、家事按分と家事消費(自家消費)の概要や割合の決め方などを解説します。

要点や計算方法を具体例とともに説明するので、ぜひ参考にしてください。

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目次

家事按分ってなに?

自宅の一部を仕事用として利用している場合、適切に「家事按分」を理解しておかないと、経費計上や税務処理の面で不利益を受ける可能性があります。

ここでは、家事按分の基本的な概要を解説します。

家事按分とは?

家事按分とは、支出(経費)を一定の基準にもとづいて事業とプライベートに区分することをいいます。

プライベートの支出は「家事関連費」と呼ばれ、所得税法第45条において原則として経費に算入できないと定められています。

家事按分の要件

支出の一部で事業に必要な部分が含まれている場合には、その事業関連部分についてのみ経費として認められます。

そのためには「この支出は事業に必要なものである」と客観的に説明できる根拠を示す必要があります。

具体的には、利用面積や利用時間、利用頻度などの合理的な基準をもとに按分割合を設定し、事業とプライベートを明確に区分しなければいけません。

青色申告と白色申告での家事按分の違い

確定申告には「白色申告」と「青色申告」の2種類があります。

法律上、家事按分については「青色申告であれば50%以下でも経費計上が可能」とされています。

つまり、白色申告に比べて青色申告のほうが、制度上は広い範囲を経費として認められる仕組みです。

一方で、国税庁が実際に判断する際には「支出が事業のために必要であるかどうか」を合理的に説明できるかが最も重視されます。

青色・白色にかかわらず、客観的に事業用と認められる根拠がなければ経費計上は認められません。

ただし、実務の現場では、白色申告は帳簿付けが簡略化されている分、事業関連性を示す証拠が少なく、結果的に経費計上が厳しく見られる傾向があります。

そのため、節税効果や信頼性の面を考えると、青色申告のほうが有利であることが多いといえるでしょう。

参照:国税庁|家事関連費(第1号関係)

家事按分ができるケース

ここでは、家事按分ができるケースを紹介します。

具体例1:家賃

事務所やサロン、教室などに自宅を利用している場合は、家賃を家事按分できます。

また、家賃が発生しない持ち家の場合には、住宅の建物部分の減価償却費と固定資産税を家事按分できます。

持ち家の減価償却費の計算方法は、次のとおりです。

  • 平成1941日以降に取得した建物:定額法で計算
    • 計算式:建物の取得価額×定額法の償却率
  • 平成19331日以前に取得した建物:旧定額法で計算
    • 計算式:建物の取得価額×90×旧定額法の償却率

なお、もともと住居用として所有していた自宅を、あとから事業用に使い始めた場合は「転用」として取り扱われます。

この場合、減価償却費を計算する際の建物の取得価額は、単純に購入時の金額ではなく、転用時点での「時価」または「未償却残高」のいずれか低いほうを基準に算出します。

そのため、最初から事業用に取得した建物とは計算方法が異なり、按分して計上する場合にも注意が必要です。

これらは難しい部分になるため、税務のプロである税理士に相談したほうが安心でしょう。

参照:国税庁|No.2108 中古資産を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却

具体例2:光熱費

自宅を事業に利用している場合は、電気やガス、水道の料金なども家事按分できます。

たとえば、美容院やクリーニング店など、事業のためにガスや水道を多く使用する業種では、これらの費用を事業用と私的利用に区分して計上可能です。

具体例3:通信費

業務で利用する場合には、携帯電話料金や光回線、モバイルWi-Fiなどの通信費も、業務として利用している部分については家事按分できます。

たとえば、自宅のインターネット回線を仕事とプライベートの両方に利用している場合、業務利用時間や使用割合に応じて按分し、事業経費として計上可能です。

ただし、家族全員が利用する通信費や、明らかに私的利用が大半を占める携帯電話代を全額経費にすることは認められません。

業務とプライベートを区分するために、業務用の回線や携帯を別契約にするなどの工夫をすれば、按分の根拠が明確になり、税務調査でも説明しやすくなります。

具体例4:車両費

自動車やオートバイなどを事業とプライベートの両方で使用する場合は、その使用割合に応じて車両費を家事按分することが可能です。

たとえば、週のうち半分を顧客訪問や仕入れに利用し、残りを私用で利用している場合には、その割合にもとづいて経費を計上します。

なお、自動車やオートバイなどの車両購入時の費用だけではなく、以下のような関連費用も家事按分できます。

  • ガソリン代
  • 駐車場代
  • 高速道路料金
  • 車両保険料
  • 車検費用

ただし、プライベート利用が大部分を占める車両を全額経費計上することは認められません。

そのため、業務利用の根拠を明確に示せるように、業務日誌に走行距離や利用目的を記録しておくと良いでしょう。

家事按分できないケース

次のようなケースは、家事按分による経費計上は認められません。

  • 事業用とプライベートでの利用割合を明確にできない場合
  • 業務と私生活の使用に時間的な区切りがない場合

家事按分を行うには、事業とプライベートでの利用割合を明確に示す根拠が必要になります。

そのため、業務とプライベートでの利用割合や区分を客観的に証明できない場合は、家事按分の適用ができません。

特に家賃を家事按分する場合は、以下の点に注意が必要です。

  1. 利用割合を示せる資料(平面図・契約書・支払い明細など)を必ず保管しておく
  2. 敷金は経費に計上できない
  3. 社宅契約の場合は、必ず事業主本人の名義にする
  4. 住宅ローン控除との併用はできない可能性がある
  5. 住宅ローンの返済額のうち「元本部分」は経費にできず、「利息部分」のみ経費計上が可能

家事按分の割合はどう決める?

法令上は「業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合」に限り、家事按分が認められます。

そのため、家事按分の根拠などが明確であることが重要です。

家事按分の割合については、法律で一律のルールや具体的な上限が定められているわけではありません。

経費に計上できる金額も、事業に必要であると合理的に説明できる限りにおいて認められます。

そのため、第三者が見ても納得できるような「合理的かつ客観的な基準」にもとづいて按分割合を決めることが大切です。

ここでは、家事按分の割合を決める方法を紹介します。

スペース割合

家事按分の代表的な方法の一つが、住居の面積(坪数や㎡数)を基準にする方法です。

特に家賃を経費計上する場合によく用いられます。

計算方法はシンプルで「住居全体の面積に対する事業用スペースの割合」を求め、その割合を家賃に乗じます。

【例】

  • 家賃20万円
  • 住居全体の面積100
  • 事業用に利用している面積15

この場合、事業用スペースの割合は15%です。したがって、家賃のうち経費として計上できる金額は3万円となります。

時間割合

もう一つの代表的な方法が、利用時間を基準にする方法です。


特に光熱費や通信費、自動車関連など、空間ではなく「時間」に応じて事業利用の度合いを区分できる支出に適しています。

計算方法は1日のうち事業に利用した時間÷1日の総利用可能時間」で割合を求め、その割合を経費に乗じます。

【例】

  • 携帯電話料金1万円
  • 1日のうち業務で利用した時間8時間
  • 1日の総利用時間15時間

この場合、事業利用の割合は53%です。したがって、携帯電話料金のうち経費として計上できる金額は5,300となります。

そのほかの割合

家事按分はスペースや時間の割合以外にも求められる方法があります。

たとえば、電気料金の場合、自宅全体のコンセント差し込み口の数を基準に、事業用に使用している差し込み口の数の割合で按分する方法です。ただし、この方法は利用時間をもとにした算出方法に比べると一般的ではないため、説明を求められることがあります。

また、自動車関連でも使用時間ではなく「走行距離」を基準に按分するのが一般的です。たとえば、月間走行距離1,000kmのうち400kmを事業に利用した場合、その割合40%を経費に計上できます。

このように、家事按分の方法は支出内容に応じて選択が可能です。大切なのは「誰が見ても納得できる合理的な基準」であることです。

家事按分の具体例4

家事按分の具体例を4つ紹介します。

具体例1:家賃

家賃のおもな按分方法は、次のとおりです。

  • 事業に使用している部屋の広さの割合で按分する
  • 部屋を事業で使用した時間の割合で按分する

実際の計算例は、以下のとおりです。

【部屋の広さで按分】

家賃が10万円・家の広さが80㎡・事業用の部屋の広さが20㎡の場合:

  1. 按分する割合20÷80=0.25
  2. 経費の計算方法10万円×0.25=25,000

【部屋を使用した時間で按分】

家賃が10万円・1日の業務時間8時間・月の勤務日数20日の場合:

  1. 1か月の稼働時間8×20=160
  2. 按分する割合160÷7201か月の総時間)=0.2‥‥
  3. 経費の計算方法10万円×0.2=2万円
具体例2:光熱費

電気料金のおもな按分方法は、次のとおりです。

  • 事業のために電気を使用する時間(稼働時間)の割合で按分する
  • 自宅全体のコンセントの差し込み口と業務で使用しているコンセントの数で按分する

実際の計算例は以下のとおりです。

【稼働時間で按分】

月の電気料金1万円・1日の業務時間8時間・月の勤務日数20日の場合:

  1. 1か月の業務時間8×20=160
  2. 按分する割合160÷720=0.2‥‥
  3. 経費の計算方法1万円×0.2=2,000

【コンセントの数で按分】

月の電気料金1万円・コンセントの全体数25個・事業で使用する数5個の場合:

  1. 按分する割合5÷25=0.2
  2. 経費の計算方法1万円×0.2=2,000
具体例3:通信費

通信費のおもな按分方法は、次のとおりです。

  • 使用日数で按分する
  • 使用時間で按分する

実際の計算例は以下のとおりです。

【使用日数で按分】

月の通信費1万円・インターネットの利用日数20/月の場合:

  1. 按分する割合20÷30=0.6‥‥
  2. 経費の計算方法1万円×0.6=6,000

【使用時間で按分】

月の通信費1万円・1日の業務利用時間8時間・月の勤務日数20日の場合:

  1. 1か月の業務時間8×20=160
  2. 按分する割合160÷7201か月の総時間)=0.2‥‥
  3. 経費の計算方法1万円×0.2=2,000
具体例4:車両費

車両費のおもな按分方法は、次のとおりです。

  • 走行距離で按分する
  • 自動車の使用日数で按分する

実際の計算例は、以下のとおりです。

【走行距離で按分】

月のガソリン代1万円・走行距離100km・事業で走行した距離80kmの場合:

  1. 按分する割合80÷100=0.8
  2. 経費の計算方法1万円×0.8=8,000

【自動車の使用日数で按分】

月のガソリン代1万円・月の勤務日数20日の場合:

  1. 按分する割合20÷301か月の日数)=0.6‥‥
  2. 経費の計算方法1万円×0.6=6,000

家事按分の勘定科目

家事按分を経費計上する際に使用する勘定科目は、対象となる支出の内容によって異なります。

家事按分する経費

勘定科目

家賃

地代家賃

電気・ガス・水道の料金

水道光熱費

通信費(スマートフォン・Wi-Fiなど)

通信費

自動車関連費

車両費

このように、家事按分で経費計上する場合でも、按分対象となる費用の性質に応じた適切な勘定科目を選ぶ必要があります。

家事按分の仕訳例

家事按分をどのように仕訳けたら良いかの具体例を紹介します。

【家賃】

家賃の勘定科目は「地代家賃」を利用します。家賃が20万円で経費計上する家賃が3万円の場合、仕分けは次のようになります。

借方

貸方

地代家賃

3万円

普通預金

20万円

事業主貸

17万円

【電気・ガス・水道】

電気・ガス・水道の勘定科目は「水道光熱費」を利用します。全体の水道光熱費が3万円で経費計上する水道光熱費が1万円の場合、仕分けは次のようになります。

借方

貸方

水道光熱費

1万円

普通預金

3万円

事業主貸

2万円

【通信費】

Wi-Fiの勘定科目は「通信費」を利用します。Wi-Fiの利用料金が5,500円で経費計上する通信費が1,500円の場合、仕分けは次のようになります。

借方

貸方

通信費

1,500

普通預金

5,500

事業主貸

4,000

【自動車関連費】

ガソリン費用の勘定科目は「自動車関連費」を利用します。ガソリンの料金が1万円で経費計上する費用が4,000円の場合、仕分けは次のようになります。

借方

貸方

自動車関連費

4,000

普通預金

1万円

事業主貸

6,000

家事按分を適切にしていなかったら税務署にバレる?

家事按分を適切にしていない場合、税務署にバレる可能性が高いでしょう。

税務調査では、生活費と事業費の区分があいまいになりやすい家事按分が重点的に確認される傾向にあります。

特に、事業で使用している割合に比べて経費の計上割合が不自然に高い場合は、調査官から指摘を受けやすくなるでしょう。

また、税務署は「合理的で客観的な根拠」を求めるため、調査の際には契約書や間取り図、検針票や利用明細といった証拠資料の提示を必ず求められます。

これらを準備できなければ経費として否認され、ペナルティの対象となる可能性があるため注意が必要です。

税務調査で指摘されやすい家事按分のポイント3つ

家事按分を行う際は、以下の3点に注意が必要です。

1. 家事按分の割合の決め方を説明できるかどうか

税務調査では、家事按分の割合が妥当かどうかを重点的に調査します。

按分の基準があいまいであったり、不自然に事業用割合が高すぎたりすると、経費として認められない可能性があります。

そのため、使用面積や使用時間などの合理的な根拠を示すことが重要です。

2. 同一生計内での支払いを家事按分していないか

生計を共にしている家族や親族との金銭のやり取りは、原則として経費に算入できません。

たとえば、家族が所有する自宅に同居し、その一部を仕事用スペースとして使用している場合、家族に家賃を支払っていたとしても、その支払い分は経費とは認められません。

これは、同一生計内での家賃支払いを経費に認めてしまうと、所得を分散させて税負担を軽くする「課税逃れ」が可能になってしまうためです。

そのため、支払った側の経費にもならず、受け取った側の所得としても扱われない仕組みになっています。

3. 家事按分を証明できる書類があるかどうか

税務調査では、家事按分の合理性を裏付ける証拠書類の提出が求められます。

たとえば、家賃であれば賃貸契約書や間取り図、光熱費や通信費であれば利用明細書などが必要です。

証拠がなければ「経費の私的流用」と判断される可能性があるため、日頃から必要な書類をきちんと保存しておきましょう。

家事按分を簡単にする方法

家事按分は、税務の専門知識がない方にとっては正確に行うのが難しい作業です。

そこで、効率的かつ正確に処理するために、会計ソフトの活用や税理士への依頼を検討すると良いでしょう。

会計ソフトを活用する

会計ソフトによっては、家事按分の割合をあらかじめ設定しておくだけで、自動的に経費を振り分けてくれる機能が搭載されています。

これを活用すれば、計算の手間を省けるだけでなく、経費計上の漏れを防ぐことにもつながります。

特に自宅兼事務所や車両費など、毎月同じように按分が発生するものに便利です。

税理士に依頼する

税理士に相談すれば、法律にもとづいた正確な家事按分が可能になり、税理士が関与していることで税務署からの信頼性も高まり、税務調査の際に不利になるリスクも減らせます。

結果として、安心して事業に専念できる点でも大きなメリットがあります。

家事按分と家事消費(自家消費)の違い

家事按分と家事消費(自家消費)は、税務調査でよく指摘される項目となっています。

家事按分は、プライベートと事業用を合理的な割合によって分け、事業に必要な部分のみを経費に計上する方法です。

一方で家事消費は、事業用に仕入れた商品やサービスを、事業主やその家族が私的に利用することを指します。

特に、飲食業など一部の業種では家事消費が発生しやすいため、家事消費がまったく計上されていない場合は、税務調査で指摘を受ける確率が高くなります。

家事消費(自家消費)ってなに?

家事消費は自家消費とも呼ばれ、誤って認識されていることが多いため、ルールを正しく理解することが大切です。

家事消費とは?

「家事消費」は、個人事業主に限定された税法上の決まりです。

棚卸資産や事業用に使用している資産などをプライベートで消費した際には、その消費分を売上として計上する必要があると定められています。

家事消費に該当するケース

よくある家事消費のケースを解説します。

具体例1:知人へのプレゼント

知人へ商品をプレゼントした場合は、家事消費に該当します。

たとえば、八百屋を営んでいる方が、商品のメロンを知人にプレゼントする場合は、家事消費になります。

また、同じメロンであっても、取引先への贈答や試供品の提供など、収入を得るために必要と判断される場合は、交際費や広告費として必要経費に計上可能です。

なお、家事消費は商品などの形があるものに限定されており、サービスの提供は該当しません。

そのため、マッサージ店を営んでいる方が、知人に60分間のマッサージをサービスした場合は、家事消費として売上への計上は不要です。

ただし、サービスに伴い材料等の棚卸資産を消費した場合、棚卸資産の価額に相当する金額は家事消費となるため注意しましょう。

具体例2:事業主本人の賄い

飲食業を経営している場合、事業主本人の賄い食も家事消費に該当します。

たとえば、1日1回賄いとして食事している場合は、その食事にかかる費用を営業日数に応じて売上に計上する必要があります。

なお、賄い食の費用は通常、販売価格が決まっていないことが多いため、一般的にはおおよその原価をもとに算出されます。

具体例3:従業員の賄い

従業員への賄い食の提供については経済的な利益の提供となるため、原則、給与と同等の扱いとなり、従業員の所得税の課税対象です。

これを「現物給与」といい、事業主本人の場合と同様に、その食事にかかる費用を営業日数に応じて売上に計上します。

従業員がパートやアルバイト勤務などの場合は、賄い食が給与として課税されることで、配偶者や親の扶養から外れるなどのトラブルが起こる可能性があります。

そのため、給与を扶養の範囲内におさめるなどの事情も考慮したうえで、賄い食の提供を検討する必要があるでしょう。

なお、従業員が食事の価額の半分以上を負担し、事業者の負担額が1か月あたり3,500円以下である場合は、給与として課税されません。

家事消費に該当しないケース

次のようなケースは、家事消費に該当しません。

  • 事業用の資産を家族や知人に無料で貸し出しする場合
  • 事業用の資産を自宅で保管する場合

家事消費は、あくまでもプライベートで消費した場合が対象です。

そのため、貸し出しや自宅での保管などは家事消費ではありません。

家事消費は販売価格の70%を売上にすればいい?

商品をプライベートで消費した場合、本来はその商品の販売価格(時価)を売上に計上しなければなりません。

しかし、すべてのケースで正確な販売価格を算定するのは難しいため、所得税法上の特例として「販売価格の70%を売上として計上すれば良い」というルールが設けられています。

これがいわゆる「販売価格の70%ルール」です。

ただし、この特例が適用できるのは小売業や飲食業など一部の業種に限られます。

また、70%と仕入額を比較し、高いほうの金額を売上に計上しなければなりません。

家事消費の計算方法

家事消費を行った場合、売上には、以下の金額のどちらか高いほうの金額を計上します。

  • 仕入額
  • 通常の販売価格等の70%

たとえば、以下のようなケースを例に計上する金額の算出方法を解説します。

(例)

  • 仕入額10,000
  • 販売価格12,000

この場合、販売価格の70%は「12,000×0.7 = 8,400円」です。

これを仕入額の10,000円と比較すると仕入額の10,000円のほうが高いため、このケースでは10,000円を売上に計上します。

家事消費の仕訳方法

家事消費の仕訳には、一般的に「家事消費等」や「自家消費」などの勘定科目を使用します。

ここでは、先ほど解説した家事消費の具体例ごとに、仕訳の方法を解説します。

仕訳例1:知人へのプレゼントや事業主本人の賄い

知人へのプレゼントや事業主本人の賄いを仕訳する場合は、借方には「事業主貸」(生活費などの事業経費以外を支出したときに使用する勘定科目)を使い、以下のように仕訳を行います。

借方

貸方

事業主貸

10,000

自家消費

10,000

仕訳例2:従業員の賄い

従業員の賄いは、原則、給与と同等の扱いとなるため、借方は「給与」となります。

借方

貸方

給与

10,000

自家消費

10,000

ただし、従業員から賄い代金を徴収している場合は、徴収している金額によって仕訳方法が変わります。

  • (食事の価格ー従業員の負担額)が3,500円超

借方

貸方

現金

(従業員の負担額)

1,000

自家消費

5,000

給与

4,000

  • (食事の価格ー従業員の負担額)が3,500円以下

借方

貸方

現金

(従業員の負担額)

2,500

自家消費

5,000

福利厚生費

2,500

家事消費の確定申告方法

家事消費がある場合は、確定申告の際に申告書への記載が必要です。

青色申告者は、青色申告決算書(一般用)の2枚目にある記載欄に記入します。

引用:国税庁「所得税青色申告決算書(一般用)

白色申告者の場合は、収支内訳書(一般用)の1枚目にある欄に記入します。

引用:国税庁「収支内訳書(一般用)

税務調査で指摘されやすい家事消費のポイント

すでに述べたとおり、家事消費は税務調査で指摘されやすいため、以下の点に注意が必要です。

  • 適正な金額を設定する
  • 明確に数量や内容を記録する
  • 適切に仕訳や帳簿の整理する

家事消費は、原則、消費した時点の時価に相当する金額に対して消費税が課税されるため、消費したものの数量や時価の正確な記録がないと、消費税額を適切に計算することができません。

なお、納税額を計算する際の基準は、下図のとおりです。

このように、家事消費は時価なども考慮したうえで納税額を算出するため、適切な記録がない場合は、税務調査で指摘を受ける可能性が高くなります。

したがって、正しく記録を残し、適切に仕訳や帳簿を整理しておく必要があります。

家事按分・家事消費に迷ったら税理士法人松本にご相談を!

家事按分や家事消費は、税務知識がなければ正確に処理するのが難しい分野です。

自己判断で誤った計上をしてしまうと、税務調査で指摘を受け、延滞税や加算税といったリスクが発生する可能性もあります。

そのため、専門的な知識と実務経験をもつ税理士への相談を強くおすすめします。

税理士法人松本には、国税OB10名以上在籍しており、税務調査対応を得意とするプロフェッショナル集団です。

長年の経験にもとづいた正確な経費計上や適切な申告サポートにより、税務調査のリスクを最小限に抑えることができます。

家事按分や家事消費に不安がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

まとめ

家事按分は、事業とプライベートの利用割合を「合理的かつ客観的な基準」にもとづいて割り振ることが求められ、税務調査でも特に指摘を受けやすいポイントです。

家事消費は、商品や資産を私的に使用した際に売上へ計上する必要があり、正確な理解と適正な処理が求められます。

個人事業主はこれらの明確な根拠を示せるように記録を残し、適切な申告を行うことが重要です。

少しでも不安な点がある方は、税理士に相談するなど早めの対応をおすすめします。

この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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