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ニュースなどを見ていると「時効」という言葉を耳にすることがあります。時効とは、ある出来事から一定の期間が経過したことで、法律上の根拠にかかわらず、その事実の状態に適合させる制度のことです。時効には民事上の時効と刑事上の時効があり、民事上、時効を迎えると民事責任を問うことができなくなります。また、刑事上の時効を迎えると、被疑者を起訴できなくなってしまいます。
時効というと、事件に関わる言葉のように感じますが、実は、税金にも時効があることをご存じでしょうか。もし、税金に時効があるのであれば、時効が成立するまで待てば税金を納めなくてもいいのではと思うかもしれません。では、税金の時効は成立するのでしょうか。
今回は、税金の時効について詳しく解説します。
目次
税金にも時効はあります。納めるべき税金を納めずにいた場合に、税務署から一定期間、税金を請求されなかったときには、税金の時効が成立します。時効が成立すると、納税者の納税義務は消滅することになります。
税金の時効は、税金の種類ごとに異なります。主な税金の時効についてご説明します。
所得税は、個人の所得に対して課される税金です。1年間のすべての所得から所得控除や経費などを差し引き、残りの課税所得に税率を適用して税額を計算します。会社員が会社から支給される給与、個人事業主が得た所得に対してかかる税金が所得税です。
所得税の時効は、原則として5年です。ただし、これは、申告期限内に確定申告を行わなかった場合の時効です。申告書を申告期限内に提出した場合の時効は、申告期限の翌日から3年が時効となります。また、意図的に確定申告をしなかったり、不正に納税額を低く装ったりといった脱税行為が見られる場合の時効は、申告期限の翌日から7年です。
相続税とは、親などが亡くなり、財産を相続した場合に相続した人に課される税金です。しかしながら、財産を相続した人すべてに相続税の納税が求められるわけではありません。相続税の納税が必要になるのは、相続税の課税価格が遺産にかかる基礎控除額を上回る場合のみです。遺産にかかる基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の数で算出します。
相続税の時効も所得税と同様、期限内に申告書を提出していた場合は3年、提出していない場合は5年、脱税行為が見られる場合は7年となります。
贈与税とは、誰かから財産を贈与された際に、贈与を受けた人に対して課される税金です。贈与税の対象となるのは、個人から財産を贈与された場合であり、法人から財産を取得した場合にかかる税金は所得税となります。贈与税がかかるのは、年間110万円以上の贈与を受けた場合です。
贈与税の時効は、所得税や相続税とは異なります。申告期限までに申告書を提出している場合の時効は3年ですが、申告期限までに申告書を提出していない場合の時効が6年となります。また、脱税の場合は、他の税金と同様、時効は7年となります。
消費税は、商品の販売時やサービスの提供時にかかる税金です。消費者が負担した消費税は、事業者が納付することとなります。課税期間の基準期間(個人事業主は前々年、法人は前々事業年度)における課税売上高が1,000万円を超える事業者は、消費税の納税義務者となります。
消費税の時効も、申告期限までに申告書を提出している場合は3年、申告期限までに申告書を提出していない場合は5年、脱税行為が見られる場合は7年です。
法人税は、法人が企業活動を行い、得た所得に対して課される税金です。所得金額は、益金から損金を差し引くことで算出します。
法人税の時効も、その他の税金と同じく、期限までに申告書を提出している場合は3年、申告期限までに申告書を提出していない場合は5年、脱税行為が見られる場合は7年となっています。
納税は、国民の三大義務の一つであり、納税の義務がある人は税を納めなければなりません。しかし、税金には時効が定められています。実は、税金の時効には税務署が持つ2つの権利が関わっています。
賦課権とは、納税者に対し、税額を決定する権利のことです。納税者が申告した内容では申告額が不足している場合、税務署長は、国税の債権を確定させる更正を行うことができます。また、申告を行っていない納税者に対しては、決定を行い、税額を確定させます。
この賦課権を行使できる期間には制限が設けられており、賦課権を行使できる期間は決まっています。期間内に権利を行使しない場合、その権利が消滅する期間を除斥期間といい、この除斥期間が賦課権の時効に該当するのです。
そのため、法定申告期限までに申告していない税金があっても、原則として5年間、税務署から納税に関する通知書が届かなければ、時効が成立することになります。(贈与税の場合は、6年間です。)ただし、法定期限までに申告書を提出していた場合は3年、脱税行為が見られる場合は7年となります。
税務署長が納税者に対し、納税額を決定する権利を賦課権といいますが、納税を進めるうえでは、納税額を決定するだけでなく、納税者から税金を納めさせなければなりません。この税金を徴収する権利を徴収権といいます。
徴収権についても時効があり、徴収権の時効には消滅時効と呼ばれる民法に定められた考え方が適用されます。徴収権の消滅時効も賦課権の時効と同じく、原則として5年であり、状況に応じて3年や7年になります。
ただし、消滅時効には、時効の完成猶予と更新という考え方が適用されます。
時効の完成猶予とは、特定の事由が発生することで、一時的に時効の完成が阻止されるというものです。かつては、時効の停止と呼ばれていましたが、2020年の民法改正によって時効の完成猶予に名称が変更されています。
税金の場合、債権者である税務署が債務者である納税者に催告書を送付した場合などにおいて、時効の完成猶予事由が生じ、一時的に時効が成立せず、一定期間、時効が先延ばしになるのです。
また、時効の更新とは、消滅時効の期間が一旦リセットされ、また0からカウントが開始されることです。税金の場合、債務者が債務の承認をしたり、税務署が裁判所に仮執行宣言を申し立て、申し立てが認められると仮執行宣言付支払督促が送付され、時効が更新されることとなります。
税金に時効があるのであれば、時効が成立するまで待つと税金を支払わずに済むのではと思うかもしれません。しかし、現実的に考えた場合、税金の時効が成立することはあり得ないといえます。
前述のように、税務署では、税金の賦課権と徴収権の2つの権利を持っていますが、それぞれの権利を実行できる期間は制限されています。この制限期間を持って、税金には時効があると表現されます。しかし、徴収権の消滅時効は、裁判所に申し立てを行うことなどによって、時効の更新が認められると時効が一旦リセットされ、また再び新たにカウントし直されるようになります。
税務署が、納税をしていない税金があることを知りながら、税金の徴収を行わないことは考えられません。そのため、税金の時効が成立することは、あり得ないと考えた方が現実的です。
税金の時効が成立することは考えにくく、正しく納税をしていない納税者に対してはペナルティが課されます。未納の税金がある場合に課されるペナルティは次のとおりです。
無申告加算税は、法定申告期限までに確定申告をせず、納税を怠っている場合に課される税金です。無申告加算税の税率は、税額が50万円以下の部分については15%、50万円を超え300万円以下の部分については20%、300万円超の部分については25%となります。
しかしながら、税務調査の通知を受ける前に、納税者が自ら期限後申告を行い、税金を納付した場合、無申告加算税の額は税額にかかわらず5%に軽減されます。また、税務調査の事前通知を受けた後でも、税務調査の実施前に期限後申告をすると税率は5%ずつ軽減される措置が適用されます。50万円以下の部分は10%、50万円超300万円以下の部分は15%、300万円超の部分は25%となるのです。
過少申告加算税は、期限内に確定申告は行ったものの、申告額が本来よりも不足していた場合に課される税金です。過少申告加算税の税率は、原則として10%ですが、期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分に課される税率は15%となります。
過少申告加算税も、税務調査の前に自主的に修正申告を行った場合、税率が軽減されます。まず、税務調査の事前通知を受ける前に正しく修正を行い、申告をし直した場合、過少申告加算税は課されません。また、事前通知を受けてから税務調査が実施される前までに自主的に修正申告をした場合、税率が5%ほど軽減されます。
重加算税は、確定申告の必要性を知りながら意図的に確定申告を怠った場合や所得を意図的に隠したり、低く申告したりといった不正行為が見られる場合に課される税金です。
確定申告をしていなかった場合の重加算税の税率は40%、確定申告はしていたものの売上を過少に申告したり、経費を水増し計上していた場合などに課される重加算税の税率は35%となります。
不納付加算税は、従業員を雇用している個人事業主や企業は、従業員に給与を支払う際に源泉徴収を行い、個人に変わって所得税を納税しなければなりません。納付期限に遅れた場合に課される税金が不納付加算税です。不納付加算税の税率は、10%ですが、税務調査が実施される前に自主的に納付した場合、税率は5%に軽減されます。
延滞税は、法定納期限までに税金を納めなかったことに対して課される税金であり、納付が遅れた分の利息の意味合いを持つ税金です。延滞税は、原則として、法定期限の翌日から納付する日までの日数に応じて課されるという点に特徴があります。
延滞税は、本税を対象として課されるものであり、加算税などに対して課されることはありません。延滞税の税率は、納付を完了した日までの日数に応じて変わってきます。
まず、納期限までの期間と納期限の翌日から2ヶ月を経過する日までは、年7.3%と延滞税特例基準割合+1%のいずれか低い割合となり、2022年1月1日から2025年12月31日までの具体的な延滞税率は年2.4%です。また、納期限の翌日から2ヶ月を経過した日以降の税率は、年14.6%と延滞税特例基準割合+7.3%のいずれか低い割合となり、2022年1月1日から2025年12月31日までは年8.7%となります。
税金の時効は、成立することはほぼないといえます。納税を免れようとしても税務署はさまざまなルートから情報を収集しており、税金を納めないまま、時効が成立するタイミングを迎えることはありません。
納税額が不足している場合や確定申告をしていない場合、過少申告加算税や無申告加算税などの加算税が課されます。さらに、納税が完了するまでは延滞税も課され続けることになるため、時効の成立を期待して納税を遅らせれば遅らせるほど、ペナルティとして課される税金の額は大きくなる恐れがあります。
納税の負担を軽減したいと考えているのであれば、期限までに正しく確定申告を行うことが大切です。さらに、期限までに確定申告が間に合わなかった場合や申告額が少なかった場合などは、税務調査の通知を受ける前に自主的に期限後申告や修正申告を行うことで、加算税の負担を軽減できます。
時効の成立を狙って税金を滞納し続けることは非常に危険です。正しく確定申告をしていない場合は、できるだけ早めに申告と納付を行うようにしましょう。
税金にも時効はあります。贈与税を除き、その他の税金の時効は、原則として5年です。ただし、期限内申告をしている場合の時効は3年、脱税行為が見られる場合は7年となります。
税金に時効があるといわれる理由は、賦課権や徴収権に除斥期間や消滅時効が設定されているからです。しかし、消滅時効は時効の更新を行うことが可能であり、税務署から督促状や催告書などが送付されると、時効のカウントはリセットされてしまいます。そのため、現実的に税金の時効が成立するとは考えにくいといえます。したがって、確定申告を忘れたり、正しく申告をしていなかった場合は時効を待つのではなく、早めに期限後申告や修正申告を行うことが大切です。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
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