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会社員の場合、会社から支給される給与から税金が引かれ、会社が年末調整を行ってくれるため、原則として確定申告をする必要はありません。しかし、会社員の方でも一定の要件を満たす場合は確定申告が必要です。また、個人事業主として事業を営んでいる方は、確定申告を行い、税金を納める義務があります。しかし、中には税金の納付義務があるにもかかわらず、何らかの理由で確定申告を行わない人がいます。確定申告を行わない状態を「無申告」と言います。
無申告の場合、税務署による税務調査の対象に選ばれやすくなります。もし、無申告の人に税務調査が実施された場合、どのようなリスクが生じるのでしょうか。
今回は、無申告の人に対して税務調査が実施された場合のリスクと税務調査の連絡を受けた場合の対応方法についてご説明します。
目次
無申告とは、確定申告をし、税金を納める義務があるにも関わらず、確定申告の義務を怠り、納税をしていない状況のことです。
確定申告が必要な人は、以下の要件に該当する人です。
・会社員で年収が2,000万円を超える人
・会社員で年間20万円以上の副業所得がある人
・会社員で2ヶ所以上から給与を得ており、年末調整を受けていない勤務先での収入が20万円を超える人
・年の途中で退職し、年末調整を受けていない人
・個人事業主で年間の所得額が95万円を超える人
・公的年金の受給額が年間400万円を超える人
・公的年金以外に年間20万円の所得がある人
上に示した人は、確定申告が必要です。このような人が期限内に確定申告をしていない場合、無申告の状態となります。確定申告の必要性を理解していながら、意図的に確定申告をしていない人はもちろん、確定申告の必要性を知らなかった人、うっかり確定申告を忘れていた人も確定申告をしていなければ無申告に該当します。
確定申告をしていれば、確定申告の内容が正しくないことがバレるかもしれません。しかし、そもそも確定申告をしていない無申告の状態であれば、収入がバレることはないのではと思う方もいるのではないでしょうか。
しかし、無申告の人も税務調査の対象となります。税務署の情報収集力は想像以上に高く、無申告状態であることは、遅かれ早かれ税務署に気付かれることになるのです。
国税庁では、毎年、税務調査の実施状況について公表しています。令和6年11月に公表された「令和5事務年度における所得税及び消費税調査等の状況」では、無申告者に対する税務調査を強化している旨が次のように記載されています。
「無申告は、申告納税制度の下で自発的に適正な納税をしている納税者に強い不公平感をもたらすこととなるため、的確かつ厳格に対応していく必要があります。こうした無申告者に対しては、更なる資料情報の収集及び活用を図るなどして、実地調査のみならず、簡易な接触も活用し積極的に調査を実施しています。」
無申告の状態を見逃せば、正しく納税をしている人が損をする状態となってしまいます。この税金の不公平感を是正するため、税務署では、あらゆる方面から情報の収集を行い、無申告状態にある人に対する税務調査を積極的に行っているのです。
令和5事務年度における所得税及び消費税調査等の状況の中では、無申告者を対象とした税務調査の実施状況も公開されています。
令和5事務年度において所得税の無申告者を対象に実施された税務調査の件数は5,274件です。また、1件あたりの申告漏れ所得金額は2,590万円、所得漏れ申告金額の総額は1,366億円にも上るとしています。さらに、1件あたりの追徴課税額は417万円でした。
参照:国税庁「令和5事務年度における所得税及び消費税調査等の状況」
無申告者に税務調査が入った場合、次のようなリスクが生じます。
税務調査は、通常、過去3年分を遡った調査が行われます。しかし、無申告者に対しては原則として過去5年分を遡った調査が実施され、特に悪質だと判断された場合には、最大7年を遡った調査が行われるケースもあります。
調査期間が長くなり、調査期間を通じて無申告状態だった場合、その分、納税すべき税金の額も大きくなるでしょう。また、無申告者には、後述する無申告加算税や延滞税の納付も求められます。税務調査の期間が7年に拡大され、7年にわたって申告をせず、税金を納めていないことが発覚すれば、課される無申告加算税の額も延滞税の額も高額に上る可能性があります。
無申告加算税とは、確定申告を怠り、税金を納めていなかったことに対して課されるペナルティの意味合いをもつ税金です。無申告加算税の税率は、納税すべき税金の額に応じて3段階に分けられています。
まず、納税額が50万円以下の部分について課される無申告加算税の税率は15%です。納税額が50万円超300万円以下の部分については20%、300万円超の部分については30%となります。
ただし、過去5年以内に無申告加算税を課された経験がある場合、前年分と前々年分の国税について無申告加算税を課された人の場合、税率は10%プラスされる点にも注意しなければなりません。
延滞税とは、納税が遅れたことに関するペナルティとして課される税金です。無申告加算税は、納付していない税金の額によって税額が変わります。しかし、延滞税の場合、延滞期間によって税金の額が変わってくる点に注意が必要です。
延滞税は、利息の意味合いをもつ税金であることから、税金の納期限が過ぎた日から納税が完了する日まで、課され続けるという特徴があります。つまり、納税が遅れれば遅れるほど、延滞税の額は大きくなり続けるのです。
延滞税の税率は、納期限の翌日から2ヶ月を経過する日までと、それ以降で大きく変わります。また、延滞税には銀行の短期貸出約定平均金利を基準とした延滞税特例基準割合が採用されているため、毎年、適用割合が変わる可能性がある点も特徴です。
令和8年1月1日~令和8年12月31日までの税率は、納期限の翌日から2ヶ月を経過する日までは2.8%、それ以降の税率は9.1%となっています。
重加算税は、確定申告をし、税金を納めなければならないことを知っていながら確定申告をせず、収入を隠蔽したり、書類を破棄したりといった仮装・隠蔽行為が見られた場合に課されるペナルティです。無申告状態の場合、無申告加算税に代えて重加算税の納税が求められ、その場合の税率は40%にも上ります。
重加算税も、過去に重加算税を課された経験がある場合や前年分と前々年分について重加算税を課されたことがある場合、税率が10%上乗せされます。
確定申告をしなければならないことを知っていながら申告をせず、多額の所得を隠していた場合、重加算税が加算されるだけでなく、脱税の罪に問われる可能性があります。所得税の無申告状態は、所得税法違反の疑いがあるとして刑事裁判に訴えられる可能性があるのです。裁判によって有罪が確定すれば、脱税犯として罪を償わなければなりません。
所得税法違反の場合、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科される恐れがあります。無申告期間の所得税、住民税、重加算税、延滞税、さらに罰金、懲役まで重なる可能性があるのです。
また、脱税は犯罪であり、脱税の罪が確定すれば、その後の人生を前科者として過ごさなければなりません。
無申告状態の人に税務調査が入った場合、どのように対応すればよいのでしょうか。
先ほど説明したように、税務署では、無申告者に対する税務調査を強化しています。無申告でもすぐには税務調査が入らない場合もあります。しかし、無申告者に対する税務調査の対象期間は5年間です。そのため、1年税務調査が入らなかったからといって税務調査の対象に選ばれないわけではありません。無申告状態であれば、いずれ税務調査の対象になるということを理解しておいた方がよいでしょう。
税務署では、税務調査に入る前に、ある程度の収入状況を把握しているケースがほとんどです。個人事業主として仕事をしている場合、取引先から業務委託先に支払った報酬について記載した支払調書が提出されているため、支払調書を見ればすぐに無申告である人は分かってしまいます。また、取引先や報酬の支払元に税務調査が入れば、取引先の情報や報酬の支払先情報もチェックできるため、無申告状態であることはすぐにバレるのです。
そのほか、税務署では、調査のために必要な場合、金融機関に調査の協力を依頼することができ、銀行口座のお金の動きも把握することが可能です。定期的に入金があれば収入を得ていることは明白となります。
税務調査が実施される際は、原則として、事前に税務署からの連絡が入ります。税務調査を実施する前には、納税者に対し、税務調査を実施する旨を伝え、調査対象期間や調査対象の税目、準備すべき書類などを伝えなければならないルールなのです。この通知を事前通知と言い、事前通知は電話で行われます。
事前通知の際には、調査日程についても提示されますが、都合がつかない場合は調整することが可能です。無申告者の場合、税務署から税務調査の事前通知を受けたら、調査日時をすぐに決定するのではなく、税理士と相談してから日時を調整したい旨を伝えましょう。
税務調査の際には、調査官が事務所や自宅などを訪れ、無申告期間中の所得の状況について詳しく調査を行います。収集した情報をもとにさまざまなヒアリングが行われ、無申告期間中の所得額を決定し、税額を決定したうえで、無申告加算税や延滞税を加えた額の納付が求められることになります。税金に関する知識がない場合、税務調査で細かな質問を受けても、適切に対応することは難しいでしょう。
所得税は、収入から経費を差し引いた所得額に課されます。そのため、経費として計上できる費用を証明できれば、少しでも所得税の額を軽減することは可能です。しかしながら、どのように経費を証明できるのか、その方法が分からなければ差し引ける経費がないために、売上とほぼ同額が所得とみなされ、課税される恐れもあります。
税務調査の対応実績が豊富にある税理士の場合、できるだけ納税の負担を減らせるよう、さまざまなテクニックを駆使して調査官と交渉を行い、互いが納得できるポイントで税額を決定することが可能です。税理士であっても、得意分野はさまざまです。そのため、税理士の中には税務調査の対応経験がないケースもあり、税務調査の対応を依頼するのであれば、税務調査対応実績を豊富にもつ税理士を選ぶことが重要になります。
税務調査に強い税理士に相談したら、税務調査の日程を調整し、調査当日まで書類の準備や当日の対応方法について打ち合わせを行います。不安なことがあれば、事前に税理士に相談しておくようにしましょう。
税務調査で無申告状態を指摘された場合、無申告加算税の税率は15%~30%です。しかし、税務調査の通知を受ける前に、自主的に期限後申告を行った場合、税率は税額に関わらず一律5%に軽減されます。自ら、申告を行い、納税をすることで、ペナルティが大きく軽減されるのです。
無申告状態を続けていれば、いつか税務調査の対象になります。無申告のリスクを最小限に抑えるためにも、税務調査の通知が入る前に自主的に期限後申告を行うようにしましょう。
確定申告の必要があるにもかかわらず確定申告をせず、納税をしていない、無申告状態の人は、税務調査の対象になる可能性が高い状態です。無申告状態で税務調査が実施された場合、過去5年分の所得の状況について調査が行われ、不足分の税金の納税が求められます。また、ペナルティとして無申告加算税や延滞税、悪質な場合には重加算税が課されるため、本来よりも多くの税金を納めなければならなくなります。
無申告状態を続けているのであれば、税務調査の通知を受ける前に、自主的に期限後申告を行うことをおすすめします。また、無申告状態で税務調査の事前通知を受けた方も、早急に税理士に相談しましょう。
税理士法人松本は、税務調査の対応実績を豊富にもつ税理士法人です。無申告者の期限後申告や無申告者の税務調査も積極的にサポートしていますので、お困りの際にはぜひお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者16万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
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