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納税義務がある法人や個人は税務調査の対象となる可能性があります。税務調査では、申告内容が正しいものであるか、帳簿や関連書類をもとに細かなチェックがなされますが、指摘されやすいポイントは業種によって異なることをご存知でしょうか。
運送業もかつては、国税庁が公表する申告漏れが多い業種にランクインしていたことがあり、税務調査の対象となりやすい業種です。では、運送業の場合、税務調査時にどのようなポイントを指摘されやすいのでしょうか。
今回は、運送業の税務調査対策について詳しく解説します。
目次
運送業には国土交通大臣や地方運輸局長の許可が必要となる「一般貨物自動車運送事業」や「特定貨物自動車運送事業」のほか、届出制で事業を営める「貨物軽自動車運送事業」があります。近年、インターネットショッピングのニーズが爆発的に増加したことにより、個人で運送業を始める人も増加中です。
ここでは、法人の場合も個人事業として営む場合も含め、運送業者が税務調査時に指摘を受けやすいポイントについてご紹介します。
売上の計上額が正しいものであるかは、運送業に対する税務調査に関わらず、すべての業種においてチェックされるポイントです。申告されている売上額が実際よりも少ない場合、課税される法人税や所得税も低くなります。そのため、税務調査では売上については必ず細かなチェックがなされるのです。
契約書や発注書、請求書といった書類など、売上に関連する書類や銀行の入金記録などをチェックしながら、売上の計上漏れがないか、計上月にずれがないかをチェックします。また、
一般貨物自動車運送事業者の場合、貨物輸送の安全確保の観点から運転日報、運行指示書などの業務資料の作成と保管が義務付けられています。運送業の税務調査では、これらの運行関連の記録を示す書類も確認しながら売上額が適正であるかをチェックされます。
運送業では車両を使って物品を運送するため、事業用の車両にかかる費用は経費として計上することができます。ただし、経費を水増しするなどして税負担の軽減を図るケースも見られるため、税務調査時には車両関連経費の処理についても詳しくチェックされます。
車両関連の経費処理でチェックされやすいのは次のポイントです。
車両購入時に、カーナビなどのオプション・付属品の費用、納車費用などは車両取得価格に含まれるため、経費として処理するのではなく、まとめて資産として計上し、減価償却の対象となります。たとえ、オプションや装備の価格が10万円以下でも、一括して経費に計上することはできない点に注意が必要です。一方、自動車税や自動車重量税、自賠責保険料などは経費として処理しても問題ありません。
車両購入時、車両取得価格や納車費用、検査登録代行費用などは課税取引となります。ただし、検査登録料や車庫証明の取得費用は非課税取引に該当します。運送業は多くの車両を管理しているため、車両に関連する消費税の課税取引の処理についても、厳しくチェックされる傾向にあります。
運送時に必要となるガソリン代や軽油代は経費に計上できます。しかし、燃料代として計上されている額が事業のために使用した車両の燃料代として正しいものであるのかどうかは、運行記録などと照合してみなければ分かりません。特に、個人事業主として運送業を営んでいるケースなどでは、事業用車ではなく、プライベートで使用している車両の燃料代まで経費に計上している可能性も否定できません。
そのため、税務調査時には運行記録や走行実績などと照合し、燃料代との整合性が取れているかをチェックされることが多くなります。
運送業では他の業種に比べ、車両の購入だけでなく、売却を行う機会も頻繁に生じます。そのため、車両売却時の処理も税務調査でチェックされやすいポイントです。
車両を売却した場合は、法人では、帳簿価格と売却額の差額を固定資産売却益または固定資産売却損として計上します。一方、個人事業主の場合、事業用の車両の売却益は譲渡所得として計上しなければなりません。
法人では固定資産売却益は特別利益や営業外収益として計上し、法人税の課税対象となります。個人事業主の場合は、譲渡所得となるため、確定申告の際には事業所得は異なる所得区分で扱わなければならず、税金の計算方法も異なる点に注意しなければなりません。
事業用車両を廃車にする場合、部品や廃材、スクラップなどを専門業者が買い取るケースがあります。この際に生じた売却収入は、雑収入として扱う必要があります。
トラックは車両も大きく、運送業の場合、複数の車両を廃車にすれば廃車に伴う雑収入も大きくなるケースがあります。また、廃車に伴い、自動車税や自動車重量税、自賠責保険料などが還付されることもあります。これらの還付金についても適切に処理されているか、税務調査時にはチェックされることが多いようです。
自動車保険のうち任意保険については、契約期間が1年のものが多いものの、多数の車両を保有する運送業の場合、経費削減のために複数年契約を結ぶケースもあります。任意保険は1年契約であれば、短期前払費用として保険料をそのまま経費に計上して問題ありません。しかし、契約期間が複数年に渡る場合は、加入した年に全額を経費に計上するのではなく、保険料を按分して計上しなければならない点に注意が必要です。
運送業の場合、ドライバーに支払う報酬の取り扱いも税務調査で指摘されやすいポイントです。運送業では、ドライバーと雇用契約を結ぶケースと業務委託契約を結ぶケースの2つが見られます。雇用契約を結んだドライバーに対しては、給与として報酬を支払いますが、業務委託契約の場合は外注費として報酬を支払うこととなります。
給与の場合、雇用主には源泉徴収義務が生じるほか、社会保険料の負担も生じます。しかし、外注費の場合は、事業主=雇用主とはならないため、源泉徴収義務や社会保険料の負担は生じません。そのため、運送業者の中には給与として計上すべき費用を会社の負担が少ない外注費として計上するケースが見られます。
ドライバーに支払う報酬が給与に該当するか、外注に該当するかについては、契約書の有無だけで判断されるものではありません。具体的には次の要件を満たすかどうかで判断されることとなります。
・指揮命令関係がある場合は給与
・労働時間に対して報酬を支払う場合は給与
・他人が代行できない業務の場合は給与
・配送に必要な車両や道具などが提供されていれば給与
外注費には消費税がかかるため、仕入税額控除の対象となります。そのため、税務調査で外注費と処理していたドライバーの報酬が否認され、給与に認定されると、源泉徴収義務違反としてのペナルティが課されるほか、社会保険料の追徴や請求がなされ、消費税の追徴も行われるなど多大なリスクが生じます。
運送業では、ガソリンではなく軽油を燃料としているケースが多く見られます。軽油代には、軽油引取税が含まれており、軽油引取税については消費税が課税されていません。そのため、軽油代をすべて課税仕入れとして計上することはできない点に注意が必要です。軽油引取税の除外については忘れがちなポイントとなるため、運送業を対象とした税務調査ではよくチェックされるポイントとなっています。
一方、ガソリンに含まれるガソリン税は消費税の課税対象となるため、ガソリン税は全額課税取引として計上することが可能です。
運送業に税務調査が入った場合にチェックされやすいポイントを7つご紹介しました。税務調査で何らかの指摘を受ければ、修正申告が求められ、不足分の税金とペナルティ分の税金の納付が求められます。
税務調査のリスクを抑えるためには、日頃の対策が重要です。ここでは、運送業におすすめの税務調査対策をご紹介します。
税務調査時には必ず、売上と経費についての項目がチェックされます。売上の計上額や計上月と運行記録に記載された内容がずれていれば、計上漏れについて厳しく指摘されることになるでしょう。売上については、請求書だけでなく、運行記録とも照らし合わせながら、漏れがないよう正確に記帳を行うことが大切です。
また、経費についても正しい処理を行い、領収書など、経費を証明する書類も確実に保管しておくようにしましょう。その際、どの車両に関する領収書であるのか、何の業務で発生した領収書であるのかもメモなどで残しておくと、税務調査で指摘を受けた際にも明確な説明をしやすくなります。
ドライバーに支払う報酬を外注費として処理していると税務調査時に給与とみなされるケースもあります。業務委託契約によって外部のドライバーに仕事を委託する場合は、業務委託契約書において、報酬の計算方法などについて明記しておくことが多いです。
また、報酬計算については、時給や日当での表記ではなく、成果物ベースでの計算にしなければなりません。運送業の場合は、配送件数×1件当たりの単価で計算する方法、総走行距離×荷物のキロ単価で計算する方法、運送売上×一定割合の歩合制で計算するケースが一般的です。また、ルート配送など、決まったルートで決まった場所に荷物を配送するケースは、一定の報酬を支払う固定契約が採用される場合もあります。
そのほか、シフト表に組み入れたり、タイムカードで出退勤時間を管理するような事態が見受けられれば、給与として認定される恐れがあるため、勤怠管理を実施しないことも大切です。また、配送用のトラックなどを貸与していた場合も実質的に雇用関係にあるとみなされる可能性があります。業務委託契約によって外注費を支払う場合、燃料代についてもドライバーの負担となる点にも注意が必要です。
個人事業主として運送業を営んでいる場合で、業務に使用している車両とプライベートで使用している車両を兼用しているケースもあるでしょう。その場合、事業のために使用した割合については経費に計上できますが、プライベート使用分については経費計上が認められません。
税務調査での指摘を避けるためには運行記録を残し、運行日時、走行距離、業務内容などを記録し、業務使用割合を算出したうえで、家事按分をします。家事按分の対象となるのは、車両本体価格、燃料代、駐車場代、自動車保険料、自動車関連の税金、車検代、修理費などです。税務調査時には、家事按分比率の算出根拠について明確に説明できるよう準備をしておくことが大切です。
税務署ではある程度の情報を掴んでおり、何らかの不正をしているのではと疑いを抱いている納税者に対して税務調査を実施するケースがほとんどです。売上額に比べて経費の額が極端に多い場合、前年に比べて利益が大幅に減少している場合など、不審な動きが見られると不正を疑われることになります。
税務調査において、不備や不正を指摘されれば、ペナルティが課されます。しかし、税務調査の事前通知が行われる前に、納税者が自主的に正しく申告をし直せば、ペナルティは軽減されます。申告漏れがあった場合に課される過少申告加算税は、税務調査前の自主的な修正申告であれば、加算されないのです。
これまでの申告内容に不備がある可能性が高い場合などは、早めに税理士に相談することをおすすめします。
運送業に対する税務調査では、売上の計上、車両関連費の処理、車両売却時の処理、外注費などについて特に厳しくチェックされるケースが多くなっています。反対に今回ご紹介したようなポイントについて正しく処理ができているようであれば、税務調査の対象に選ばれる可能性も低いでしょう。また、たとえ税務調査が入った場合でも、大きな不備を指摘される可能性は少なくなります。
正しく記帳を行うことが正しい申告につながります。運送業の会計処理のルールをしっかりと理解したうえで、運行記録などと照合しながら正確な記帳を行うことが大切です。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者20万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
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