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確定申告をしないライバーに税務調査が入る?経費の不正計上にも注意

読了目安時間:約 6分
YouTubeで動画を投稿する人をYouTuberと言いますが、配信アプリや配信サイトを使ってライブ配信を行う人をライバーと言います。ライバーは、視聴者からの投げ銭や企業案件などによって収入を得ています。これらの収入を得た場合、ライバーも確定申告を行い、所得税を納税しなければなりません。確定申告の必要があるにもかかわらず、確定申告をしないライバーに対しては税務調査が行われる可能性が高くなります。
では、ライバーを対象とした税務調査ではどのようなことが行われるのでしょうか。今回は、確定申告をしていないライバーに税務調査が入る場合のリスクや経費の不正計上などについてご説明します。
目次
税務調査とは
税務調査とは、納税者が正しく納税をしているかを確認する税務署や国税局による調査です。日本では、申告納税制度が採用されており、納税者は自ら所得額を申告し、納税を行わなければなりません。申告納税制度は、強制的に税金を納めさせるのではなく、納税者が自主的に税金を納めることとなります。そのため、納税者の中には確定申告をせず、納税の義務を果たさないケースや正しく確定申告をせず、納税額を低く抑えようとするケースが見られます。
確定申告をしないことで納税の義務を免れるのであれば、正しく確定申告をしている納税者の不満が強まります。また、申告内容の不備や不正が見逃される状態も、正しく納税している納税者が不公平感を募らせる原因となるでしょう。
そのため、税務署や国税局では税務調査を実施します。税務調査の目的は、確定申告を正しく行わず、不正に納税を逃れようとする納税者や確定申告の処理方法が誤っているために意図せず納税額が低くなっている納税者に対し、正しい納税を促すことです。
ライバーが増加した背景とライバーの確定申告に関する認識
ライバーは、コロナ禍で一気に増加したと言われています。コロナ禍では、行動制限がなされたことによりさまざまな産業が打撃を受け、雇用も減少しました。行動制限によって収入が減少したことで、ライブ配信をするライバーとして少しでも収入を増やそうと考える人が増えたのです。また、外出や外食を避け、自宅で過ごす時間が増えたことから、自宅で楽しめるエンターテインメントとしてライブ配信を視聴する人も増えました。ライバーとして活動したい人とライブ配信を視聴する人の増加が重なり、ライバーは一気に増加したと考えられています。
ある程度の知名度を得ている有名ライバーの場合、ライブ配信中に特定の企業の商品やサービスを紹介する、企業案件でお金を得ているケースもあります。しかし、多くのライバーの収入源は、視聴者からの投げ銭です。ライブ配信を見ている視聴者が、金銭を送ったり、応援アイテムを購入してプレゼントする仕組みを投げ銭と言います。
ライバーには信者とも呼ばれるような熱心な視聴者が、高額な投げ銭をするケースもあります。そのため、ライバーには、ライブ配信でもらえる投げ銭は、自分を支援してくれる視聴者からのプレゼントだと捉えるケースが少なくないのです。
ライバーの中には確定申告をしていない無申告状態の人が多いと言われています。それは、ライブ配信で得られる投げ銭は収入に該当すると捉えていない人が多いからではないでしょうか。
しかし、YouTuberが動画投稿で得られるお金が所得に該当するのと同様、ライバーがライブ配信をすることで得られる投げ銭も所得に該当します。そのため、ライブ配信によって一定以上のお金を得ているライバーは確定申告をしなければならないのです。
確定申告をしていないライバーに税務調査は入る?
税務調査は、納税者が正しく申告をし、正しく納税をしているかをチェックする調査です。したがって、税務調査の対象となるのは納税の義務がある人や法人であり、職業によって調査の対象が選ばれるわけではありません。そのため、当然、ライバーもライブ配信によって一定以上の所得を得ているのであれば、税務調査の対象に選ばれる可能性があります。
ライバーは税務調査での申告漏れ額が多い
国税庁では、毎年、税務調査の結果を公表しています。令和5年度の所得税の税務調査の結果を示した「令和5事務年度所得税及び消費税調査等の状況」によると、ライバーを含む、コンテンツ配信の業種は、事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な業種の第3位です。
確定申告しないライバーへの税務調査が増える?
同報告書では、次のように記し、確定申告をしない無申告者に対する税務調査強化の方針を示しています。
「無申告は、自発的に適正な納税をしている納税者に強い不公平感をもたらすこととなるため、的確かつ厳格に対応していく必要があります。こうした無申告者に対しては、更なる資料情報の収集及び活用を図るなどして、実地調査のみならず、簡易な接触も活用し積極的に調査を実施しています。」
したがって、今後、確定申告をしないライバーへの税務調査はますます増加すると考えられます。
確定申告をしていないライバーに税務調査が入るとどうなる?
確定申告をしていないライバーに税務調査が入った場合、次のようなペナルティが課せられる可能性があります。
税務調査では過去5年分に遡った調査が行われる
税務調査は、基本的には過去3年分の所得内容についての調査がなされます。しかし、無申告状態の場合には、過去5年に遡って調査が行われることとなります。
ライバー活動を開始し、5年以上が経過している場合、過去5年分のライバー活動で得た所得が調査され、過去5年分の納税が求められることになります。
無申告加算税の納付が求められる
無申告が発覚した場合、所得に応じた所得税の納税が求められるだけでなく、ペナルティ分の納税も求められることになります。無申告加算税とは、確定申告を期限までに行わなかった納税者に対して科せられるペナルティです。
無申告加算税の額は、納税額に応じて変わってきます。無申告加算税の課税割合は、納税額に対し、50万円までの部分については15%、50万円を超え300万円以下の部分については20%、300万円超の部分については30%です。
重加算税の納税が求められる場合もある
ライバーの中には、確定申告をしなければならないことが分かっていたにも関わらず、ライバーの収入はバレないだろうと考え、意図的に確定申告をしない人もいます。また、ライバーの収入を隠蔽するケースもあるでしょう。
そのような不正行為が見られた場合、無申告加算税ではなく、重加算税が課されます。重加算税は、無申告加算税よりもさらに重い税率が設定されているものです。無申告加算税に代わって重加算税が課される場合の税率は、40%にも上ります。
延滞税の納付が求められる
税務調査で無申告状態が発覚した場合にライバーが負担しなければならない税金は、不足分の税額や加算税だけではありません。税金の納付が遅れたことに対するペナルティである延滞税の納付も必要になります。
延滞税の税率は、納期限の翌日から2ヶ月を超える日までと納期限の翌月から2ヶ月を経過する日の翌日以降で変わってきます。また、延滞税は、納税が完了する日まで1日単位で課される付帯税です。したがって、納税が完了するまでの時間が長くなればなるほど、延滞税の額は高額になります。
脱税の罪に問われる可能性もある
ライバー活動で多額の収入を得ながら、意図的に確定申告をしなかった場合や収入を隠蔽するなどの不正行為が見られた場合、脱税の罪に問われる可能性もあります。その場合、刑事事件として告発され、裁判で有罪が決定すると、加算税などの納付に加え、刑事罰も科せられることになります。所得税法違反の場合、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科される恐れがあるのです。
税務調査によってライバーの多額の脱税が発覚すれば、ニュースにもなり、その後のライバー活動にも影響が生じるでしょう。
ライバーが確定申告をする際には経費の不正計上にも注意
確定申告をしていないライバーは、税務調査の対象として選ばれる可能性が高くなります。しかし、確定申告をしているからといって必ず税務調査の対象から外れるわけではありません。確定申告をしているライバーであっても、税務調査が入る可能性はあるのです。
税務調査の対象になりやすいライバーとは
税務署ではさまざまな角度から情報を収集しており、多額の投げ銭などを受け取っているライバーがいれば、確定申告をしているかどうかのチェックをするでしょう。その際、確定申告をしていない場合は、税務調査が実施されることになりますが、確定申告をしている場合でも税務調査の対象になってしまう場合があります。それは、確定申告の内容に疑義が生じるケースです。
例えば、ライバーの収入に対して経費の割合が大きい場合などは、調査官に疑問を持たれる可能性が高くなるでしょう。所得税は、収入から経費を差し引いた所得額に対して課せられる税金です。所得額が低くなれば、所得税の額も低くなるため、何とか税金の負担を逃れようと経費を過剰に計上する人がいます。そのため、確定申告をしているライバーでも、多額の経費を計上している場合などは、調査官が不審に思い、税務調査が実施される可能性があるのです。
ライバーが確定申告時に経費として計上できる支出とは
ライバーが経費として計上できる支出は、ライブ配信活動に必要と認められるものです。具体的には、次のような費用がライバーの経費に該当します。
・撮影をするための機材の購入費用
パソコンやスマートフォン、ライト、カメラ、スマホスタンドなど、ライブ配信のために必要な機材の購入費用は、経費として計上が可能です。
・ライブ配信のための衣装やメイクグッズの購入費用
ライブ配信のときだけ着用する衣装の購入代金やライブ配信のためのメイクグッズの購入代金なども、経費として計上できます。しかしながら、ライバーの経費として認められるのは、ライブ配信をするために必要となった支出に限られます。普段着でライブ配信をする場合などは、衣服の購入費用を経費として計上することはできません。
・ライブ配信のためにかかった交通費
イベントのライブレポートをしたり、観光地などでライブ配信をする場合などは、ライブ配信をする場所まで移動する交通費がかかります。電車やバスの運賃、タクシー代、車で移動した場合のガソリン代や高速道路の料金なども、経費として扱うことが可能です。
・ライブ配信のために購入したゲーム機やソフトの代金
ゲームのライブ配信は人気のコンテンツです。ライブ配信のためのゲーム機やソフトの購入代金も経費として扱うことができます。
・ライブ配信のために必要なインテリアや小道具などの購入代金
すっぴんからのメイク解説を行うライバーも増えています。メイクは鏡を見ながら行うため、ライブ配信のために購入した化粧鏡、髪の毛を抑えるヘアクリップやカチューシャなどの購入代金も経費として認められます。
・ライブ配信に関する打ち合わせにかかった飲食代金
他のライバーとコラボレーション企画を行う場合やゲストを交えたライブ配信を行う場合などは、ライブ配信の前に打ち合わせが必要です。その際にかかった飲食代金は、経費として計上が可能です。
・ライブ配信に必要な通信費用
ライブ配信には、必ずインターネットが必要です。インターネット回線の利用料やスマートフォンの通信量も経費として計上が可能です。しかし、プライベートとライバー活動のインターネット回線やスマートフォンを分けていない場合は、経費として計上できるのはライバー活動に使用した分の料金のみに限定されます。
ライバー活動以外の支出の経費計上は認められない
上記以外にも、ライバー活動に関連した支出であれば、経費として計上することが可能です。しかし、プライベートな食事の費用やプライベートで使用しているスマートフォンの利用料金など、ライバー活動に直接関係のない支出は、経費として認められません。確定申告の際、プライベートな費用まで経費計上をすると、不正に所得額を圧縮しているのではと疑われ、税務調査につながる恐れもあります。確定申告を行う際には、経費は正しく計上するようにしましょう。
まとめ
令和5事務年度の所得税の税務調査では、申告漏れ所得金額が多い業種の3位にライバーが該当するコンテンツ配信がランクインしました。ライバーの中には確定申告の必要性があることを理解していない方も多く、無申告状態のケースが多いとされています。
税務調査は正しい納税を促進するために実施される調査であり、無申告状態の場合、税務調査の対象に選ばれる可能性が高くなります。また、確定申告をしているライバーであっても、経費を過剰に計上しているなどの疑いがある場合には、税務調査が実施されることになります。
ライブ配信の投げ銭も収入に該当します。ライバー活動によって、一定以上の所得を得ている場合には、適正な経費計上を行い、確定申告を正しく行うようにしましょう。
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この記事の監修者

税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
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