2025.04.10
  • 税務調査

個人事業主が交際費を使いすぎると…。どのくらいに抑えるべき?

読了目安時間:約 6分

個人事業主として仕事をしている場合、事業に関係する支出であれば、経費として計上することができます。交際費も経費計上が認められる支出の1つです。しかし、交際費を経費計上することができるからといって使いすぎると、税務調査の際に痛い目に遭う可能性があります。では、個人事業主が交際費として計上できるのはどの程度の金額が目安になるのでしょうか。

今回は、個人事業主が交際費を使いすぎたときのリスクや個人事業主が交際費を経費計上する際の目安などについてご説明します。

 

個人事業主の交際費の使いすぎとは

個人事業主は、交際費を経費として計上することが可能です。しかし、交際費を使いすぎると問題になる場合があります。交際費の使いすぎとは、交際費として経費計上する金額が大きすぎる場合を指します。まずは、交際費の意味から順に確認をしていきましょう。

 

交際費とは

国税庁では「交際費等の範囲と損金不算入額の計算」として、法人税の交際費を次のように示しています。個人事業主の場合、法人税ではなく所得税を納税することとなりますが、個人事業主であってもこの国税庁の見解をもとに、交際費を考えて問題ないでしょう。

 

「交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいます。)のために支出するものをいいます。」

 

つまり、交際費とは、取引先の関係者を接待したり、食事などでもてなしたりする行為、贈り物をするためなどに支出する費用のことです。新規の取引先を確保するため、また、既存の取引先とさらに取引を拡大するために必要となった費用が交際費に該当します。ただし、いずれの場合でも取引先の関係者が関わる支出でなければ、交際費として計上することはできません。

 

個人事業主の交際費として認められるもの

 

個人事業主の場合、次のような費用は交際費として計上することができます。

・取引先の関係者を招いて食事をした場合にかかった費用

・取引先から招待された祝賀会の参加費用

・同業者と意見交換をするために参加した会合の参加費用

・取引先をもてなすために開催したゴルフコンペの費用

・取引先の新事業所のオープンに合わせて送った贈り物の購入代金

・取引先に贈ったお中元やお歳暮の費用

・取引先を訪問する際に持参した手土産代

・取引先に不幸があった場合に包んだ御香典

 

個人事業主の交際費として認められないもの

次のような費用は交際費としては認められません。

・取引先が出席していない、従業員だけの食事会の費用

・家族と行った旅行の費用

・友人と開催した飲み会の費用

・事業とは関係のないイベントに参加した場合の参加費用

・接待ではなく、個人で参加したゴルフコンペの費用

 

交際費として認められる費用は、事業の発展のために必要と認められる費用に限られます。したがって、上に示したような身内だけを対象とした飲食代や旅行代、事業とは関係のないプライベートな支出は、当然、交際費としては認められません。

 

個人事業主の交際費に上限はある?

法人の場合、損金として計上できる交際費には上限が決められています。では、個人事業主の場合、交際費に上限はあるのでしょうか。

 

個人事業主と法人の交際費の扱い方の違い

例えば、資本金が1億円以下の法人の場合、交際費として計上できるのは次のいずれかの金額です。

(1)飲食その他これに類する行為のために要する費用の50%相当額を超える金額

(2)800万円にその事業年度の月数を乗じ、これを12で割って算出した金額(定額控除限度額)を超える部分の金額

また、資本金100億円を超える法人の場合は、そもそも交際費を損金として算入することができません。資本金が1億円を超え100億円以下の法人の場合は上に示した(1)の額については損金算入が可能です。

一方、個人事業主の場合、交際費に上限は設定されていません。

 

個人事業主の交際費に上限がないなら使いすぎても問題ない?

個人事業主の交際費については、法人のように上限額が設定されていません。そのため、個人事業主は交際費を使いすぎても問題ないのではと考える方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、個人事業主であっても交際費を使いすぎると問題が生じます。

 

個人事業主が交際費を使いすぎたときのリスク

個人事業主が交際費を使いすぎた場合、税務調査が実施され、経費についての指摘を受ける可能性があります。

 

交際費の使いすぎは経費の水増しの疑いにつながる

個人事業主の場合、交際費の上限は設定されていません。そのため、交際費を使いすぎたときに問題になるのは、交際費が本当に必要経費に該当するのかという点です。交際費は経費として計上できる金額ですが、経費とは、事業のために必要になった支出を指します。したがって、個人事業主が交際費として計上している額が大きすぎる場合、事業のために必要だった支出なのかという点を指摘される可能性があるのです。

例えば、領収書がある食事会の場合でも、取引先の誰が参加したのかが分からなければ、交際費であることを証明しにくくなります。また、同じ取引先と何度も食事会を開催しているような場合も、事業の売上アップのために、本当にそれほど頻繁に接待をする必要があったのかと指摘される可能性もあるでしょう。交際費として計上されている金額があまりに高額な場合、接待飲食をしている頻度があまりにも多い場合は、経費計上が認められない可能性があります。

 

交際費の経費計上が認められないとどうなる?

税務調査で交際費としていた経費が認められなかった場合、その金額を売上から差し引くことはできません。所得額は売上から経費を差し引いた額になるため、交際費が否認されると、所得額が高くなります。所得額が高くなれば、所得税の額も必然的に高くなるでしょう。つまり、個人事業主が交際費を使いすぎると税務調査で経費計上が否認され、過少申告を指摘されるのです。

確定申告の際に交際費分の経費計上が否認されると、納税額が不足することになるため、過少申告加算税というペナルティが科せられます。過少申告加算税は、不足分の税額に加えて納税しなければならない税金です。このことから分かるように、個人事業主は交際費の上限がないからといって交際費を使いすぎていると、本来よりも多い額の税金を求められる恐れがあります。

 

個人事業主が交際費を使いすぎと捉えられるのはどのくらいから?

個人事業主が交際費を使いすぎると税務調査で指摘を受けるのであれば、交際費として計上が認められる額の目安を知りたい方も多いでしょう。

では、個人事業主が交際費を使いすぎると指摘されるのは、どのくらいからになるのでしょうか。

 

個人事業主の適切な交際費の目安は売上の3%

個人事業主として事業を営んでいる場合、人によって事業規模は異なります。そのため、交際費を使いすぎと捉えられる目安を金額で示すことはできません。また、税務署などが個人事業主の交際費の使いすぎとなるラインを示しているわけでもないため、確実にこの程度であれば使いすぎを指摘されることはないとは言い切れない状況です。

しかしながら、一般的には、個人事業主の適正な交際費は、売上の3%程度以内が目安になるといわれています。例えば、売上が1,000万円の個人事業主の場合、確定申告の際に交際費として100万円を計上していた場合、これは売上の10%に該当するため、税務署から不信感を抱かれる恐れが高くなります。売上1,000万円の個人事業主では、30万円程度が交際費の目安となります。

 

売上の3%を超えても使いすぎを指摘されないケースも

一般的には、個人事業主が税務調査で交際費の使いすぎを指摘されないためには、交際費を売上の3%以下に抑えるとよいといわれています。しかしながら、営む業種や事業を営む環境によっては交際費の割合が高くなるケースもあるでしょう。例えば、付き合いの多い商店会に入っている場合などは、商店会の中でおめでたいことや不幸が発生するたびに、ご祝儀や御香典を包まなければなりません。また、多様な取引先との付き合いが発生する業種などでも交際費は高くなりがちです。したがって、売上の3%を超えても、必ず税務署から指摘を受けるわけではありません。ただし、業界や立地などを踏まえても、交際費を使いすぎているのではと思わせるほどの支出であれば、税務調査時に否認をされても仕方ないでしょう。

 

個人事業主が交際費を計上する際の注意点

個人事業主が交際費の使いすぎを指摘されないためには、交際費を計上する際に、売上の3%を目安とすることが大切です。また、税務調査で指摘を受けることがないよう、交際費を計上する際には次の点にも注意するようにしましょう。

 

領収書は必ず保管しておく

領収書は、支出があったことを証明する大切な信憑書類です。そのため、取引先を招いて接待をした場合や取引先にお歳暮やお中元を贈った場合、ゴルフコンペを開催した場合などは、必ず領収書を保管しておくようにしましょう。また、取引先から招待されたパーティーなどに参加した場合も、参加費を支払ったときには領収書を保管しておかなければなりません。

とはいえ、ご祝儀や御香典を包んだ場合に、相手から領収書をもらうことはできません。その場合には、招待状や会葬の案内などが記載された書類を保管し、出金伝票を作成して一緒に保管しておくと税務調査で指摘された際にも、回答がしやすくなります。

 

領収書には参加者や人数、目的などを明記する

取引先を招いて飲食した場合は、領収書の裏に、参加者の会社名や名前、参加者との関係性、参加人数、接待の目的などを記載しておきましょう。税務調査の際、何のための接待だったのかを質問された場合、領収書の裏に接待が必要となった明らかな理由を明記しておけば、交際費が否認される可能性は低くなります。たとえ領収書があったとしても、事業のために必要とは考えにくい食事会やゴルフコンペなどの場合、否認される可能性があるのです。

また、参加者の名前や所属などを明記しておくことで、何のために主催した食事会だったのかを示すことができます。もし、税務調査時に調査官から質問がなされ、食事会などの状況について詳しい説明ができない場合、より詳細な調査が必要であると判断される可能性があります。その場合、調査官が接待に使ったお店を訪れ、売上の情報などを確認したり、

参加者に対して、食事会などに参加した事実はあるのか、何のために参加したのか、反面調査を行う可能性もあるのです。

 

法人の場合、交際費としての損金算入を認める条件として、次のような事項を記載した書類を保存している場合に限ると示しています。

・飲食等のあった年月日

・飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者の氏名、名称、関係

・飲食等に参加した人数

・飲食等に要した費用の額、飲食店等の名称と所在地

・飲食等に要した費用であることを明らかにするために必要な事項

 

したがって個人事業主もこの規定に倣い、交際費として計上する際には、必要事項を記載したうえで領収書を保管しておくようにしましょう。

 

飲食代金が1人あたり1万円以下の場合は会議費として計上可能

1人あたりの飲食代金が1万円以下の場合は、交際費ではなく、会議費として計上することができます。また、取引先と打ち合わせをする際にお弁当などを提供した場合の費用も会議費として計上が可能です。

交際費の使いすぎは問題ですが、事業のために使った支出であり、会議費として計上できるものは会議費として計上するようにしましょう。しかしながら会議費を使いすぎる場合も交際費同様、問題視される可能性があるため、経費は正しく計上することが大切です。

 

まとめ

個人事業主は法人と異なり、交際費として計上できる額に上限があるわけではありません。そのため、個人事業主の中には、交際費を使いすぎてしまうケースがあります。上限はないものの個人事業主が交際費を使いすぎた場合、税務調査で指摘を受け、追徴課税がなされる恐れがあります。

個人事業主の交際費の目安は売上の3%程度です。交際費が3%よりも大きく跳ね上がる場合、税務調査で交際費の使いすぎを指摘される恐れがあります。また、税務調査時に事業のために必要な経費であることを証明するためには、領収書を保管するとともに、食事会などの参加者や人数、開催目的などを記録しておくようにしましょう。

 

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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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