メニュー
読了目安時間:約 6分
税務調査の対象に選ばれた場合、かなりの確率で申告漏れが指摘されることが分かっています。申告漏れを指摘されれば、修正申告を行い、不足分の税金に加えてペナルティ分の加算税も納税しなければなりません。また、調査に向けて資料の準備も進めなければならず、調査当日は立ち会いが必要になるため、業務の進行にも影響を与えます。そのため、多くの人は、できるだけ税務調査は避けたいと考えるでしょう。では、税務調査の対象に選ばれないためにはどのような対策が効果的なのでしょうか。
今回は、税務調査を避けるために日頃から実施すべき対策についてご説明します。
目次
税務調査とは、税務署の調査官によって実施される調査です。税務調査の目的は、正しい納税を促進することにあります。そのため、税務調査の対象となった場合、申告内容や納税状況について何らかの疑いを抱かれていると考えるのが自然です。
税務調査がどのような流れで実施されるのかを把握していなければ、適切な対策を行うことはできません。まずは、税務調査の流れから確認していきましょう。
税務調査は、一般的に次のような流れで進められます。
それぞれの詳しい内容について順を追ってご紹介します。
税務調査は、予告なしに調査が実施されるわけではありません。税務調査を実施する際には、税務署は、原則として納税者に対し、税務調査が入る旨の通知を行う必要があります。これを税務調査の事前通知と言います。事前通知は電話で行われるケースがほとんどですが、場合によっては書類の送付によって事前通知が行われるケースもあります。
事前通知の際に伝えられるのは次の項目です。
・調査の目的
・調査の実施日時
・調査を実施する場所
・調査対象の税目
・調査対象の期間
・準備が必要な帳簿や書類
税務調査の事前通知が行われるのは、調査の数週間前です。
実は、税務調査には任意調査と強制調査の2つがあり、税務署によって実施される調査は任意調査と呼ばれるものです。任意調査とは、納税者の協力を得たうえで実施される調査であることから、調査の準備を行えるよう、事前通知が行われています。一方、強制調査は国税局査察部の査察官によって実施される調査であり、強制調査の場合は事前通知が行われることはありません。
税務調査では、調査官がオフィスや店舗などを訪れ、事業主や従業員にヒアリングをしながら帳簿や書類の確認を行います。税務調査を拒否することはできませんが、調査が行われる日程については、事業の都合などに合わせて調整することが可能です。また、税務調査には税理士の立ち会いも認められているため、税理士のスケジュールを確認したうえで、日程を決定することもできます。
日程が決まったら、事前通知の際に伝えられた必要書類や帳簿を準備します。一般的には次のような書類が必要になります。
・総勘定元帳
・仕訳帳
・決算書
・現金出納帳
・仕入帳
・買掛帳
・売掛帳
・請求書
・領収書
・契約書
・賃金台帳
・源泉徴収簿
・預金通帳 など
税務調査は、原則として過去3年分の申告状況についての調査が行われます。しかし、調査の過程で不備が発見された場合などは、過去5年に遡って調査が行われる可能性もあるため、帳簿や書類は5年分を準備しておくと安心です。
調査当日、調査官が約束した時間に約束した場所を訪れます。まずは、世間話を行いながら、事業の内容や最近の事業成績、取引状況などについて質問がなされ、帳簿や書類の確認が行われます。帳簿書類の内容について何らかの疑義が生じた場合、調査官から質問がなされ、その際には適切に回答しなければなりません。
税務調査が終了すると、おおよそ1ケ月後に調査結果が通知されます。調査結果は「申告是認」「修正申告の提示」「更正」のいずれかのパターンとなります。
申告内容に問題がなかった場合は申告是認の通知書が届き、そのまま調査は終了します。また、何らかの指摘事項が発覚し、税務署の指摘を受け入れる場合には、指摘事項を正しく修正し、申告をし直す修正申告が必要です。また、指摘事項に納得がいかない場合は、修正申告に応じる必要はありません。その場合、税務署が税法に基づき税額を変更する更正を行いますが、納税者は不服申し立てを行うことが可能です。
調査の結果、問題が指摘されなければ、何も対応する必要はありません。今後もこれまでのやり方に沿って申告を続けます。
一方、税務署からの指摘を受け入れた場合は、指摘箇所を修正した申告書を提出し、不足分の税金と加算税を納税します。また、指摘に納得いかない場合は、更正の処分通知まで待ち、不服申し立てを行います。不服申し立てとは、処分の取り消しや変更を求める行為や再調査の請求をする行為のことです。ただし、不服申し立てを行う場合でも、その間、延滞税が課される可能性があるため、納税は先に済ませておいた方がよいでしょう。納税後、不服申し立てによって処分内容を覆すことができれば、追徴課税分の税額は返還されます。しかし、処分内容が変更されない場合、その分、延滞税が課される期間が長くなってしまうのです。
税務調査に入られることがなければ、ペナルティの税金を支払う必要もなく、調査の準備に時間を取られることはありません。では、税務調査に入られないためには、日頃からどのような対策を実施すべきなのでしょうか。税務調査を防ぐための対策についてご説明します。
税務調査対策をご紹介する前に、まずは、どのような納税者を対象に税務調査が実施されるのかを確認しておく必要があります。
税務調査の対象となる確率は決して高くはありません。令和5年の場合、個人事業主が税務調査の対象に選ばれる確率はなんと1%未満の0.91%です。また、個人事業主よりは多少数値が上がるものの、法人が税務調査の対象となる確率も決して高くはありません。令和6年の場合、法人が税務調査の対象に選ばれる確率は、1.68%です。
しかし、注目すべきは税務調査の対象になる確率の低さではありません。税務調査の対象に選ばれる確率は低いものの、税務調査を受け、申告漏れなどの指摘を受けた確率は、個人事業主の場合は83.3%、法人の場合は77.7%にも上るのです。
税務調査の対象に選ばれる確率は高くないにも関わらず、選ばれた事業者は約8割の確率で誤りを指摘されています。この状況から考えて、税務署は、納税状況について何らかの疑いを抱いている事業者を中心に税務調査を実施していると考えられるでしょう。
つまり、税務調査に入られないための対策は、税務署に疑いを抱かれないような正しい申告書の作成が重要になるのです。
税務調査は、正しく納税を行っているかを調べる調査です。納税額は所得額によって変わり、所得額は売上額から経費を差し引いて算出します。したがって、税金を低く抑えようとする場合、売上を本来よりも低く申告するか、経費を本来よりも多く計上するかという手段が取られる傾向にあります。そのため、税務調査を避けるためには、売上と経費に関して、正しく申告をすることが重要な対策ポイントとなります。
売上の計上漏れがあった場合、売上の総額が低くなるため、課税所得額も小さくなります。税務調査時には、契約書や請求書などとも突き合わせながら、売上の計上漏れがないか細かなチェックを行います。また、特定の取引先からの支払いのみを別の口座に入金させるなどして、売上を隠蔽するケースや記録が残りにくい現金取引分を計上しない例も見られます。
そのため、売上の計上漏れを疑われないためには次のような対策を行うとよいでしょう。
・現金取引を減らす
・現金取引があった場合はすぐに口座に入金をする
・個人事業主の場合は、事業用口座とプライベートの口座を分ける
・複数口座を使い分ける場合も、入金用の口座、支払用の口座、納税用の口座の用途別に使い分ける。
売上の計上月についても税務調査時にはチェックされやすいポイントです。売上については、売上が確定したときに計上をしなければなりません。特に、期末に発生した売上については注意が必要です。期末に売上が発生した場合、入金がなされていない場合でも請求書を発行した月に売上を計上しなければなりません。
売上の計上時期がずれると、納税額が変わってきます。期ズレを防ぐための対策としては、正確な処理を徹底するとともに、決算月の締め日以降の売上についても期中に計上することを忘れないことが重要です。
多数の在庫を抱える業種を営む場合、棚卸資産は所得額に大きな影響を与えます。また、棚卸資産については、自社で管理を行えるため、比較的簡単に数を操作することが可能です。そのため、税務調査時には棚卸資産の管理について厳しいチェックが行われるケースが少なくありません。
棚卸資産については、しっかりと管理フローを定め、管理フローに基づいた適正な管理を行うことが重要です。また、棚卸表と在庫データの整合性についても日頃から確認をしておくようにしましょう。
税務調査では売上と同様、厳しくチェックされるのが経費の項目です。売上の規模に対して、経費の計上額が大きすぎる場合も、税務調査の対象に選ばれる理由となります。したがって、経費を正しく計上することも、税務調査を防ぐ重要な対策の一つです。
経費の場合、架空の経費を計上していないかという点、プライベートな支出を経費として計上していないかという点が厳しくチェックされる傾向にあります。
まず、請求書を偽造したり、領収書を偽造したりして、実際には支払っていない費用を経費に計上する経費の架空計上は絶対に避けなければなりません。また、経費に計上できるのは、事業のために支払った費用のみです。事業とは関係のない、プライベートな支出を経費として計上することはできません。
従業員の経費精算を行う場合は、領収書の提出を義務付けるとともに、接待交際費の場合は、領収書のほかに参加者の人数、氏名、目的を記載したメモの提出を求めるなど、対策を徹底しましょう。従業員だけでなく、役員についても同様に、プライベートの支出の経費計上を防ぐため、メモの提出を求めることが大切です。
役員報酬は、原則として損金算入が認められていません。しかし、定期同額給与や事前確定届出給与、業績連動給与としての支給であれば、損金算入が認められます。なぜなら、役員報酬の額を変更すれば、簡単に法人の所得を操作することができ、税金を不正に減らす手段として利用されてしまうからです。
税務調査では役員報酬が適切に支給されているかについても、細かなチェックがなされます。役員報酬の支給にあたっては、しっかりと定期同額給与や事前確定届出給与の要件を確認し、適切な形で支給するようにしましょう。
税理士に申告書の作成を依頼し、書面添付制度を利用すると、税務調査の対象に選ばれる可能性が低くなります。書面添付制度とは、税務のプロである税理士が申告書の正確性を確認したことを証明した書類を添付し、申告書を提出する制度です。税理士のチェックが行われることにより、精度の高い申告書を作成できるようになるため、税務調査の対象となり得る可能性が低くなります。
また、税理士と顧問契約を結んでいれば、万が一、税務調査の対象に選ばれた場合でも税理士に対応を依頼することが可能です。税務調査に選ばれないための対策としても、税務調査に選ばれた場合の対策としても税理士への対応依頼は有効な対策だと言えます。
税務調査というと、納税状況について厳しいチェックが行われるイメージがあり、たとえ正しく申告を行っていても税務調査が入るとなれば緊張するケースが多いでしょう。税務調査は、申告内容が正しくないと疑われる納税者を対象に実施される傾向にあります。したがって、税務調査を避けるためには、日頃から正しく会計処理を行い、ミスのない申告書を提出することが最大の対策となります。また、税理士が関与した申告書の場合、信頼性が高まるため、税理士への対応依頼も税務調査対策として検討してみてはいかがでしょうか。
-免責事項-
当ブログのコンテンツ・情報について、できる限り正確な情報を提供するように努めておりますが、正確性や安全性を保証するものではありません。内容は記事作成時点の法律に基づいています。当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者16万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
税理士法人松本の強み
30秒で完了かんたん税務調査リスク診断
←前の記事
税務署からのお知らせはどんな場合に届く?詐欺メールの見分け方とは
次の記事→
無申告で税務調査の対象になったらどうなる?リスクと対応方法を解説
あわせて読みたい記事
税務調査
税務調査は対応次第で結果が大きく変わります!
専門家があなたの税務調査に関する不安を一つ一つ丁寧に解決。初回有料相談は返金保証付きで、どんな小さなご相談も全国から承ります。