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働き方改革の推進に伴い、副業を認める企業が増加しています。また、将来への不安などから投資を始める人も増加しており、FX取引を行う人も増加中です。クラウドソーシングやアフィリエイトなど、副業での収入や、FX取引の利益は雑所得に該当し、雑所得も所得税の課税対象となります。そのため、一定額以上の雑所得を得ている人は、確定申告をし、納税をしなければなりません。
ただし、確定申告が必要になるかどうかを判断するためには、課税対象となる雑所得の額を把握する必要があります。なぜなら、雑所得は副業やFX取引などで得た収入から必要経費を差し引いた額が課税の対象となるからです。では、雑所得では、具体的にどのような費用が経費になるのでしょうか。
今回は、雑所得で経費として扱える費用の詳細や副業をしている人が確定申告をする際の注意点などについて解説します。
目次
所得税法では、所得を10種類に区分しています。雑所得はそのうち、ほかの9種類のいずれにも該当しない所得です。
所得税法で定められている所得は、次のとおりです。
預貯金や公社債の利子、合同運用信託、公社債投資信託、公募公社債等の運用をする投資信託の収益の分配に係る所得のことです。
株主や出資者が法人から受け取る配当や投資信託(公社債投資信託および公募公社債等運用信託以外のもの)に係る収益の分配、特定受益証券発行信託の収益の分配などに係る所得のことです。
土地や建物などの不動産の貸し付け、借地権などの不動産の上に存する権利、船舶や航空機の貸し付けによる所得のことです。地上権または永小作権の設定、その他、他人に不動産等を使用させることで生じる所得も含みます。
農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業、その他事業から生じる所得のことです。ただし、原則として、不動産の貸し付けによる所得は不動産所得、山林の譲渡による所得は山林所得として扱います。
使用人や役員など、支払いを受ける俸給や給料、賃金、歳費、賞与のほか、これらの性質をもつ所得のことです。
退職によって勤務先から受ける退職手当、厚生年金基金等から退職時に支払われる一時金などの所得のことです。
山林を伐採して譲渡して得た所得や、立木のままで譲渡することによって生じる所得のことです。ただし、山林を取得してから5年以内に伐採または譲渡した場合は、山林所得ではなく、事業所得または雑所得として扱います。
土地や建物、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することによって生じた所得、建物などの所有を目的とする地上権などの設定によって得られる所得のことです。ただし、事業用商品などの棚卸資産、山林、減価償却資産のうち一定のものなどの譲渡によって生じた所得は譲渡所得には該当しません。
営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外で、労務その他の役務の対価や資産の譲渡による対価ではない一時的な所得のことです。
具体的には、次のような所得が一時所得に該当します。
・懸賞や福引きの賞金品、競馬や競輪の払戻金
・生命保険の一時金や損害保険の満期返戻金
・法人から贈与された金品
・遺失物の拾得や埋蔵物の発見によって得られる報労金
・資産の移転などの費用に充てるために受け取った交付金のうち、交付目的とされた支出に充てられなかった金額
利子所得から一時所得までの所得のいずれにも該当しない所得のことです。具体的には、公的年金等、非営業用貸金の利子、シェアリングエコノミーで得た所得、原稿料、生命保険契約に基づく年金、国内FX取引で得られる所得などが該当します。
参照:国税庁「No.1300 所得区分のあらまし」
雑所得に分類される所得には、次のようなものがあります。
国民年金や厚生年金、厚生年金基金など、公的な年金の所得は雑所得に該当します。
本業をもつ人が副業として、Web制作やプログラミング、ライティング、マーケティング、データ入力など、インターネットを介してスキルを提供し、得られる収入は雑所得に該当するケースが多くなります。
また、使っていないときだけ自宅の駐車場を貸し出すサービスで得られる収入なども雑所得として扱います。
商品を安く仕入れ、フリマアプリやインターネットオークションで販売する副業をしている場合、販売額と仕入額の差額は、雑所得として扱います。
ただし、不用品を売却する際は、生活用動産の扱いとなるため、課税の対象とはなりません。
副業として何らかの原稿を書き、原稿料を受け取った場合や講演を行って講演料を受け取った場合、雑所得として扱います。
国内FXや仮想通貨取引で利益を得た場合も、雑所得として扱います。同じ投資であっても、株式や投資信託等による売却益は譲渡所得、不動産投資で得られる利益は不動産所得となります。
雑所得は、公的年金等に関する雑所得、業務に係る雑所得、その他の雑所得の3つに大別できます。それぞれの雑所得の金額は、以下の①~③の式で算出でき、雑所得の金額は①~③の額を合計することで求められます。
収入金額-公的年金等控除額
総収入金額-必要経費
業務に係る雑所得とは、副業に係る収入のうち、営利を目的とした継続的なものをいいます。例えば、シェアリングエコノミーによる所得やYouTubeなどの配信で得られる所得、原稿料、講演料など、副業に係る雑所得が該当します。
また、その他の雑所得に当てはまるのは、国内FX取引で得た所得や民間の生命保険で得た年金などです。
公的年金等の受け取りに経費が生じることはありませんが、業務に係る雑所得とその他の雑所得の課税所得額を算出するためには、収入金額から差し引ける経費の額を把握しておかなければなりません。
雑所得を得るためにかかった費用は、経費として計上し、収入から差し引くことができます。雑所得の場合、経費として計上できる費用には次のようなものがあります。
クラウドソーシングでWeb制作やプログラミングなどを行っている場合、ブログを運営してアフィリエイト収入がある場合、YouTubeの動画配信を行っている場合などは、パソコンが必要です。また、YouTubeの撮影では、撮影用のカメラや機材も必要になるでしょう。
これらの購入代金は、経費として計上することが可能です。
雑所得を得るためだけに購入した場合は、購入代金の全額を経費にできますが、プライベートと兼用で使用している場合に経費計上できるのは、雑所得を得るためだけに使用した分のみとなります。
作業をするパソコンデスクや椅子、書類などを置く棚など、作業のために必要となった備品の購入代金も経費として計上できます。そのほか、インターネットオークションやフリマアプリに出品している場合は、商品を保管するための棚や箱などの購入代金も経費計上が可能です。
Web制作などのために必要となったソフトウェアやYouTubeの動画配信のために必要となった編集用のソフトウェアの購入代金も経費として計上することができます。また、FX取引のために購入した分析ツールや自動売買システムなどの購入費用も経費計上が可能です。
パソコンやスマートフォンの通信料も、雑所得を得るために必要になったものであれば、経費として扱えます。FX取引をする場合でもYouTubeの動画配信を行う場合でも、パソコンやスマートフォンの通信は欠かせません。また、インターネットオークションやフリマアプリを使って商品の販売をしているケースでも、インターネット回線が必要です。
雑所得を得るために専用のインターネット回線を用意したり、専用のスマートフォンを使用している場合は、通信料の全額を経費に計上できます。しかし、副業として雑所得を得ている場合は、プライベートと雑所得を得るための活動で使用しているインターネット回線やスマートフォンを兼用しているケースも多いのではないでしょうか。その場合は、通信費用の全額ではなく、雑所得を得るために使用した割合のみを経費に計上します。
YouTubeの撮影専用の部屋など、副業のためだけに部屋を借りている場合もあるかもしれません。副業の活動のためだけに使用している賃貸物件の家賃は、経費に計上することが可能です。ただし、退去時に返還される予定の敷金については、経費に含めることはできません。
また、自宅の一部をYouTubeの撮影やクラウドソーシングの活動のために使用している場合は、雑所得を得るために使用している部屋の面積や使用時間などに応じて、使用分のみを経費に計上できます。
Web制作やプログラミング、ライティング、YouTubeの撮影や動画の編集などを行う際には、電気を使用します。光熱費についても、雑所得に関連する部分は経費計上が可能です。雑所得を得る活動のために専用の部屋を借りている場合などは、その部屋でかかった電気代を全額経費にできます。しかし、自宅の一部を使用している場合は、使用面積や作業時間の割合を算出して、雑所得のために使用した光熱費のみを経費に計上します。
雑所得に関連した交通費も経費として計上することが可能です。例えば、YouTubeの撮影で移動した場合の電車代やバス代、新幹線代、タクシー代などは経費として扱えます。また、プログラミングやFX取引などの知識を高める目的でセミナーに参加した場合、セミナー会場までの往復の交通費も経費計上が可能です。
雑所得に関する情報を得るために購読している新聞や購入した書籍の代金、セミナー参加費も経費として計上できます。ただし、経費に計上できるのは、雑所得に関連する新聞や書籍、セミナーに関する費用のみです。娯楽のために購入した雑誌の購入代金や雑所得とは関連のないセミナー等の参加費用は経費として計上することはできません。
コピー用紙やボールペン、ノート、ファイルなどの文房具代も経費に計上することが可能です。
インターネットオークションやフリマアプリで商品を販売している場合、購入者に商品を送る必要があります。その際、商品を梱包するために必要な段ボールやガムテープ、緩衝材などの購入費用、発送するための費用などは経費に計上できます。
また、サイトの利用手数料も経費計上が可能です。
副業で雑所得を得ている人も確定申告が必要なケースがあります。副業の確定申告の注意点を3つご紹介します。
給与所得者が副業として雑所得を得ている場合、雑所得を含め、給与所得以外に年間20万円を超える所得を得ているときに確定申告が必要となります。
雑所得に関しては青色申告を行うことができません。したがって、白色申告での確定申告を行う必要があります。
家賃や光熱費、通信費など、プライベートと雑所得を得る活動の両方で使用しているものに係る費用は、家事按分を行い、雑所得を得る活動のために使用した分のみを経費に計上します。家事按分割合は、明確な根拠に基づいて算出したものでなければなりません。税務調査時などに指摘を受けてもしっかりと説明できるようにしておきましょう。
給与所得者が副業として雑所得を得ている場合、雑所得を含め、給与所得以外に年間20万円を超える所得を得ていれば確定申告をしなければなりません。ただし、課税対象となるのは、副業で得られた収入から必要経費を差し引いた所得額です。
雑所得を得るためにかかった費用は基本的に経費として計上することが可能です。経費として計上できる費用を漏れなく経費に計上すれば、収入から差し引ける額が増えるため、課税所得額が低くなり、節税効果を得られます。プライベートと兼用で使用しているものなどもしっかりと家事按分を行い、忘れずに経費に計上するようにしましょう。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者16万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
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