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オペレーティングリースが節税につながる理由とは。注意点はある?

読了目安時間:約 6分
近年、オペレーティングリースを活用すると節税効果を得られるという話が広がり、節税目的でオペレーティングリースを行う企業が増えています。節税効果が得られるのであれば、ぜひ自社でもオペレーティングリースを活用したいと考えるケースは少なくありません。しかし、オペレーティングリースがなぜ節税につながるのか、その仕組みを理解していない場合、かえって業績に悪影響を及ぼすリスクもあります。
そこで今回は、オペレーティングリースの活用が節税につながる理由やオペレーティングリース活用時の注意点などについて分かりやすくご説明します。
オペレーティングリースとは
オペレーティングリースの節税効果を知る前に、まずはオペレーティングリースの仕組みから確認しておきましょう。
リースとは
リースとは、設備や機器を購入するのではなく、リース会社が代わりに設備や機器を購入し、ユーザーはリース料金を支払って設備や機器をリース会社から借り受けるという仕組みです。リースを利用する際には、リースしたい設備や機器を決め、リース会社と契約を締結します。指定した機器や設備は、メーカーからユーザーに直接納入され、機器や設備の引き渡しが完了するとリース料金の支払いが開始されます。
リースとレンタルの違い
リースと似た仕組みにレンタルがあります。レンタルの場合、レンタル会社が所有しているものから、レンタルをしたいものを選び借り受けることになります。一方、リースの場合、リース会社から借りるものはリース会社が保有するものではありません。ユーザーが希望する機器や設備をリース会社が購入し、ユーザーに貸し付けるのです。そのため、レンタルに比べると、リースは広い選択肢の中から必要なものを選ぶことができます。
また、リースとレンタルでは契約期間にも違いがあります。レンタル契約は、短期契約や長期契約もありますが、リースでは基本的に、長期契約を結ぶケースが一般的です。したがって、短い期間だけ必要なものに関してはレンタル契約を結び、長期間使用する予定がある場合はリースを活用することが多くなっています。
オペレーティングリースはリース取引の1つ
リース契約は大きく「オペレーティングリース」と「ファイナンスリース」の2つに分けられます。まず、オペレーティングリースの場合、リース期間終了時には借りていた設備や機器をリース会社に返却するため、資産である設備や機器の所有権は、リース会社にあります。また、オペレーティングリースでは、リース契約が満了したタイミングでの資産の残存価額をリースする機器や設備の代金から差し引き、残った部分をリース料金とするため、リース料金が低くなる点も特徴です。
一方、ファイナンスリースの場合、リース契約終了後には、資産の所有権はユーザーに移転されます。つまり、ファイナンスリースでは、リース会社はユーザーが指定する機器や設備を購入し、ユーザーはリース料金を支払うことで、その購入費用を分割して支払っているということになるのです。ファイナンスとは分割払いを意味する英語であり、ファイナンスリースは分割払いに近いリースという意味になります。ファイナンスリースの場合、リース契約終了後は、機器や設備の所有権が移るため、オペレーティングリースのようにリース料金から残存価額が差し引かれることはありません。
オペレーティングリースの特徴
オペレーティングリースでは、リース元の法人が得るリース料金は、売上として計上されます。一方で、リースしている設備や機器などは、固定資産として扱えるため減価償却が可能です。減価償却費用は、法定耐用年数に応じて計算するものであり、耐用年数期間中は、減価償却分を計上できるため、課税所得を圧縮することができます。
また、リース期間満了後にユーザーから返却された資産は、売却するケースが一般的です。その際、査定した残存価額以上の金額で売却できれば、差額を利益とすることもできます。
オペレーティングリースの活用が節税につながる理由
オペレーティングリースが節税目的で利用される背景には、日本型オペレーティングリースと呼ばれる仕組みが関係します。
節税目的で用いられる日本型オペレーティングリースとは
日本型オペレーティングリースとは、投資家が出資した資金を使ってリースの対象となる資産を購入し、運用する仕組みのことです。まず、リース物件の購入・運用を行う匿名の組合が、投資家から出資を募り、航空機や船舶、コンテナなどの大型の資産を購入します。出資金だけで購入資金が賄えない場合には、金融機関に融資を申し込み、借り入れをするケースもあります。匿名組合では、調達した資金を使ってメーカーから資産を購入し、ユーザーとなる法人とリース契約を締結し、ユーザーから定額のリース料を受け取った匿名組合は、その利益の中から投資家に利益を分配するという仕組みです。
日本型オペレーティングリースを運用する匿名組合について
日本型オペレーティングリースでは、投資家は出資するものの、運用を行うことはありません。投資家は出資金の提供だけに関わり、リース資産の購入や運用は匿名組合が行うのです。
匿名組合とは、資金を提供する出資者と事業を行う事業者との二者間で、出資や利益分配にかかる契約を締結する組合のことです。外部からは出資者が分からない仕組みとなっているため、匿名組合と呼ばれます。匿名組合には二重課税が生じません。また、出資者である匿名組合員は、匿名組合の活動によって生じた債務に対する責任を負わないといったメリットがあります。昨今では、不動産クラウドファンディングなどにおいても匿名組合が活用されています。
日本型オペレーティングリースと節税の関係
日本型オペレーティングリースの場合、リースの対象となる資産は、匿名組合の資産となります。そのため、匿名組合ではリース対象となる機器や設備を資産として計上し、法定耐用年数に合わせて減価償却をしていきます。定率法を使って減価償却をすると、購入してから数年間は、多額の減価償却費を計上することが可能です。そのため、最初の数年間は、リース料による収入よりも減価償却費の方が高くなります。すると、匿名組合では損失を生み出すことになるのです。匿名組合では損失が生じると、法人税が課税されないため、節税につながります。
一方で、匿名組合が損失を計上すると、投資家も出資持ち分に応じて、損金計上をすることになります。損金は本業の利益と相殺できるため、投資家も法人税の負担を圧縮できるというわけです。
オペレーティングリースによる3つの節税効果
日本型オペレーティングリースは法人を対象とした金融商品ですが、投資面よりも節税効果に注目が集まっています。オペレーティングリースでは、主に次の3つの節税効果を期待できます。
減価償却費がリース料を上回ることを活用した節税効果
前述のように、日本型オペレーティングリースでは、定率法で減価償却費の計算をすることで、リース期間の最初の数年に高額な減価償却費の計上を行い、意図的に損失を発生させます。定率法では、未償却資産残高に一定の割合をかけて減価償却費を算出する計算方法です。未償却資産残高は、資産を購入してから時間が経過するほど小さくなります。そのため、定率法で計算する場合、購入からしばらくは未償却資産残高が大きいために、減価償却費が大きくなるのです。
したがって、法人の利益が出るタイミングに合わせてオペレーティングリースを開始すると、減価償却費の計上によって利益を相殺できるため、法人税の節税につながります。
事業承継による節税
オペレーティングリースは、事業継承時の贈与税や相続税の節税対策として活用されるケースもあります。オペレーティングリースに投資をした場合、投資を開始した当初は、投資家も損失を計上することとなります。
非上場会社の場合、株価は会社の資産価値によって決定します。つまり、会社の業績が悪化すると、会社の価値も下がり、株価も下がるのです。オペレーティングリースによって損失を計上すると、投資を開始してから数年は損失が発生します。この損失を計上すると、会社の業績が一時的に悪化し、会社の株も一時的に下がるのです。会社の資産価値が下がったタイミングで事業承継を行うと、贈与税や相続税の額を抑えることができ、節税効果を得られます。そのため、法人税の節税目的だけでなく、事業承継時の節税効果を得るためにオペレーティングリースを活用するケースも少なくありません。
売却益を退職金の原資として活用
オペレーティングリースでは、リース期間満了後に、資産の売却をしますが、資産を売却すると当然、売却益が発生するため、売却益にも税金が課されます。したがって、オペレーティングリースでは、売却益をどのように取り扱うか、投資を開始する前に出口戦略を立てておくことが大切です。オペレーティングリースの開始直後に得られる目先の節税効果に気を取られていると、売却益が発生した際に課せられる税金が多額となり、かえって納税負担が増すリスクもあります。
オペレーティングリースを始める法人の多くは、リース契約満了後の売却益を法人代表者の退職金などに充てています。売却益を退職金に充当すると、利益を相殺することができるからです。売却益を退職金の原資とする場合、利益の相殺による節税効果を得られるだけでなく、退職金の支払いのために生じるキャッシュフローの悪化も防ぐことができます。
オペレーティングリースを活用する際の注意点
オペレーティングリースは、節税効果を得られるスキームです。しかしながら、オペレーティングリースにはメリットばかりではなく、デメリットもある点を理解しておかないと、失敗してしまう可能性もあります。オペレーティングリースを始める際に注意が必要な点を3つご紹介します。
節税効果を期待できるのは法人のみ
日本型オペレーティングリースのほとんどは、法人を対象とした金融商品です。そのため、多くの場合、個人投資家はオペレーティングリースを始めることができません。なぜなら、個人投資家の場合、分配金は雑所得として扱うことになるからです。雑所得の損失は、他の所得と損益通算はできません。そのため、オペレーティングリースを行っても、所得税の節税効果を得ることはできないのです。
リース先の業績悪化のリスクがある
オペレーティングリースでは、航空機や船舶、コンテナなどをリースしますが、リース先の企業の経営状況が悪化すると、リース料の支払いが滞る可能性があります。リース料の支払いが滞るだけでなく、経営が破綻した場合などは、想定した収益を得られない可能性も出てくるでしょう。
また、リースした資産に何らかのトラブルが発生した場合、資産価値が減少し、リース期間終了後の売却益が想定よりも低くなる可能性もあります。
為替相場の変動によって運用損失が生じる可能性がある
リース資産の購入先は海外メーカーであることが多く、ドル建てでの投資案件が多くなっています。資産購入時から為替が円高に傾いた場合、収益は減少する可能性があります。オペレーティングリースを始める際には為替の変動リスクがあることも認識しておく必要があるでしょう。
まとめ
オペレーティングリースは、節税効果の面で注目を集める金融商品です。オペレーティングリースが節税に効果的と言われる理由は、定率法による計算によって多額の減価償却費を初期に計上できる点です。オペレーティングリースを開始して数年は、減価償却費がリース料を上回るため、損失が生じ、法人税の節税効果を得られます。また、損失の計上によって一時的に株価を下げることもできるため、事業継承時の相続税や贈与税の節税目的でオペレーティングリースが利用されるケースもあります。
ただし、オペレーティングリースではリース契約終了後に売却益が発生します。売却益に対しても税金が課せられるため、出口戦略が明確に定まっていない場合、オペレーティングリースを行ったことで逆に納税額が増えてしまう恐れもあります。リース契約終了後は売却益を退職金の原資とするなど、オペレーティングリース開始時には出口戦略も明確に立てておくことが大切です。
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この記事の監修者

税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
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