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国内FXよりもはるかに高いレバレッジをかけた取引ができ、高額ボーナスも提供されるため、少額で高い利益を得ようと海外FXを始める方が増えています。しかし、海外口座で取引をするため、海外FXには税金がかからないという誤った認識を持っている方もいらっしゃるようです。日本に居住している方が海外FXで利益を得た際には、日本の税金の納税義務が生じます。
また、海外FXと国内FXでは課税方式が変わるため、国内FXに比べると海外FXの方が、納税すべき額が高くなる可能性があります。したがって、国内FXの取引経験がある方でも、海外FXで適用される税金のシステムはしっかり理解しておくことが大切です。
今回は、海外FXと税金の関係や確定申告のやり方、節税対策などについて解説します。
目次
海外FXとは、海外に拠点を持つFX会社が提供するFXサービスのことです。
海外FXでは、日本の規制が適用されないため、国内FXに比べて、より高いレバレッジでの取引ができます。つまり、少額でも大きな利益を得られる可能性があるのです。また、口座開設時や入金時などにボーナスが設定されており、さらに、相場の急変で損失が出た場合のマイナス残高をFX会社が補填するゼロカットシステムなどを採用している業者が多いといったメリットもあります。
海外FX会社の中には、金融庁に登録していない事業者もあります。無登録の海外業者の場合、投資者保護のための体制が整っていない場合もあり、トラブルに発展する事例も出ています。無登録の事業者との取引は危険であり、海外FXを始めるときには事業者が登録業者であるかどうかをしっかり見極める必要があります。
また、海外FXと国内FXでは、税制上の取り扱いが異なり、海外FXの場合、税負担が大きくなる可能性がある点にも注意しなければなりません。
冒頭でお伝えしたように、日本に住む人が海外FXの取引で利益が確定した場合、日本の税金を納める必要があります。
海外FX取引で納税の義務が生じるのは、決済をし、利益を確定させたタイミングです。たとえ含み益がある場合でも個人としてFX取引を行っているのであれば、未決済の取引については、所得とみなされません。そのため、利益確定前の段階では課税の対象とはならず、納税する必要はありません。ただし、利益を確定した場合、その利益は所得に該当するため、利益の額に応じた納税が必要になります。
国内FXの場合も海外FXの場合も、得られた利益は「雑所得」に該当します。しかし、国内FXは「申告分離課税」と呼ばれる課税方式が適用されるのに対し、海外FXには「総合課税」と呼ばれる課税方式が適用されます。
申告分離課税とは、他の所得とは分離し、個別の所得に対して税額を計算する課税方式です。つまり、国内FXで利益が出た場合は、申告分離課税が適用されるため、他の所得とは合計せず、FXで得た利益に対して課される税金を納税すればよいこととなります。
一方、海外FXに適用される総合課税は、複数の所得をまとめて合計所得額を算出し、合計した所得額に対して税額を計算する課税方式です。例えば、給与所得がある人が海外FXで利益を得た場合、給与所得とFX取引で得た所得を合算し、納税額を計算しなければなりません。
日本では、所得税には累進課税制度が採用されています。累進課税制度では、課税所得額が大きくなればなるほど、適用される税率が高くなる仕組みです。そのため、給与所得とは分けて課税される国内FXに比べ、海外FXの場合、納税額が高くなる可能性があります。
国内FXの場合「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」が適用され、FXで得た利益に対して、所得税15%、地方税5%の税率で課税がなされます。ただし、平成25年から令和19年までの各年分の確定申告においては、所得税に復興特別所得税が加算されるため、課される税率は一律20.315%です。国内FXの場合、利益の額が増えても税率が上がることはありません。
海外FXの場合、総合課税によって税率が決まります。所得税の税率は、以下のようになっており、海外FXと給与所得など、その他の所得を合計した額に応じて税率が変わってきます。
<所得税の税率>
参照:国税庁「所得税の税率」
所得税とは別に、所得税×2.1%の復興特別所得税、住民税10%も加算されることになるため、海外FXで利益を得た場合、約15%~55%の税金が課される可能性があるのです。給与所得のある会社員が海外FXで利益を得た場合、給与所得に海外FXの利益もプラスしなければなりません。年収が高い場合や海外FXで大きな利益を得た人ほど、適用される税率は高くなります。
海外FXを行い、利益を得た場合、確定申告で税金を納めます。しかしながら、海外FXをしている人がすべて、確定申告によって税金を納めなければならないわけではありません。納税の義務が生じるのは、次のようなケースです。
給与所得を得ている会社員の場合、海外FXでの所得を含め、年間20万円以上の雑所得を得ている場合に確定申告をして税金を納めなければなりません。また、国内FXと海外FXの両方で所得を得た場合は、課税方法が異なるため、それぞれ別に税額を計算し、申告する必要があります。
給与所得者と、給与所得者以外では、確定申告が必要になる金額の基準が変わってきます。個人事業主として事業をしている人や無職の人などは、海外FXを含め、年間95万円以上の所得を得ている場合に確定申告が必要です。例えば、年間50万円の事業所得があった個人事業主が、海外FXで50万円の所得を得た場合、一年間の所得額の合計は100万円となるため、確定申告が必要になります。
令和7年度税制改正により、所得税の基礎控除の見直しが行われました。令和6年までは年間48万円以上の所得がある場合に確定申告が必要でしたが、令和7年から、給与所得者以外の場合、確定申告が必要となる年間所得額が95万円以上に変更となっています。
海外FXで得た利益について確定申告を行う場合に必ず押さえておきたいポイントについてご説明します。
課税対象となるFXの所得は、収入から必要経費を差し引くことで算出できます。このとき、収入は為替差損益とスワップポイントを合計した額となります。スワップポイントは、保有している通貨ペアの金利差によって発生する損益のことで、毎日受け取ることができる金額です。スワップポイントを足し合わせなかった場合、正確な課税所得額を計算できず、納税する税額にもずれが生じる可能性があります。海外FX取引の所得を求める際には、スワップポイントの加算を忘れないようにしましょう。
確定申告によって税金の額を確定するためには、まず、一年間の所得額を求めなければなりません。海外のFX会社から発行される年間取引報告書は、円換算されていないケースもあります。確定申告の際には、円に換算をして申告をしなければなりません。そのため、確定申告を行う際には、まず、ドル建てやユーロ建ての損益を約定時点のレートで円に直す必要があります。
所得税の課税対象となるのは、FXで儲けた額です。入金手数料や出金手数料、取引手数料、取引のための通信費用、FX取引のために使用しているパソコンや周辺機器の取得費用、情報収集のために購入した書籍代、セミナー参加費用、FXの相場分析ツール購入代金などは、FX取引のためにかかった経費として認められます。そのほか、専用デスクや椅子、文房具などを購入した場合は、業務関連性が明確なものに限り、家事按分・領収書保存のうえ経費計上が可能です。
FX取引にかかった費用を経費として漏れずに計上すれば、課税所得を圧縮できるため、節税効果を得られます。しかしながら、経費として計上できる支出は、FX取引のために必要であった支出に限定され、支払いの証明となる領収書などの保管も必要になる点には注意が必要です。
複数の所得がある場合に、一年間の各所得金額の損失と利益を相殺することを損益通算といいます。例えば、事業所得がある個人事業主が、不動産賃貸を行っている場合、事業は黒字だったものの不動産所得では損失が生じたと仮定します。その場合、事業所得から不動産所得の損失分を差し引き、課税所得額を算出できるため、課税額を低く抑えることが可能です。
しかし、損益通算の対象となる所得は次の4つです。
・不動産所得
・事業所得
・譲渡所得
・山林所得
FXの利益は、雑所得に該当する所得です。そのため、海外FXで利益や損失が出た場合でも、他の所得と相殺することはできません。また、国内FXの場合も雑所得として扱うため、海外FXと国内FXを同時に運用していた場合でも、それぞれの利益や損失を相殺することはできない点に注意する必要があります。
他の所得との損益通算は認められていませんが、海外FXの複数口座を所有している場合、複数の海外FX会社間の損益通算を行うことはできます。複数の海外FX口座がある場合には、確定申告時に利益から損失を差し引くことで、節税することが可能です。
国内FXの場合、損失が出ているときは確定申告によって最大3年間、損失を繰り越すことが可能です。損失を繰り越せる場合、利益が出た年に損失分を相殺できるため、節税効果を得られます。しかしながら海外FXで発生した損失は、繰り越すことはできない点に注意しましょう。
確定申告の方法には「白色申告」と「青色申告」の2つの申告方法があります。白色申告は、単式簿記と呼ばれる簡易的な記帳方式での記帳が認められ、比較的手間をかけずに確定申告を行うことが可能です。一方、青色申告は、複式簿記と呼ばれる方式で記帳しなければならず、白色申告に比べると提出が必要な書類も多くなり、複雑な処理が求められます。その代わり、青色申告には、青色申告特別控除と呼ばれる控除制度があり、確定申告の期間内に青色申告を行うと最大65万円の控除を受けられます。そのため、青色申告で確定申告を行いたいと思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかしながら、海外FX・国内FXの所得はいずれも雑所得に該当するため、青色申告が認められません。青色申告承認申請書を提出しても、受け付けられない可能性が高くなる点に注意しましょう。
確定申告の期間は原則として、毎年2月16日~3月15日までと決められています。この間に確定申告書を提出せず、税金を納めなかった場合、無申告加算税と呼ばれるペナルティが科されます。海外FXで利益を確定させ、一定以上の利益を得た場合には忘れずに確定申告を行うようにしましょう。
海外FXでも、利益を確定した場合、確定申告をし、税金を納めなければなりません。海外FXに課される税金には、国内FXの場合とは異なり、所得の合計額によって税率が決定する総合課税が適用されます。そのため、海外FXで大きな利益を得た場合や高い年収を得ている方などは、国内FXに比べ、課される税金が高くなる恐れがあります。
海外FXの確定申告は、円換算が必要になるなど、手続きが複雑になります。取引額が多く、一人での確定申告が難しい場合などは税理士への相談も検討してみるとよいでしょう。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者16万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
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