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法人でも個人事業主であっても、消費税を納めるかどうかは、売上高が1,000万円以上あるかどうかによって決まります。
「売上がぎりぎり1,000万円を超えて、課税事業者になってしまった」という経験をされた方もいるのではないでしょうか。
ここでは、消費税の仕組みや課税売上を1,000万円以下で申告し続けているリスク・ペナルティ、過去の告発事例などを解説しています。
売上1,000万円以下の申告を続けていたり、税務調査の事前連絡が入ったりしている方は、いますぐ税理士法人松本までお電話ください。
目次
消費税は、国民にとってもっとも身近な税金であり、ほとんどの人が払った経験を持っています。
このように身近であるにもかかわらず、消費税の仕組みについては、よくわからない人も多いでしょう。
消費税は、以下のような仕組みで納められます。
日常の買い物などで支払う消費税は、消費者が直接国に納めるものではありません。
消費者から受け取った消費税は一旦お店や会社が「預かり金」として管理し、事業者が申告時期にまとめて国へ納める仕組みです。
しかし、消費税に適用されている「原則課税制度」によって、お店や会社、個人事業主などは、消費税を納めなくてもよい場合があります。
消費税の原則課税制度とは、売上に含まれる消費税額から、仕入れや経費に含まれる消費税額を差し引いて計算する制度のことです。
たとえば、
この場合、国へ納める消費税は10万円ー5万円=5万円となります。
消費税の申告期限は、法人と個人事業主で異なります。
特に個人事業主の場合、所得税の確定申告期限(3月15日)と時期が近いため、確定申告とあわせて消費税の申告・納付を行うのが一般的です。
期限を過ぎると加算税や延滞税といったペナルティが発生する可能性があるため、早めに準備しておくことが重要です。
参照:国税庁|No.6610 法人に係る消費税の確定申告書の提出期限について
事業年度の途中で消費税の概算を見積もり、一部を先に納める「中間申告」があります。
中間申告はすべての課税事業者が対象ではなく、「前年もしくは前事業年度の地方消費税分を除く確定消費税額が48万円を超えた事業者」のみ対象です。
中間申告の期限も法人と個人で異なるので、注意しましょう。
・上記1か月分以後の10か月分:中間申告対象期間の末日の翌日から2か月以内
参照:国税庁|No.6609 中間申告の方法
中間申告書を期限までに提出しなかった場合でも、前期の実績に基づいた中間申告があったものとしてみなされるため、無申告加算税などのペナルティが科されることはありません。
ただし、消費税の納付期限を過ぎてしまうと、その分については延滞税が発生するので注意しましょう。
消費税の納付義務があるかどうかは、事業者が「課税事業者」か「免税事業者」かによって異なります。
課税事業者とは、消費者から預かった消費税を国へ納める義務がある事業者のことです。原則として、基準期間(通常は2年前)の課税売上高が1,000万円を超える場合、その事業者は課税事業者として扱われます。課税事業者は、売上に含まれる消費税から仕入れや経費に含まれる消費税を差し引いて、国に納付額を申告しなければなりません。
一方で免税事業者とは、一定の要件を満たし、消費税の納付義務が免除されている事業者をいいます。基準期間の課税売上高が1,000万円以下の事業者や、設立から間もない事業者が典型例です。このため、課税売上が1,000万円を超えるかどうかは、事業者にとっては重要なラインであるといえるでしょう。
また、免税事業者は消費税を納める義務はありませんが、取引先との関係で注意が必要です。
特に2023年10月に導入されたインボイス制度により、免税事業者との取引は仕入税額控除の対象外となるため、取引先から課税事業者になるよう求められるケースも増えているからです。
課税売上1,000万円を超えるか超えないかが、課税事業者となるボーダーラインです。
そのため、課税売上が毎年1,000万円以下の場合、税務調査の対象になりやすいと周りから聞くこともあり、不安に思う方もいるでしょう。
ここでは、課税売上1,000万円以下のリスクを紹介します。
実際に売上が1,000万円以下なのではなく、消費税の納税を避ける目的で売上を少なく申告しているのではないかと疑われやすくなる傾向にあります。
税務署は、売上高以外にかかった仕入れや経費など、あらゆる角度から申告書を分析することが可能です。
同じ業種や同じ規模の事業と比較した場合に異常値が出ていたり、実際の売上高と申告した額が合わなかったりする場合には、税務調査の対象となる可能性があるでしょう。
売上がぎりぎりで1,000万円以下となるような申告を連続して続けている場合も、消費税の課税事業者になるのを避ける目的で、帳簿操作していないか疑われやすくなります。
税務調査で過少申告を指摘された場合、修正申告で消費税の課税事業者となれば、所得税に加えて消費税の納税義務も発生します。
それだけでなく、過少申告加算税や無申告加算税などの追徴課税がペナルティとして科せられるでしょう。
令和6年度、国税庁が告発した消費税事案は29件でした。
そのうち、特に悪質性が高いと判断され刑事告発に至った不正受還付事案は17件、不正に還付を受けようとした金額は30億4,000万円にのぼります。
「不正受還付」とは、本来は還付を受ける資格がないにもかかわらず、虚偽の取引や偽装工作を行い、消費税の還付を受ける不正行為のことです。
具体的な手口としては、実際には仕入れていないのに架空の仕入れを計上して仕入税額控除を受けたり、輸出していないのに輸出したように装って輸出免税を利用し還付を受けたりするケースが代表的です。
令和6年度もこうした不正受還付の摘発件数は多く、消費税を悪用した脱税の深刻さが浮き彫りになっています。
ここでは令和6年度に告発された消費税の脱税・不正のケースを紹介します。
高級腕時計を海外に輸出販売したように見せかけるため、ネットで安い腕時計を購入し、高価な腕時計を仕入れたかのように偽装しました。
領収書や輸出関係書類を虚偽で作成し、存在しない仕入れや輸出を計上することで、不正に消費税の還付を受けようとした事例です。
不動産賃貸業を営む複数の会社が、居住用賃貸建物の仕入税額控除を過大に受ける目的で、実際には存在しないお金の取引を装っていました。
その結果、課税売上割合を不正に高く見せかけ、消費税の還付を受けようとした事例です。
実際の工事代金よりも高い金額を記載した虚偽の契約書や請求書を作成し、その金額をもとに課税仕入れを過大に計上しました。
これにより、本来より多くの消費税を仕入税額控除に算入し、不正に還付を受けようとした事例です。
ネットオークションやフリマサイトでカードを販売していたが、その売上を計上せずに隠していました。
その結果、課税売上にかかる消費税を少なく見せかけることができ、本来納めるべき消費税を納めなかったり、中間申告で不要な還付を受けたりするなどの不正につながっていました。
参照:国税庁|令和6年度査察の概要
消費税を納める義務があるにもかかわらず、期限までに納付せず先延ばしにしてしまうと、税務署からペナルティが科されます。
ここでは、期限を過ぎてしまった場合に科される消費税の主なペナルティの種類について解説します。
過少申告加算税とは、消費税の申告を期限内に提出していても、本来納めるべき税額より少なく申告した場合に科されるペナルティの一つです。
たとえば、売上の一部を隠して計上しなかったり、架空の経費を加えて仕入税額控除を多く計上したりして、消費税の納付額を少なく見せかけたりする行為などが対象です。
また、意図的な脱税だけでなく、単純な計算ミスや記載漏れで消費税の納付額が不足していた場合でも「過少申告」とみなされ、加算税が科されます。
過少申告加算税の割合は、修正申告のタイミングによって異なります。
【事前通知後】
【税務調査後】
なお、税務署から指摘を受ける前に自主的に修正申告をした場合には、過少申告加算税は科されません。
消費税の申告ミスや不正を防ぐためにも、早めの対応が重要です。
参照:国税庁|No.2026 確定申告を間違えたとき
確定申告などの申告を行わずに無申告でいることが税務署にバレると「無申告加算税」が科されます。
無申告はバレないと思われがちですが、取引先からの情報提供や第三者の通報などで、無申告は容易に発覚するため、注意しましょう。
無申告が発覚した場合、過去数年分までさかのぼって調査を受け、多額の無申告加算税を支払うことになりかねません。
課税割合は期限後申告を行ったタイミングで決まります。
1. 法定申告期限から1か月以上経過し、税務署の調査前に自主的に期限後申告をした場合
2. 税務調査の事前通知が届いてから、実地調査の前に期限後申告をした場合
3. 税務調査実施後に期限後申告をした場合
参照:国税庁|No.2024 確定申告を忘れたとき
重加算税とは、消費税の申告において二重帳簿の作成や売上の隠ぺい、帳簿の改ざんなど、意図的に仮装や隠ぺいを行った場合に科される重いペナルティです。
無申告加算税や過少申告加算税よりも税率が高く、悪質なケースとして扱われます。
ただし「重加算税=脱税」ではありません。
重加算税はあくまで行政上の制裁ですが、行為が特に悪質と判断されれば刑事告発され、脱税として刑事罰を受ける可能性があります。
つまり、重加算税は必ずしも脱税に直結するものではないものの、最終的に脱税事件に発展するリスクがある点に注意が必要です。
重加算税の課税割合は以下のとおりです。
なお、重加算税には軽減措置や免除はなく、一度対象となれば大きな負担になります。
消費税の申告に不安がある場合は、早めに税理士へ相談することが重要です。
延滞税は、消費税の納付期限を過ぎた場合に発生する「利息」です。本来の納税額や加算税に加えて、延滞税を納付する必要があるため、実際に納める合計金額は増えてしまいます。
令和3年1月1日以降の計算方法は以下のとおりです。
参照:国税庁|延滞税の計算方法
「しっかり売上1,000万円以上で申告しているし、消費税も納めているから問題ない」と考えている事業者の場合でも、以下のようなケースは注意が必要です。
消費税の課税事業者となった場合でも、原則課税制度を悪用して消費税の脱税を疑われる場合があります。
たとえば、課税仕入れを売上の消費税から差し引くためには、仕入れ先の名称、日付、品名や名目、金額などが記載された請求書や帳簿が必要です。こうした書類が揃っていない仕入れについては、架空請求として水増ししている可能性があると疑われてしまいます。
故意でなかったとしても、税務調査で指摘を受ければ修正申告を求められるため、注意しましょう。
税務署はあらゆる手段を用いて、無申告や脱税の証拠を見つけ出します。いまは見つかっていなくても、将来にわたってバレないとは限りません。
そのため、過去の申告に少しでも不安がある方や、これまで一度も申告をしたことがなく手続きに迷っている方は、ぜひ税理士法人松本にご相談ください。
当法人には国税OBが10名以上在籍しており、税務調査の実務や内部事情を熟知しています。
豊富な経験に基づく知識と交渉力により、追徴課税を最小限に抑えられる可能性が高く、過去には「追徴課税ゼロ」の実績も多数あります。
フリーダイヤルやLINEから全国どこでもご相談いただけますので、少しでも不安をお持ちの方は、気軽にご連絡ください。
法人でも個人事業主であっても、課税売上が1,000万円を超える場合には、消費税の課税事業者として、消費税を納める必要があります。
消費税には原則課税制度が適用されるため、売上消費税から仕入れ消費税を差し引いた額を納めることとなりますが、差し引きできる仕入れや経費には所定の項目が記載された請求書の存在など、一定の条件があります。
ぎりぎり1,000万円を超えない売上でいつも申告をしていたり、そもそも申告自体をしていなかったりする場合には、すでに税務署のターゲットとなっている可能性が高いでしょう。
過去の申告に不安がある場合は、親身に対応してくれる税理士事務所へ早めに相談してみましょう。
こちらの記事は幻冬舎GOLD ONLINEにも掲載されております。
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
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