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税務調査で追徴課税となった場合、分割払いすることはできるのでしょうか。一括で払えない場合や、期限までに納付できない場合にはどうなるのかも知っておきたいところです。
この記事では、税務調査の追徴課税は分納可能なのか、可能な場合の手続きや払えなかった場合にどうなるのかなどについてわかりやすく解説しています。
目次
そもそも追徴課税とはどのようなものなのか、改めて確認していきましょう。
追徴課税とは、本来納付するべきであった税金と実際に納めた税金とに差額が生じている場合、不足分について徴収を受けることをさします。
一般的には、不足分の税額に加えて延滞税や過少申告加算税なども加算され、本来納付するべき税額よりも多くの追徴を受けることとなります。
追徴課税には、本来支払うべき税額と不足額のほかに、ペナルティとしての意味で追徴される「付帯税」とに大きく分けられます。付帯税は更に「延滞税」「利子税」「加算税」の3つに大きく分けることができます。それぞれの概要についても見ていきましょう。
・延滞税
税金の納付期限を過ぎていた場合に、法定の納付期限翌日から起算して納付日までの日数に応じた税率で加算される税金です。
延滞税は、納税額に税率と延滞日数を乗じて365で割ることで計算します。
2025年2月現在、2025年1月~12月の延滞税率は納付期限の翌日から2ヶ月以内は2.4%(原則は7.3%)、2ヶ月を超える場合は越えた日から8.7%(原則は14.6%)となっています。
・利子税
税金の延納をする際にかかる税金です。利子税の計算方法も延滞税と同じで、2025年2月現在、2025年1月~12月の税率は納税額の0.9%(原則は7.3%)となっています。
参照:国税庁「延滞税の割合」
https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/entaizei/keisan/entai_wariai.htm
・加算税
加算税には「無申告加算税」「過少申告加算税」「不納付加算税」「重加算税」の4種類があります。
「無申告加算税」は、申告するべき時期に税金の申告を行わなかった場合や、税務調査で指摘を受けた後に申告する場合にかかる税金です。税務調査前に自主的に申告した場合は5%、税務調査後に申告した場合は納税額に15~20%の税率を加算して納付することとなります。
「過少申告加算税」は、本来よりも少ない税額を納付した場合や、税金の還付を本来よりも多く受けた場合に加算される税金です。税務調査前に自主的に修正申告した場合は加算されず、税務調査後に修正申告する場合は納税額に10%の税率を加算した額か、50万円のいずれか多い額を、多い額を超えた部分には15%を加算した額を納付することとなります。
「不納付加算税」は源泉所得税を期限までに納付しなかった場合に加算される税金です。税務調査前に自主的に修正した場合は加算されず、税務調査後に修正申告する場合は納税額に5%の税率を加算した額か、50万円のいずれか多い額を、多い額を超えた部分には10%を加算した額を納付することとなります。
「重加算税」は、過少申告や無申告があった場合に、悪質な隠ぺいや書類の改ざん、偽装などがあったとみなされた場合に加算される税金です。
過少申告加算税・不納付加算税に代えて納付する場合は35%、無申告加算税に代えて納付する場合は40%の税率が課せられることとなります。
(※すべて2025年2月現在)
参照:財務省「加算税の概要」
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/tins/n04_3.pdf
税務調査の追徴課税は分割払いできるのかについて解説します。
追徴課税については、原則として一括納付することとなっています。しかし、税務調査では最低でも3年、最大で7年まで遡って追徴課税の対象とできるため、何年分もの本来払うべき税額に加え、延滞税や加算税の徴収も受けることとなります。税務調査で悪質とみなされた場合、本来納付するべき税額の何倍もの追徴課税を受ける可能性もあるため、一度に納付することが難しいケースも少なくありません。
追徴課税についてどうしても一括での納付が難しい場合には、救済措置として「納税猶予制度」を利用することができます。
ただし、納税猶予制度を利用するためには一定の要件を満たす必要があります。
納税猶予制度とは、文字通り納税に猶予をもらえる制度のことです。納税猶予制度には2つの種類があります。それぞれの概要は以下の通りです。
換価の猶予とは、申請することで財産の差し押さえなどを猶予してもらう制度のことです。
国税庁のホームページでは、換価の猶予を受けるために必要な要件として、以下のように記載しています。
引用:国税庁「換価の猶予の要件と効果」
https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/annai/index.htm#a03
上記の要件を満たしている場合、納付すべき税金の納付期限から6ヶ月以内に申請することで
・1年間の納付猶予
・延滞税の免除
・財産の換価(売却)や差し押さえの猶予
などを受けることができます。
納税の猶予は、申請することで追徴課税を含む納税の猶予をもらえる制度です。
税金の納付期限までに自然災害や火災などで大きな損失を受けた場合に納税の猶予を受けることができますが、その他個別の事情によっても猶予を受けることが可能です。
国税庁のホームページでは、個別の事情により納税の猶予を受けるために必要な要件として、以下のように記載しています。
(注)上記5については、修正申告などの納期限までに申請する必要があります。
引用:国税庁「納税の猶予の要件と効果」
上記の理由によって、一時的に税金の納付が困難であると認められる場合には、相応の時期に申請書を提出することで
・延滞税の減免
納税の猶予においては、原則として担保の提供が必要となります。納付猶予は、換価の猶予と納税の猶予のいずれの場合も、状況に応じて更に1年間の猶予が受けられる場合もあります。
納税猶予制度は、要件に該当する場合に所轄の税務署へ申請書を提出し、税務署長の許可を得れば猶予を受けることが可能です。
国税庁のホームページから申請書フォーマットがダウンロードできるほか、e-taxによる電子申請も可能となっています。
追徴課税の分割払いを希望する場合は、申請時に提出する財産収支状況書や収支明細書などに分納計画を記載し、申請書にも転記して申請します。
参照:国税庁「猶予の申請方法」
申請が許可されると、税務署から通知が送付され、猶予を受けることができるようになります。
事業税や住民税、国民健康保険料など、国税以外の税金については税務署が管轄していないため、減免や分納の可否については各地方自治体へ相談することとなります。
国税の納税猶予申請が許可されてから相談した方がスムーズですが、差し押さえや換価についての細かなルールは都道府県によって異なる場合もあるため、早めに相談、申請を行うようにすることが大切です。
追徴課税を払わないとどうなるのかについても解説します。
追徴課税を期限までに納付しなかった場合、更に延滞税がかかることとなります。次に説明する通り、追徴課税は自己破産しても帳消しにすることができないため、いつまでも納付しないでいると延滞税が加算され続けるうえ、ずっと債務がついてまわることとなってしまうのです。
追徴課税を含む税金は非免責債務となっており、自己破産しても免責にすることはできません。そのため、追徴課税を納付しなかった場合、自己破産の有無に関わらず督促後に滞納処分執行となり、財産の差し押さえや売却が行われることとなってしまいます。
ローン審査で納税証明書の提出が必要なケースでは、納税していないと証明書が入手できないため、ローン審査を通すことが困難となります。
また、現在銀行から融資を受けている場合、税務調査で銀行へ反面調査が入る可能性などもあり、返済計画や起業、事業の信用に影響が及ぶ場合もあります。
せっかく税務署へ申請して納税猶予の許可が出ていても、ほかに納付期限のある税金を滞納した場合、納税猶予の取り消しにあう場合もあるため注意が必要です。猶予申請時に提出した分納計画が守れない場合も同様に、猶予の取り消しとなる可能性があります。
多額の追徴課税が納付できずに頭を抱えないための対処法について解説します。
そもそも追徴課税を受けることがなければ、分納や納付猶予の申請をしなくても済みます。本来納付するべき税金だけを期限内に納付すればよいため、期限内に適正な申告・納税を行うことが重要となります。
追徴課税を含む租税債務は原則として払わないで済む方法はなく、債務から逃れることはできません。納税が困難だと認められる要件に該当し、期限内に所轄の機関へ猶予申請を行って許可を得ることで、納付猶予や分割払いに応じてもらうことが可能となります。
ただし、納付猶予の申請は申請書を提出しても許可が下りないケースもあります。不安な場合は追徴課税などの対応に詳しい税理士などの専門家へ相談し、分納計画や申請書類作成についてアドバイスやサポートを受けることをおすすめします。
税務調査では、適正な申告内容である場合には毅然とした対応をすることも重要です。税法上の観点から交渉を行えば、税務署から修正申告の必要がないと認めてもらうこともできます。
税法の素人である経営者や事業者が税務調査に対応しても、しっかりと交渉するのは難しいものです。可能であれば税務調査対応に強い税理士などへ同席を依頼し、追徴課税を最低限に抑える対策をとるようにしましょう。
「税務調査の時に毅然と主張したり、交渉したりできる自信がない」「税務調査や追徴課税が怖くて眠れない」といった不安を抱えている場合は、1人で悩まず一度税理士法人松本へご相談ください。
税理士法人松本には、国税OBや元税務署長の税理士が10名以上在籍しており、税務調査に全力で対応しています。
税務署から調査がある旨の連絡が入ってからの相談や、追徴課税に強い不安があるといった内容も、気にせずお気軽にご相談ください。
ご連絡は全国どこでも、ご相談予約はフリーダイヤルまたは専用フォーム、LINEなどからお気軽にお問い合わせいただけます。
税務調査の追徴課税は、本来納付するべき税金が少なかった場合の差額とは別に、延滞税や各種加算税などの付帯税がかかることとなります。追徴課税に限らず、税金は非免責債務となるため、自己破産しても滞納すれば差し押さえの対象となってしまいます。税務調査では最大7年前まで遡って追徴を受ける可能性があるため、納税額が多額となるケースも少なくありません。納税猶予制度の申請や税務調査へ税理士に同席してもらうなどの対策もあります。期限を守って適正な申告を行うことはもちろんですが、納付が難しい場合も早めの対策をとることが重要です。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
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