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営業活動をする場合に、電車を使って移動するケースも多いでしょう。営業活動のために使用した交通費は経費として扱うことができます。しかし、一般的に経費として精算する場合には領収書が求められます。電車の場合、領収書を受け取らないケースも多く、そのような場合はどのように対応すればよいのか悩むケースもあるかもしれません。
特に、最近では切符を購入するケースは少なく、SuicaやPASMOなどのICカードを使って電車移動をする方も多いため、領収書がない場合の対応方法について疑問をいただくケースが多いようです。
そこで今回は電車の領収書のもらい方や領収書がない場合の経費精算の仕方などについてご説明します。
目次
電車を使用したときに領収書をもらえるケースもあります。電車の領収書のもらい方からご説明します。
出張時に新幹線や特急のチケットを駅の窓口で買う場合などは、領収書の発行を依頼すれば、その場で領収書を受け取ることができます。また、券売機で購入した場合も、券売機に領収書発行ボタンがあるため、領収書発行ボタンを押せば領収書が発行されます。新幹線や特急券だけでなく、在来線の切符についても券売機に領収書発行機能が付いていれば、券売機で領収書を発行することが可能です。
切符購入時に領収書をもらい忘れた場合でも、鉄道会社によっては、切符やクレジットカードの利用票を窓口で提示すると、領収書を発行してもらうこともできます。ただし、改札を出るなどして、すでに切符が手元にない状態では領収書の発行は受けられません。
SuicaやPASMOに券売機からチャージをする場合、チャージした金額についての領収書は券売機から発行することが可能です。また、SuicaやPASMOでは、駅の券売機でカードを読み込ませると、移動日や移動区間、金額が示された利用履歴を印刷することができます。ただし、Suicaの場合、印字できる履歴は過去26週間以内、100件までとなります。PASMOの場合、印字できる履歴は20件です。
また、モバイルSuicaやモバイルPASMOを利用している場合には、会員メニューサイトからチャージを含めた領収書(利用明細書)をダウンロードし、印刷することができます。
電車の領収書は、券売機や窓口で発行してもらうことができます。また、ICカードやモバイルで電車の乗り降りをした場合も、利用履歴を出力することで、領収書の代わりとすることも可能です。
では、そもそも経費精算を行う際に、電車の領収書は必要なのでしょうか?
実は、3万円未満の電車代は、領収書がない場合でも経費に計上して問題ありません。企業によっては異なる基準を設けている場合があるものの、3万円未満の電車代であれば、領収書を提出しなくても経費精算を認めるケースが多いのです。その理由は、税法上、3万円未満の取引については領収書の提出が義務付けられていないことに起因します。
例えば、片道1,500円の電車代がかかるクライアントを訪問し、往復で3,000円の電車代を支払った場合、領収書がなくても交通費として精算することが可能です。ただし、3万円未満の電車代であれば領収書が不要となった場合、不正に交通費を経費として申請する事例が出てくると考えられます。そのため、多くの企業では、交通費申請書や出金伝票などを作成し、電車移動の記録を残すなどの対策を取っているのです。
3万円以上の電車代を使った場合は、領収書が必要です。例えば、東京から広島までの出張で新幹線を使用した場合、往復の電車代は約4万円となります。3万円以上の電車代は、経費精算をする際に領収書が必要です。
窓口や券売機で切符を購入した場合は、必ず領収書を受け取るようにしましょう。また、インターネットから新幹線のチケットを予約した場合は、予約したWebサイト上から領収書のダウンロードが可能です。
2023年10月1日からインボイス制度が開始されました。それまでは、3万円未満の取引については領収書がない場合でも経費として計上しても問題ありませんでした。しかし、インボイス制度開始以降は、たとえ3万円未満の取引であっても領収書が必要になっています。そこで気になるのが、3万円未満の電車代の場合、領収書がないと消費税の仕入額控除が認められなくなるのではという点ではないでしょうか。
実は、インボイス制度では、領収書の受領が難しいケースについて例外を認めています。その中の1つに3万円未満の公共交通機関による旅客の運送が含まれており、帳簿のみの保存で仕入額控除を認めるとしているのです。
インボイス制度において、領収書がなくても帳簿保存のみで仕入額控除を認める3万円未満の公共交通機関による旅客の運送には、次のケースが該当します。
一般旅客定期航路事業、旅客定期航路事業、一般不定期航路事業として行う旅客の運送
一般乗合旅客自動車運送事業として行う旅客の運送
鉄道:第一種鉄道事業、第二種鉄道事業として行う旅客の輸送
軌道(モノレール等):軌道法第3条に規定する運輸事業として行う旅客の運送
また、3万円未満の電車代とは、1回の取引の税込金額で判定されます。新幹線の料金など1人15,000円のチケットを4人分購入した場合などは、4人分の電車代6万円で判定することになるため、1人あたりの電車代は3万円未満ではあるものの、領収書が必要です。
3万円未満の電車代であれば、領収書なしでも経費精算をすることができます。また、個人事業主の場合は、領収書なしで経費に計上しても問題ありません。しかし、領収書なしの電車代を経費として扱う場合、次のようなリスクが生じる恐れがあります。
領収書なしで、電車代を経費として精算できるとなると、実際には発生していない電車代まで、経費として申請するケースが起こらないとは限りません。申請した分だけ電車代として精算できるのであれば、日常の営業活動にかかる交通費を水増しし、不正に多く交通費を請求する可能性もあるのです。
3万円未満の電車代について、領収書の提出を不要としている場合などは、新幹線の運賃を経費として申請しながら、より電車代を低く抑えられる在来線を利用するケースなどが発生するかもしれません。また、中には実際には出張に行っていないにも関わらず、出張をしたかのように見せかけ、新幹線代を経費として申請するような悪質なケースが発生する恐れもあります。
従業員が電車代を不正に申請し、経費として精算した場合、2つの問題が発生します。1つは、本来は経費として扱うことができない架空の電車代を経費として計上しているため、課税所得額にずれが生じ、法人税額などが不足する恐れがある点です。もし、複数の従業員が架空の出張をでっち上げて、新幹線などの電車代を不正に請求していた場合、その額は高額に上る可能性もあります。さらに、このような従業員の行為は、会計上の不正だけでなく、刑法上の犯罪行為に該当する可能性も出てきます。従業員の交通費の不正請求は、横領罪に該当する可能性もあるのです。
電車代の請求を巡る従業員の不正が発覚すれば、管理体制が疑問視され、社会的信頼性の損失につながる恐れも出てくるでしょう。
税務調査の対象となった場合、税務署の調査官は、経費として計上されている金額と領収書を確認しながら、計上されている金額が正しいものであるか、経費の水増し計上がないか、詳しくチェックします。
3万円未満の電車代であれば、領収書がなくても交通費として処理することは可能です。しかし、従業員の数と比較して交通費の額が異常に高い場合や個人事業主であるにもかかわらず多額の交通費を計上している場合などは、不正に交通費を水増ししているのではと疑われる可能性があります。計上した電車代の正当性を主張したくても、領収書がなければ証拠を示すことができず、税務調査時に不利な結果を招く恐れがあります。税務調査で交通費の経費計上が否認された場合、課税所得額がアップするため、納税した税金では不足が生じ、足りない分の税金の納付が求められます。さらに、不足分の納税だけでなく、正しく申告をしなかった場合のペナルティとして、過少申告加算税を課される恐れもあるのです。過少申告加算税が加算されると、本来よりも多くの税金を納めなければならないことになります。
そのため、3万円未満の電車代は領収書が必要ではないものの、領収書を準備できないケースでも、交通費が発生したことを証明できる書類を準備しておくことが大切です。
領収書がない電車代を経費として精算する場合には、次のような方法での対応をおすすめします。領収書に代わる証拠の提示を求めることで不正を防ぎやすくなるとともに、その証拠を保管することで税務調査時にも交通費を正しく計上していることの証明となるからです。
では、領収書のない電車代の経費精算はどのように行うべきなのでしょうか。領収書がない場合の対処法を3つご紹介します。
SuicaやPASMOなどのICカード、モバイルSuicaやモバイルPASMOなどのスマホアプリを使って電車の乗り降りをしている場合は、利用明細書の提出を求めると、電車代の明確な証明となります。利用明細には、乗車した日時や乗車区間、金額が記載されているため、電車を利用したことを具体的に証明することが可能です。また、新幹線や特急などの切符をインターネットで購入した場合はクレジットカードの利用明細書や乗車券の控えなどの添付を求めるとよいでしょう。
個人事業主として、電車代を経費計上する場合も、利用明細書を出力し、領収書の代わりとして保管しておくことをおすすめします。
出金伝票とは、現金を支出した際の取引内容を記録する伝票です。日付や支払先、支払目的、金額などを記入し、現金を支出する際の証明とします。電車代だけでなく、領収書が発行されないバスで移動した場合にかかった交通費も出金伝票を使って記録することができます。
上司が申請内容をチェックする仕組みを作っておけば、不正な交通費の請求も抑止しやすくなるでしょう。
そのほか、領収書が発行できない自動販売機で会議参加者分のドリンクを購入した場合や、取引先などにご祝儀やご香典を渡す場合などにも出金伝票を使って内容を記録しておくようにしましょう。
交通費精算書とは、外出や出張などで発生した交通費を記録し、精算するための書類です。移動に利用した交通機関や出発した駅、到着した駅、訪問先や訪問の目的、料金を記載できるようフォーマットを作成しておくと、交通費の精算がしやすくなります。個人事業主の場合も、バスや電車の移動で領収書が発行できない場合などは、交通費精算書を作成し、その都度、記録を残しておくと、税務調査でも指摘を受けるリスクを抑えられるでしょう。
電車の領収書は、切符を購入した窓口や券売機から発行を受けることが可能です。新幹線のチケットなどを購入した場合は、領収書を必ず受け取るようにしましょう。また、日常的な営業活動などで電車移動をする場合は、ICカードやスマホアプリを使って移動するケースも少なくないはずです。ICカードやスマホアプリを使った場合、その都度、領収書の発行を受けることはできません。しかしながら、利用履歴のダウンロードや印字が可能になっているため、Webサイトや券売機から利用履歴を出力し、領収書の代わりとして使用することも可能です。
また、新幹線や特急のチケットをクレジットカード払いで購入した場合などは、クレジットカードの利用明細なども領収書の代わりとして使用することができます。
税制上は3万円未満の交通費については、領収書がなくても経費計上を認めています。ただし、社員の不正や税務調査時の指摘などのリスクを避けるためには、領収書を極力準備し、領収書が発行されない場合は利用明細や出金伝票などを活用して、記録を残すことが大切です。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者16万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
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