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医療法人の多くは、税理士と顧問契約を締結しています。医療法人の税務は、一般的な企業とは異なる処理が必要となるケースも多く、専門的な知識がなければ正しく対応することはできません。また、税理士と顧問契約を結ぶ場合、会計や税務の面だけでなく、さまざまな側面から経営のサポートを受けることが可能です。
しかし、税理士と顧問契約を結ぶとなると、顧問料としてどのくらいの負担が発生するのか気になるケースが多いでしょう。
そこで今回は、医療法人が税理士と顧問契約を結ぶメリットと顧問料の相場について解説します。
目次
法人や個人事業主など、納税者と契約を結び、一定期間、継続的に税務や会計処理などのサポートを行う税理士を顧問税理士と言います。
税理士は、税理士は税務・会計の専門家で、税務代理・税務書類作成・税務相談などを行います。税務代理、税務書類の作成、税務相談は税理士の独占業務です。
顧問税理士と契約すると顧問料が発生しますが、会計・税務だけでなく経営面でも幅広いサポートが受けられます。一方、特定の業務だけを税理士に依頼する形の契約方式はスポット契約と呼ばれます。例えば、申告書の作成業務だけを依頼したり、税務調査対応だけを依頼したりといったケースがスポット契約に該当します。
小規模な事業を営む法人や個人事業主であれば取引数も少ないため、顧問税理士契約を結ばずに、必要な際に対応を依頼するスポット契約を用いるケースが少なくありません。しかし、複雑な処理が求められる医療法人の場合、スポット契約だけでは十分なサポートを受けられない可能性が高くなります。そのため、大多数の医療法人は顧問税理士契約を結び、税理士に会計や税務、経営についてのサポートを依頼しているのが現状です。
医療法人が税理士と顧問契約を結んだ場合、次のような業務を依頼することが可能です。
税務書類の作成と税務代行は税理士の独占業務です。
税務署などの税務官公署に提出する申告書や申告内容の証明などに必要な書類を総称して税務書類と言います。具体的には、法人税の申告書や賃借対照表、損益計算書などの決算書類、消費税の確定申告書、源泉所得税の納付書などが税務書類に該当します。
医療法人は、毎年、法人税の申告書を作成し、法人税を納税しなければなりません。法人税の申告書を作成するためには、決算を行い、利益を確定させる必要があります。そのため、一般的には、顧問税理士には決算から申告書の作成業務までを依頼することが多くなっています。
ただし、決算や申告業務を依頼する場合、顧問料とは別途、費用が発生するケースがほとんどです。しかしながら、顧問契約を結んでいる場合、スポット契約で税理士に決算対応を依頼する場合に比べて割安な料金に設定されているケースも多く見られます。
税務書類の作成に加え、税務相談も税理士の独占業務です。
医療法人に対しては、医療法人会計基準と呼ばれるルールに則った会計処理が求められます。ただし、医療法人会計基準は2017年に導入された基準であり、医療法人会計基準の対象となるのは、以下のような特定の医療法人に限定されます。
・一般の医療法人で負債が50億円以上または収益が70億円以上
・社会医療法人で負債が20億円以上または収益が10億円以上
・社会医療法人債発行法人
この条件に該当しない医療法人については、以前から使用されている病院会計準則や中小会計要領などの基準を選択し、使用することができます。
医療法人会計基準や病院会計準則は、営利企業を対象とした企業会計基準とは異なるものです。そのため、医療法人内に経理担当者を採用した場合でも、医療法人での経理や会計の経験がなければ、これらの基準に則った処理は難しくなります。
顧問税理士契約を結べば、医療法人会計基準や病院会計準則に則した処理方法についてアドバイスを受けることが可能です。
また、社会保険診療の場合、売上単価は公定価格であり、保険組合などに請求してから入金がなされるのは2ヶ月となります。そのうえ、レセプトの返戻や減点により請求額と入金額が異なることがあり、その場合は売上の減額修正が必要です。
複雑な医療法人での会計処理は、専門家のアドバイスを仰がなければならないケースも少なくないでしょう。税理士と顧問契約を結んでいる場合、定期的なミーティングを開くケースが多く、ミーティングの場で日常的に生じた疑問や悩みについて相談することが可能です。
医療法人も税務調査の対象となる場合があります。税務調査とは正しく税金を納めているかについて細かく調べる税務署による調査です。
税理士は税務調査に立ち会い、調査官の質問に回答したり、処理方法についての根拠を述べたりするなど、納税者に代わって、対応や調整を行うことが認められています。税務調査時には帳簿書類の準備から調査時の対応など、さまざまな手間が生じますが、顧問税理士がいる場合、税理士に対応を依頼すれば、帳簿整備や調査対応を代行し、正当な主張により追徴の軽減・回避につながる可能性があります。
繰り返しになりますが、多くの医療法人は税理士と顧問契約を締結しています。それは、税理士と顧問契約を締結することでさまざまなメリットを得られるからです。
医療法人が税理士と顧問契約を結ぶことで得られる主なメリットをご紹介します。
医療法人といえども、病院やクリニックを運営していくためには経営に関する知識も必要になります。医療法人には、医療に関する専門的な知識を保有するスタッフは大勢在籍していても、経営に関する知識を持つ人はそれほど多くありません。税理士は財務状況を分析し、キャッシュフロー改善や収益性向上に向けた助言が可能です。
また、医療法人として分院展開や介護事業など、複数事業の運営を検討している場合もあるでしょう。税理士には新規事業についての相談を行うこともでき、事業計画の策定や資金調達などのサポートを受けることも可能です。
前述のように、医療法人の経理や会計処理は複雑です。専門的な知識がなければ決算や申告書の作成を行うことは難しく、調べながら作業を進める場合、膨大な労力と時間がかかります。
税理士と顧問契約を結んだ場合、決算や申告書の作成業務を依頼できるため、決算が近づいたタイミングでも本業以外の部分で負担が増えることがなく、心身のストレスを大幅に軽減することが可能です。
申告書にミスがあり、納税額が不足していた場合、税務調査の対象となったり、過少申告加算税の納税を求められたりする可能性があります。過少申告加算税の納付を求められた場合、本来よりも多くの税金を納めなければなりません。また、専門的な知識がなかったばかりに経理処理にミスがあり、大幅に納税額が少なかった場合などは、脱税疑惑が持ち上がり、患者さんや地域社会からの信頼を失う可能性もあります。
税の専門家である税理士に依頼をすれば、正確な申告書の作成が可能です。そのため、納税額が不足する恐れもなく、ミスのない申告書を提出できるようになります。
医療法人が税理士と顧問契約を結ぶメリットについてご説明してきましたが、顧問契約を結ぶ場合には必ず顧問料の支払いが必要になります。では、医療法人の場合、税理士の顧問料の相場はどのくらいになるのでしょうか。
税理士の顧問料は、売上額や訪問回数、従業員の数などによって変わってきます。一般的には、売上が大きく、訪問回数が多く、従業員の数が多いほど、顧問料は高くなります。なぜなら規模の大きい医療法人の方が、税理士の業務量も多くなるからです。
したがって、医療法人の税理士の顧問料の相場は、医療法人の規模によって大きく変わってきますが、小規模な医療法人の場合は、月額3万円程度が目安になるでしょう。
決算や申告業務を依頼する場合、顧問料とは別に税理士に報酬を支払わなければならないケースが一般的です。決算申告業務の料金も売上額などによって変わり、規模の大きい医療法人の方が費用は高くなります。決算申告に関する税理士報酬の相場は、10万円~25万円程度が目安になるでしょう。
また、税理士には、記帳代行や給与計算、年末調整などの業務も税理士に依頼することが可能です。これらのオプションサービスの料金も、規模が大きくなるほど高額になります。
医療法人が税理士と顧問契約を結ぶ際には、次のようなポイントに注意し、安心して対応を依頼できる税理士を選ぶことが大切です。
顧問税理士契約を結ぶ場合、必ず、月額の顧問料は発生します。また、記帳代行や給与計算、年末調整、決算申告業務など、依頼したい業務が増えれば増えるほど、税理士に支払わなければならない費用は高くなります。
専門的な知識を持つ税理士に対応を依頼すれば、日常的な経理業務や決算業務にかかる負担を大幅に軽減できるとともに、正確な書類を作成できます。しかし、法人内で対応できる業務があるのであれば、全ての業務を税理士に依頼する必要はありません。
医療法人の場合、会計や税務に関する業務はほぼ税理士に依頼するケースが多くなっています。しかし、税理士報酬の負担が気になるのであれば、依頼したい業務を明確にしたうえで、必要な部分を税理士に依頼するようにしましょう。
医療法人の場合、医療法人会計基準や病院会計準則などについての知識が必要です。税理士の中にもそれぞれ得意な業界があり、顧客に医療法人を多く抱える税理士もいれば、医療法人には対応した経験がない税理士もいます。
医療法人が顧問税理士として契約を締結するのであれば、当然、医療業界に詳しく、医療法人の対応実績を豊富に持つ税理士を選んだ方が賢明です。
契約締結後に医療法人に関する知識や実績が不足していた場合、思うようなサポートを受けられないケースもあります。税理士を選ぶ際には、医療業界に詳しく、医療法人の対応実績を持つ税理士を選ぶようにしましょう。
顧問税理士とは、定期的なミーティングを行います。また、処理方法で分からないところが生じた場合や分院展開を検討している場合など、税理士に相談を行うこともあるでしょう。その際、分からないところを聞きにくかったり、説明が分かりにくかったりといった税理士の場合、円滑なコミュニケーションを図れません。
税理士を選ぶ際には、質問に対して分かりやすく回答してもらえるか、問い合わせへのレスポンスが早いかなど、コミュニケーションの取りやすさもチェックすることが大切です。
商品やサービスを選ぶときには、料金を中心に考えるケースがあります。しかし、税理士選びにおいては、料金が安いほどお得になるとは言い切れません。安い顧問料を設定している税理士の場合、経験が浅いケースや対応できる業務が限られているケースなどがあります。税理士を選ぶ際には料金の安さだけを重視するのではなく、料金とサービスのバランス、対応の良さなどを考えたうえで、納得できる税理士を選ぶようにしましょう。
医療法人の多くは、顧問税理士契約を結び、記帳から給与計算、決算、申告業務までを税理士に依頼するケースがほとんどです。税理士は税務の専門家であり、正確な決算書類や申告書類を作成できるため、納税額に不足が生じ、過少申告加算税などのペナルティが科される恐れはありません。また、税理士に依頼できる業務は税理士に依頼することで、スタッフにかかる負担や人件費を抑えられる点も大きなメリットだと言えるでしょう。
税理士法人松本は、病院やクリニックなど、医療法人の対応実績も豊富です。顧問税理士をお探しの際には、ぜひお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者16万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
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