2025.09.3
  • 税務調査
  • 無申告
  • 期限後申告

バーに税務調査が入る確率が高い理由とチェックされやすいポイント

読了目安時間:約 6分

現金決済が多い飲食店・バーは、は税務調査の対象に選ばれやすい業種といわれています。

また、飲食店・バーに対する税務調査では、まるで映画や小説のような調査方法が採用されることも……。

税務調査対応専門チームがある税理士法人松本の代表税理士である松本崇宏氏が、飲食店・バーに対する税務調査の実態と、税務調査においてチェックされやすいポイントを解説します。

 

Youtubeでも様々な内容を解説しています!Youtube

なぜ、バーや飲食店は税務調査の対象になりやすいのか?

バーをはじめとする飲食店は、税務調査の対象に選ばれやすい業種とされています。その背景には、以下のような理由が関係していると考えられます。

 

現金商売であり現金決済のケースが多いから

近年、キャッシュレス決済を導入する店舗が増えてきたとはいえ、バーでは依然として現金での支払いが主流です。現金取引では、銀行振込と異なり記録が自動的に残らないため、売上伝票などをもとに帳簿に記載する際に、売上の一部について記載することを忘れてしまったり、誤った金額を記載してしまうケースが多く見られます。

また、意図的に売上を過少に記載するなど、不正行為がしやすい点も現金商売の特徴です。

 

不正の可能性が高い業種と見なされているから

バーを含む飲食業は、正しく申告していない可能性が高い業種として知られています。個人事業主による小規模経営から、法人化しているケースまでさまざまですが、国税庁が公表した「令和5事務年度法人税等の調査実績の概要」では、バー・クラブが法人税の不正発見割合で第1位(59.0%)となっています。

また、不正発見割合の上位には、2位:その他の飲食業、3位:外国料理と、飲食業が多くランクインしています。

税務調査は、税務署職員のうち限られた調査官が実施するため、不正の多い業種を重点的に調査することで、より効率的に正しい申告を促すことができます。したがって、不正発見率が高いバー・クラブは、税務調査の対象に選ばれやすいのです。

 

バーや飲食店の税務調査でチェックされやすいポイント

バーや飲食店に対する税務調査では、以下のような点が重点的に確認されます。

 

現金の管理方法

現金商売であるバーや飲食店では、現金出納帳とレジ内の現金残高が一致しているかが確認されます。金額に差異がある場合、その理由について詳しい調査が実施されます。

 

売上の計上漏れや計上誤り

伝票・領収書・売上帳などを基に、売上が正しく計上されているか細かくチェックされます。意図せずとも計上漏れが発生しやすいため、厳しく確認されるポイントです。

 

在庫管理と棚卸の適正性

お酒や食材などの在庫が適正に管理されているかも確認されます。仕入状況、棚卸の記録、在庫の計上漏れなどがチェックされるほか、おしぼりの発注数と在庫数との差から使用数を算定し、これを見込み客数と考えて平均客単価を乗じることで売上の整合性も検証されます。

 

人件費は正しく計上されているか

アルバイトを多く雇用するバーや飲食店では、実在しない人物に対する給与支払い(架空人件費)などの不正が見られることもあります。調査では、タイムカードやシフト表、履歴書などをもとに人物の実在や人件費の実態を確認します。

 

プライベートな費用と事業の費用を明確に区分しているか

個人事業主が運営するバーや飲食店では、私的な支出を経費として計上するケースも見られます。支出した経費が事業に直接関係するかがチェックされ、自家消費した酒類・食材などは売上として計上する必要があるため、適切に処理されているかも確認されます。

 

バーや飲食店に税務調査が入る際の注意点

バーや飲食店の税務調査には、他業種には見られない特有の特徴があります。

 

まるで「マルサの女」の映画…事前に「内偵調査」が行われるケースがある

国税局や税務署は、税務調査前に調査官が客を装って来店する「内偵調査」を行うことがあります。店の広さや客席数、客単価、客の入りなどをチェックし、申告内容と実際の売上に乖離がないかを確認するためです。

調査官が実際に飲食した場合、そのレシートや領収書を保管し、後日税務調査時に納税者が保管している申告に係る証拠書類と照合することで、売上が正確に計上されているかを確認します。

 

事前通知の通知事項について

国税局や税務署による税務調査が行われる場合、税務調査を実施する前に税務調査を行う旨を納税者に通知しなければなりません。国税通則法第74条の9では、税務調査を行う際には、あらかじめ次の事項を通知するものとするとしています。また、この通知事項は事前通知あり・なしに関わらず、調査手続きとして法的に行わなければなりません。

 

通知事項の内容

・税務調査の開始日時

・調査を行う場所

・調査の目的

・実地調査であること

・調査の対象となる税目

・調査の対象となる期間

・調査の対象となる帳簿書類その他の物件

・その他調査の適性かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項

 

通知事項の通知方法について

通常、事前通知を行う場合は、電話で行われますが、ほかにも直接納税地に臨場して口頭で通知したり、臨場時に閉戸不在であれば、不在文書と言われる臨場した目的を記した書面に通知事項が記載されている場合もあります。

国税調査官等が注意しなければならないのは、前述した通知事項は、下記で説明する事前通知なしで調査を実施する場合であっても、調査を開始する前に必ず通知しなければならないということです。

もし、事前通知なしの調査で国税調査官等がこの通知事項を通知せずに調査を開始する場合には、重大な調査手続き違反となる可能性があります。

 

事前通知なしで調査が実施されることがある

通常の税務調査では、事前通知が義務付けられています(国税通則法第74条の9)。しかし、同法の第74条の10では、事前通知を行うことによって正確な税務調査が困難になる恐れがある場合には、事前通知が不要であることも記載されています。

つまり、事前に連絡をすることで帳簿や伝票を破棄してしまうような恐れがある場合や、改ざんを行う恐れがある場合などは、事前通知をする必要はないということです。

特に、現金での取引が中心となるバーなどの飲食店の場合、税務調査の事前通知を行うことで、税務調査を実施するまでの間に伝票を廃棄したり、タイムカードを改ざんしたりといった行為が行われる可能性が高いと考えられています。

そのため、事前通知なしで税務調査が行われる場合もあるのです。ただし、事前通知なしの場合であっても前述のとおり、国税調査官等は調査開始前に調査通知事項を伝えなければなりません。

 

事前通知なしの調査により調査官が来訪時の対応

事前通知がなく税務調査が始まった場合でも、その場で必ず応じる必要はありません。営業への支障や税理士への相談を理由に、日程変更を申し出ることが可能です。

バーや飲食店の営業に支障が出る場合や税理士に相談したい場合などは、別日程で調査を受けたい旨を説明し、日程調整を願い出るようにしましょう。

顧問税理士がいる場合にはその税理士に連絡し、税務調査の対応を依頼します。

また、顧問税理士がいない場合でも、税務調査の対応だけをスポットで引き受ける税理士に立ち会いを依頼することをおすすめします。

 

ミスや不正を指摘された場合のリスク

税務調査によってミスや不正が発覚した場合、状況に応じて以下のようなリスクが生じます。

 

計上漏れなど意図的ではない過少申告となっていた場合

売上の一部計上漏れや経費の記載ミスなどが原因で本来納めるべき納税額が不足していた場合、修正申告が必要となります。追徴本税額に加え、過少申告加算税(令和6年度で最大25%)と延滞税(利息相当)が課されます。

 

無申告だった場合

一般的な税務調査では、過去3年分の申告内容について調査が行われます。過去3年分の調査を行い、なにかしらミスが発覚した場合には、過去5年分にまで遡って調査をすることもあります。しかし、無申告が発覚すると、過去3年分ではなく原則、過去5年分が調査対象になります。

つまり、税務調査では過去3年分の所得の状況だけを調べられるわけではないのです。無申告の場合には通常、過去5年分の所得状況を調べられることになるため、結果的に税務調査によって発覚する申告逃れによる税額は、過去5年間分の税額になるというわけです。

 

無申告加算税が課せられる

確定申告が必要であったにもかかわらず、確定申告をしていなかった場合には、本来納めるべき税金の納税を求められるだけでなく、ペナルティとして無申告加算税(令和6年度で最大35%)の納税も求められます。

無申告加算税の税率は原則、税額が50万円以下の部分については15%、税額が50万円を超え300万円以下の部分については20%、300万円を超える部分については30%となっています。

例えば、税務調査によって、ある1年間分の納めるべき所得税の額が1,000万円に上ったと仮定します。

この場合を例に、無申告加算税の税額を計算すると以下のようになります。

 

(本税が50万円までの部分)

50万円×15%=7万5,000円

 

(本税が50万円超300万円以下の部分)

250万円×20%=50万円

 

(本税が300万円超の部分)

700万円×30%=210万円

 

(無申告加算税額の合計)

7万5,000円+50万円+210万円=267万5,000円

 

この例では、正しく確定申告を行い、納税していた場合の税負担は1,000万円であったところ、無申告状態であったために267万5,000円も多く納税をしなければならなくなるのです。さらに、後述する延滞税の納税も求められるため、合計の追徴税額はより大きな金額となります。

 

延滞税が課せられる

無申告加算税は、確定申告をしなかったことに対するペナルティですが、延滞税は納税が遅れたことに対する利息的な性格をもつ附帯税です。令和4年1月1日から令和7年12月31日までの延滞税の税率は、以下のように定められています。

 

・納期限の翌日から納付日が2ヵ月を経過する日まで ― 年利2.4%

・納期限の翌日から納付日が2ヵ月を経過して以降 ― 年利8.7%

 

延滞税は、本来納めるべき本税額の納付が完了するまで1日単位で賦課され続けます。過去5年間無申告であった場合、課される延滞税の額も高額になるでしょう。

 

意図的な不正があった場合

確定申告をする必要があることをわかっていながら確定申告をせず、多額の所得を隠蔽したり、所得がないように仮装していたりした場合などは、無申告加算税に代えてより税率の重い重加算税が課されます。無申告加算税に代えて重加算税が適用される場合、その税率は最大で50%(令和6年度)になります。

先ほどの例のように無申告で1,000万円の納税が不足していた場合、最大税率を適用されて重加算税が課されると納税額は1,500万円に膨れ上がります。延滞税も除算期間が認められず、通常よりも延滞税の計算期間が非常に長くなるため、すべてを合計すると膨大な税額が課されることになります。

 

脱税の罪で起訴される可能性もある

納税の必要性を理解していたにもかかわらず、仮装・隠蔽などの悪質な行為が見られ、多額の申告納税逃れを行っており、脱税行為と認定された場合には、重加算税が課されるだけでなく、所得税法違反や法人税法違反などとして検察庁に告発される可能性があり、脱税の罪で起訴された場合には罰金刑や懲役刑などの刑事罰が科されることもあります。

裁判によって脱税の罪で有罪判決が下された場合、重加算税や延滞税の支払いといったペナルティだけでなく、刑事罰も科せられる可能性があるのです。脱税の場合、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科せられます。

 

現金商売の業種は特に注意が必要

バーは、税務調査の対象に選ばれやすい業種です。なぜなら、令和5事務年度において、最も法人税の不正発覚割合が高かった業種がバーだからです。バーに限らず、現金で売上を受け取ることの多い飲食業は、不正や計上漏れなどが起きやすい業種として知られています。

税務調査では、不正行為や経理ミスを指摘し、正しい申告を促すことが目的です。そのため、申告漏れや経理ミスの多いバーなどの飲食店は、税務調査の対象として選ばれやすいのです。

バーなどの飲食店に税務調査が入る場合、事前に内偵調査が行われている可能性や、事前通知なく税務調査が行われる場合もあります。急に税務調査が実施されても困ることがないよう、普段からしっかり証拠書類等を保存して帳簿付けを行い、正しい申告を行うようにしましょう。

 

-免責事項-

当ブログのコンテンツ・情報について、できる限り正確な情報を提供するように努めておりますが、正確性や安全性を保証するものではありません。内容は記事作成時点の法律に基づいています。当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上

  • 現在、税務調査が入っているので困っている
  • 過去分からサポートしてくれる税理士に依頼したい
  • 税務調査に強い税理士に変更したい
  • 自分では対応できないので、税理士に依頼したい
といったお悩みを抱えている方は、まずは初回電話無料相談をご利用ください。
税務調査の専門家が対応させていただきます。

税理士法人松本の強み

  • 税務署目線、税理士目線、お客様目線の三方良しの考え方でアドバイス
  • 過去の無申告分から現在まですべて対応可能
  • 査察案件から税務署案件までの経験と実績が豊富にあります
  • 顧問税理士がさじを投げた案件も途中から対応できます

30秒で完了かんたん税務調査リスク診断

あわせて読みたい記事

税務調査ブログをもっと見る

税務調査は対応次第で結果が大きく変わります!

税務調査お悩み解決しませんか?
いますぐ電話1本で相談できます!

専門家があなたの税務調査に関する不安を一つ一つ丁寧に解決。
初回有料相談は返金保証付きで、どんな小さなご相談も全国から承ります。

税理士法人松本代表税理士 松本 崇宏

30秒で完了かんたん税務調査リスク診断