2025.09.25

青色申告と白色申告の違いとは。自分に合った申告方法の選び方を解説

読了目安時間:約 6分

確定申告の方法には「青色申告」と「白色申告」の2つの申告方法があります。それぞれにメリットとデメリットがあるため、確定申告を行う際には、自身に適した方法を選択することが重要です。しかしながら、個人事業主として開業し、初めて確定申告を行う人にとっては、青色申告と白色申告のどちらを選択すべきか悩むケースもあるのではないでしょうか。

そこで今回は、所得税の確定申告における青色申告と白色申告の違い、それぞれのメリット・デメリットなどについてご説明します。

 

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青色申告と白色申告の違い

青色申告と白色申告には次のような違いがあります。主な違いを項目別にご説明します。

 

節税効果の違い

・青色申告:青色申告特別控除、青色事業専従者給与、3年間の繰り越しの損失、少額減価償却資産の特例

・白色申告:事業専従者控除

 

青色申告と白色申告では、節税効果に大きな違いがあります。青色申告には、青色申告特別控除をはじめ、さまざまな節税につながる優遇措置が用意されています。

 

税務署への事前申請の違い

・青色申告:事前申請が必要

・白色申告:事前申請は不要

 

青色申告を行おうとする場合は、事前に税務署に対し、青色申告承認申請書を提出しなければなりません。個人事業主の場合、青色申告承認申請書の提出期限は、青色申告をしようとする年の3月15日までです。

一方、白色申告の場合は、税務署への事前申請は不要です。

 

記帳方式の違い

・青色申告:複式簿記

・白色申告:単式簿記

 

青色申告は、複式簿記と呼ばれる方法で記帳をする必要があります。複式簿記とは、取引を原因と結果の両面から記録する方法です。資産の増加や負債の減少については左側の「借方」に、資産の減少や負債の増加は右の「貸方」に記載します。お金の流れを明確に記載するため、事業の財政状況や経営状況について把握しやすくなる点は、複式簿記のメリットだと言えるでしょう。なお、青色申告でも10万円の青色申告特別控除を受ける場合は、単式簿記の記帳が認められています。

一方、白色申告は単式簿記と言われる方法で記帳します。単式簿記は、収入と支出だけを記録する記帳方法です。家計簿やお小遣い帳など、現金残高の増減を記録するものが単式簿記での記帳になります。複式簿記に比べると、収入と支出のみを記録すればよいため、記帳に手間がかかりません。

 

提出書類の違い

青色申告と白色申告では、提出する書類にも違いがあります。

 

・青色申告:確定申告書、青色申告決算書、貸借対照表、損益計算書、第三表、第四表

・白色申告:確定申告書、収支内訳書、第三表

 

青色申告をする場合、確定申告書に加え、青色申告決算書と貸借対照表、損益計算書の提出が必要です。また、申告分離課税の対象となる譲渡所得などがある場合や損失についての申告がある場合は、第三表や第四表の提出も必要になります。ただし、10万円の青色申告特別控除の適用を受けたい場合は、貸借対照表の提出は不要です。

白色申告の場合、提出すべき書類は青色申告よりも少なくなります。基本的に必要となる書類は、確定申告書と収支内訳書です。申告分離課税の対象となる所得がある場合は、第三表も提出します。

 

書類の保存期間の違い

青色申告と白色申告では、書類の保存期間にも違いがあります。

青色申告:原則として7年間

白色申告:原則として5年間

 

青色申告は、原則として7年間、次の書類を保存しておかなければなりません。

・仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳などの帳簿、損益計算書、貸借対照表、棚卸表、領収書、小切手控え、預金通帳、借用書などの書類。

ただし、請求書や見積書、契約書、納品書などの保存期間は5年です。

また、前々年分の事業所得及び不動産所得の金額が300万円以下の場合は、領収書や小切手控え、預金通帳、借用書などの保存期間は5年に変更となります。

 

白色申告の場合は、収入金額や必要経費を記載した法定帳簿は7年、任意帳簿、棚卸表や請求書、納品書、領収書などは5年保存しなければなりません。ただし、白色申告者であっても、インボイス発行事業者として登録している場合はインボイスを7年間保管しておく必要があります。

 

青色申告のメリット

青色申告には多くのメリットがあります。主なメリットをご紹介します。

 

青色申告特別控除を利用できる

青色申告特別控除は、期限内に青色申告を行った場合に適用される税制上の優遇措置です。青色申告特別控除が適用されると、課税所得額から65万円、55万円、10万円のいずれかの額を控除できます。控除によって課税所得額が低くなると、課される所得税の額を抑えられるため、節税効果を得られます。

65万円の青色申告特別控除の対象となるのは、事業所得または事業的規模の不動産所得を得ている方です。確定申告の期間内にe-Taxを使って申告を行っているか、優良な電子帳簿の保存を行っている場合、65万円の青色申告特別控除を受けることができます。

また、事業所得または事業的規模の不動産所得を得ているもののe-Taxによる提出をせず、優良な電子帳簿も行っていない場合に適用されるのが55万円の控除です。

10万円の青色申告特別控除の場合は、事業所得のほか、不動産所得、山林所得を得ている人も対象となります。また、単式簿記での記帳も認められています。

 

家族への給与を経費に計上できる

事業主と生計を一にする配偶者または親族で、年齢が15歳以上であり、申告を行う年において6か月以上、青色申告者が営む事業に専ら従事していた場合、青色事業専従者としての要件を満たすことになります。青色事業専従者に支払った給与は、事業に従事する対価として妥当な金額である場合、青色事業専従者給与として経費計上が可能です。

家族に支払う給与を経費として差し引くことができれば、課税所得額を圧縮できるため、節税効果を得られます。

 

3年間、赤字の繰り越しが可能

青色申告者は、赤字が発生した場合、最大3年にわたって赤字分を繰り越すことが可能です。個人事業主として開業したばかりの年は、設備投資や人件費に費用がかかるものの、事業が軌道に乗るまでに時間がかかるケースも少なくありません。赤字の場合、課税所得額がマイナスになるため所得税が課されることはありませんが、翌年以降、黒字になれば、黒字分について所得税が課されます。

しかし、青色申告者は、黒字になった年に黒字分から赤字を相殺することが可能です。例えば、初年度に200万円の赤字となり、翌年、300万円の黒字となった場合、300万円から前年の赤字分である200万円を差し引いた100万円が課税対象となります。課税所得額が低くなれば、課される所得税も低くなるため、黒字の年の納税額を低く抑えることができ、節税効果を得られるのです。

 

30万円未満の固定資産を一括で経費計上できる

青色申告者は、少額減価償却資産の特例を適用することが可能です。少額減価償却資産の特例とは、取得価額が10万円以上30万円未満の資産について、減価償却を行わず、取得した年に全額を経費として計上することを認める特例です。

本来、取得価額が10万円以上の資産は、法定耐用年数に応じて減価償却を行う必要があります。しかし、青色申告者の場合、10万円以上の固定資産であっても30万円未満であれば一括で経費計上が認められているのです。減価償却をせず、一括で経費計上ができれば、課税所得額を圧縮できるため節税効果>を得られます。

 

青色申告のデメリット

税制面においてさまざまな優遇措置を受けられる青色申告ですが、デメリットがないわけではありません。青色申告の主なデメリットは以下の2点です。

 

事前の申請が必要

青色申告を行うためには、事前に税務署に青色申告承認申請書を提出しなければなりません。管轄の税務署の窓口に提出するとなると、手間に感じる方も多いでしょう。しかし、青色申告承認申請書は、e-Taxを利用してオンライン上で提出することも可能です。

 

複雑な記帳が必要になる

10万円の青色申告特別控除を受ける場合を除き、青色申告を行う場合には複式簿記での記帳が求められます。また、白色申告に比べて提出する書類も増えるため、日々の経理処理や確定申告の処理に手間がかかる点は青色申告のデメリットになると言えるでしょう。

 

白色申告のメリット

白色申告の主なメリットは、青色申告のデメリットにも通ずる部分です。

 

事前の申請が不要

白色申告は、青色申告のように期日までに申請書を作成して提出する必要がありません。事前の手続きが不要な点は白色申告のメリットです。

 

記帳と申告書の作成に手間がかからない

白色申告は単式簿記での記帳となるため、記帳の手間がかかりません。また、確定申告書の提出書類も青色申告に比べると少ないため、手間をかけずに、確定申告を行うことが可能です。

 

白色申告のデメリット

青色申告と白色申告を比べると、白色申告の方がシンプルな手続きで申告ができるといった違いがあります。しかし、手続きが簡便な分、青色申告のようなメリットを享受することはできません。

 

青色申告特別控除のような控除制度はない

白色申告の場合、青色申告特別控除のように、課税所得額から一定額を控除できる制度はありません。

 

赤字を繰り越すことはできない

青色申告の場合、3年間、赤字を繰り越すことができますが、白色申告では赤字の繰り越しは認められていません。そのため、赤字の年があっても、翌年以降の黒字分と相殺することはできず、黒字になった年は黒字分の所得税の納税が必要になります。

 

家族への給与を経費として扱うことはできない

白色事業者の場合、生計を一にする配偶者や15歳以上の親族に事業を手伝ってもらった場合、青色申告のように、配偶者や親族に支払った給与を経費として計上することはできません。

しかし、その年を通じて6か月以上、白色申告者の営む事業に専ら従事していた場合は、一定額を事業専従者控除として控除することが認められています。ただし、控除できる額は、決められており、青色申告に比べると大きな節税効果を得ることはできません。また、事業専従者控除を利用した場合、配偶者控除や扶養控除の対象から外れることになります。そのため、事業専従者控除を利用した方がよいのか、配偶者控除や扶養控除を利用した方がよいのかは慎重な判断が求められます。

 

青色申告が向いている人

ここまで青色申告と白色申告の違いについてご説明してきました。青色申告ができる人、また青色申告が向いている人は次のような条件に該当する人です。

 

事業所得・不動産所得・山林所得がある人

まず、青色申告ができる個人事業主は、事業所得、不動産所得、山林所得を得ている人です。このほかの所得を得ている人が青色申告を行うことはできません。また、65万円または55万円の青色申告特別控除を受けるためには、不動産所得の場合、事業的規模で不動産の貸し付けを行っている必要があります。具体的には、アパートであれば10室以上、貸家であれば5棟以上の規模が事業的規模に該当します。

したがって、事業所得、不動産所得、山林所得以外の所得を得ている人は青色申告を行うことはできません。

 

節税効果を得たい人

青色申告特別控除や3年間の赤字の繰り越し、少額減価償却資産の特例など、青色申告では節税につながるさまざまな制度を利用できます。白色申告に比べて、複式簿記の記帳が必要になるなど、手間はかかるものの得られる節税効果を優先したいという方は、青色申告がおすすめです。

 

白色申告が向いている人

白色申告が向いている人は、節税効果よりも手間をかけずに申告を行いたい人です。また、対象となる所得額が少ない場合、青色申告の優遇措置を活用してもそれほど大きな節税にはつながりません。そのため、副業として事業を行っている人も含め、確定申告の対象となる所得額がそれほど大きくない場合は、手間がかからない白色申告の方が向いているかもしれません。

 

まとめ

青色申告と白色申告では、事前申請の有無や記帳方法、提出書類、得られる節税効果など、さまざまな面で違いが見られます。白色申告に比べると、青色申告は複式簿記での記帳が求められ、確定申告時に提出書類も多くなりますが、その一方で、白色申告にはない税制上の優遇措置を受けることが可能です。

これから長く事業を営む予定がある場合やある程度の事業所得を得ている場合などは、多少、手間がかかっても大きな節税効果を得られる青色申告をおすすめします。ただし、副業分の確定申告を行う場合など、申告する課税所得額がそれほど大きくない場合は、手間がかからない白色申告を選択した方がよいでしょう。

 


 

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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

登録者16万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。
国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。
なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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