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所得とは、収入から必要経費を差し引いた、いわゆる「儲け」のことです。所得税法では所得を10種類に区分しており、その一つに雑所得があります。所得を得た場合、所得税が課されますが、雑所得を得ている場合でも確定申告が必要になることがあります。では、雑所得の場合、確定申告はいくらから必要になるのでしょうか。また、雑所得を得ている場合にいくらから確定申告が必要になるのか気になる学生の方も多いようです。
そこで今回は、雑所得に該当する所得や雑所得では確定申告はいくらから必要になるのかなどについて、解説します。
目次
雑所得とは、どのような所得を指すのか、雑所得の基本から確認していきましょう。
所得税法では、所得を性質によって次の10種類に区分しています。
・利子所得
預貯金や公社債の利子、合同運用信託、公社債投資信託、公募公社債等の運用をする投資信託の収益の分配に係る所得
・配当所得
株主や出資者が法人から受け取る配当や投資信託(公社債投資信託および公募公社債等運用信託以外のもの)に係る収益の分配、特定受益証券発行信託の収益の分配などに係る所得
・不動産所得
土地や建物などの不動産の貸し付け、借地権などの不動産に関連する権利、船舶や航空機の貸し付けによる所得
・事業所得
農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業、その他事業から生じる所得。ただし、原則として、不動産の貸し付けによる所得は不動産所得、山林の譲渡による所得は山林所得として扱います。
・給与所得
使用人や役員など、支払いを受ける俸給や給料、賃金、歳費、賞与のほか、これらの性質を持つ給与に係る所得
・退職所得
退職によって勤務先から受ける退職手当、厚生年金基金等の加入員の退職に基因して支払われる一時金などの所得
・山林所得
山林を伐採して譲渡したり、立木のままで譲渡することによって生じる所得。ただし、山林を取得してから5年以内に伐採または譲渡した場合は、山林所得ではなく、事業所得または雑所得として扱います。
・譲渡所得
土地や建物、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することによって生じる所得、建物などの所有を目的とする地上権などの設定による所得で一定のもの。ただし、事業用商品などの棚卸資産、山林、減価償却資産のうち一定のものなどの譲渡によって生じた所得は譲渡所得には該当しません。
・一時所得
利子所得から上記所得までのいずれの所得にも該当しないものであり、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外のもののうち、労務その他の役務の対価、資産の譲渡による対価ではない一時的な所得。
具体的には、次のような所得が一時所得に該当します。
・懸賞や福引きの賞金品
・競馬や競輪の払戻金
・生命保険の一時金
・損害保険の満期返戻金
・法人から贈与された金品
・雑所得
利子所得から一時所得までの所得のいずれにも該当しない所得。
参照:国税庁「No.1300 所得区分のあらまし」
雑所得に該当する所得とは、どのような所得になるのでしょうか。具体例を挙げながらご説明します。
国税庁では雑所得の計算方法として、以下の3つの所得の合計額が雑所得の金額になるとしています。
・公的年金等
・業務に係るもの
・それ以外のもの
したがって、雑所得は上の3種類に大別できるといえます。
公的年金等の雑所得とは、次に該当する所得です。
(1)国民年金法、厚生年金保険法、公務員等の共済組合法などの規定による年金
(2)過去の勤務により会社などから支払われる年金
(3)確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける年金
(4)外国の法令に基づく保険または共済に関する制度で(1)に掲げる法律の規定による社会保険または共済制度に類するものに基づいて支給を受ける年金
業務に係る雑所得とは、基本的には副業などで得た一時的な所得のことです。継続性がない場合や収入額が小さい場合などは、事業所得ではなく、雑所得として扱います。具体的には、次のような所得が業務に係る雑所得に該当します。
・クラウドソーシングの収入
インターネットを通じて業務を受注し、得られた収入は雑所得として扱うケースが多くなります。クラウドソーシングでは、ライティングや翻訳、イラスト・デザインの制作、データ入力、リサーチ業務、プログラミング、Webサイトの制作などの業務依頼が多くなっています。
・YouTubeやブログの広告収入
YouTubeを運営し、動画を配信することで得られる広告収入は、雑所得として扱います。また、運営しているブログに広告を掲載し、クリック数などに応じて得られた収入も雑所得です。
そのほか、商品やサービスをブログやSNSなどで紹介し、紹介した商品やサービスの購入数によって報酬を得るアフィリエイトの収入も雑所得に該当します。
・インターネットオークションやフリマアプリの収入
インターネットオークションやフリマアプリで、営利目的で物品を販売し、収入を得た場合は雑所得として扱います。しかしながら、不要なものを売却した場合は、生活用動産として扱うため、この場合の収入は雑所得には含めません。
・原稿料や講演料、印税
ライティングを本業としている人の場合などは、事業所得となりますが、副業として原稿を書いている人の場合などの原稿料や印税は雑所得として扱います。また、本業を持つ人が講演を依頼され、講演料を得た場合なども雑所得として扱います。
公的年金等に関する雑所得、業務に係る雑所得に該当しないものについては、それ以外の雑所得として扱います。具体的には次のような所得が対象となります。
・FXや仮想通貨取引で得た利益
株式や投資信託で得た売却益などは譲渡所得になりますが、FXや仮想通貨取引で得た利益は、それ以外の雑所得として扱います。
・貸金の利子(非営業用の場合)
事業として貸金業を営んでいるわけではなく、個人としてお金を貸し、利子を受け取った場合、利子については雑所得として扱います。
雑所得で確定申告が必要になるケースは、給与所得を得ている人と給与所得を得ていない人で変わってきます。
会社員など、給与所得を得ている人の場合、給与所得以外に年間20万円以上の所得を得た場合に確定申告が必要になります。ただし、雑所得が20万円を超えた場合ではなく、給与所得以外の所得が20万円を超える場合に確定申告が必要になるという点に注意が必要です。
例えば、雑所得が5万円であっても、不動産所得が20万円であれば、給与所得以外に25万円の所得を得ているために、確定申告が必要になります。
個人事業主やフリーランスとして活動している人などは、雑所得を含め、基礎控除額を超える額の所得を得ていれば確定申告をしなければなりません。令和7年分以降は、95万円を超える所得を得ている場合に確定申告が必要になります。
例えば、学生の場合でも、アルバイトをしておらず、給与所得がない場合、年間95万円を超える所得を得ているときに確定申告を行わなければなりません。
公的年金等の場合には、公的年金等に係る確定申告不要制度があります。公的年金等の収入が400万円以下であり、公的年金等が源泉徴収の対象となる場合、公的年金等以外の所得が20万円以下であれば確定申告は不要です。
一定以上の雑所得を得ている場合には、確定申告をしなければなりません。しかし、前述のように収入と所得は異なるため、確定申告が必要かどうかを判断するためには、1年間の雑所得の額を算出する必要があります。雑所得の計算方法を、3つの区分ごとにご説明します。
公的年金等の雑所得は、収入金額の合計額から公的年金等控除額を差し引いて算出します。
公的年金等の雑所得=収入金額-公的年金等控除額
公的年金等控除額は、受給者の年齢や年金の収入金額に応じて定められています。
また、民間の保険会社で加入している個人年金は公的年金ではないため、公的年金等の雑所得ではなく、それ以外の雑所得として扱います。
業務に係る雑所得については、総収入金額から必要経費を差し引いた額が課税対象の所得となります。したがって副業による雑所得がある場合には、以下の式で計算をします。
業務に係る雑所得=総収入金額-必要経費
例えば、クラウドソーシングの場合には、パソコンの取得費用やソフトウェアの購入費用、通信費用など、クラウドソーシングのためにかかった費用は経費として扱うことが可能です。ただし、経費になるのは、雑所得を得るための業務に使用した分に限定されます。そのため、パソコンやインターネットなど、プライベートと業務の両方で使用しているものについては、業務の使用割合を算出し、業務使用分だけを経費に計上することになります。
また、インターネットオークションやフリマアプリで販売している場合は、販売目的で仕入れた商品の購入費用は、経費になります。
それ以外の雑所得については、総収入金額から必要経費を差し引いて算出します。
それ以外の雑所得=総収入金額-必要経費
FXや仮想通貨取引などは、購入時の費用、取引にかかった手数料などを経費として扱うことが可能です。そのほか、セミナー参加費用や勉強のために購入した書籍代、取引のために購入したパソコンの代金、通信料金なども経費になります。
雑所得は、給与所得などの、そのほかの所得と合計し、総所得金額を求めた後に納める税額を計算する総合課税の対象となります。したがって、確定申告をする際には、以下の式のように、雑所得も加えた1年間の総所得金額を求めたうえで、所得税の計算をします。
所得税額=(雑所得+給与所得などのほかの所得-所得控除)×税率
ただし、株式の譲渡や先物取引に関連する所得は総合課税には含みません。国内FXで得た所得も先物取引に係る雑所得として扱われるため、他の所得とは区別して課税されます。
雑所得の確定申告を行う場合、青色申告を行うことはできません。青色申告の対象となるのは、不動産所得、事業所得、山林所得の3つです。したがって、雑所得の確定申告は白色申告で行います。
個人事業主で青色申告をしている人の場合でも、雑所得に関しては青色申告には含めず、白色申告扱いで確定申告を行うことになります。
確定申告を行う際には、主に次のような書類の準備が必要です。
・確定申告書
・源泉徴収票(給与所得者の場合)
・収支内訳書(前々年の雑所得の収入金額が1,000万円を超える場合)
・控除証明書
・本人確認書類
・マイナンバー
確定申告書は、税務署の窓口で入手できるほか、国税庁のWebサイトからダウンロードすることも可能です。紙の確定申告書を作成する場合は、税務署に持参して提出するか、税務署に郵送して提出します。
また、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を活用したり、市販の確定申告書作成ソフトなどを活用し、Web上で確定申告書を作成することも可能です。その場合は、e-Taxを利用し、オンライン上で確定申告書を送付することもできます。
いずれにせよ、確定申告の期間は、原則として毎年2月16日から3月15日までと決められています。確定申告の期限に遅れることのないように提出を行うようにしましょう。
副業を解禁する企業が増え、クラウドソーシングやYouTube、フリマアプリなども普及していることから、雑所得を得ている人が増えています。また、FX取引で得た利益も雑所得に該当します。
会社員など、給与所得者は、副業などの雑所得を含め、給与所得以外に年間20万円以上の所得を得ている場合に確定申告が必要です。また、個人事業主やフリーランスとして活動する人、給与所得のない学生の場合は、雑所得を含め、年間95万円を超える所得を得ているときに確定申告が必要になります。
確定申告は期間が決まっており、期限内に申告をし、納税をしない場合、ペナルティが課されます。自身の雑所得の額を計算し、確定申告が必要な場合には期間内に遅れず申告を行うようにしましょう。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者16万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
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