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税務署が行っている税務調査は、実際どこまで調べるのか気になる方も多いでしょう。
この記事では、税務調査ではどこまで調べるのか、必要な書類や税務調査対象者の選定方法などについて解説します。
さらに、税務調査で見られやすいポイントについても紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
税務署から連絡が来て、不安を抱えている方は税理士法人松本まで一度お電話ください。
目次
税務調査で調べる範囲は、必要であれば「すべて」です。
税務調査官には「質問検査権」という強い権限が与えられており、不審に思った点があれば、その根拠を確認するためにパソコン内のデータや書類など、必要に応じてあらゆる資料を確認できます。
納税者側には「受忍義務(調査に応じる義務)」があるため、税務調査に必要とされる書類等の提出や質疑に対して答える義務があり、拒否することはできません。
また、調査への協力を拒んだり情報の開示を渋ったりすると、かえって調査官に不信感を抱かれ、調査がより厳しくなる可能性があるので、誠実に対応し、求められた情報をできる限り素直に提示することが重要です。
関連記事:税務調査の受忍義務とは?任意なら拒否できる?罰則なども解説
税務調査では、基本的に過去3年分が調査されるのが一般的です。税務調査官が不正や重大な誤りがないかを確認するための標準的な調査期間です。
しかし、調査の過程で誤りや不審な点が見つかった場合、調査対象期間は5年分まで延長されることがあります。
さらに、悪質な不正や申告漏れが疑われる場合は、最大で7年分までさかのぼって調査される可能性があります。
帳簿や書類等は保管義務期間が法律により定められています。
そのため、税務調査などでこれらの提出を求められた際に、適切に提出できない場合は、重大な問題となる可能性があります。
日頃から、法定の保存期間に従って書類を整理・保管しておくことが重要です。
関連記事:税務調査では過去何年分まで調べる?3年・5年・7年の違いを解説
参照:国税庁|No.5930 帳簿書類等の保存期間
参照:国税庁|記帳や帳簿等保存・青色申告
税務調査の対象となる書類やデータは下記のような書類です。
法人
個人
申告関係書類
法人税申告書、消費税申告書、地方税申告書、届出書類
確定申告書、青色申告決算書または収支内訳書、消費税申告書、届出書類
帳簿関連
元帳、入金出金振替伝票、現金出納帳、当座預金出納帳、受取手形記入帳、支払手形記入帳、買掛帳、売掛帳など
総勘定元帳、現金出納帳、預金出納帳、売上帳、仕入帳、経費帳、振替伝票など
取引関連の書類
見積書、納品書、請求書、領収書、工事契約書など
見積書、注文書、納品書、請求書、領収書、業務委託契約書など
預貯金関連
会社の普通預金の通帳、定期預金・定期積金の通帳及び証書(法人の場合は個人の普通預金の通帳、定期預金、積金の通帳)、クレジットカードの明細など
個人名義の通帳(事業用)、ネットバンキング明細、クレジットカード明細、電子決済履歴など
人件費関連
源泉台帳、扶養控除申告書等、社会保険関係の書類、特別徴収の住民税の通知書、タイムカードの記録等、役員報酬の改定の明細書、役員退職金の明細書など
給与台帳、源泉徴収簿、扶養控除申告書、雇用契約書、社会保険書類、給与明細など
そのほか
会社のパンフレット、登記簿謄本、稟議書、株主総会・取締役会の議事録、定款など
不動産契約書、事業用車両の書類、SNS運用画面、自宅兼事務所の按分資料など
ただし、これらはあくまでも一例で、実際の税務調査においては、事前通知の段階で調査官から具体的に準備すべき書類が指定されます。
そのため、ここに記載のない資料であっても、調査官から提出を求められた場合には、原則として応じる必要があります。
税務調査では、調査官の指示に従い、速やかかつ正確に対応することが重要です。
税務調査は基本的に年間を通じて実施されていますが、特に下半期(7~12月)に集中する傾向にあります。
上半期(1~6月)は所得税・法人税・消費税などの申告や決算処理が集中する「繁忙期」にあたるため、税務職員や税理士が多忙になるからです。
これらの申告業務が一段落する下半期に本格的な調査が行われるケースが多くなります。
【税務調査の年間スケジュールの傾向】
時期
概要
7~8月
調査対象の選定・事前準備が中心。特に個人事業主や小規模法人が対象になりやすい時期。
9~11月
税務調査のピーク。実地調査が集中的に行われる。
12月
翌年の申告準備期間に入るため、税務調査の実施数はやや減少する。
関連記事:税務調査は何月から始まるの?税務調査の時期と税務署が来た時の注意点についても解説!
税務調査は、納税者が申告した内容が正しいかどうかを確認するために行われるものです。
帳簿や領収書などの書類を基に、申告内容に誤りや不備がないかを調べ、問題があれば税務署が是正を求めるのが基本的な流れとなります。
また、申告義務があるのに無申告状態でいる方に対して、適切な申告を促すことも税務調査の重要な目的の一つです。
日本は「申告納税制度」を採用しており、法人税や所得税をはじめとする多くの税金は、納税者が自ら税額を計算して申告・納付を行います。
そのため、納付税額の計算ミスや虚偽の申告をしている可能性もあるため、不正行為の防止や申告内容の確認のために税務調査が行われます。
このような調査は、税制度の公平を保つと同時に、国が必要な税収を安定的に確保するためにも重要です。
税務調査には「任意調査」と「強制調査」の2種類があります。
任意調査とは、税務署が納税者の同意のもとで行う税務調査のことです。
基本的には、事前に税務署から連絡があり、調査の対象となった旨や調査の実施予定日、必要な書類等が通知されます。
現在行われている税務調査の大半はこの任意調査であり、全体の大多数を占めています。
任意調査は納税者の協力を前提として進められますが、質問検査権に基づいて帳簿や書類の提示を求められることもあり、実質的には対応義務があります。
また、「任意」とはいえ正当な理由なく任意調査を拒んだ場合は、法律により1年以下の懲役または50万円以下の罰金が課せられる可能性があるので、注意しましょう。
参照:e-GOV|法令検索|国税通則法|第128条
強制調査は、任意調査とは異なり、事前の連絡や同意なしに行われる税務調査です。
国税局査察部が、裁判所の令状に基づいて実施される捜査型の調査であり、刑事事件としての脱税立件を視野に入れたケースもあります。
この調査では、帳簿や契約書、領収書などの書類はもちろん、パソコンやスマートフォン、USBメモリなどの電子機器も含め、調査に必要と判断されたものは押収の対象となることがあります。
【強制調査が行われる主なケース】
このように、強制調査は極めて例外的かつ重大な違反行為があると認められた場合に限り実施される厳格な調査手段であり、通常の任意調査とは性質も手続きも大きく異なるのが特徴です。
税務調査の対象者は、税務署や国税局が客観的なデータや情報に基づいて選定しています。
近年では、税務署に蓄積された膨大な申告データ等を基に、AIを活用した分析「KSK(Kokuzei Sougou Kanri)システム」が導入されており、より精度の高い抽出が可能となっています。
このKSKシステムには、申告書や決算書の内容がデータとして入力・蓄積されており、以下のような観点から申告者の傾向が分析可能です。
さらに次のような条件に該当する場合に、税務調査の候補として抽出されます。
このように、税務調査は感覚や勘に頼った選定ではなく、システムと情報に基づいた合理的な判断によって行われており、調査対象者は厳正に選ばれています。
1位
内科医
バー・クラブ
2位
経営コンサルタント
その他の飲食
3位
ブリーダー
外国料理
4位
歯科医
土木工事
5位
よう接
美容
6位
製図設計士
一般土木建築工事
7位
施設園芸農業(果樹)
職別土木建築工事
8位
システムエンジニア
廃棄物処理
9位
コンテンツ配信
船舶
10位
ダンプ運送
その他の道路貨物運送
これらの業種は申告漏れ・不正発見割合上位の業種になります。
そのため、ほかの業種よりも税務調査の対象となる可能性が高くなるので、注意しましょう。
参照:国税庁|令和5年事務年度 所得税及び消費税調査等の状況
参照:国税庁|令和5事務年度法人税等の調査事績の概要
税務調査では、どのような部分が見られやすいのか、税務署によく見られている部分を科目別に確認していきましょう。
当日の現金出納帳と現金の実際有高の確認や、レジに保管されている現金も加えて計算されます。
金庫や引き出しに現金がある場合は中を確認されたり、預金通帳や定期・積立の証書などの保管場所を確認することもあります。
売り上げの計上漏れがないか、計上時期に誤りがないかといった点がよく見られます。
売り上げの入出金の動きを確認し、売り上げが少なく申告されていないか、売り上げを翌期以降にずらしていないかを確認します。
架空の仕入れがないか、架空の外注費がないか、売り上げに紐づく仕入計上時期となっているかといった点がよく見られます。
架空の外注費が計上されていると、課税される所得が減少し、納める税金も減るためです。
翌期の仕入れを今期に計上していないかなど、計上時期も確認されることもあるでしょう。
実際に棚卸が行われているか、棚卸金額が正しいか、棚卸の評価方法が正しいかといった点がよく見られます。
棚卸資産の金額が違っていると、課税される所得に影響しますので、不正に少なく在庫が計上されていないかなど帳簿や棚卸表を基にチェックされることがあります。
倉庫があるような業種の場合はその中も確認されるでしょう。
従業員名簿や勤怠管理(タイムカード)で給料を支払っている従業員は実際にいるのか、架空の人件費が計上されていないかといった点が見られます。
役員報酬が出ている法人の場合は、定款や議事録などから役員報酬の金額は適切か、事前確定届出給与が提出されていれば、支払いは届出に記載されている内容が適切に支払われているかといった点が確認されます。
不動産を購入している場合は、購入したときの売買契約書、領収書、仲介手数料の領収書などを確認されることがあります。
機械設備や車などを購入している場合も見積書、契約書、領収書が見られます。
税務調査で見られるポイントがわかったところで、税務署が税務調査に来るまでにどこまで調べているのかも見ていきましょう。
すでに税務調査が入っている方はいますぐ税理士法人松本でご相談ください。
会社や事業のWebサイト(ホームページ)、広告などに掲載されている情報など、一般的に確認できるものは税務署も把握しています。
Webサイトで「前年度の取引〇件以上!」「大好評売り切れ続出」といった文章が記載されているにもかかわらず、実際の申告で該当する売り上げが計上されていないといった場合は状況の確認があります。
「倉庫にストックしてある商品の在庫と、帳簿に計上している在庫の金額が合わない」「店舗に行列ができるほど繁盛しているのに、赤字になっている」など、現地を軽く訪問すればわかるような情報を掴んで税務調査にやって来るケースもあります。
大阪にあるたこ焼き売店が1億3000万円余の脱税をしていた税務調査がその一例で、店舗に行くと繁盛しているにもかかわらず売り上げを申告していなかったことが発覚したケースがありました。
一般的な税務調査だけでなく、税務署独自のシステムや権限を活用した税務調査も事前に行われます。
業種や規模に応じて、申告された内容に異常値があった事業者を調査対象としてピックアップし、銀行の取引と照合するといった調査は、税務署が事務所を訪問しなくてもチェックすることが可能です。
それ以外にも、第三者からの密告やタレコミなどから不正が発覚する場合もあります。
任意調査に訪れた調査官が「〇〇に関する取引がわかる書類を見せてほしい」など、ピンポイントで確認される場合もあるでしょう。
税務調査が実際に行われる場合、下記のような流れとなります。
税務調査が行われる前に、納税者に事前通知が行われ、調査対象期間や調査対象の税目、調査日時や調査場所について通知されます。
調査が実際に開始されると、調査開始の旨が調査官より伝えられます。調査官が税務署の職員であることの身分証明書を提示しますので、しっかりと確認し、名刺をいただくようにしましょう。
調査官は申告内容の正確性を確認するために、準備された書類やデータを確認します。その際、納税者に質問や説明を求めることがありますので、誠実に回答するようにしましょう。
バレないと思い、虚偽の回答をしてはいけません。
バレていないと判断し、虚偽の発言をしても、実は調査前からバレていたというケースは充分想定されます。
税務調査で計算ミスや計上漏れなどが発覚した場合、追徴課税やペナルティの対象となる場合もあります。
税務調査が終了すると、調査結果が調査官より報告され、不正が発覚した場合は、是正処分や追徴課税が課せられるのが一般的です。
税務調査の連絡が来たら、まずは税理士に立ち会いを依頼しましょう。
現在顧問税理士がいる場合は、顧問税理士が税務署に「税務代理権限証書」を提出しているはずですので、顧問税理士に税務署から調査依頼の連絡が入ります。
顧問税理士が申告している内容になりますので、立ち会ってもらえれば、安心して税務調査に対応できることでしょう。
顧問税理士がいない場合は、スポットでも対応してくれる税務調査に強い税理士を探します。
税務署にも税理士立ち会いのもと調査を行いたいことを伝え、現在立ち会いをしてくれる税理士を探しているので待ってほしいことを伝えるようにしましょう。
税務調査を自分自身で対応することは可能ですが、相手は数多くの税務調査経験がある調査官です。
そのため、税務のプロである税理士に対応してもらったほうが、安心して税務調査を進められるでしょう。
税理士法人松本では、税務調査のみのスポット対応も承っております。
国税OBの税理士が10名以上在籍しており、税務調査を年間1,000件以上対応しています。
また、過去の実績として、多数の案件で追徴課税ゼロを実現しているため、税務調査に対する不安や疑問をお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。
税務調査は、納税者の申告内容が正確かどうかを確認するために行われる重要な手続きです。
調査官が必要と判断した場合には、帳簿や書類、電子データなど、あらゆる資料が調査対象となります。
通常は過去3年分の申告内容が調査されますが、不正や悪質な申告漏れが疑われる場合には、最大7年分までさかのぼって調査が行われることもあります。
調査に備えるためには、日頃から適正な帳簿管理と書類の保管を徹底し、万が一調査を受けた際にも速やかに対応できる体制を整えておくことが大切です。
税理士法人松本では、税務調査に特化したスポット対応サービスを提供しています。
国税OBの税理士が在籍し、豊富な実績と専門知識を活かして、納税者の立場に立った丁寧な対応を行っているので、お気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
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