2025.12.4
  • 税務調査

税務署の調査を受ける確率は?対象になりやすい人や法人の特徴とは

読了目安時間:約 6分

税務署では、納税を正しく行っているかを調査するいわゆる「税務調査」を実施しています。納税の義務がある人であれば、法人であるか個人であるかに関わらず、税務署の調査の対象となる可能性があります。しかし、税務署の職員の数には限りがあるため、納税義務者全員を対象に調査を実施しているわけではありません。では、税務署の調査を受ける確率はどのくらいなのでしょうか。

今回は、税務署の調査対象となる確率や、調査実施後に誤りを指摘される確率、調査の対象になりやすい個人や法人の特徴などについて解説します。

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税務署の調査を受ける確率はどのくらい?

国税庁では、毎年、税務署による調査の結果を公表しています。国税庁のデータによると、税務署の調査を受ける確率は次のとおりとなります。

個人事業主が税務署の調査を受ける確率

まず、国税庁が令和6年5月に公表している「令和5年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」を見ると、事業所得を得ている人の数は約377万人、不動産所得を得ている人は約153万人、合計すると個人事業主として確定申告をした人の数は約530万人となります。

一方、令和6年11月に公表された「令和5事務年度所得税及び消費税調査等の状況」では、個人に対して実施された税務署の調査数が示されています。令和5年に税務署が調査を実施した件数は4万8,000件です。

したがって、個人事業主が税務署の調査を受ける確率は4万8,000÷530万×100≒0.91と計算できます。

つまり、個人が所得税について、税務署から調査を受ける確率は、約0.91%だと言えます。

参照:国税庁「令和5年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について

(報道発表資料)

令和5事務年度 所得税及び消費税調査等の状況

法人が税務署の調査を受ける確率

法人の場合は、令和7年10月に公表された「令和6事務年度法人税等の申告(課税)実績の概要」と令和7年12月に公表された「令和6事務年度法人税等の調査実績の概要」をもとに、調査を受ける確率を見ていきましょう。

まず、令和6年の法人税の申告件数は322万件です。そのうち、税務署の調査を受けた法人の数は、5万4,000件です。したがって、5万4,000件÷322万×100≒1.68となり、法人が税務署の調査を受ける確率は約1.68%であることが分かります。

参照:国税庁「令和6事務年度法人税等の申告(課税)実績の概要

令和6事務年度法人税等の調査実績の概要

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税務署の調査で誤りを指摘される確率は?

税務署の調査を受ける確率は、個人事業主の場合は約0.91%、法人の場合は約1.68%であることが分かりました。では、税務署の調査を受けて、申告内容の誤りを指摘される確率はどのくらいなのでしょうか。調査によって誤りを指摘される確率も個人事業主の場合と法人の場合に分けて、ご説明します。

個人事業主が税務署の調査で誤りを指摘される確率

個人事業主のうち、税務署の調査を受けた人の数は約4万8,000人でした。そのうち、調査を受け、申告漏れ等を指摘された件数は約4万件です。4万÷4万8,000×100≒83.3となり、なんと、税務署の調査を受けた人のうち、調査によって申告漏れを指摘される確率は83.3%にも上るのです。

申告漏れの指摘率が8割を超えますが、個人事業主全体の8割超が正しく確定申告を行っていないとは考えにくいでしょう。つまり、この申告漏れの指摘割合を見ると、税務署は何らかの情報を得たうえで、申告漏れが疑われる個人を対象に調査を行っていると考えることができます。

法人が税務署の調査で誤りを指摘される確率

では、法人の場合、税務署の調査によって申告漏れを指摘される確率はどのくらいになるのでしょうか。税務署が法人に対し、調査を実施した数は、5万4,000件であり、そのうち、申告漏れを指摘されたのは4万2,000件です。したがって、法人が税務署の調査によって申告漏れを指摘された確率は4万2,000÷5万4,000×100≒77.7となり、約77.7%が調査によって申告漏れを指摘されたことが分かります。

申告漏れの指摘割合を見ると、個人事業主と法人でそれほど大きな違いはありません。いずれも、調査を受けた場合、かなりの確率で申告漏れが指摘されています。

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税務署の調査の対象になりやすい個人事業主や法人の特徴は?

税務署の調査対象となった個人事業主や法人の約8割は、調査によって申告漏れが指摘されています。裏を返せば、正しく確定申告を行っていたケースはわずか2割に留まるのです。この数字を見ても、税務署は調査の対象を見極め、正しく申告を行っていない確率が高い納税者を抽出し、調査を実施していると考えられます。

では、どのような個人事業主や法人が税務署の調査の対象になりやすいのでしょうか。税務署の調査を受けやすい納税者の特徴をご紹介します。

確定申告をしていない

まず、申告の義務があるにもかかわらず、確定申告をしていない個人事業主は、税務署から目を付けられやすくなります。税務署はさまざまなルートから情報を収集しており、確定申告をしていなければ、調査によって不正を正そうと調査対象に選ばれやすくなるのです。

申告漏れが多い業種である

実は、業種によって申告漏れの確率は変わります。

所得税の場合、1件あたりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種は次のようになっています。

1位 経営コンサルタント

2位 ホステス、ホスト

3位 コンテンツ配信

4位 くず金卸売業

5位 ブリーダー

6位 焼き鳥

7位 太陽光発電

8位 内科医

9位 スナック

10位 西洋料理

参照:国税庁「令和5事務年度 所得税及び消費税調査等の状況

一方、法人税の不正発見割合が高い業種は、次の10業種です。

1位 バー・クラブ

2位 その他の飲食

3位 外国料理

4位 美容

5位 大衆酒場、小料理

6位 自動車修理

7位 船舶

8位 土木工事

9位 職別土木建築工事

10位 中古品小売

参照:国税庁「令和6事務年度法人税等の調査実績の概要

不正の発見確率が高い業種を中心に調査を実施すれば、効率よく申告漏れを指摘し、正しい納税を促進することができます。前述のように限られた人数で高い成果を上げるためには、効率を高めるしかありません。したがって、税務署では、不正発見割合の多い業種を中心に調査を実施する傾向が見られます。

申告内容に不審な点が見られる

提出された申告内容に不審点が見られる場合も。調査の対象に選ばれやすくなります。具体的には、売上に比べて、経費の割合が異常に高く、課税所得額が低い場合などは、調査の対象になりやすいでしょう。また、税務署では、業種ごとの利益率の平均的な割合を把握しています。同業他社と比べて、利益率があまりに低い場合なども、経費の水増しが疑われ、調査の対象となる可能性が高くなります。

売上が毎年1,000万円を微妙に下回る

個人事業主も資本金1,000万円未満の法人も、適格請求書発行事業者として登録していない限り、売上高が1,000万円を超えなければ消費税の免税事業者となります。つまり、消費税の納税が免除されるのです。消費税の課税事業者となれば、消費税分の税負担が発生します。そのため、消費税の課税事業者となることを避ける目的で売上額を1,000万円より少しだけ少ない金額になるよう調整しようとする事業者もいるのです。

したがって、売上が毎年ギリギリ1,000万円を下回る事業者も税務署の調査対象になりやすいと言えます。

過去に税務署の調査を受け、申告漏れの指摘を受けた経験がある

過去に税務署の調査を受けた経験があり、申告漏れを指摘された経験がある事業者も、再び税務署の調査を受けやすくなります。なぜなら、過去に指摘した箇所を改善し、正しく申告を行っているか、確認をするためです。また、税務署の調査対象となる確率は、個人事業主の場合は約0.91%、法人の場合は約1.68%と決して高くはありません。そのため、一度、税務署の調査を受けたことで安心し、もう調査の対象には選ばれないだろうと考え、再び不正な処理を行っている可能性もあります。

過去に税務署の調査を受け、申告漏れについて指摘を受けた納税者は、再び調査の対象として選ばれる確率が高いことを覚えておいた方がよいでしょう。

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税務署の調査で申告漏れを指摘されるとどうなる?

税務署の調査によって、申告漏れを指摘されるとどのようなリスクが発生するのでしょうか。申告漏れの指摘を受けることで生じる可能性があるリスクをご紹介します。

加算税の納税が求められる

調査によって申告漏れが指摘された場合、納めるべき税金が不足している状況です。したがって、不足分の税金の納付を求められますが、その際にはペナルティが課され、加算税も含めた税金を納めなければなりません。

確定申告をしていなかった場合に課されるのは無申告加算税です。無申告加算税の税率は15%~30%となります。また、確定申告をしてはいたものの、申告納税額が不足した場合には過少申告加算税が課されます。過少申告加算税の税率は10%~15%です。

さらに、意図的に所得を隠していたり、経費の水増しを行い、不正に税金の負担を逃れていた場合は、無申告加算税や過少申告加算税より税率の重い重加算税が課される恐れもあります。重加算税の税率は無申告加算税に代わる場合は40%、過少申告加算税に代わる場合は35%です。

延滞税の納税が求められる

無申告加算税や過少申告加算税は、期限までに申告を行わなかったこと、申告額が不足していたことに対した課されるペナルティです。一方、延滞税は納税が遅れたことに対して課される税金です。

延滞税は、納期限の翌日から2ヶ月を経過する日までとそれ以降で大きく税率が変わります。また、延滞税は、日割りで計算されるという性質があります。

税務調査では、前年度分の申告内容だけを調査されるわけではありません。少なくとも過去3年分の納税状況についての調査が実施されます。したがって、過去の申告漏れが指摘された場合、延滞税の額は高額に上る可能性があります。

脱税の容疑で訴えられる

税金についての調査は、税務署だけが行っているわけではありません。国税局査察部でも税金に関する調査を行うケースがあります。国税局査察部による調査の場合、対象となるのは巨額の脱税が疑われるような悪質な事業者です。

国税局査察部によって調査が行われ、申告漏れが指摘された場合、重加算税などの納税が求められるだけでなく、脱税容疑として裁判に訴えられる可能性があります。国税局による査察調査の場合、刑事事件として告発することを前提とした調査になるのです。

裁判で有罪が確定すれば、取引先や顧客をはじめ、社会的信用は大きく失墜するため、事業を継続することが難しくなる可能性もあるでしょう。

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申告漏れのリスクを軽減するためにできること

税務署の調査対象となれば、約8割の確率で申告漏れの指摘を受け、不足分の税金とペナルティ分の税金の納付が求められます。では、申告漏れのリスクを軽減するためにはどのような対策が必要なのでしょうか。

日頃から正しく経理処理を行う

正しく申告を行っている納税者の場合、税務署の調査対象となる確率は低くなります。申告漏れリスクを低く抑えるためには、日頃から正しく経理処理を行い、正しく確定申告を行うことが重要です。

自主的に期限後申告や修正申告を行う

確定申告の対象者であるにもかかわらず申告をしてこなかった場合や正しく申告をしていかった自覚があるケースは、調査対象となる前に、自主的に期限後申告や修正申告を行いましょう。期限後申告とは、期限を過ぎてから行う確定申告のことで、修正申告とは提出した申告書を修正して申告し直す作業のことです。

税務署からの調査連絡を受ける前に、自主的な期限後申告を行ったときには無申告加算税は一律5%に軽減され、修正申告を行ったときには過少申告加算税は課されません。

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まとめ

税務署の調査対象となる確率は、個人事業主の場合は0.91%、法人の場合は1.68%とそれほど高くありません。しかし、税務署の調査対象となり、申告漏れを指摘される確率は約8割と高い数字になります。この申告漏れ指摘割合から、税務署は何らかの情報を把握し、正しく税金を納めていない事業者を見極めたうえで調査を実施していると考えることができます。

税務署の調査対象となり、申告漏れを指摘された場合、不足分の税金に加え、ペナルティ分の税金の納税も求められます。ペナルティのリスクを抑えるためには日頃から正しく申告をするとともに、万が一、誤った申告を行っていた場合などは税理士にも相談しながら、早めに修正することが大切です。


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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

登録者16万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。
国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。
なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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