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非営利活動を行う一般社団法人にも法人税が課されます。しかし、すべての一般社団法人に法人税が課されるわけではありません。また、一般社団法人の類型によっては法人税の優遇措置を受けられるケースもあるため、一般社団法人の法人税の納税処理は複雑です。
さらに、一般社団法人の中には、企業と同じ普通法人として扱われる法人もあるため、法人税について中間申告を行わなければならない場合があります。では、中間申告はどのような一般社団法人に義務付けられているのでしょうか。
今回は、一般社団法人に課される法人税について、中間申告の必要性も含めながら詳しくご説明します。
目次
一般社団法人は、公益認定を受けた「公益社団法人」、公益認定を受けていない「非営利型法人」、非営利型以外の「その他の一般社団法人」の3種類に区分することができます。それぞれの法人税の取り扱いには次のような違いがあります。
公益認定を受けている公益社団法人とは、営利を目的とせず、学術や文化等の公益に資する事業を主な目的として活動する非営利法人のことです。
公益認定を受けるためには、公益目的の事業費率が50%以上であり、収支相償であると見込まれるなど、一定の要件を満たしたうえで、第三者委員会の審査を受け、行政庁から認定を受ける必要があります。公益認定を受けた一般社団法人は公益社団法人と呼ばれ、税制上の優遇措置を受けることができます。
公益社団法人の場合、法人税については、収益事業で得た所得のみが課税の対象となります。収益事業以外の所得については、法人税は課されません。
非営利型の一般社団法人の場合、法人税法上は公益法人と同様、「公益法人等」として扱われます。したがって、非営利型の一般社団法人の場合も、事業全体の所得ではなく収益事業で得た所得のみが法人税の課税対象となります。
非営利型法人はさらに「非営利性が徹底された法人」と「共益的活動を目的とする法人」の2つに区分されます。公益認定を受けていない一般社団法人のうち、非営利性が徹底された法人または共益的活動を目的とする法人のいずれかの要件を満たした場合、自動的に非営利型法人として扱われます。非営利型法人としての届出といった手続きは必要ありません。
ただし、以下に掲げる要件のうち一つでも該当しなくなったときにも、特に手続きを経ることなく、普通法人として扱われる点に注意が必要です。
以下の1~4までのすべての要件を満たす一般社団法人は、非営利型法人として扱われます。
1.余剰金の分配を行わないことを定款に定めていること
2.解散したときは、残余財産を国・地方公共団体や一定の公益的な団体に贈与することを定款に定めていること
3.1と2の定款の定めに違反する行為を行うことを決定したり、行ったことがないこと
4.各理事について、理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の1以下であること
以下の1~7までのすべての要件を満たす一般社団法人は、非営利型法人として扱われます。
1.会員に共通する利益を図る活動を行うことを目的としていること
2.定款等に会費の定めがあること
3.主たる事業として収益事業を行っていないこと
4.定款に特定の個人または団体に余剰金の分配を行うことを定めていないこと
5.解散したときにその残余財産を特定の個人または団体に帰属させることを定款に定めていないこと
6.上記1~5まで、以下の7の要件に該当していた期間において、特定の個人または団体に特別の利益を与えることを決定したり、与えたことがないこと
7.各理事について、理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の1以下であること
非営利型法人の要件に該当しないその他の一般社団法人の場合、企業と同じ普通法人として取り扱われます。そのため、収益事業だけでなく、法人が営むすべての事業によって生じた所得が法人税の課税対象となります。
法人税の課税対象となる収益事業は、以下の34業種です。
1.物品販売業
2.不動産販売業
3.金銭貸付業
4.物品貸付業
5.不動産貸付業
6.製造業
7.通信業
8.運送業
9.倉庫業
10.請負業
11.印刷業
12.出版業
13.写真業
14.席貸業
15.旅館業
16.料理店業・その他の飲食店業
17.周旋業
18.代理業
19.仲立業
20.問屋業
21.鉱業
22.土石採取業
23.浴場業
24.理容業
25.美容業
26.興行業
27.遊技所業
28.遊覧所業
29.医療保健業
30.技芸教授事業
31.駐車場業
32.信用保証業
33.無形財産権の提供などを行う事業
34.労働者派遣業
ただし、以上の34業種に含まれる事業であっても、身体障がい者及び生活保護者等が事業に従事する者の総数の2分の1以上を占め、かつ、その事業がこれらの者の生活の保護に寄与している場合は、収益事業からは除かれます。
身体障がい者及び生活保護者等とは、具体的に以下のような人のことです。
・身体障がい者福祉法に規定されている身体障がい者にあたる
・生活保護法によって生活保護を受けている
・児童相談所、知的障がい者更生相談所、精神保健福祉センターなどから知的障がい者と判定されている
・精神障がい者保健福祉手帳の交付を受けている
・年齢が65歳以上である
・母子家庭の母である
非営利型法人に該当する一般社団法人は、法人税法上、公益法人等として扱われるため、事業所得のうち、収益事業で得られた所得のみに法人税が課税されます。そのため、収益事業と非収益事業を明確に区分しない場合、法人税を適切に申告し、納税することができません。では、行っている事業が収益事業に該当するかどうかはどのように判定すればよいのでしょうか。
一般社団法人の収益事業の判定ポイントを3つご紹介します。
法人税法施行令第5条に定められた34業種に含まれている事業であり、対価として金銭を受け取っている事業に対しては、収益事業と判定されます。例えば、地域の集会などに所有する施設を貸し出した場合でも、無償で貸し出しているのであれば、席貸業にはあたりません。
34業種に該当する事業であっても、継続性がない事業の場合は収益事業には含みません。例えば、1日だけイベントのために保有する施設を貸し出し、料金を得た場合などは、継続性がないため、収益事業には該当しないとみなされます。しかし、毎週土曜日に、有料のセミナーを開催しているような場合は、反復性があるために収益事業に該当します。また、国税庁では、海の家のように、毎年、ある程度の期間を継続して行うような事業も継続性があるため、収益事業に該当するとしています。
継続性に加えて、事業所を設けて事業を行っているかという点も収益性の判定において重要なポイントとなります。例えば、施設内に店舗を設けてレストランの運営をしている場合などは、事業所があるため、収益事業です。また、敷地内にテントを設営し、昼の休憩時間にお弁当を販売しているような場合も、収益事業とみなされます。テントのように移動ができるものであっても、事業場を設けて活動するとみなされる点に注意が必要です。
繰り返しになりますが、公益認定を受けている一般社団法人、非営利型に該当する一般社団法人は収益事業で得た所得、その他の一般社団法人はすべての事業所得に対して法人税が課されます。
法人税率は、年間所得が800万円以下の部分については15%、年800万円を超える部分については23.20%です。公益認定を受けている一般社団法人、非営利型法人に該当する一般社団法人、その他の一般社団法人のいずれの場合でも法人税率は変わりません。
一定の要件を満たしている企業には、中間申告を行い、法人税の前払いを行う必要があります。では、一般社団法人の場合、中間申告が必要になるのでしょうか。
法人税の中間申告とは、事業年度の途中で、法人税を申告・納税する制度のことです。すべての事業者が中間報告をしなければならないわけではありません。法人税の中間報告が必要となる法人は、前事業年度の法人税額が20万円を超えた法人です。
しかし、公益法人、非営利型法人に該当する一般社団法人の場合、法人税額が20万円を超えた場合であっても中間申告を行う必要はありません。
ただし、普通法人として扱われる、非営利型法人に該当しないその他の一般社団法人は、前事業年度の法人税額が20万円以上であった場合、中間申告を行う必要があります。
法人税の中間報告では「予定申告方式」と「仮決算方式」のいずれかの方法で納付額を算出します。
予定申告方式とは、前事業年度の法人税額をもとにして、半年分の税額を算出する方法です。
予定申告の場合、申告税額は、前事業年度の法人税額÷前事業年度の月数×当期の中間期間の月数で計算をします。ただし、前事業年度の月数が6ヶ月以下の場合、また、この計算式で計算した税額が10万円以下の場合、中間申告書を提出する必要はありません。
仮決算方式は、事業年度開始日から6ヶ月を一課税期間とみなし、仮で決算を行い、仮決算の結果に基づいて法人税の申告をする方法です。仮決算方式の場合、6ヶ月分の益金と損金を集計して課税所得を計算し、法人税率をかけて算出した額が納付額となります。
仮決算方式の場合、決算業務の手間が増えるため、多くの法人では予定申告方式による中間申告を行っているケースが多いようです。
一般社団法人が法人税の中間申告を行う場合、いくつか注意しなければならない点があります。中間申告は、予定申告と仮決算のいずれかの方法を納税者が自由に選択できます。しかし、期日までに中間申告書を提出しない場合、自動的に予定申告によって中間申告を行うものとみなされます。当期の業績が思わしくない場合に予定申告方式で申告を行うとなると、前事業年度に基づいた額の納税が必要になるため、納税の負担が大きくなります。
また、中間納付の期限までに法人税を納税しなかった場合、延滞税の納税を求められる可能性があります。延滞税とは、納付期限までに税金を納めなかった場合に課される税金です。税金の納付が遅れたことに対する利息的な意味合いを持ちます。
延滞税の税率は、納期限の翌日から2ヶ月を経過する日とそれ以降で税率が変わります。また、延滞税は日割りで計算されるため、納税が遅くなればなるほど課される税額も高くなる点に注意しなければなりません。
一般社団法人も法人税の納税義務があり、確定申告を行い、納税額を算出した後、納税をしなければなりません。法人税の納税期限は、一般社団法人も企業と同様、事業年度終了から2ヶ月以内です。
ただし、公益認定を受けている場合、非営利型法人に該当する一般社団法人は、収益事業を行っていなければ法人税は課されないため、法人税の納税は不要です。したがって、行っている事業が収益事業に該当するかどうかを正しく判定することが非常に重要になります。収益事業ではないと思い込み、申告を行っていない場合、無申告状態となり、無申告加算税や延滞税などのペナルティを課される恐れがあります。
収益事業に該当するかの判断に不安があるようであれば、一般社団法人の税務に詳しい税理士への相談をおすすめします。
一般社団法人の中でも、公益認定を受けている場合や非営利型法人に該当する場合は、収益事業で得られた所得に対して法人税が課されます。また、非営利型法人に該当しない一般社団法人の場合、収益事業だけでなく、事業全体の所得に対して法人税が課される点に注意が必要です。
非営利型法人に該当しないその他の一般社団法人の場合は、前事業年度の法人税の納税額が20万円を超えている場合、中間申告が必要になります。中間申告の期日までに法人税の納税を終えない場合、延滞税が課せられます。中間申告が必要になる場合も適切に対応するようにしましょう。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者16万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
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