2025.06.9
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夜職で働く人が確定申告してないとどうなる?不要な人もいるの?

読了目安時間:約 6分

キャバクラやラウンジ、スナック、ホストクラブなど、お酒に関わる夜の仕事のことを夜職と呼びます。夜職の人のほとんどは、お店の雇用契約を結び、社員として働いているわけではありません。そのため、夜職で働く人の中には、確定申告をして税金を納めなければならないケースがありますが、夜職の人の中には確定申告をしてない人も少なくありません。しかしながら、夜職の人であっても確定申告をしなければならないケースがあります。

そこで今回は、夜職の人が確定申告をしてない場合のリスクや確定申告が必要な人、不要な人についてご説明します。

 

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夜職の人は確定申告してない人が多いって本当?

夜職の人は、確定申告をしてない人が多いと言われています。ニュースなどで、キャバ嬢が脱税をして国税局から告発されたというニュースを見た記憶がある方も多いのではないでしょうか。実は、夜職の人は、確定申告をしてない人が多いという噂はウソではありません。

 

夜職の人は確定申告をしてない人が多い

国税庁では、毎年、所得税の申告漏れ所得金額が高額な業種をランキング形式で発表しています。所得税の申告漏れとは、簡単に言うと、確定申告をしてない、または確定申告を正しくしてないことであり、正しく所得税を納めていないことを示すものです。

令和5事務年度の所得税の申告漏れ金額が多かった業種の2位は、夜職の「ホステス、ホスト」となっています。1人あたりの申告漏れ所得金額は3,654万円、1件あたりの追徴税額は507万円と公表されているのです。また、9位にはスナックがランクインしています。その年によって若干の順位変動はあるものの、キャバクラもランキングの常連であり、夜職の人は確定申告をしてない人が多いと考えられます。

 

夜職の人が確定申告をしてない理由は?

夜職の人に確定申告をしてない人が多い理由の1つは、夜職の場合、手渡しで報酬を受け取っているケースが多いからです。お店側から働いた分のお金を現金で受け取ると、銀行振込のようにお金を受け取った記録が残りません。そのため、確定申告をしなくてもバレないだろうと思ってしまうケースが多いようです。

また、夜職は他の仕事に比べると、高い時給が設定されています。そのため、効率的にお金を稼ぎたいと考え、夜職に就く人は少なくありません。確定申告を行うと、税金を支払わなければならないため、せっかく高い時給の仕事を選んだのに手取りを減らしたくないと考える人も多いのです。

そのほか、確定申告が必要なことを知らなかったというケースも見られます。アルバイト感覚で夜職の仕事に就く人も少なくありません。アルバイトの場合、働く店や企業と雇用契約を締結して働きます。アルバイトで働くときも一定以上の給与を受け取る場合には、給与から所得税の源泉徴収が行われるため、確定申告は不要です。

しかしながら、夜職で働く場合、お店とは雇用契約を結んでいないケースが多くなります。そのため、一般的なアルバイトとは異なり、夜職は確定申告が必要になりますが、確定申告をしなければならないことを知らないため、結果として、確定申告をしていない状態になってしまうのです。

 

夜職でも源泉徴収されているから確定申告しなくてもいい?

夜職で働いていても確定申告をしてない人の中には、受け取っているお金から源泉徴収されているから、確定申告をしなくてもよいと思っている方もいるようです。

 

ホステスなど夜職の源泉徴収ルール

ホステスなどに報酬や料金を支払うときには、所得税を源泉徴収しなければならないというルールがあります。経営者は、源泉徴収した所得税を、報酬を支払った月の翌月10日までに納付しなければなりません。

このルールは「バーやキャバレーの経営者がそこで働くホステスなどに報酬・料金を支払う場合」にも適用されます。そのため、ホステスだけでなく、キャバ嬢やホスト、ラウンジ嬢などの夜職の場合も、経営者は報酬から源泉徴収をしなければなりません。したがって、このルールを守っているお店で働いている場合、夜職が受け取っている報酬からは、源泉徴収がなされています。しかし、源泉徴収がなされているからといって、確定申告をしなくてもよいというわけではありません。

 

ホステスなどの源泉徴収の計算ルールは特殊

夜職を対象とした源泉徴収の計算方法は、一般的な所得税の計算方法とは異なります。

この場合の源泉徴収すべき所得税の額は、同じ人物に対して1回に支払う金額について、5,000円にその報酬の計算期間の日数をかけた金額を差し引き、差し引いた残額に10.21%の税率をかけるというものです。計算期間の日数は、出勤した日数やお店の営業日数ではありません。1月であれば31日、2月であれば28日といったように、報酬を支払う月の初日から末日までの日数を指します。

例えば、5月の1ヶ月に働いた報酬として、100万円を支払う場合の源泉徴収額の計算式は次のようになります。

{100万円-(5,000円×31日)}×10.21%=86,274円

つまり、源泉徴収すべき税金は、86,274円となるのです。

 

源泉徴収されていても夜職は確定申告が必要になる理由

所得税には累進課税制度が採用されており、所得が高くなればなるほど税率も高くなる仕組みです。例えば、毎月100万円の報酬を受け取っているキャバ嬢の場合、どの月も同じ額を稼いでいると仮定すると、年収は1,200万円となります。課税所得金額が1,200万円の場合の税率は、33%、控除額は1,536,000円です。そのため、キャバ嬢など、夜職で高い金額を稼ぎ出している人の場合、報酬から差し引かれる源泉所得税だけでは納税額が不足した状態となります。したがって、本来は確定申告をして正しく納税をしなければならないのですが、源泉徴収をされていることを理由に確定申告をしてないケースも目立ちます。

 

夜職の人が確定申告をしてないとどうなる?

夜職の人が確定申告をしてない場合、次のようなリスクが生じます。

 

税務調査の対象となり追徴課税がなされる

確定申告をしてない状態は、無申告状態に該当します。無申告の場合、所得に応じた納税を求められるだけでなく、確定申告をしなかったことのペナルティとして無申告加算税の納税も求められます。無申告加算税の税率は、納税額の50万円以下の部分については15%、50万円超300万円以下の部分については20%、300万円超の部分については30%です。さらに、納税が遅れたことに対するペナルティとして延滞税の納税も求められる可能性があります。

また、確定申告の必要性を知りながら故意に確定申告をしていなかった場合や所得を隠蔽するなどの行為が見られる場合には、さらに税率が重い重加算税が課される恐れもあります。無申告加算税に代えて重加算税が課される場合、重加算税の税率は40%です。

つまり、夜職の人が確定申告をしていない場合、本来よりも高い税金の負担が生じることになってしまうのです。

 

脱税の罪で告発される恐れもある

夜職で高額な収入を得ていたにも関わらず確定申告をしていなかった場合、申告漏れ額も多額になります。そのため、場合によっては脱税の罪で告発される可能性もあるのです。裁判によって、所得税法違反の罪が確定すれば、重加算税という行政罰に加えて、刑事罰も科せられることとなります。脱税の罪が確定すれば、前科がついてしまうのです。

 

クレジットカードを作ることができない

クレジットカードを作る際には、収入証明書の提出を求められるケースがあります。収入証明書は個人の収入を証明する書類のことで、会社員の場合は源泉徴収票などが収入証明となります。また、お店と雇用契約を結んでいない夜職の人の場合は、確定申告書の控えや納税証明書などが収入を証明できる書類です。しかし、確定申告をしていない場合、税金を納税していないことになるため、収入を証明する書類がありません。そのため、クレジットカードを作ることができない可能性があるのです。

 

賃貸住宅や住宅ローンの契約ができない

賃貸住宅の契約を締結する際にも、入居審査があり、家賃の支払い能力があるかがチェックされます。その際にも確定申告書や納税通知書などが収入の証明となりますが、確定申告をしてないとそれらの書類を提示できません。

また、住宅ローンを組んでマイホームを購入したい場合も確定申告をしてなければ、収入の証明ができないため、ローン審査に通りません。

 

夜職で確定申告が必要なケースと不要なケース

夜職で働く人が確定申告をしてない場合のリスクをご紹介してきましたが、夜職の人が全員、確定申告が必要になるわけではありません。

夜職で確定申告が必要な人と不要な人についてご説明します。

 

夜職で確定申告が必要なケース

夜職で確定申告が必要な人は、次のような条件に該当するケースです。

 

・夜職を本業としており、年間48万円以上の所得がある

夜職で仕事をしている人の多くは、お店と雇用契約を結ばず、個人事業主として夜職に就いているケースがほとんどです。個人事業主の場合、年間48万円以上の所得がある場合に確定申告が必要となります。

所得とは、収入から経費を差し引いた額のことです。お店に行くまでの交通費やお店で着用する衣装の購入代、営業用の携帯電話の通話料金など、夜職のためにかかった費用は経費として扱えます。そのため、所得を計算するときには、お店から受け取っている報酬から仕事のためにかかった必要経費を差し引くことが可能です。

例えば、お店から受け取ったお金が年間50万円だったと仮定した場合、経費が5万円かかったときには、年間所得は45万円となるため、確定申告をしなくても問題はありません。

 

・会社員などの仕事があり、副業の夜職で年間20万円以上の所得を得ている

副業として夜職に就いている場合は、年間20万円以上の所得を得ている場合、確定申告が必要です。ただし、夜職以外に副業の仕事をしているような場合は、その他の副業の所得も合わせて考えなければならない点に注意が必要です。

 

・お店の従業員として雇用契約を結び、年収が2,000万円を超えている

お店と雇用契約を結び、社員や契約社員などとしてお店で働いている場合、一般的な会社員と同様、医療費控除などが必要ない限り、確定申告をする必要はありません。しかし、給与所得者でも年収が2,000万円を超える場合、確定申告が必要です。夜職でお店と雇用契約を結んでいる場合でも、年収が2,000万円を超えている場合は確定申告を行うようにしましょう。

 

夜職でも確定申告の必要がないケース

夜職でも確定申告をする必要がないケースもあります。確定申告の必要のないケースは次のような場合です。

 

・従業員として雇用契約を結んでおり、年収は2,000万円以下である

お店と雇用契約を結んでおり、年収が2,000万円以下の場合は、お店側が源泉徴収や年末調整を行っているため、個人で確定申告を行う必要はありません。

 

・副業として夜職をしているけれど、年間所得は20万円以下である

副業として夜職に就いている方でも、副業の年間収入が20万円以下であれば、確定申告の必要はありません。

 

・本業として夜職に就いているけれど、年間所得が48万円未満である

夜職が本業であるものの、年間所得が48万円未満であれば、確定申告をする必要はありません。

 

これまで確定申告をしてない夜職は早めの期限後申告を!

確定申告の必要があるにもかかわらず、確定申告をしてこなかった方は、早めに期限後申告を行いましょう。期限後申告とは、確定申告の期日を過ぎてから申告書を提出し、納税を行うことです。

確定申告をしていない場合、無申告加算税などの追徴課税が行われるリスクがある旨をご紹介しました。しかし、税務調査の事前通知が入る前に、納税者が自ら期限後申告をした場合、無申告加算税の税率は5%に軽減されます。税務調査後の無申告加算税の税率は、50万円以下の部分は15%、50万円超300万円以下の部分は20%、300万円超の部分は30%です。自主的な期限後申告の場合、納税額に関わらず、一律5%になるため、税金の負担を大きく軽減できます。無駄な税負担を抑えるためにも、これまで確定申告をしてこなかった夜職の方は、今からでも期限後申告をすることをおすすめします。

 

まとめ

夜職で働く人の中には、確定申告をしなければならない人がいます。確定申告をしなければならないにもかかわらず、確定申告をしてないと、税務調査の対象になる可能性が高くなります。税務調査で確定申告をしてないことが発覚すれば、無申告加算税や延滞税などが加算され、多額の納税を求められる恐れがあるのです。また、悪質だと判断された場合には、より税率の重い重加算税が課され、脱税の罪に問われる恐れもあります。

夜職の方でこれまで確定申告をしてこなかった人は、税負担を軽減するためにも早めに期限後申告を行うことが大切です。確定申告のやり方が分からない場合などは、税理士への相談をおすすめします。

 

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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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