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一定以上の所得を得ている場合、確定申告を行い、所得額に応じた税金を納めなければなりません。しかし、中には、確定申告の内容が誤っているケースも見られます。確定申告の際には、原則としてすべての収入を申告しなければなりませんが、一部の収入の申告を忘れてしまう、申告漏れが生じる場合があるのです。
今回は、国税庁が示しているよくある収入漏れの例などを含めながら、申告漏れを放置した場合のリスクや申告漏れに気が付いたときの対処法などについてご説明します。
目次
確定申告の申告漏れとは、単純な申告忘れや計算ミスといった経費計上の誤りなどにより、結果として納税額の申告が少なくなってしまった事態を指します。
意図的に売上を隠蔽したり、架空の経費を計上するなどして、所得額を低く装った場合は所得隠しと呼ばれますが、申告漏れは、悪意なく、ミスによって過少申告をしてしまったケースのことです。
確定申告が必要になるのは、以下の条件に該当する場合です。確定申告が必要であるにも関わらず、必要性を把握していなかったために確定申告をしなかった場合は申告漏れに該当するため、まずは、自身が確定申告の対象となるかを確認しておくことが重要です。
給与所得者の場合は、年間の収入が2,000万円を超える場合、確定申告をしなければなりません。また、会社員として働きながら副業をしている方など、給与所得以外の所得が20万円を超える場合にも、確定申告が必要です。
個人事業主の場合は、年間48万円を超えると確定申告が必要になります。
公的年金の収入金額が400万円を超えている場合、公的年金以外に年間20万円を超える所得がある場合、外国の法令に基づく公的年金を受けている場合などは、確定申告が必要です。
反対に、公的年金の収入が400万円以下で、年金以外の年間所得が20万円以下の場合は、確定申告は必要ありません。
国税庁では、確定申告特集の中で以下のような収入の申告漏れがないか、注意を呼び掛けています。
個人事業主として開業している場合には、これらの収入は事業所得となり、確定申告が必要です。また、事業所得に該当しない場合には、雑所得として確定申告が必要になります。
インターネットの普及に伴い、フリマアプリやネットオークションで、仕入価格との差額を利益にする、いわゆる「せどり」を行う人も増えています。また、動画配信やアプリの作成、アフィリエイトなどで収入を得る人も増えていますが、これらの収入も一定以上の額となった場合、確定申告をしないと申告漏れに該当します。ただし、不要な物をフリマアプリなどで売買する場合の収入は、非課税のため、確定申告に含める必要はありません。
ドロップシッピングや配達代行業、民泊、カーシェアリングなどによる収入も事業所得または雑所得として扱い、一定以上の金額に達した場合には確定申告が必要です。また、お酒を飲む場に参加し、対価としてお金を受け取るギャラ飲みで得た謝礼金(ギャラ)も、一定以上になれば確定申告をしなければなりません。
家庭用の太陽光発電設備によって発電し、余剰電力を売却している場合も、一定以上の収入になる場合には雑所得として確定申告をしなければ、申告漏れに該当します。
暗号資産の売却または使用によって利益を得た場合も、雑所得として確定申告が必要になります。
株主優待も税法上は雑所得に該当します。金券やギフト券などを得た場合には、企業が設定する優待価値で計算し、確定申告を行います。
外国通貨を交換した際に差益が生じた場合、差益部分は雑所得に該当するため、確定申告が必要です。ただし、保有している間に生じる含み益については確定申告をする必要はありません。
外国の企業などで勤務していた経験のある方が、退職後に日本に居住し、外国の年金を受給している場合は、原則、雑所得として確定申告をしなければなりません。
加入している生命保険や損害保険の一時金や満期返戻金は、一時所得に該当し、確定申告が必要となります。ただし、一時所得の場合、受け取った金額からこれまでに支払った保険料を差し引くことができ、さらにその額から最高50万円の特別控除を差し引くことが可能です。また、総所得に算入する一時所得の金額は、支払った保険料の合計と特別控除額を差し引いた金額の1/2となります。
ふるさと納税の謝礼として特産品を受け取っている場合も、一時所得として確定申告が必要になります。この場合、一時所得は、特産品の時価から特別控除額を差し引いて計算します。また、総所得金額に算入する金額は、この1/2の金額です。
株式公開買付によって上場廃止となった株式を買付者が買い取った場合は、譲渡所得として確定申告をしなければなりません。一般株式等の譲渡所得は、売却で得た収入から取得時の費用と売却時の費用を差し引くことで算出します。
FX(外国為替証拠金取引)による収入がある場合も、雑所得として確定申告が必要です。
退職に伴い、勤務先から退職金を受け取った場合、退職所得として確定申告が必要です。ただし、退職時に退職所得の受給に関する申告書を提出した場合は、確定申告書の提出は必要ありません。また、年末調整を行っていない場合や医療費控除などが必要になる場合は、退職金の額も含めて確定申告を行う必要があります。
競馬や競輪、オートレース、ボートレースの払戻金は一時所得に該当します。この場合の一時所得は、払戻金の年間合計額から当たった投票権の購入費用を差し引いた後、特別控除を差し引いて算出します。
また、総所得金額に算入する場合の金額は、この金額の1/2となります。
インゴットやゴールドバーなどとも呼ばれる金地金を売却して得た所得は、総合譲渡所得に該当します。売却で得た収入から取得費用と売却時にかかった費用、特別控除額を差し引いた額がこの場合の総合譲渡所得に該当します。ただし、所有期間が5年を超える場合、総所得金額に算入する総合譲渡所得の額は、この1/2の額となります。
確定申告を忘れていた、確定申告に一部の収入を含めるのを忘れたなど、申告漏れに該当する行為を放置しておくと次のようなリスクが生じます。
確定申告の申告漏れを放置しておくと、税務調査において、申告漏れの事実を指摘されることとなります。指摘事項に納得した場合、納税者自らが修正申告を行わなければなりません。修正申告とは正しく申告をし直す行為のことです。
確定申告の必要性に気が付いていなかったり、確定申告をすることを忘れていた場合は、確定申告をしていない無申告の状態となります。税務調査によって無申告状態であることを指摘された場合、無申告加算税の納税が求められます。
無申告加算税の税率は、納税額のうち50万円以下の部分については15%、50万円超300万円以下の部分については20%、300万円超の部分については30%です。申告漏れの額に応じ、課される無申告加算税の額は変わるものの、正しく確定申告を行っていた場合に比べるとより多くの税金を負担しなければならなくなります。
過少申告加算税とは、期限内に確定申告はしているものの、申告した税額が少なかったことに対して課せられるペナルティです。例えば、個人事業主が事業所得については確定申告をしていたものの、上にご紹介したような所得の申告漏れがあった場合などには過少申告加算税が課されます。
過少申告加算税の税率は原則として、不足分の税額の10%です。ただし、期限内に申告した全額と50万円のいずれか多い金額を超える部分についての税率は、15%となります。
延滞税とは、税金の納付が遅れたことに対するペナルティの意味合いを持つ税金です。令和4年1月1日以降の延滞税の税率は、納期限の翌日から2か月を経過する日までは年2.4%、納期限の翌日から2か月を経過する日の翌日以降については年8.7%となっています。
申告漏れが指摘された場合、不足分の税金、過少申告加算税、延滞税の納税が必要になります。
確定申告をしていなかった場合や特定の所得の申告漏れに気が付いた場合は、どうすればよいのでしょうか。
申告漏れに気が付いたときには、できるだけ早めに期限後申告または修正申告をしましょう。確定申告の期間は、毎年2月16日から3月15日までと決められています。この時期を過ぎて確定申告を行うことを期限後申告と呼びます。
また、確定申告書を提出した後に、申告漏れに気が付いた場合には、正しく修正した申告書を提出する修正申告を行います。
申告漏れに気付いたら、できるだけ早く期限後申告や修正申告を行いましょう。なぜなら、税務調査が実施される前に、納税者が自ら期限後申告や修正申告を行った場合、無申告加算税と過少申告加算税が軽減されるからです。
税務調査が実施される前には、原則として事前通知が行われます。事前通知とは、税務調査を実施する日時や調査対象税目、調査対象期間などを伝える税務署からの事前連絡のことです。事前通知を受ける前に、自主的に期限後申告を行った場合、無申告加算税の税率は5%に軽減されます。また、過少申告加算税は課されません。つまり、申告漏れに気が付き、税務調査で指摘を受ける前に、自ら期限後申告や修正申告を行うと、税負担を軽減することができるのです。
また、税務調査の事前通知を受けた後でも、自主的に期限後申告や修正申告を行うことは可能です。その場合でも、無申告加算税や過少申告加算税の税率の軽減措置を受けることができます。税務調査の事前通知を受けてから自主的に期限後申告をした場合の無申告加算税は、50万円以下の部分については10%、50万円超300万円以下の部分については15%、300万円超の部分については25%となります。一方、過少申告加算税の税率は5%に軽減されます。期限内に申告した全額と50万円のいずれか多い金額を超える部分についての税率についても、15%から10%となり、5%低い税率が適用されます。
申告漏れの額が大きい場合や長年にわたって確定申告をしてこなかった場合などは、税務調査の対象となる前に、早めに税理士に相談することをおすすめします。税務署では、無申告者に対する調査を強化しており、申告漏れが続いている場合、税務調査の対象として選ばれる可能性が高くなるといえます。また、ギャラ飲みや動画配信といった申告漏れの対象となりやすい収入を申告していない場合も、税務調査の対象に選ばれやすい状態です。
税務調査の対象となれば、細かい調査が行われ、多額の無申告加算税や過少申告加算税が課される恐れがあります。少しでも税負担を抑えるためには、税務調査前に税理士に相談し、速やかに期限後申告や修正申告を行うことを検討した方がよいでしょう。
確定申告の申告漏れを放置しておくと、税務調査が実施され、無申告加算税や過少申告加算税、延滞税などの納付が求められます。今回ご紹介したように、国税庁では申告漏れが起きやすい収入を示しています。裏を返すと、税務調査で申告漏れが発覚したケースが多い収入の事例だと捉えることもできるでしょう。延滞税は、納付が遅れた日数に応じて課せられる税金であり、申告漏れを放置すればするほど延滞税の負担は大きくなります。
「確定申告をしていない」、「確定申告に一部含めていない収入がある」など、申告漏れの自覚がある場合には、税理士にも相談しながら早めに期限後申告や修正申告を行うようにしましょう。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
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