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バーに税務調査が入る確率が高い理由とチェックされやすいポイント

読了目安時間:約 6分
カウンターを中心とした店内で、ウィスキーやカクテルなどを提供するバーは、お酒をじっくり堪能できる場です。純粋にお酒を提供するオーセンティックバーと呼ばれるバーや食事メニューも充実させたダイニングバー、スポーツ観戦ができるスポーツバー、ジャズを楽しめるジャズバーなどその種類はさまざまです。
お酒好きな方の中には、自分のお店を持ちたいとバーを開業した方もいらっしゃるでしょう。しかし、バーは、税務調査に入る確率が高い業種と言われているため、日頃から税務調査に備え、しっかりと帳簿付けを行うことが大切です。ではなぜ、バーは税務調査の対象になる確率が高いのでしょうか。
今回は、バーが税務調査の対象に選ばれやすい理由や税務調査時にチェックされやすいポイントなどについてご説明します。
なぜ、バーは税務調査の対象になりやすい?
バーを始め、飲食店は税務調査の対象に選ばれやすいと言われています。その背景には次のような理由が関係すると考えられます。
現金商売をしているケースが多いから
バーの中には、キャッシュレス決済を導入しているお店も増えていますが、まだまだ現金での支払いが主流です。お客さんから現金でお金を受け取る業種の場合、ミスや不正が発覚しやすいと言われています。
現金ではなく、銀行振込での取引の場合、銀行口座には振り込みや入金の記録が残ります。しかし、現金商売の場合、現金を受け渡した記録が自動的に残ることはありません。そのため、売上伝票などを元に帳簿に記載する際に一部の売上を計上することを忘れてしまったり、実際とは異なる金額を記載してしまったりというケースが多いのです。また、ミスではなく、意図的に売上を過少に計上するといった操作もしやすくなるのが現金商売の特徴だとも言えます。
不正をしている可能性が高い業種だから
バーを含め、飲食店は正しく申告をしていない可能性が高い業種だとして知られています。バーは、個人事業主として運営している小規模の場合もあれば、法人化し、会社として経営しているケースがあります。国税庁が公表している「令和5事務年度法人税等の調査実績の概要」によると、バー・クラブは法人税の不正発見割合の高い業種の1位になっているのです。なんと、バー・クラブの不正発見割合は59.0%にも上ります。また、バーだけでなく、飲食業全体の不正の割合が高くなっており、不正発見割合の多い業種のうち、2位にその他の飲食、3位に外国料理がランキングしているのです。
税務調査の目的は、正しい納税を促進することであり、税務調査によって納税額が不足していることが発覚した納税者に対しては不足分の納税を求めます。税務調査は、税務署の調査官によって実施されますが、限られた人数の調査官で法人や個人も含めたすべての納税者を対象に税務調査を実施することはできません。そのため、ミスや不正によって納税額が不足している納税者に対して正しい納税を求めるためには、不正が多く見られる業種を中心に税務調査を行った方が効率よく目的を達成できます。したがって、不正の発見割合が最も多い業種であるバーは税務調査の対象に選ばれる確率が高いのです。
バーの税務調査でチェックされやすいポイント
バーに対して行われる税務調査では、次のようなポイントをチェックされるケースが多くなっています。
現金の管理方法
現金での支払いが多くなるバーでは、現金をどのように管理しているのかがチェックされます。現金出納帳に記載されている金額とレジの中の現金残高が合致しているかを確認し、金額にずれがある場合には、なぜ金額のずれが生じているのか詳しい調査が実施されます。
売上の計上漏れがないか、計上金額に誤りがないか
バーの税務調査では、売上が正しく計上されているかについても、厳しいチェックが行われます。現金商売の場合、意図していない場合でも売上の計上漏れが生じやすくなります。そのため売上元帳と伝票、領収書などを一つひとつチェックし、計上漏れがないか、計上されている金額に誤りがないか徹底的な調査が行われます。
在庫を正しく計上しているか
バーでは、お酒やフードメニューの材料などを仕入れています。そのため、税務調査時には、仕入れの状況や在庫の確認を行い、棚卸が正しく行われているか、期末の在庫分の仕入れ費用を当期の費用に含めていないかなどについて細かいチェックがなされます。また、店内をチェックしながら、在庫の計上漏れがないかについても確認が行われます。
さらに、おしぼりを提供している場合などは、おしぼりの発注数から、だいたいのお客の数を推測することが可能です。そのため、おしぼりの発注数に比べて売上高が低すぎる場合などは、売上の計上漏れがあるのではと疑われるケースもあります。
人件費は正しく計上されているか
バーに限らず、飲食店の中には、経費を過大に計上して所得額を低く装い、納税額を低く抑えようとするケースがあります。飲食店が経費を過大計上する際には、人件費を水増しするケースが多くなっています。
バーの営業時間は夜間になるため、正社員よりアルバイトを採用するケースが多くなるでしょう。アルバイトは正社員に比べて短期間で入れ替わるケースが少なくありません。そのため、実際には採用していない架空の人物に給与を支払ったことに見せかけ、所得額を低く装うケースがあるのです。
税務調査では、タイムカードやシフト表、履歴書などをチェックしながら、人件費の計上額が正しいかどうかの確認が行われます。
プライベートな費用と事業の費用を明確に区分しているか
個人事業主としてバーを営む場合、プライベートな費用も経費として計上しているケースが見られます。そのため、経費をチェックする際には、事業用のものであるか、プライベートな費用に該当するのか、細かくチェックがなされます。
また、バーで提供するために仕入れたお酒などを個人で消費した場合、その分については売上として計上しなければなりません。自家消費が行われていないかについてもバーの税務調査ではチェックされます。
バーに税務調査が入る際の注意点
バーに対して実施される税務調査は、他の業種を営む法人や個人事業主に対する税務調査とは異なる点があります。バーの税務調査の特徴を2点ご紹介します。
事前に内偵調査が行われるケースがある
内偵調査とは、バーなどの飲食店に対して税務調査を行う際、調査官が事前に客を装って店に潜入し、客の入り具合や客単価、店の広さ、客席の数などをチェックする調査のことです。店の前に一定時間張り込むことで、だいたいどのくらいの客数が訪れるのかを把握することができます。また、実際にバーの中に入り、お酒を注文することで、メニューの単価や店内の客席数、客単価などを推測することが可能です。
内偵調査を実施した場合、客単価と客の人数からある程度の売上額の予測をすることができます。提出された申告内容に記載されている売上額と大きく乖離している場合などは、税務調査で売上の計上漏れが行われていないか、詳細にチェックがなされるでしょう。また調査官が飲食をした場合のレシートを保管しておき、税務調査時の売上元帳のチェックをする際、調査官の飲食分の売上が正しく計上されているかをチェックするケースもあります。
内偵調査が行われていた場合、税務調査でさまざまな指摘がなされる際に、調査官はある程度の確信を持って不正を指摘していると考えられます。そのため、何らかの質問を受けた際には、正直に回答をするようにしましょう。
事前通知が行われない可能性がある
税務署による税務調査が行われる場合、原則として、税務調査を実施する前に税務調査に入る旨を納税者に通知しなければなりません。国税通則法第74条の9では、税務調査を行う際には、予め次の事項を通知するものとするとしています。
・税務調査の開始日時
・調査を行う場所
・調査の目的
・調査の対象となる税目
・調査の対象となる期間
・調査の対象となる帳簿書類その他の物件
・その他調査の適性かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項
しかし、同法の第74条の10では、事前通知を行うことによって正確な税務調査が困難になる恐れがある場合には、事前通知が不要であることも記載されています。つまり、事前に連絡をすることで帳簿や伝票を破棄してしまうような恐れがある場合や、改ざんを行う恐れがある場合などは、事前通知をする必要はないということです。
特に、現金での取引が中心となるバーなどの飲食店の場合、税務調査の事前通知を行うことで、税務調査を実施するまでの間に伝票を廃棄したり、タイムカードを改ざんしたりといった行為が行われる可能性が高いと考えられています。そのため、事前通知なしで税務調査が行われる場合もあるのです。
事前通知なしで調査官が訪れた時の対処法とは
事前通知なしで税務署の調査官が訪れた場合、必ずその場で税務調査を受けなければならないわけではありません。税務調査を拒否することはできませんが、税務調査の日時を調整してもらうことは可能です。バーの営業に支障が出る場合や税理士に相談したい場合などは、別日程で調査を受けたい旨を説明し、日程調整を願い出るようにしましょう。
顧問税理士がいる場合には、税理士に連絡し、税務調査の対応を依頼します。また、顧問税理士がいない場合でも、税務調査の対応だけをピンポイントで引き受ける税理士に立ち会いを依頼することをおすすめします。
バーの税務調査でミスや不正を指摘されるとどうなる?
バーに税務調査が入り、ミスや不正を指摘されると次のようなリスクが生じます。
申告をしていなかった場合
そもそも申告をしていない無申告の状態であった場合には、不足分の納税額に加え、無申告加算税、延滞税の納税が求められます。また、税務調査の調査対象期間は3年間ですが、無申告の場合は調査対象期間が5年になります。したがって、税務調査で無申告が発覚した場合、最大過去5年分の無申告加算税と延滞税の納税も求められることになるのです。
無申告加算税の税率は、税額が50万円以下の部分については15%、50万円を超え300万円までの部分については20%、300万円を超える部分については30%となっています。5年分の税額に加え、無申告加算税、延滞税が課された場合、追徴課税額は相当な額になる可能性もあるでしょう。
ミスなどにより納税額が不足していた場合
売上の計上漏れなどによって、本来よりも所得額を低く申告していた場合、税務調査での指摘された箇所を修正し、正しく申告をし直す修正申告を行う必要があります。また、不足分の税額に加え、納付金額が不足していたことのペナルティとして過少申告加算税の納税と延滞税の納税もされます。
過少申告加算税の税率は10%ですが、期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分については15%となります。
売上の隠蔽や架空経費の計上など悪質な不正が見られた場合
認識不足によるミスや単純な計上漏れなどではなく、意図的に売上を隠蔽した場合や架空経費を計上した場合などの不正行為が見られた場合、無申告加算税や過少申告加算税よりもさらに税率の重い重加算税が課せられる可能性があります。
重加算税の税率は、過少申告加算税に代わる場合は35%、無申告加算税に代わる場合は40%です。さらに、延滞税の納税も求められます。
また、売上の隠蔽や架空経費の計上などは脱税に該当する行為です。そのため、脱税の罪で告発される恐れもあります。裁判によって、所得税法違反または法人税法違反の罪が確定すると、重加算税の賦課だけでなく、罰金や懲役刑の刑事罰が科される可能性がある点にも注意が必要です。
まとめ
バーは、税務調査の対象に選ばれやすい業種です。なぜなら、令和5事務年度において、最も法人税の不正発覚割合が高かった業種がバーだからです。バーに限らず、現金で売上を受け取ることの多い飲食業は、不正や計上漏れなどが起きやすい業種として知られています。税務調査では、不正やミスを指摘し、正しい納税を促すことが目的です。そのため、申告漏れやミスの多いバーなどの飲食店は、税務調査の対象として選ばれやすいのです。
バーに税務調査が入る場合、事前に内偵調査が行われている可能性や、事前通知なく税務調査が行われる場合もあります。急に税務調査が実施されても困ることがないよう、普段からしっかり帳簿付けを行い、正しく申告を行うようにしましょう。
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この記事の監修者

税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
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