2025.05.10
  • 税務調査

元請けに税務調査が入ったら、下請け業者も調査されるって本当?

読了目安時間:約 6分

元請けに税務調査が入ったら、下請け業者にも調査が及んで、無申告がバレたといったような話を耳にする機会があるかもしれません。元請けに税務調査が入ると、下請け業者まで調査が行われるという噂は本当なのでしょうか。

きっと税務署にはバレないだろうと、確定申告してこなかった人の中には、元請けに税務調査が入ることで自身の無申告がバレるのではと不安に思う人もいるでしょう。では、元請けに税務調査が入ると、下請け業者も税務調査の対象になるのでしょうか。

今回は、元請けに税務調査が行われた場合の下請け業者への影響や無申告状態を続けることのリスクなどについてご説明します。

Youtubeでも様々な内容を解説しています!Youtube

元請けとは

元請けとは、発注者から直接仕事を請け負う業者のことです。建設業界などでは、元請け企業が発注者から工事の実施を請け負い、実際の作業や一部の作業を下請け業者に依頼するという構造があります。また、IT関連の仕事においても、元請け企業が発注者からシステム開発の依頼を受け、実際の作業を下請け業者に依頼するケースが少なくありません。

 

元請けと下請けの関係

建設業やIT業界においては、元請け業者が発注者から注文を受けると、下請け業者に請け負った工事や作業の一部を依頼します。この場合、元請けは発注者から直接コミュニケーションを図る機会がありますが、下請けは元請けを通して仕事を請け負うため、発注者と直接コミュニケーションを図ることはありません。

下請け業者は、法人の場合もありますが個人事業主の場合もあります。元請けが発注者から請け負った仕事を下請け業者が対応する場合、下請け業者には、営業活動をせずに仕事を受けられるというメリットがあります。また、元請け業者は下請け業者に作業を発注する際、有利な条件で契約を結びやすくなります。元請けと下請けの関係性にはデメリットもありますが、それぞれのメリットがあるために、元請けと下請けという構造が成り立っているのです。

 

元請けに税務調査が入るとどうなる?

税務調査では、お金の流れを詳しくチェックします。正しく申告を行い、正しく納税をしているかどうかをチェックするためには、収入にあたる売り上げを漏れなく計上しているのか確認しなければなりません。また、経費を過剰に計上していないか、経費面のチェックも必要です。そのため、元請けに税務調査が入った場合、調査官は、売り上げに関連する取引先と支出に関連する取引先の両方をチェックします。

 

経費の過剰計上による不正

売り上げを過少に申告することで、所得額を低く見せかける場合もあります。しかし、現在では多くの場合、銀行振込による取引が行われており、銀行振込で売り上げが支払われると、金融機関の口座に入金の記録が残ります。そのため、売り上げを隠蔽するためには、本来とは異なる口座を用意したり、発注元に現金での支払いを要求したりしなければなりません。

一方、経費を水増しする場合、売り上げの過少申告に比べると、比較的手間をかけずに不正を行うことができてしまいます。現金で支払いを行ったことにしたり、本来よりも多くの額を支払ったように見せかけたりすることで、経費を水増しするケースは少なくありません。

経費を水増しし、不正に税金の支払いを逃れようとする納税者が後を絶たないことから、税務調査では、経費の過剰計上がなされていないか、厳しいチェックが行われます。

 

元請けに入った税務調査から下請け業者にも調査が及ぶ理由

元請け業者に税務調査が入った場合、下請け業者に対しても調査が行われる可能性があります。それは、下請け業者に支払った料金を水増しし、経費を不正に計上している可能性があるからです。

元請け業者が下請け業者に仕事を依頼した場合、下請け業者に支払った費用は外注費という形で処理されます。外注費は経費として認められる支出ですが、元請け企業の帳簿や書類だけで、実際に外注費が支払われたかどうか、支払額が正しいかを確認できないケースがあるのです。その場合は、元請けにある資料を基に、下請け業者の売り上げ状況についても調査が行われます。

 

外注費が給与に該当するか疑われるケースもある

元請けに税務調査が入った場合、外注費がチェックされるのは、計上されている額が正しい金額であるか確認することだけが目的ではありません。外注費として計上されている金額が、外注費ではなく、給与に該当するのではと疑われるケースもあります。

建設業者やITエンジニアの場合、下請け業者は法人ではなく、個人事業主の場合もあります。従業員を雇用する場合、一定の条件を満たすと、社会保険の加入義務が生じます。社会保険に加入すると、保険料の半分は会社が負担しなければなりません。しかし、個人事業主に外注費を支払う場合、雇用契約は締結していないため、元請け会社は社会保険料を負担する必要がないのです。また、従業員に支払う給与は、消費税の課税対象とはなりません。しかし、外注費は課税仕入れとなるため、外注費として扱うと消費税の仕入れ額控除の対象となり、消費税の納税額を低く抑えることができます。

以上のような点から、本来は給与として支払わなければならないお金を、外注費として支払っているのではと疑われるケースがあるのです。

 

元請けに税務調査が入ると下請けの申告状況もチェックされる

税務調査では元請けが支払った外注費について、詳しい調査を行います。その結果、外注費が否認され、給与として認定されることがあれば、消費税の仕入れ額控除の額が変更となり、消費税の納税不足が指摘されることとなります。また、外注費として計上された金額が実際とは異なっていた場合は、正しい金額への修正も必要です。

さらに、元請けにある情報から外注費を受け取った下請け業者の情報も把握されます。下請け業者のリストが手に入れば、確定申告をしているかどうかをチェックすることで、簡単に下請け業者の申告状況のチェックが可能です。元請け業者が支払っていた外注費を受け取っていたにもかかわらず、確定申告を行っていなければ、無申告状態が発覚することとなるでしょう。

 

元請け業者に入った税務調査で無申告がバレるとどうなる?

元請け業者に税務調査が入ると、外注費の支払先である下請け業者にも税務調査が実施される可能性があります。税務調査によって確定申告を行っていない、無申告状態がバレると次のようなリスクが生じます。

 

無申告加算税の納税が求められる

所得があったにもかかわらず確定申告をしていない場合、納税の義務を怠っているということになります。そのため、無申告状態が発覚すると、不足分の税金の納税を求められるだけでなく、確定申告をしなかったことのペナルティとして無申告加算税の納税も求められます。

無申告加算の額は、納付すべき税額が50万円までの部分については、その額の15%、50万円を超え300万円以下の部分についてはその額の20%、300万円を超える部分についてはその額の30%と決められています。

確定申告をせず、税務調査で無申告が発覚したと仮定しましょう。その際、無申告がバレても本来と同額の所得税や法人税の納税しか求められない場合、正しく確定申告をしても、しなくても、納める税額に差が生じません。同じ税額を納めるだけで済むのであれば、自ら確定申告をして納税するのではなく、税務調査で見つかった時に納税すればよいと考える人が増えるのではないでしょうか。期限内に正しく申告をしなければ、ペナルティが科せられるため、多くの人は期限内に確定申告をしているのです。そのため、無申告者に対しては、正しく申告を行っていた場合に比べて、税負担が大きくなる無申告加算税が設けられています。

 

延滞税の納税も求められる

延滞税は、税金の納付が遅れたことに対する利息的な意味合いを持つ付帯税で、納期限の翌日から納税が完了する日まで、課され続けるという性質を持ちます。

延滞税の税率は年によって異なるものの、令和4年1月1日から令和7年12月31日までは、以下のように定められています。

・納期限の翌日から2ヶ月を経過する日まで 年2.4%

・納期限の翌日から2ヶ月を経過して以降  年8.7%

数年にわたって無申告状態であった場合、所得に課せられる税金、無申告加算税、延滞税を含んだ追徴課税が行われると、納税額は大きな負担になるでしょう。

 

個人事業主が無申告状態でいることのリスク

一人親方やフリーランスエンジニアとして仕事をしている人が無申告状態を続ける場合、無申告加算税や延滞税といったペナルティが課せられること以外にもリスクが生じます。まず、無申告状態の場合、収入を証明する書類がありません。例えば、マイホームを取得したい場合、住宅ローンの申請時には収入を証明する書類の提出が必要です。会社員の場合には源泉徴収票などの提出が必要ですが、個人事業主の場合には確定申告書の控えや納税証明書などの提出が必要になります。しかしながら、無申告状態の場合は、これらの書類を提出することができないため、住宅ローンの審査を通過できず、マイホームの取得が難しくなる可能性があるのです。

また、住宅ローンだけでなく、事業用ローンの申請をする際にも、収入を証明する書類の提出が必要です。事業の拡大に向け融資の利用を検討している場合も、確定申告をしていなければ融資を受けられず、事業の拡大を図ることができません。

 

元請けに税務調査が入る前に自主的な期限後申告を

個人事業主の中小規模事業者の中には、売り上げが少ないから無申告でもバレないだろうと考え、確定申告をしない人がいます。しかし、元請けに税務調査が入った場合は、下請け業者についても調査が行われる可能性が高くなります。税務調査で無申告が指摘されれば、無申告加算税や延滞税の納税が求められ、本来よりも多額の納税をしなければならなくなります。少しでも税負担の軽減を図る場合には、元請けに税務調査が入る前に自主的に期限後申告を行うことをおすすめします。

 

自主的な期限後申告とは

毎年、確定申告の時期は決められています。個人事業主の場合は2月15日から3月16日までの間に、前年の1月1日から12月31日までの収支を計算し、算出した所得税を納税しなければなりません。法人の場合は、事業年度を自由に設定できるため、個人事業主の確定申告のように同じ時期に申告をする必要はありませんが、事業年度終了後の翌日から2ヶ月以内に申告書を提出する必要があります。

確定申告の期限を過ぎて、申告書を提出することを期限後申告と言います。また、自主的な期限後申告とは、税務調査の指摘や事前通知を受ける前に納税者が自ら期限後申告を行うことです。

 

自主的に期限後申告を行うメリット

無申告者が自主的に期限後申告を行うメリットは、無申告加算税の軽減を受けられる点です。税務調査が実施される前には、税務署から税務調査に入る旨を伝える事前通知がなされます。

この事前通知を受けてから税務調査が行われるまでの間に、自主的に期限後申告を行うと、無申告加算税の税額は、5%ずつ軽減され、納付すべき税額が50万円以下の部分については10%、50万円超300万円以下の部分については20%、300万円超の部分については25%となります。さらに、税務調査の事前通知を受ける前に自主的に期限後申告を行った場合の無申告加算税の税率は、5%にまで低減されるのです。

前述のように無申告加算税の税率は、納付額が50万円以下の部分は15%、50万円超300万円以下の部分は20%、300万円超の部分は30%です。自主的に期限後申告を行うと、無申告加算税の税率は、大きく軽減されることがお分かりになるでしょう。

また、無申告加算税だけでなく、早く納付することで延滞税の納税負担も軽減できます。

 

まとめ

元請けに税務調査が入り、下請け業者の無申告がバレたという事例は少なくありません。税務調査の際には、帳簿や書類を細かくチェックします。そのため、取引先についての情報も得ることができ、元請けの情報を元に、取引先についても税務調査が実施される可能性があるのです。元請けが外注費を支払ったと計上しているにもかかわらず、外注先である下請け業者が確定申告をしていなければ、不正に納税を怠っていたこととなり、税務調査が実施されるでしょう。

無申告がバレると無申告加算税や延滞税の納税が求められます。少しでも納税の負担を低く抑えたいのであれば、元請けに税務調査が入る前に自主的に期限後申告を行うようにしましょう。確定申告が初めての場合など、手続きに不安がある場合には、税の専門家である税理士への相談をおすすめします。

 

-免責事項-

 当ブログのコンテンツ・情報について、できる限り正確な情報を提供するように努めておりますが、正確性や安全性を保証するものではありません。内容は記事作成時点の法律に基づいています。当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

 

この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上

  • 現在、税務調査が入っているので困っている
  • 過去分からサポートしてくれる税理士に依頼したい
  • 税務調査に強い税理士に変更したい
  • 自分では対応できないので、税理士に依頼したい
といったお悩みを抱えている方は、まずは初回電話無料相談をご利用ください。
税務調査の専門家が対応させていただきます。

税理士法人松本の強み

  • 税務署目線、税理士目線、お客様目線の三方良しの考え方でアドバイス
  • 過去の無申告分から現在まですべて対応可能
  • 査察案件から税務署案件までの経験と実績が豊富にあります
  • 顧問税理士がさじを投げた案件も途中から対応できます

30秒で完了かんたん税務調査リスク診断

あわせて読みたい記事

税務調査ブログをもっと見る

税務調査は対応次第で結果が大きく変わります!

税務調査お悩み解決しませんか?
いますぐ電話1本で相談できます!

専門家があなたの税務調査に関する不安を一つ一つ丁寧に解決。
初回有料相談は返金保証付きで、どんな小さなご相談も全国から承ります。

税理士法人松本代表税理士 松本 崇宏

30秒で完了かんたん税務調査リスク診断