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法人だったらなんでも経費で落とすことができるは嘘!注意点を解説
個人事業主に比べると、法人は経費として計上できる費用の幅が広がります。そのため、法人はなんでも経費で落とすことができると考える人もいるようです。しかし、法人だからといって、支出をなんでも経費で落とすことができるわけではありません。もし、なんでも経費で落とす法人が税務調査の対象となった場合、経費の過剰計上として指摘を受ける恐れがあります。
今回は、法人がなんでも経費で落とすと言われる理由やなんでも経費で落とす場合に生じるリスクなどについて解説します。
目次
法人は、なんでも経費で落とすことができるわけではありません。
法人税は、売上から仕入れにかかった費用や事業のために支払った支出を差し引いて算出した課税所得額に対して課されます。事業と関連のない費用まで経費で落とすと、課税所得額が低くなり、納めるべき税金も低くなります。そのため、もし、法人になんでも経費で落とすことを許可した場合、多くの法人では、プライベートな支出まで経費として処理してしまうでしょう。
法人にだけ、なんでも経費で落とすことを認めれば、当然、個人事業主からは不満が出るはずです。また、法人税の税収が急激に減り、社会生活を維持することが難しくなってしまいます。そのため、法人であるからといって、なんでも経費で落とすことはできないのです。
法人はなんでも経費で落とすことはできません。それにもかかわらず、法人はなんでも経費で落とせると言われる理由は、個人事業主に比べて、法人は経費として計上できる支出が多いからです。
例えば、個人事業主の場合、自宅を使って事業を営んでいる場合、家賃の一部を経費にすることはできます。しかし、法人になると一定条件を満たせば役員社宅として、居住目的に借りた物件を社宅として扱い、家賃の一部をより高い割合で経費に計上することが可能です。
このほかにも、法人だからこそ経費計上が認められている支出があることから、法人はなんでも経費で落とすことができるという誤解が生じるのではと予測されます。
法人ができるだけ法人税の負担を軽減しようと考え、本来は経費にできないものまで経費で落とす場合、次のようなリスクが生じます。
法人がなんでも経費で落とすと、法人税の負担を抑えられるだけでなく、個人の支出も減らせます。例えば、役員が家族との旅行代金を接待交際費として計上したり、私的に利用する車を社用車として購入し、経費計上をした場合、法人がその代金を支払うため、役員本人の支出を減らせます。しかし、経費で落としてもタダになるわけではなく、会社がその負担をするだけです。万が一、業績が急激に悪化した場合などは手元資金が少ないと資金繰りが悪化し、事業の継続に苦慮する恐れもあります。
そのため、なんでも経費で落とすと無料になるわけではなく、経費で落としても会社の現金は減るという点を理解しておかなければなりません。
経費で落とす額が大きくなると、課税所得額が減少し、節税につながります。しかし、課税所得額が少なくなるということは、利益が減少するということでもあります。
これから事業を拡大したいタイミングなどでは、設備投資などを目的に、金融機関に新たな融資の申し込みを行う場合もあるでしょう。しかし、融資を受ける際には必ず審査を受けなければならず、その際には事業計画書とともに、決算書や資金繰り表なども提出しなければなりません。
融資審査では、決算書の内容が重要な判断材料となります。特に、負債が資産を上回っていないか、収益力を示す営業利益や経常利益が十分に確保できているかといった点をチェックします。なぜなら、融資はお金を貸し付けることであり、返済能力が低い相手に融資をしてしまった場合、貸し付けた額を回収できなくなる恐れがあるからです。
なんでも経費で落とした場合、当然、経費の額が増えるため、利益は低くなります。利益が低くなると、融資申請時に金融機関から良い評価を得られず、融資を見送られる可能性が出てきます。
法人がなんでも経費で落としていた場合、税務調査の対象に選ばれやすくなります。企業によって利益率は異なるものの、業種によって利益率の割合はおおよそ決まってくるものです。そのため、提出された申告書を見たときに、際立って経費の割合が大きい場合などは、経費を不正に水増しし、税の負担を逃れようとしているのではと疑われる可能性があります。
税務調査が実施されると、調査官がオフィスを訪れ、事業の内容や売上の状況などを確認しながら、帳簿にも目を通し、正しく会計処理がなされているかのチェックをします。不正に税金を低く装う場合、売上を過少に申告するか、経費を水増しして過大に申告するかのいずれかの手法が選ばれます。
したがって、税務調査時には経費として計上されている額が、本当に事業に関連している支出であるのか、経費として認められる支出であるのかを、領収書を見ながらチェックするのです。領収書の内容から事業とは関連のない支出であることが発覚すれば、該当する支出の経費計上が否認されます。否認された経費は、売上から差し引くことができなくなるため、税務調査で指摘を受けると、課税所得額が申告時よりも高くなり、納税額が不足した状態となるのです。
税務調査で経費の過大計上を指摘されれば、正しく申告をし直すように求められ、不足している税金の納税も求められることとなります。
税務調査が入り、経費の過大計上を指摘された場合は、申告の修正と不足分の税金の納税だけを求められるわけではありません。正しく確定申告を行わなかったことの罰として、ペナルティも科されることになります。
申告した税金の額が本来よりも低かった場合に課されるペナルティは、過少申告加算税です。過少申告加算税は10%または15%ですが、なんでも経費で落とすことはできないことを知りつつ、意図的に経費の過大計上をしていた場合などはさらに税率の重い重加算税が課される恐れもあります。過少申告加算税に代わって重加算税が課される場合の税率は、35%です。さらに、納税が遅れたことに対するペナルティとして、納税が完了する日までの日数に応じた延滞税の納付も求められます。
また、役員の私的な支出を法人が負担し、経費として計上していた場合は、経費の計上が認められないだけでなく、否認された金額は役員報酬に該当すると判断されます。役員報酬とみなされた場合、役員個人の所得が増えるため、役員が負担すべき所得税や住民税も増加し、不足分を納める必要が出てきます。
法人だからなんでも経費で落とすことができると勘違いをし、経費に計上できない支出まで経費で落としていると、結果として、法人も役員個人もリスクが生じる</spanのです。
法人の経費として落とせるかどうかの判断基準は、業務に関連する支出であるかという点です。迷った場合には、次の点に照らし合わせながら経費として処理しても問題ない支出であるかを考えるようにしましょう。
まず、事業に関連性のない支出は、経費で落とすことはできません。事業活動に直接関係する支出であるかどうかは、経費として処理できるかどうかの重要な判断基準となります。例えば、営業活動のために必要な車両の購入費やガソリン代、自動車税などは、経費として計上が可能です。しかし、事業では使用しないプライベート用の車の購入費やガソリン代などを経費として計上することはできません。
同様に、取引を拡大するために必要だったクライアントを招いての食事会の費用は経費に計上できますが、特定の役員や社員だけが参加した食事会の費用は経費として落とすことはできません。
商談のために出張し、宿泊するケースもあるでしょう。その際、ビジネスで利用する宿泊施設であれば、それほど豪奢な宿である必要はありません。社会通念上、出張時に利用することが妥当であると考えられる宿泊費であれば、経費として計上しても問題はありません。しかし、ビジネス目的での宿泊にも関わらず、一泊あたり何十万もするようなラグジュアリーホテルのスイートルームを出張の度に使用していた場合などは、差額分については経費計上が認められない可能性があります。なぜなら出張目的で訪れた場所で、スイートルームが必要である理由はないからです。
法人が経費で落とせる費用の一例をご紹介します。経費計上にできる支出は、次のようなものです。
オフィスや工場、店舗などの固定資産税、不動産取得税、社用車の自動車税などは、経費に計上が可能です。そのほか、証明書の発行料、商工会の会費、町内会の会費なども該当します。
オフィスや店舗などを借りている場合、その家賃は経費に計上できます。また、家賃に伴う管理費や共益費、礼金、更新料なども経費に含めることができるほか、社用車を駐車するための駐車場代も経費計上が可能です。
定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与として支給する役員報酬は経費計上が認められています。また、従業員に支払う給与も人件費として経費計上が可能です。
オフィスや店舗、工場などの電気代、水道代、ガス代なども水道光熱費として経費に計上することができます。
業務で使用する固定電話の料金、携帯電話の料金、インターネット回線の利用料なども経費計上が可能です。ただし、プライベートで使用する携帯電話の利用料金は経費に含めることはできません。そのほか、はがき代や切手代なども通信費として経費に計上することができます。
従業員の健康診断費用や社員旅行、新年会・忘年会、レクリエーション費用などは福利厚生費として経費計上が可能です。しかし、全従業員が平等に利用できる機会を与えるものであり、社会通念上、妥当だと認められる範囲内での金額でなければなりません。
事業の維持や拡大のために必要な取引先を招いての食事会やゴルフコンペなどの開催費用、手土産代やお中元・お歳暮代などは接待交際費として経費計上が可能です。しかしながら、接待を伴わず、従業員だけが参加する食事会やプライベートな食事会などは、接待交際費として計上することはできません。
営業活動のためにかかる電車代やバス代、タクシー代などの移動費は、旅費交通費として経費に計上できます。また、出張時の新幹線代や宿泊費、車移動時の高速道路利用料、外出先でのコインパーキング代なども経費計上が可能です。
カタログやチラシの制作費、インターネット広告費、ホームページ制作費、社名入りカレンダーの制作費などが広告宣伝費に該当し、経費として扱えます。
コピー用紙やトナーカートリッジ代、文房具代、名刺印刷費、ごみ袋など、オフィスや店舗などで使用する事務用品や消耗品の購入費用も経費として計上できます。
このほか、10万円以上のパソコンや設備などは、法定耐用年数に合わせて減価償却をすることで、分割して経費計上が可能です。また、中小企業の場合は取得価額が30万円未満の固定資産については、少額減価償却資産の特例を使って、取得した年に一括して経費に計上することも可能です。
法人は個人事業主より幅広い支出を経費として計上することが認められています。しかしながら、法人だからといってなんでも経費で落とせるわけではありません。法人であっても経費として計上できる支出は、事業に必要になった支出に限定されます。仮になんでも経費で落とした場合、税務調査で経費の過大計上を指摘され、ペナルティを科される恐れがあります。
法人税の節税を目的にプライベートな支出まで計上していた場合、不正が発覚すれば、本来よりも多くの税金を納めなければならなくなります。また、プライベートな支出は役員報酬にあたると判断されれば、役員が負担する所得税や住民税の負担も増加する点にも注意が必要です。
経費は事業に関連するもののみを正しく計上するようにしましょう。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
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