2025.05.26

ブリーダーの確定申告とは。税務調査の状況や経費の計上方法について

読了目安時間:約 6分

マンションでもペットの飼育が可能な物件が増え、多くの家庭で犬や猫などのペットを飼育するようになりました。ペットの繁殖や飼育、販売を行う人をブリーダーと言います。ブリーダーは、実は、税務調査の対象に選ばれやすい業種であることをご存じでしょうか。

今回は、ブリーダーに対する税務調査の状況やブリーダーが確定申告をする際に気を付けたいポイント、ブリーダーが経費として計上できる支出などについて詳しくご説明します。

 

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ブリーダーと確定申告の関係

ブリーダーは、働き方の違いによって、確定申告が必要な方と確定申告をしなくても問題のない方の2つのパターンに分けられます。

 

ブリーダーの2つの働き方

ブリーダーには、企業に所属し、会社員としてブリーダーの業務に就く方法と個人事業主としてブリーダー業を営む方法の2つの働き方があります。

 

会社員のブリーダーの確定申告

会社員としてブリーダーの仕事をしている人は、医療費控除や住宅ローン控除などを受ける予定がなければ、確定申告をする必要はありません。それは、会社が給与や賞与を支給する際、予め所得税を天引きし、個人に代わって国に納税しているからです。そのため、会社員の場合は、年収が2,000万円を超えていなければ、確定申告をする必要はありません。

個人事業主としてブリーダー業務を営む場合は確定申告が必要

個人事業主としてブリーダー業を開業する場合は、事業主が自ら確定申告をし、1年間の所得額を計算したうえで、所得税の納税をする必要があります。個人事業主の場合、会社のように売上から所得税が引かれることはありません。そのため、個人事業主としてブリーダー業を営む場合には、1年間の売上と経費から所得額を算出し、納税額を確定する確定申告を行わなければならないのです。

 

ブリーダーは確定申告での不正が多い?

個人事業主としてブリーダー業を営む人は、確定申告が必要になる旨をご説明しましたが、実は、ブリーダー業は確定申告での不正が多い業種に該当します。

 

ブリーダーは申告漏れ所得額が多い業種

国税庁では毎年、税務調査の結果を公表しています。令和5事務年度の税務調査結果によると、ブリーダーは事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な業種の5位に入っているのです。ブリーダーの1件当たりの申告漏れ所得金額は2,028万円、1件当たりの追徴税額は459万円と発表されています。

ブリーダーが申告漏れ所得額が多い業種としてランキング入りをするのは、令和5事務年度が初めてではありません。前年度である令和3事務年度と前々年度の4事務年度においても、ブリーダーは申告漏れ所得額が多い業種の3位にランキングしているのです。

 

ブリーダーは税務調査の対象になりやすい?

税務調査は、正しい納税を促進するための調査です。そのため、納税の義務がある個人や法人であれば、皆、税務調査を受ける可能性があります。しかし、税務署ではやみくもに税務調査の対象となる納税者を選んでいるわけではありません。限られた人数で効率よく不正を糺し、正しい納税を促進するためには、不正が行われている可能性が高い納税者を重点的に調べる必要があります。

ブリーダーのように、不正が行われている可能性が高い業種の場合、不正が少ない業種の納税者を対象に調査をする場合に比べ、不正の発見確率は高くなるでしょう。そのため税務署では、不正が多い業種を中心に税務調査を行う傾向にあります。したがって、3年連続で申告漏れ所得額が多い業種にランキングしているブリーダーは、税務調査の対象に選ばれやすいと考えることができます。

 

ブリーダーの確定申告のポイント

企業で経験を積んだ後にブリーダーとして独立した方の場合などは、確定申告の経験がないために、確定申告をしていなかったり、確定申告のやり方が分からなかったりするケースもあるでしょう。ここでは、確定申告のポイントについてご説明します。

 

確定申告の時期

確定申告は、毎年2月15日から3月16日までと決められています。ただし、土日や祝日などに該当する場合には多少日程が後ろにずれる場合もあります。

個人事業主の場合、法人のように自由に事業年度を決めることはできません。そのため、個人事業主は全員、決められた確定申告期間に前年の1月1日から12月31日までの所得を計算し、確定申告を行う必要があります。

 

確定申告の2つの方法と提出書類の違い

確定申告には、白色申告と青色申告の2つの申告方法があり、どちらの申告を行うかによって提出する書類に違いがあります。

まず、白色申告の場合に必要な書類は、確定申告書と収支内訳書、控除に関する証明書などです。単式簿記と呼ばれる記帳方法が採用されるため、比較的簡易的な記載方法で確定申告書を作成できます。

一方、青色申告の場合は、確定申告書、青色申告決算書、控除に関する証明書などの提出が必要です。複式簿記と呼ばれる記帳方法を採用する必要があり、青色申告決算書は賃借対照表と損益計算書から構成されているため、白色申告よりも複雑な処理が求められます。しかし、青色申告を行うと最大65万円の青色申告特別控除を受けることができます。青色申告特別控除の額は、課税所得額から控除することができるため、節税を考えている場合には青色申告で確定申告を行った方がよいでしょう。ただし、青色申告を行うためには管轄の税務署に対し、青色申告をしようとする年の3月15日までに所得税の青色申告承認申請書の提出が必要です。1月16日以降、新たに事業を開始する場合は、事業開始日から2ヶ月以内に提出すれば問題ありません。

青色申告をすると、青色申告特別控除を受けられるだけでなく、最大3年まで赤字を繰り越しできる制度もあるため、長くブリーダー業を続ける予定の場合は、青色申告を選択した方が賢明でしょう。

 

確定申告書の作成方法と提出方法

確定申告書は、税務署の窓口で書類を受け取るか、国税庁のWebサイトから書類をダウンロードして手書きで作成することができます。また、国税庁のWebサイトにある確定申告書等作成コーナーを利用し、パソコンやスマートフォン上で申請書を作ることも可能です。

確定申告書の提出方法には、書面を窓口に提出する方法、郵送する方法、パソコンやスマートフォンで作成した確定申告書をe-Taxからオンラインで提出する方法があります。

 

ブリーダーに認められる経費とは

所得税は、収入から経費を差し引いた所得額に対して課せられるものです。そのため、ブリーダーが確定申告をする際には、売上から事業にかかった経費を差し引くことで、所得額を算出します。

 

ブリーダーが確定申告時に経費計上できる支出

ブリーダー業で経費として認められる支出には、次のようなものがあります。

・飼育する動物の餌代

・飼育する動物の予防接種の代金

・飼育する動物の治療にかかった医療費

・シャンプーやペットシートなどのケア用品

・交配料や超音波検査、レントゲンなどの検査料

・一胎子登録申請費用

・飼育施設の光熱費

・飼育施設を借りている場合の賃料

・事業に関連する電話代やインターネット回線の料金

・事業で使用するパソコン、デスク、椅子などの購入代金

・広告宣伝にかかる費用

・事業のために使用している車の維持費

 

ブリーダーが経費計上した場合に税務調査で否認される支出

ブリーダー事業のためにかかった費用を計上すると、経費は売上から差し引くことができるため、節税につながります。しかし、確定申告の際、事業に関連しない支出まで経費として計上すると税務調査で否認される恐れがあります。経費が否認されると、差し引ける経費の額が低くなるため、所得額が高くなり、必然的に課せられる所得税の額も高くなります。

次のような支出を経費計上している場合は、税務調査で否認されることになるでしょう。

・プライベートで使用している携帯の料金

・自宅として使用している部分の家賃

・プライベートの使用分の光熱費

・自家用で使用している車のガソリン代や駐車場代

 

事業とプライベートの両方で使用しているものは家事按分して経費計上を

例えば、事業用とプライベート用の車を分けておらず、1台の車を利用している場合、経費として計上できるガソリン代などは、事業で使用した分だけです。また、自宅と飼育所が同じ場所にある賃貸物件の場合、経費計上できるのは、飼育所として使用している分だけになります。

プライベートと事業の割合を算出することを家事按分と言い、プライベートと事業の両方で使用しているものなどは、家事按分割合に応じて経費計上することとなります。全額を経費計上した場合、税務調査時に指摘される可能性があるため、注意が必要です。

 

ブリーダーが確定申告をしない場合のリスク

確定申告が必要なブリーダーが確定申告をしない場合、次のようなリスクが発生します。

 

税務調査で無申告がバレる

ブリーダーは、申告漏れが多い業種として知られています。そのため確定申告をしていない場合、税務調査が入る可能性が高くなります。税務調査によって、売上の状況を詳しく調査されると、無申告の状態が発覚します。

 

無申告加算税が課される

税務調査によって無申告状態が発覚すると、これまで納税してこなかった分の所得税の納税が求められます。さらに、確定申告をしてこなかったことのペナルティとして、不足分の税額に応じた無申告加算税の納税も求められることになります。

無申告加算税の税率は、納税額に対し、50万円までの部分については15%、50万円を超え300万円以下の部分については20%、300万円超の部分については30%となるため、複数年に渡って確定申告をしてこなかった場合、その額は高額になるでしょう。

 

延滞税が課される

税務調査で無申告がバレたときに課せられるペナルティは、無申告加算税だけではありません。納税が遅れたことに対するペナルティとして、延滞税の納付も求められます。延滞税は、納税が完了する日まで課され続けることになるため、無申告期間を長く続けるほど延滞税の額は高くなります。

 

重加算税が課される場合もある

確定申告を忘れていた場合や確定申告が必要になることを理解していなかった場合などに対して課せられるペナルティは無申告加算税です。しかし、ブリーダーの中には、確定申告をしなければならないことを理解していたにも関わらず、納税を逃れるために確定申告をしないケースもあります。このような場合、無申告加算税ではなく、さらに税率の重たい重加算税が課せられます。無申告時に課される重加算税の税率は、40%です。また、課税所得がないように装い、不正に税金を逃れようとした場合などについても、重加算税が課されます。

 

確定申告をしているブリーダーに税務調査が入ることも

確定申告をしているブリーダーにも税務調査が入る可能性はあります。確定申告を行っていても、何らかの不正を行っていると考えられる場合には、税務署が不審に思い、税務調査を実施するのです。

例えば、複数年に渡って赤字で申告書を提出するような場合があります。赤字が続く場合、本来は、事業を続けることは困難になるはずです。しかし、赤字でもブリーダー業を廃業していない場合、納税負担を抑えるために売上を隠蔽したり、経費を過剰に計上するといった不正が行われているのではと疑われるのです。

また、税務署では多くの税務調査に立ち会っているため、業種ごとの利益率を把握しています。そのため、ブリーダーの場合、どのくらいの利益率が適正であるかも熟知しているのです。売上に対して、経費の額が極端に多いブリーダーの場合、経費としては認められない支出まで計上しているのではと疑われます。そのため、税務調査を行い、領収書などを一枚一枚チェックしながら、不正が行われているかを確認するのです。

確定申告をしていても、税務調査によって経費の過剰計上などが発覚すると、不足分の税額だけでなく、過少申告加算税の納税が求められます。確定申告をする際には、プライベートと事業の費用を明確に区分し、正しく申告することが大切です。

 

まとめ

ブリーダーは、ここ最近、申告漏れが多い業種の常連となっています。申告漏れが多い業種の場合、申告をしていない、無申告状態の事業者が多いと考えられます。ブリーダーの申告漏れが多いという事実が発覚した以上、税務署ではますますブリーダーを対象とした税務調査に力を入れることになるでしょう。

また、確定申告をしていても、経費の水増しなどをしているブリーダーも注意が必要です。税務署に目を付けられると、税務調査が実施され、過少申告加算税が課せられる可能性があります。

確定申告をしてこなかった、または確定申告にミスがあるという自覚があるブリーダーは、税理士にも相談しながらできるだけ早く期限後申告や自主的な修正申告を行うことをおすすめします。

 

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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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