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会社設立後の労働保険手続き|従業員を雇う場合の期限一覧
読了目安時間:約 7分
会社設立をしただけでは、通常、労働保険の手続きは発生しません。原則として、正社員・パート・アルバイトなどの名称を問わず、初めて労働者を雇用した日が手続きの起点です。労働保険とは、労災保険と雇用保険の総称です。
目次
会社設立後、労働保険の手続きはいつから必要?
従業員がおらず、代表取締役だけの会社では、代表取締役は原則として労働者に当たらないため、通常の労働保険関係は成立しません。一方、法人に原則として加入義務がある社会保険とは、手続きが必要になる判断基準が異なります。
従業員を1人でも雇用した会社法人は、原則として労災保険の強制適用事業になります。正社員だけでなく、契約社員、パート、アルバイト、日雇労働者、外国人労働者も、雇用期間や週の労働時間にかかわらず原則として対象です。
労災保険は業務災害や通勤災害を補償し、保険料は全額事業主が負担します。雇用保険は失業等給付、育児休業給付、教育訓練給付などに関係し、一定の加入要件を満たす労働者について、事業主と労働者の双方が保険料を負担します。
一般的な会社である一元適用事業では、主な手続期限は次のとおりです。会社設立後に労働保険の対応が必要になったら、雇用日を基準に早めに準備してください。
| 手続き | 主な期限 |
|---|---|
| 保険関係成立届 | 成立日の翌日から10日以内 |
| 雇用保険適用事業所設置届 | 成立日の翌日から10日以内 |
| 被保険者資格取得届 | 資格取得月の翌月10日まで |
| 概算保険料の申告・納付 | 成立日の翌日から50日以内 |
これらの期限は、厚生労働省の案内でも確認できます。この記事では、加入対象者、提出書類、手続きの順番や保険料まで整理するため、設立直後に「誰を、いつまでに、どの制度へ加入させるか」を確認できます。
なお、役員や同居家族などは勤務実態によって取り扱いが異なる場合があります。加入要否に迷う場合は、所轄の労働基準監督署やハローワーク、社会保険労務士などへ確認してください。
労災保険と雇用保険には誰を加入させる?
会社設立後の労働保険では、労災保険と雇用保険で加入条件が異なるため、従業員ごとに分けて判定します。雇用形態の名称だけでなく、所定労働時間や雇用見込みなどの実態を確認してください。
| 保険 | 原則的な対象者 | 主な判定基準 |
|---|---|---|
| 労災保険 | 賃金を受ける労働者 | 時間・雇用期間を問わない |
| 雇用保険 | 要件を満たす労働者 | 週20時間以上かつ31日以上 |
労災保険の対象者は?
労災保険は、事業に使用され、労働の対価として賃金を受ける原則すべての労働者が対象です。正社員だけでなく、契約社員、パート、アルバイト、日雇労働者、外国人労働者も原則として含まれます。
雇用保険のような「週20時間以上」や「31日以上の雇用見込み」という要件はありません。そのため、週10時間勤務のアルバイトや短期間雇用の従業員も、原則として労災保険の対象です。
雇用保険の対象者は?
雇用保険は、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上引き続き雇用される見込みがある人が原則対象です。本人が加入を希望しなくても、両方の要件を満たせば原則として加入が必要です。
試用期間中でも要件を満たす場合は、原則として入社日から対象となります。短期契約でも更新規定や過去の更新実績などがある場合は、31日以上の雇用見込みを契約書だけでなく実態に即して判断してください。
- 週20時間未満でも労災保険は原則対象
- 週20時間未満の人は雇用保険の原則対象外
- 昼間学生は雇用保険の原則対象外
ただし、昼間学生でも卒業後に引き続き雇用される場合などは、雇用保険の対象となる例外があります。契約更新の可能性や学生の扱いで判断が難しいときは、雇用契約書や勤務条件を整理し、所轄のハローワークなどの専門機関へ確認しましょう。

【期限早見表】会社設立後に必要な労働保険手続き
会社設立後の労働保険手続きは、一般的な一元適用事業では、初めて従業員を雇用した日を基準に進めます。会社の設立日と初回雇用日が異なる場合は、原則として初回雇用日から期限を数えます。
| 手続き | 期限 | 提出・納付先 |
|---|---|---|
| 保険関係成立届 | 成立日の翌日から10日以内 | 労働基準監督署 |
| 適用事業所設置届 | 成立日の翌日から10日以内 | ハローワーク |
| 被保険者資格取得届 | 取得月の翌月10日まで | ハローワーク |
| 概算保険料の申告・納付 | 成立日の翌日から50日以内 | 監督署・労働局・金融機関等 |
上表は、労災保険と雇用保険をまとめて扱う一元適用事業の主要期限です。期限の根拠や手続きの概要は、厚生労働省の案内でも確認できます。
10月1日に初めて従業員を雇った場合の期限は?
保険関係成立日は10月1日となり、保険関係成立届と適用事業所設置届は原則10月11日までです。雇用保険の要件を満たす従業員の資格取得届は11月10日まで、概算保険料の申告・納付は原則11月20日までとなります。
期限日が行政機関の閉庁日などに当たる場合の扱いは、事前に提出先へ確認してください。また、建設業や農林水産業など一部の二元適用事業では、労災保険分と雇用保険分を分けて手続きします。該当するか迷う場合は、所轄の労働基準監督署またはハローワークへ相談しましょう。

労働保険の加入手続きはどの順番で進める?
一元適用事業では、加入対象を確認したうえで、原則として労働基準監督署からハローワークの順番で手続きを進めます。その後、従業員ごとの資格取得届を提出し、概算保険料を申告・納付します。
- ステップ1:雇用条件と加入対象を確認する
雇用契約書や労働条件通知書を作成し、入社日、契約期間、週所定労働時間を確認します。労災保険と雇用保険の対象を判定し、前職がある従業員には雇用保険被保険者番号を確認します。 - ステップ2:労働基準監督署へ成立届を提出する
事業所所在地を管轄する労働基準監督署へ、労働保険保険関係成立届を保険関係成立日の翌日から10日以内に提出します。事業主の名称・所在地、事業の種類、成立年月日、常時使用する労働者数、雇用保険被保険者数、賃金総額の見込額などを記載し、提出後の事業主控えを保管します。 - ステップ3:ハローワークへ設置届を提出する
雇用保険適用事業所設置届は、事業所所在地を管轄するハローワークへ、保険関係成立日の翌日から10日以内に提出します。原則として成立届の提出後に進め、成立届の事業主控えを確認できるよう準備します。 - ステップ4:従業員ごとに資格取得届を提出する
加入条件を満たす従業員ごとに、雇用保険被保険者資格取得届を資格取得日の属する月の翌月10日までに提出します。前職の雇用保険被保険者証などを確認し、交付された通知書等は事業主保管分と本人交付分に分けて管理します。 - ステップ5:概算保険料を申告・納付する
労働保険概算保険料申告書を、保険関係成立日の翌日から50日以内に提出します。保険年度末までに支払う予定の賃金総額をもとに算定し、申告書の提出だけでなく、保険料の納付まで完了させる必要があります。
会社設立後の労働保険手続きは複数の期限が並行するため、雇用日を起点に管理することが重要です。期限や個別の加入判定に迷う場合は、管轄窓口や社会保険労務士へ確認してください。

手続きに必要な書類と提出先
会社設立後の労働保険手続きでは、労働基準監督署とハローワークで提出書類が異なります。書類不足による再訪問を防ぐため、届出書と確認資料を窓口ごとに分けて準備しましょう。
労働基準監督署へ提出する書類は?
事業所所在地を管轄する労働基準監督署には、次の書類を提出します。確認資料の取扱いは全国一律ではないため、訪問前に所轄署へ確認しておくと確実です。
- 労働保険保険関係成立届
- 労働保険概算保険料申告書
- 登記事項証明書
- 事業所所在地を確認できる資料
- 賃貸借契約書
- 事業実態が分かる書類
登記事項証明書以下は、成立届の内容を確認するために求められる可能性がある資料です。会社の登記上の所在地と実際の事業所が異なる場合は、所在地や事業実態を説明できる資料を整理してください。
ハローワークへ提出する書類は?
所轄ハローワークには、雇用保険適用事業所設置届と従業員ごとの雇用保険被保険者資格取得届を提出します。あわせて、労働保険の成立や雇用実態を確認できる資料を準備します。
- 労働保険保険関係成立届の事業主控え
- 登記事項証明書
- 出勤簿またはタイムカード
- 労働者名簿、賃金台帳、源泉徴収簿
- 雇用契約書または労働条件通知書
- 従業員の雇用保険被保険者番号が分かる資料
会社設立と同時に労働保険へ加入する場合は、勤怠・賃金関係の帳簿も雇用開始時から作成しておくことが重要です。被保険者番号が不明な従業員がいる場合の対応は、所轄ハローワークへ事前に相談してください。
電子申請や郵送でも提出できる?
一部の手続きは、e-Gov電子申請を利用できます。ただし、初回は電子証明書やアカウントなどの準備が必要になる場合があります。
電子申請・郵送・窓口提出の対応可否や添付資料は、提出先ごとに確認しましょう。判断に迷う場合は、所轄窓口または社会保険労務士などの専門家へ相談することをおすすめします。

労働保険料はいくら?計算方法と負担者
労働保険料は従業員数だけでは決まらず、労働者へ支払う賃金総額×労働保険料率で計算します。会社設立後の労働保険料は、事業の種類や適用年度によって変わります。
| 保険 | 料率の決まり方 | 負担者 |
|---|---|---|
| 労災保険 | 事業の種類により異なる | 全額事業主 |
| 雇用保険 | 年度・事業区分により異なる | 事業主と被保険者 |
例えば算定対象となる賃金総額が500万円で、仮に適用する合計料率が1%なら、計算上の保険料は5万円です。実際には、労災保険料率と雇用保険料率をそれぞれ確認します。
労災保険料は会社が全額負担し、雇用保険料の被保険者負担分は原則として給与から控除します。給与計算を始める前に、雇用保険の対象者と適用料率を給与計算システムへ設定しておきましょう。
初年度の保険料はどのように納付する?
初年度は、保険関係成立日から保険年度末までに支払う賃金総額を見積もり、概算保険料を申告・納付します。翌年度の年度更新では実際の賃金総額を確定し、概算額との過不足を精算します。
- 雇用保険の対象者を確認する
- 事業区分と年度別料率を確認する
- 役員報酬など算定対象外の金額を除く
料率は年度によって変更される可能性があります。本記事の料率情報は2026年9月7日時点の公的情報を基準としているため、申告時は最新情報を確認し、判断に迷う場合は所轄窓口や税理士・社会保険労務士へご相談ください。

代表取締役や役員、同居家族の労働保険はどうなる?
代表取締役は原則として労働者に該当せず、通常の労災保険・雇用保険の対象外です。そのため、代表者だけの会社では、通常の労働保険関係は成立しません。
取締役や同居家族も加入できない?
取締役でも、労働者としての身分を併せ持つ「使用人兼務役員」は対象になり得ます。同居家族についても、親族という関係だけで決めず、他の従業員と同様の雇用実態があるかを個別に確認します。
会社設立後の労働保険で判断を誤らないよう、次の資料や実態を整理したうえで、役員・同居家族の加入可否を所轄ハローワークへ確認しましょう。
- 役員報酬と従業員としての賃金が区分されているか
- 業務上の指揮命令関係があるか
- 就業規則が適用されているか
- 労働時間や出退勤が他の従業員と同様に管理されているか
肩書だけではなく、賃金台帳、雇用契約書、出勤簿など勤務実態を示す資料に基づいて判断することが重要です。
代表者自身の業務災害にはどう備える?
代表取締役や事業主が業務中の災害に備える場合は、中小事業主等の労災保険特別加入を検討できます。一定の要件を満たす場合、原則として労働保険事務組合を通じて申請します。
| 業種 | 常時使用する労働者数 |
|---|---|
| 金融・保険・不動産・小売業 | 50人以下 |
| 卸売・サービス業 | 100人以下 |
| その他の業種 | 300人以下 |
規模要件や申請方法は労働局の案内を確認し、実際の加入可否は労働保険事務組合や所轄機関へ相談してください。
手続きが期限に遅れた場合はどうなる?
会社設立後の労働保険手続きが遅れても、そのまま放置してはいけません。未加入・未手続きの期間に応じて保険料を遡って徴収され、追徴金の対象になる可能性があります。
さらに、未手続き期間中に労災事故が発生すると、労災給付に要した費用の一部または全部を事業主から徴収される場合があります。雇用保険の資格取得が遅れた場合も、従業員の失業等給付や育児休業給付などの手続きに影響するおそれがあります。
期限超過に気づいたら、次の順番で速やかに対応しましょう。
- 初回雇用日と、労災保険・雇用保険の加入対象となる従業員を確認する
- 賃金台帳、出勤簿、雇用契約書など、雇用実態と賃金を確認できる資料をそろえる
- 所轄の労働基準監督署とハローワークへ連絡し、指示に従って成立届、資格取得届、申告書を提出し、必要な保険料を納付する
手続き漏れは、気づいた時点で労働基準監督署とハローワークへ相談し、速やかに申告することが重要です。
会社設立と労働保険を考える際の起点は、原則として設立日ではなく初めて労働者を雇用した日です。労災保険は、正社員・パート・アルバイトなどの名称を問わず、労働者を1人でも雇えば原則として適用されます。
まず成立日の翌日から10日以内に保険関係成立届と雇用保険適用事業所設置届を提出し、対象者ごとの資格取得届、50日以内の概算保険料の申告・納付へ進めます。期限の詳細は厚生労働省の案内でも確認できます。
役員、同居家族、短時間労働者などの加入判断に迷う場合は、期限前に所轄の労働基準監督署またはハローワークへ確認してください。必要に応じて、社会保険労務士や税理士などの専門家へ相談し、手続き漏れを防ぎましょう。
よくある質問
Q. 会社設立後、従業員がいなくても労働保険の手続きは必要ですか?
代表取締役だけの会社では、代表取締役は原則として労働者に当たらないため、通常の労働保険関係は成立しません。原則として、初めて労働者を雇用した日が手続きの起点になります。
Q. パートやアルバイトも労災保険と雇用保険に加入しますか?
労災保険は、雇用期間や週の労働時間にかかわらず、パートやアルバイトを含む労働者が原則として対象です。雇用保険は、週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上雇用される見込みがある人が原則対象となります。
Q. 初めて従業員を雇った後、労働保険の手続きはいつまでに必要ですか?
一般的な一元適用事業では、保険関係成立届と雇用保険適用事業所設置届を成立日の翌日から10日以内に提出します。被保険者資格取得届は資格取得月の翌月10日まで、概算保険料の申告・納付は成立日の翌日から50日以内です。
Q. 代表取締役や取締役は労働保険に加入できますか?
代表取締役は原則として通常の労災保険・雇用保険の対象外ですが、中小事業主等の労災保険特別加入を検討できます。取締役でも使用人兼務役員として労働者性が認められる場合は対象になり得るため、勤務実態を整理して所轄機関へ確認してください。
Q. 労働保険の手続きが期限に遅れた場合はどうすればよいですか?
未手続きの期間に応じて保険料を遡って徴収され、追徴金の対象になる可能性があるため、放置してはいけません。雇用契約書や賃金台帳、出勤簿などをそろえ、所轄の労働基準監督署とハローワークへ速やかに相談してください。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

