2025.11.16
  • 税務調査

NPO法人は税金が免除される?優遇措置や課税対象収益について解説

読了目安時間:約 6分

NPO法人というと、営利目的ではない活動を行う法人というイメージから、税金は免除されるのではないかと思われるケースが少なくないようです。しかし、NPO法人であっても納税が必要な税金があります。ただし、税金の種類によっては優遇措置が適用されるケースもあるため、正しく納税をするためには、NPO法人が納めるべき税金の種類やそれぞれのルールについて確認しておくことが大切です。

では、NPO法人はどのような税金を納める必要があるのでしょうか。今回は、NPO法人に課される税金や優遇措置、課税対象となる収益などについてご説明します。

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NPO法人とは

NPOは、「Non-Profit Organization」の頭文字をとった略語で、日本語では非営利活動組織と訳すことができます。NPOのうち、特定非営利活動促進法(NPO法)に基づき、法人格を取得した団体がNPO法人です。

特定非営利活動とは、以下の20種類の分野に該当する活動であり、不特定多数の人に利益をもたらすことを目的とした活動です。

・保健、医療又は福祉の増進を図る活動

・社会教育の推進を図る活動

・まちづくりの推進を図る活動

・観光の振興を図る活動

・農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動

・学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動

・環境の保全を図る活動

・災害救援活動

・地域安全活動

・人権の擁護又は平和の推進を図る活動

・国際協力の活動

・男女共同参画社会の形成の促進を図る活動

・子どもの健全育成を図る活動

・情報化社会の発展を図る活動

・科学技術の振興を図る活動

・経済活動の活性化を図る活動

・職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動

・消費者の保護を図る活動

・前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動

・前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動

NPO法人の活動

NPO法人は、特定非営利活動を行うことを目的に設立された法人です。しかし、NPO法人だからといって収益事業が禁止されているわけではありません。NPO法人も特定非営利活動以外のその他の事業も行うことが可能です。ただし、その他の事業で生じた利益については、構成員に分配をするのではなく、特定非営利活動のために使用しなければならないというルールがあります。

NPO法人に課される税金とは

NPO法人は、非営利活動を行うことを目的とする法人ですが、NPO法人にも課される税金があります。

NPO法人が納める必要のある主な税金は次のようなものです。

・法人税

・法人事業税

・法人住民税

・消費税

・印紙税

・登録免許税

・不動産取得税

法人税

NPO法人にも税金が課されますが、公益性の高い事業を行う場合は各種税制上の優遇が設けられています。NPO法人のそれぞれの税金のルールについてご説明します。

NPO法人の法人税の優遇制度

NPO法人は、法人税法上は「公益法人等」として扱われることになります。そのため、主な活動である、特定非営利活動で生じた所得に対しては法人税が免除されるルールです。

ただし、NPO法人には、特定非営利活動以外のその他の事業も行うことが認められています。その他事業のうち、収益事業に該当する事業を行い、利益を得ている場合には法人税の課税対象となる点に注意しなければなりません。

収益事業とは、法人税法施行令第5条に示されている34業種に該当する事業であり、継続的かつ事業場を設けて行っている場合に法人税が課されます。

1.物品販売業

2.不動産販売業

3.金銭貸付業

4.物品貸付業

5.不動産貸付業

6.製造業

7.通信業

8.運送業

9.倉庫業

10.請負業

11.印刷業

12.出版業

13.写真業

14.席貸業

15.旅館業

16.料理店業・その他の飲食店業

17.周旋業

18.代理業

19.仲立業

20.問屋業

21.鉱業

22.土石採取業

23.浴場業

24理容業

25.美容業

26.興行業

27.遊技所業

28.遊覧所業

29.医療保健業

30.技芸教授事業

31.駐車場業

32.信用保証業

33.無体財産権の提供などを行う事業

34.労働者派遣業

NPO法人の収益事業にかかる法人税の税率

NPO法人には、法人税の優遇措置があり、特定非営利活動に関して生じた利益については、法人税が課税されません。収益事業による利益がある場合は、収益事業で得た利益のみ、法人税の課税対象となりますが、適用税率は普通法人と同じになります。

したがって、法人税の税率は、年800万円以下の部分については15%、年800万円を超える部分については23.2%です。

法人事業税

法人事業税とは、法人の事業所が所在する都道府県に納める地方税です。事業活動を行う際に利用する道路や上下水道など、自治体の行政サービスを維持するための必要経費を法人も負担すべきという考えから法人事業税が課されます。

NPO法人の場合、特定非営利活動だけを行っている場合、法人事業税は免除されます。しかし、収益事業を行っている場合は、収益事業で生じた所得については、法人事業税の課税対象となります。

法人事業税の税率は、収益事業で得た所得のうち400万円以下の部分については3.5%、年400万円超800万円以下の部分については5.3%、年800万円を超える部分については7.0%です。

また、法人事業税の納税義務が生じる法人には、法人事業税と合わせて特別法人事業税も納税しなければなりません。NPO法人の場合、特別法人事業税の税率は、基準法人所得割額(法人事業税の額)の37%です。

法人住民税

法人住民税は、法人の事業所が所在する都道府県と市町村に納める地方税です。法人住民税は、都道府県民税と市町村民税がありますが、それぞれを区分するのではなく、まとめて納税するルールとなっています。

法人住民税も法人事業税と同様、地方自治体が提供する行政サービスの維持を目的とした税金です。しかし、法人事業税は事業に課される税金であるのに対し、法人住民税は法人も地域の構成員である点から法人の存在自体に課される税金であることなどの違いがあります。

住民税は、均等割と法人税割の2つから構成されます。均等割とは、所得額に関係なく、全ての法人に均等に割り当てられる税金のことです。均等割の金額は、資本金と従業員の数によって区分されています。しかし、NPO法人の場合は資本金の概念がないため、最低金額が課されることとなっており、都道府県民税の均等割額は2万円、市町村民税の均等割額は5万円の計7万円の納税が必要です。

しかしながら、自治体によって条例による免除制度を用意しているケースがあります。例えば、東京都では収益事業を行っていないNPO法人に対しては、法人都民税の納税を免除しています。ただし、その場合、4月30日までに都税事務所に対し、都民税の均等割申告書、都民税(均等割)免除申請書の提出が必要です。

自治体によってルールは変わってくるため、法人住民税については、事業所を設置している自治体のルールを確認するようにしましょう。

消費税

消費税は、商品やサービスの提供に対してかかる税金です。税金を負担するのは、商品やサービスの提供を受けた側ですが、納税は、消費税を預かった事業者が行わなければなりません。NPO法人も、課税取引を行っている場合は消費税が課税されます。

ただし、消費税が課税されるのは、基準期間となる前々事業年度の課税売上高が1,000万円を超える場合です。基準期間内の課税売上高が1,000万円以内であれば、消費税の納税は免除されます。

ただし、インボイス制度の開始に伴い、課税売上高が1,000万円未満であってもインボイスの発行を希望する場合もあるかもしれません。その場合、適格請求書発行事業者として登録をしなければならず、その際には、消費税課税事業者選択届出書の提出が必要です。

印紙税

5万円を超える現金取引の場合、領収書の発行時に収入印紙を貼付することで印紙税を納めなければなりません。印紙税の額は取引金額によって変わります。しかし、NPO法人の場合、公益法人等として扱われるため、印紙税の優遇措置が適用され、NPO法人が発行する領収書には印紙税が課されない場合があります。寄附金や会費などを受け取る場合でも、印紙税は免除されます。また、NPO法人の印紙税が免除されるのは、特定非営利活動だけではありません。収益事業に関する取引であっても印紙税は非課税となります。

ただし、領収書については免除される場合が多い一方で、契約書等の印紙税は原則として免除対象にならないため注意が必要です。

登録免許税

登録免許税とは、法人設立や不動産取得時に法務局で登記手続きを行う際に発生する税金です。NPO法人も設立時には、法務局で設立登記を行わなければなりません。企業の場合、会社の設立登記には登録免許税の納税が必要となりますが、NPO法人の場合、法人設立時に発生する登録免許税は免除されます。

ただし、不動産を取得する場合の登録免許税についての免除制度はないため、NPO法人が不動産を取得する際には登録免許税の支払いが必要です。

不動産取得税

不動産取得税とは、不動産を取得したことに対して課される税金です。不動産取得税は、不動産を有償で取得した場合だけでなく、無償で取得した場合にも課される点に注意しなければなりません。原則としてNPO法人も不動産を取得した時には不動産取得税の納付が必要になりますが、自治体によっては不動産取得税を免除しているケースがあります。

例えば、宮城県では、NPO活動のために使用する不動産を無償で取得した場合、不動産取得税を免除する制度が設けられている場合があります。また、山口県では、設立の日から3年以内に取得した不動産であり、定款に定める特定非営利活動に係る事業で利用するもの、かつ無償で譲渡を受けたものについては、不動産取得税を免除することが規定されています。

自治体によって不動産取得税の扱いが変わるため、不動産を取得した場合には、自治体の規定を確認するようにしましょう。

自動車税環境性能割

自動車税環境性能割は、自動車を取得した際、取得した自動車の環境性能に応じて課される税金です。自動車税環境性能割についても、特定の要件を満たす場合、納税が免除されるケースがあります。ただし、自動車税環境性能割も地方税であるため、事業所のある都道府県の条件を確認しなければなりません。

例えば、新潟県では、設立から3年以内のNPO法人が特定収入に係る事業に使用するために無償又は寄附金によって取得した自動車の場合、自動車税環境性能割の課税が免除されます。また、宮城県では、介護保険法に規定する居宅サービス事業、地域密着型サービス事業、介護予防サービス事業、地域密着型介護予防サービス事業の指定を受けたNPO法人が、これらのサービス事業のために使用する自動車を取得した場合、自動車税環境性能割を免除するとしています。

自動車税環境性能割についても自治体ごとに取り扱いのルールが変わるため、自動車を取得する際にはあらかじめ自治体に確認をしておくとよいでしょう。

NPO法人の税金関連の手続きについて

NPO法人の税金関連の手続きは、収益事業を行っているかどうかで変わってきます。

収益事業を行っていないNPO法人

収益事業を行うNPO法人は、収益事業から生じた所得に対して法人税が課されます。事業年度終了の日から2ヶ月以内に法人税の申告書を提出し、納税しなければなりません。また、法人住民税の均等割額については免除申請が必要になる場合もあるため、自治体に申請手続きを確認しておきます。

収益事業を行っているNPO法人

収益事業を行うNPO法人の場合、収益事業の所得に対して法人税が課されるため、事業年度終了の日から2ヶ月以内に、法人税の申告書を提出し、法人税を納税しなければなりません。また、法人住民税、法人事業税についても納税期限は法人税と同様、事業年度終了日から2ヶ月以内に申告と納税を行います。

まとめ

NPO法人には、さまざまな面において税金の優遇措置が設けられており、要件を満たす場合に税金が免除される仕組みがあります。多くの場合、収益事業を営んでいるかどうかによって税金の課税状況が変わってきますが、中には、印紙税のように収益事業であっても一律納付が免除される税金もあります。また、地方税の場合は、自治体によって免除を受けられるケースが異なるため、地方税については、事前に自治体のNPO法人の税務手続きについて確認をしておくことをおすすめします。


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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

登録者16万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。
国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。
なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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