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固定資産として保有している機械や設備などを処分するケースもあるでしょう。例えば、取得価額10万円以上のパソコンも使わなくなったからといって、単に廃棄すればよいとは限りません。しかし、使わない固定資産がある場合、会計上でも「除却」と呼ばれる処理が必要になります。固定資産の除却を適切に行わなかった場合、税負担が大きくなる可能性があるほか、税務調査で指摘を受けるリスクも生じます。したがって、固定資産は正しく管理を行い、不用になった場合には適切に除却処理を行うことが重要です。
今回は、固定資産の除却の概要や処理方法、税務調査で指摘を受けやすいポイントなどについて解説します。
目次
固定資産の除却とは、事業での使用を中止した固定資産を帳簿から取り除く手続きのことです。
固定資産は法定耐用年数に応じて減価償却を行います。耐用年数を超えると減価償却が終了するため、資産としての価値が失われます。しかし、除却を行わなかった場合は帳簿上には資産が残るため、残存価額と呼ばれる価値が残ることで固定資産税の負担が発生する場合があります。
また、法定耐用年数が残っている固定資産でも、故障などの理由によって、使用を中止するケースもあるでしょう。その場合も除却をしなければ固定資産税の課税対象となり、納税の負担が発生します。
つまり、除却は、資産を帳簿から取り除き、帳簿上と現物の状況を合わせ、不用な税負担を減らすために必要な処理だといえます。
除却とは、帳簿上から固定資産を取り除く、会計上の手続きのことです。一方、廃棄とは不要となったものを物理的に処分する行為をいいます。
故障などの理由で使用しない固定資産については倉庫などに保管し、廃棄をしていない状態でも、除却をすることが可能です。また、除却をしないまま廃棄をした場合、現物がないにもかかわらず帳簿上には資産として残り続けるため、廃棄をしたタイミングで除却も行わなければなりません。
税務調査が行われた際、固定資産の除却について指摘を受けるケースが少なくありません。なぜ、税務調査時に調査官は除却に注目するのでしょうか。
除却をしない限り、帳簿上は固定資産を保有し続けることになるため、固定資産税の納税義務が生じます。裏を返せば、除却をすれば固定資産の課税対象から外れるため、税金の負担を減らすことが可能です。
また、法定耐用年数が残る資産を除却した場合、取得価額から減価償却累計額を差し引いた帳簿価額については、除却損として経費に計上できます。
除却をすれば、帳簿上から固定資産が取り除かれます。そのため、除却した資産については固定資産が課されません。さらに、法定耐用年数が残る固定資産を除却した場合、未償却部分については経費に計上できるため、課税所得額を圧縮する効果が得られます。課税所得額が低くなれば、所得に対して課される法人税などの税金の負担も低くなるのです。
実際には使用している固定資産を使用していないかのように装い、不正に除却すると固定資産税や法人税の負担を軽減できます。そのため、中には除却損を作り出すなどして不正な会計処理を行うケースがみられるのです。
税務調査では、固定資産の除却処理状況について詳しいチェックが行われます。会計上では除却されていても、固定資産が廃棄されておらず、使用していないことの証明ができない場合、追徴課税がなされる恐れがあります。
また、たとえ不正に除却を行っていない場合であっても、固定資産が的確に管理されておらず、除却されていない固定資産などが発覚した場合、管理体制の甘さを指摘されるかもしれません。資産の管理が徹底していない事業主の場合、会計処理についても計上漏れなどのミスが多いのではと疑われるきっかけともなるでしょう。
意図的に税金逃れをしているわけではなくても、いい加減な会計処理をすることで、結果として納税が不足している可能性があると認識されると、税務調査終了までに時間がかかる可能性があります。
有姿除却とは、廃棄や解体などの物理的な処理を行っていない固定資産についても帳簿上から取り除く処理のことです。帳簿価額を損失として計上できるため、節税効果を得られます。
有姿除却について、国税庁では次のように示しています。
「次に掲げるような固定資産については、たとえ当該資産につき解体、破砕、廃棄等をしていない場合であっても、当該資産の帳簿価額からその処分見込価額を控除した金額を除却損として損金の額に算入することができるものとする。(昭55年直法2-8「二十五」により追加)
(1) その使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められる固定資産
(2) 特定の製品の生産のために専用されていた金型等で、当該製品の生産を中止したことにより将来使用される可能性のほとんどないことがその後の状況等からみて明らかなもの」
有姿除却は税務調査で厳しくチェックされるポイントです。通常、固定資産の廃棄をする際には、廃棄コストが発生しますが、廃棄をせずに使用していない固定資産を除却できる有姿除却であれば、廃棄コストを負担する必要がありません。廃棄コストが発生しない点が有姿除却を行うメリットです。
ただ、有姿除却を行った固定資産の場合、廃棄も解体も行われず、現物として保有されているため、実際には使用している、または将来的に使用する可能性を捨てきれません。そのため、有姿除却をしている固定資産がある場合、税務調査では厳しいチェックが行われるケースが多いのです。
無形固定資産であるソフトウェアも、業務で使用しなくなった場合には除却処理をしなければなりません。自社で利用するために購入したソフトウェアの税務上の耐用年数は5年です。しかし、耐用年数が残る状態でクラウド型のソフトウェアの利用に切り替えるケースなども出てくるでしょう。また、ソフトウェアを使用していた業務が廃止され、ソフトウェアの活用機会がなくなるケースもあるかもしれません。
しかし、ソフトウェアは無形固定資産であり、有形固定資産のように現物がありません。そのため、耐用年数が残るソフトウェアを今後一切使用しないことを証明するのは難しい場合があります。そのため、耐用年数が残るソフトウェアを除却して除却損を計上し、不正に税負担を逃れる事例も見られます。 務調査時には、ソフトウェアの除却も厳しいチェックの対象になると考えておいた方がよいでしょう。
固定資産を除却し、除却損が発生した場合、除却損は特別損失に計上されます。そのため、特別損失は調査官の目に留まりやすい点も、税務調査時に注目されやすい理由になっていると考えられます。
ただし、除却処理が適正であれば、税務調査で指摘されることは基本的にありません。ここでは、除却に関する税務調査対策を3つご紹介します。
固定資産が除却されている場合、固定資産が廃棄や解体されたのか、またそれがいつであったのかをチェックされるケースが多くなります。法人などでは、決算月に固定資産の除却を判断することが多くみられます。決算月内に廃棄などの処理がなされていたのであれば、当期内に除却処理をできますが、実際に廃棄をした日が翌期になった場合は、除却も翌期に行わなければなりません。そのため、税務調査では除却が行われたタイミングと廃棄等が行われたタイミングにずれがないか、確認されるケースが多いのです。
固定資産を除却した日を明確にするためには、産廃処理業者が交付する廃棄物処理業者の産業廃棄物管理票(マニフェスト)や引き取り業者が発行する契約書や計量証明書など証票を準備しておく必要があるでしょう。
また、業者を介さずに廃棄を行う場合などは、廃棄した日と廃棄した固定資産、廃棄時の画像などを記録しておくと税務調査時に役立ちます。
有姿除却をした場合、現物の固定資産はそのまま残っているため、将来に渡り、本当に事業で利用する可能性がないのかを証明する書類などを示す必要があります。具体的には次のような書類を残すなどし、税務調査時にすぐに提示できるようにしておけば、処理の正当性が認められやすくなるでしょう。
・該当固定資産を使用しないことを決定した理由を明記した稟議書や、取締役会議の議事録等
・固定資産を使用して製作する関連製品の生産が中止になったことを証明する書類
・除却した設備を使って製品が製造されていないことを証明する生産管理日報などの書類
・他製品の製造には転用できないことを示す社内文書
また、修理が難しいなどの理由で今後の稼働ができない設備などは、コンセントを切断するなどして、物理的に使用できない状況であることを証明する方法などもあります。
無形固定資産であるソフトウェアを除却した場合、廃棄ができないため、事業で使用しないことを客観的に証明することが難しくなります。その場合、新たなソフトウェアの購入を示す書類やクラウド型のソフトウェアを導入したことを示す契約書などを準備しておくとよいでしょう。また、業務内容の変更に伴い、不用となったソフトウェアがある場合などは、業務内容の変更を証明する稟議書などが役立ちます。
固定資産の償却方法には「直接法」と「間接法」の2つがあり、どちらの償却方法を選択するかによって除却の仕訳も変わってきます。
直接法とは、固定資産の勘定科目から減価償却費を直接控除していく償却方法です。したがって、直接法を採用して記帳を行っている場合、帳簿にはその時点での価値が示されることとなります。直接法はシンプルな仕訳となる点がメリットですが、取得価額と減価償却累計額を把握するには帳簿の記録を遡らなければならないというデメリットがあります。
一方、間接法とは減価償却費を減価償却累計額という勘定科目を別に設け、帳簿には固定資産を取得した最初の価額のまま残し、除却のタイミングで減価償却累計額と一緒に処理を行う方法です。間接法のメリットは取得価額を把握しやすい点ですが、帳簿価額は把握しにくいといったデメリットがあります。
一般的なケースにおいて、次の条件で固定資産の除却を行う場合の仕訳の例を比較してみましょう。
・取得価額200万円の固定資産
・償却済み金額は50万円
・期首から除却までの減価償却費は20万円
直接法では固定資産勘定から減価償却費を直接差し引くため、貸方金額には減価償却累計額を差し引いた150万円を記載します。また、貸方には減価償却費として、期首から除却までの減価償却費用を記載します。固定資産除却損の額は、固定資産の帳簿価額から原価償却済みの20万円と減価償却累計額の50万円、合わせて70万円を差し引いた金額である130万円です。
間接法を用いる場合、借方には減価償却累計額、減価償却費、固定資産除却損を記載します。固定資産除却損には、直接法と同じく、固定資産の帳簿価額から減価償却費と減価償却累計額を差し引いた額を記載します。また、貸方には固定資産とし、固定資産の取得価額を記載します。まとめ固定資産の除却とは、使用しなくなった固定資産を帳簿から取り除く処理のことです。固定資産の除却を適切に行わなかった場合、実態に則った固定資産の管理ができなくなるほか、税負担が大きくなる可能性があります。ただし、固定資産の除却には、節税効果もあるため、税務調査時には固定資産の除却の処理方法について厳しい調査が行われる可能性がある点に注意しなければなりません。税務調査時に処理方法のミスや不正を指摘された場合、追徴課税が課され、本来よりも多くの税金を納税するリスクが生じます。固定資産の除却は適切に処理するとともに、資産を廃棄した証拠や今後使用しない旨を証明する書類などをいつでも提示できるよう準備しておくことが大切です。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者20万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
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