2025.07.14
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税務署が個人口座を調べる理由は?通帳は必ず提示しなければいけない?

読了目安時間:約 8分

税務署から税務調査が入った際、資料として個人口座の通帳提示が求められるケースがあります。

事業用の口座だけではなく、個人口座の通帳を見せるように言われたら、必ず見せなければならないのでしょうか。

ここでは、税務署から個人口座が調べられる理由や提示義務の有無、対処法などを解説します。

すでに税務調査の事前通知が届いており、個人口座を提示するかどうか迷っている場合は、税務調査に強い税理士法人松本までご相談ください。

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目次

税務署から個人口座を調べられることはある?

個人事業主のもとへ税務調査が入った場合、個人名義の通帳や取引履歴を見せるように求められる可能性はあります。

税務署が通帳の提示を求める背景や、対応すべきケースについて詳しく解説します。

税務調査で調査官が通帳を確認する目的とは

税務調査で帳簿とともに銀行通帳の提示を求められることは珍しくありません

なぜなら、通帳は改ざんされにくく、事実を裏付ける客観的な資料として利用できるためです。

帳簿類は事業者自身が記録するものであるため、意図的に数字が調整されている可能性も否定できません。

一方、通帳には入出金が金融機関によって記録されており、お金の流れを最も正確に把握できる手段といえます。

個人通帳の提示を求める理由

税務署が個人名義の通帳の提示を求める理由は次のような点です。

  • 帳簿に記載されている額と実際の入出金の金額に違いがないか
  • 不審なお金の動きはないか
  • 売り上げや経費の申告漏れがないか
  • 定期的に不明なお金が入金されていないか
  • 別ルートで所得を得ていないか など

たとえば、申告された所得に対して不自然な金額が入金されていたり、定期的に一定額の入金が続いていたりすると、「ほかの未申告収入があるのではないか」と判断される恐れがあります。

税務署に個人口座を見せる義務はある?

税務調査の際に、すべての通帳を見せる必要はありません。ただし、その通帳が事業用なのか、個人用なのか、事業と関連するものなのかで、見せる義務が異なります。

ここでは、どのようなケースで個人口座の通帳を提示する必要があるのか紹介します。

事業用の通帳は提示が必要

事業用と個人用の口座を分けている場合、事業用の通帳の提示を求められた場合には、求めに応じて調査官に通帳を提示しなければなりません。

事業用の通帳は、国税通則法第74において定められている「その者の事業に関する帳簿書類その他の物件」に含まれるものであると考えられています。

そのため、税務調査時に調査官から、事業用の口座の通帳を見せるよう求められたら、応じる義務があります。

個人通帳は拒否できるケースもある

個人名義の通帳の場合は、事業用口座と明確に区分されている場合に限り、提示を拒否できる可能性があります。

たとえば、以下のような場合が該当します。

  • 個人口座に事業収入や経費の入出金が一切ない
  • 家賃、水道光熱費、生活費など私的支出にのみ使用している
  • 事業用の会計帳簿と完全に連動していない

このように、税務調査で個人名義の通帳や取引履歴の提示を求められた場合でも事業とは完全に無関係であることを説明できる場合は、通帳の提示を拒否できます。

株式会社(法人)でも個人通帳の提示を拒否できるケース

個人事業主に限らず、株式会社など法人企業に税務調査が入った場合でも、代表者名義の個人通帳の提示を求められるケースがあります。

たとえば、会社の資金が個人通帳を経由している場合や経費の支払いを個人カードで行っている場合などは、事業に関わっているため提示しなければいけません。

しかし個人通帳は一切事業に使っておらず、事業用と個人用の口座を完全に区別しているのであれば、通帳の提示を拒否できます。

自宅の家賃や水道光熱費、生活費に使用しているクレジットカードの引き落としなど、事業と関係のない入出金だけである場合、個人口座は税務調査でチェックするべきものではないからです。

ただし、個人の通帳に売が入ってしまっている場合や、どこまでが税務調査の対象となるのか分からず悩んでいる方は、税理士法人松本まで気軽にご相談ください。

税務署に個人通帳の提示を求められる8つのケース

税務調査で個人通帳を見せる必要があるケースは、主に次の8が挙げられます。

1. 事業用口座と個人用口座の混合疑惑がある場合

個人事業主や法人が対象の税務調査では、「事業用の口座と個人口座の資金管理が適切に分けられているか」が重要なチェックポイントになります。

本来、事業に関する収入や支出は事業用口座を通じて行うべきですが、実際には個人口座に売り上げが振り込まれたり、個人的な支出が経費に計上されたりしているケースも見受けられます。

さらに、事業用口座から個人口座へ生活費などを移している場合や、両口座間で定期的な資金移動がある場合には、その資金の性質を明確にするために、個人口座の取引履歴も調査対象となることがあります

こうした混合が見られると、税務署は「収入や経費の計上が適切に行われていないのではないか」と判断し、個人口座の提示を求める可能性が高くなります。

事業用と個人用の資金管理が曖昧な状態では、正確な所得の把握が難しくなるため、通帳の記録や資金の流れを通じて、適正な申告が行われているかどうかが厳しく確認されるのです。

2. 相続税や贈与税の申告漏れ疑惑がある場合

相続税や贈与税に関する税務調査では、申告内容に漏れや不整合がないかを確認するために、関係者の個人口座の取引状況が調査対象になることがあります。

たとえば、以下のようなケースが確認された場合、申告漏れの可能性を疑われることがあります。

  • 申告された財産の額が、税務署が把握している資産状況と合致しない
  • 預金通帳に高額な出金履歴があるが、その用途が不明
  • 税理士を介さずに、相続人または贈与を受けた本人が独自に申告書を作成している

税務署では、税理士が関与している申告書は一定の信頼性があると判断する傾向にあります。

反対に、専門家の関与がない場合、書類の記載ミスや解釈の誤りなどが生じやすく、結果的に調査対象となるリスクが高まります。

なお、相続税や贈与税には一定額を超えた場合に申告が義務付けられており、適切な申告を行うには税務知識が必要です。

これらの申告に不安がある方は、専門家に相談してみましょう。

3. 税金の大幅な申告漏れが疑われている場合

税務署は、申告内容と実際の資金の流れに大きな乖離があると判断した際、個人口座の調査に踏み込むことがあります。

特に、帳簿に記載のない高額な入金や不明な資金移動が確認された場合、その資金が収入に該当するかどうかを判断するうえで、個人口座の記録は重要な手がかりです。

たとえば、取引先から繰り返し多額の送金が個人口座へ入金されていたにもかかわらず、帳簿上では売り上げや収入として一切処理されていない場合、それが申告漏れと認定される可能性は高くなります。

このように、資金の動きと申告内容に大きな不整合があると判断された場合、個人名義の口座も税務調査の対象となるケースがあるため注意が必要です。

4. 帳簿と資金の動きに不合性がある場合

帳簿に記載された内容と、実際の口座の入出金の記録に食い違いがあると判断された場合、個人口座も税務調査の対象に含まれる可能性があります。

たとえば、帳簿上では事業の売り上げが月30万円と記載されているにもかかわらず、個人口座に毎月70万円以上の入金が継続的に確認されるといったケースでは、その差額の性質が問題視されるでしょう。

税務署は、「帳簿に記載されていない資金は、申告されていない所得ではないか」という観点で調査を進めるため、帳簿と通帳の整合性は非常に重視されます。

このように、記帳内容と現実の資金移動にズレが見られる場合は、個人口座の調査が必要になると理解しておきましょう。

5. 自宅をオフィスに使用し、家事按分している場合

個人事業主の場合、自宅の一部を仕事用スペースとして活用し、家賃の一部を地代家賃として経費計上しているケースがあります。

このような「家事按分」を行っている場合、家賃の支払いが個人口座から引き落とされていれば、税務調査において該当箇所の通帳履歴を提示するよう求められる可能性も少なくありません。

また家賃と同様に、電気代や水道代などの光熱費も生活費と事業用経費で按分しており、これらの支払いが個人口座から行われている場合は、その口座は実質的に事業にも使用されているとみなされます。

そのため、税務署は個人名義の口座であっても、事業に関連した支払いが確認されれば、その履歴の提出を求めることがあるでしょう。

6. 売り上げの一部が個人口座に入金されている場合

取引先の都合で、事業用の口座とは異なる銀行口座への振り込みを求められ、やむを得ず個人名義の口座を利用することもあります。

しかし、たとえ理由があったとしても、売上金が個人口座に入金されている場合、その取引内容の確認のため、該当部分の通帳の提示を求められる可能性は十分にあります。

7. 備品や消耗品などを個人口座のカードで支払った場合

業務に必要な文房具や書籍、備品などを、プライベートな買い物のついでに個人のデビットカードやクレジットカードで購入するケースもあるかもしれません。

このような支払いがあると、税務署は事業経費と私的支出の線引きを確認するため、個人口座の取引履歴の提示を求めることがあります。

8. 現金取引が多く、収支の履歴が曖昧な場合

や仕入れに現金取引が多く、事業用の口座だけでは取引全体の確認がしにくい場合があります。このような場合、個人口座を含めた資金動向を確認する必要があると判断され、個人通帳の提示を求められることがあります。

特に、収支に不自然な点が見られる場合や、所得隠しが疑われる場合にも、調査対象が個人口座にまで及ぶ可能性が高まるでしょう。

個人名義口座の通帳提示する必要があるか判断するポイント

税務調査で個人名義の通帳を提示するよう求められた場合、通帳の提示を拒否できるかできないかの判断のポイントは、次の2点です。

  • 個人名義の口座から事業に関連する入出金を行っていないか

  • 事業用と個人用口座を明確に分けているか

前述したように、自分では明確にプライベートと事業用で口座を分けているつもりでも、家賃や光熱費を按分しており、個人名義の口座から引き落とししている場合は、明確に分けているとはいえません。

個人口座の通帳はプライベートな支出や入金が分かるものでもあり、プライバシーを保護したいという気持ちが強いのであれば、事業用と個人用の口座を明確に区分しておくようにしましょう。

個人通帳の提示を拒否できるのに提示を求められたら?

事業用と個人用で通帳をしっかり分けて使用しているなら、本来個人用の通帳はプライベートなものであり、税務調査で見せる必要がないものです。

しかし、税務調査官によっては、特に根拠がなくても個人通帳の提示を求められる可能性もあります。

提示する根拠がない場合は拒否できる

税務調査を受ける際には、どうしても緊張や焦りから、調査官の要求にすべて従わなければならないような気持ちになる場合も少なくないでしょう。

しかし、法的根拠が明示されていない資料の提出や、疑いに対する過度な対応は、毅然とした姿勢で対応することが重要です。

たとえば、個人用の通帳は事業用途に一切使っていないのであれば、その旨を伝えましょう。

それでも提示を求められる場合は「提示するべき法的根拠はあるのでしょうか」と調査官に確認することが大切です。

根拠を要求しても調査官から明確な根拠が示されないときには、通帳の提示を拒否することもできます。

国税庁の通帳の提示に対する見解

国税庁の公式サイトでも、「税務調査における資料の提示要請については、調査目的や根拠をきちんと説明したうえで、納税者の理解を得るよう努めるべきである」という趣旨の記載があります。

参照:国税庁|税務調査手続に関するFAQ|問7

したがって、個人名義の通帳を提示する必要があるのは、あくまで事業との関連性が疑われる場合に限られます。

そのため、私的な用途にのみ使用しており、事業と関係がないことが明確であれば、提示する義務はないと理解して差し支えありません。

見られても問題ないなら提示した方がスムーズな場合も

「個人用通帳を見せてほしい」と税務調査で言われる場合、税務署のほうでも何か不明点や疑わしい点があり、調査を早期に進めるために確認を求めているケースも少なくありません。

そのため、特に見せても問題のない通帳であれば、あえて拒否する必要はないでしょう。

あまり頑なに拒否し過ぎることで、かえって疑惑を深めてしまう可能性もあります。

実際に、通帳を提示することで疑いが早期に解消され、調査がスムーズに終了するケースもあります。

プライバシーに大きく関わる情報が含まれていない、または事業との関係性が疑われるような動きがない場合には、柔軟に対応するのも一つの選択肢です。

ただし、「問題がないかどうか」の判断が難しく、少しでも不安がある場合は、事前に税理士に相談し、対応方針を決めておくとよいでしょう。

根拠の判断が難しい場合は税理士へ相談を

経営者や事業の代表者として日々の業務に追われていると、帳簿や取引のすべてを完全に把握するのは難しいでしょう

事業と個人の口座はしっかりと分けているつもりでも、もしかしたらうっかり見落としていることもあるかもしれません。

特に税務署との交渉においては、税金や会計に関する知識が足りないと、調査官の指摘通りに動いてしまう可能性があります。

税務調査が入る場合、比較的丁寧に帳簿を管理している事業者ほど、帳簿の細部まで厳しく確認される傾向があります。

わずかな不一致や不明瞭な点でも、「意図的な隠蔽」と受け取られるリスクがあるため注意が必要です。

個人口座と事業との関連性について、根拠の判断が難しい場合や、税務署との交渉に不安を感じるなら、一度税務調査の対応に強い税理士へ相談してみるとよいでしょう。

税務署は同意なしでも個人口座を調べられる

税務調査において、納税者が個人名義の通帳の提示を拒否した場合でも、調査に必要と判断されれば、税務署は本人の同意なしに金融機関へ照会し、口座の情報を確認することが可能です。

それにもかかわらず、調査官がまず納税者本人に通帳の提示を求めるのは、調査をスムーズに進めるためです。

金融機関に対して情報開示を請求する手続きには時間がかかるため、可能であれば納税者自身から通帳を提出してもらったほうが、効率的に調査を進められます。

税務署からの個人口座提示を拒否する場合の注意点

事業と無関係の個人口座については、法的な根拠がない限り、税務調査での提示を拒否することが可能です。

ただし、拒否する前に以下の2点を必ず確認し、慎重に判断する必要があります。

隠蔽と判断されるリスクがある

もし個人口座に事業資金の入出金が混在している状態で提示を拒否すると、たとえ意図的でなかったとしても、調査官からは「何かを隠しているのではないか」と疑われ、意図的な隠蔽行為とみなされる可能性があります。

たとえば、以前に数回だけ個人口座を事業に使用していたことを忘れていても、税務署側はその履歴を重く捉える可能性があります。

調査官に悪い印象を与えないためにも、事前に個人口座に事業関連の取引が一切ないかをよく確認しておきましょう。

問題がないと確信できる場合は、無理に拒否せず、提示に応じたほうが調査官の心証も良くなり、調査が円滑に進むことが期待できます。

税務署に口座情報がすでに把握されている可能性がある

「この口座の存在はばれていないだろう」と思っていても、税務署はすでにその口座を把握している場合があります。

調査官はあえてその事実に触れず、対象者が自主的に通帳を提示するかどうかを試すケースも少なくありません。

税務署は、過去の確定申告書、源泉徴収票、不動産の登記情報、国外送金記録、マイナンバーを通じた金融機関情報など、あらゆる手段で個人名義の口座を把握しています。

したがって、嘘をついたり、隠そうとしたりする行為は非常にリスクが高く、結果的に重大な指摘や重加算税の対象になる恐れもあるでしょう。

まとめ

税務署から個人口座を調べるように言われても、事業と完全に切り離して使用している口座であれば見せる必要はなく、提示を求められても拒否することが可能です。

ただし、うっかり事業用に使っている場合や、税務署から根拠となる関連性について納得できる説明を受けた場合には、個人通帳を提示する必要があります。

個人通帳と事業通帳が完全に分けられているか、税務調査で指摘を受ける要素がないかなど、少しでも不安な点がある場合は、税理士事務所でアドバイスを受けてみるとよいでしょう。

この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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