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納税の義務がある法人や個人は、期限内に申告を済ませ、税金を納めなければなりません。自動車税や固定資産税などは、納付書が送付されてくるため、税額を自分で計算する必要はありません。しかし、法人税や所得税、消費税、相続税、贈与税などは、納税者が自ら税額を計算して申告書を提出して、納税をします。
納税者自身が税額を算出する仕組みのため、中には申告内容に不備が生じ、「申告漏れ」の事態が発生するケースがあるのです。申告漏れは、納税額が不足している状態だと言い換えることもできます。したがって、税務調査時に申告漏れが発生した場合、ペナルティが科される恐れがあります。では、申告漏れが発覚した場合、どのようなペナルティが科されるのでしょうか。
今回は、申告漏れで科される可能性があるペナルティについて解説します。
目次
納税額が不足している事態を示す言葉には、申告漏れのほか、無申告、脱税などといった言葉もあります。では、申告漏れとこれらのほかの言葉にはどのような違いがあるのでしょうか。まずは申告漏れが意味するところから確認していきましょう。
申告漏れは、一般的に単純な計算ミスや集計時の漏れ、税法の解釈に対する誤解などによって、本来よりも税額を低く申告してしまう事態を指します。所得を隠して、納税の負担を軽減するような意図的な行為ではなく、過失から生じる申告不足の状態が申告漏れです。
申告漏れは意図的でないにしろ、納税額は不足している状態であるため、申告漏れが発覚した場合には、ペナルティが科されます。
税金には納付期限があります。個人事業主の場合は、原則として2月16日~3月15日までが確定申告期間であり、所得税の納税期限です。法人の場合は、事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内に法人税の申告と納税を終わらせる義務があります。
また、申告期限があるのは所得税や法人税だけではありません。相続税は相続を受けた日の翌日から10ヶ月以内、贈与税は贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までが申告と納税の期限です。
この期限までに申告や納税をしていない状態を無申告といいます。無申告の場合も、税務調査で指摘を受ければ当然、ペナルティが科されます。
脱税とは意図的に売上を隠蔽したり、領収書を偽造して架空の経費を計上するなどの不正行為によって、納税額を低く装う悪質な行為のことです。脱税には、申告漏れと同様に申告と納税は行っているものの所得額を低く偽るパターンと、そもそも所得を隠して申告や納税をしていないパターンがあります。
申告漏れや無申告状態に対して課されるペナルティは、行政罰ですが、意図的に納税の義務を免れようとする行為である脱税の場合、行政罰以外にも刑事罰が科される場合があります。
税務調査で申告漏れを指摘された場合に科されるペナルティは、過少申告加算税と延滞税の2つです。
過少申告加算税は、納税額が少なかった場合に科されるペナルティです。過少申告加算税は、原則として不足分の税額の10%です。しかし、当初の申告額または50万円のいずれか多い金額を超える部分については、15%の税率が課されます。
ただし、税務調査の事前通知を受けてから税務調査が実施される前までに、自主的に修正申告を行った場合、過少申告加算税の税率はそれぞれ5%と10%に軽減される措置が用意されています。また、税務調査の事前通知を受けたわけではなく、納税者が自ら申告漏れに気が付き、修正申告を行って不足分の税額を納めた場合は、ペナルティは課されません。
延滞税は、納税が遅れたことに対して科されるペナルティです。申告漏れの状態は、申告期限までに納税が完了していない状態とみなされます。そのため、申告漏れが指摘された際には、過少申告加算税に加え、延滞税の納付も求められることとなるのです。
延滞税は、納付が遅れたことに利息としての意味合いをもつペナルティであり、税率は市中の金利が反映されるため、毎年変わってきます。また、納期限の翌日から2ヶ月以内とそれ以降で税率が大きく変わってくる点も延滞税の特徴です。
現在、延滞税の税率は次のようになっています。
<納期限の翌日から2ヶ月を経過する日まで>
・令和8年1月1日~令和8年12月31日までの期間:年2.8%
・令和4年1月1日~令和7年12月31日までの期間:年2.4%
・令和3年1月1日~令和3年12月31日までの期間:年2.5%
<納期限の翌日から2ヶ月を経過した日以降>
・令和8年1月1日~令和8年12月31日までの期間:年9.1%
・令和4年1月1日~令和7年12月31日までの期間:年8.7%
・令和3年1月1日~令和3年12月31日までの期間:年8.8%
延滞税は、納期限から納税が完了した日まで日割りで計算がなされるため、納税が遅れれば遅れるほど、延滞税の負担は大きくなります。
しかしながら、期限内に申告をしている納税者の場合は延滞税の計算期間に関する特例が用意されています。そのため、意図的ではなく、うっかり申告額が少なくなってしまった申告漏れの状態であれば、特例の適用により延滞税の計算期間が1年を超えることはありません。
国税庁では申告漏れについて注意喚起をしている
国税庁のWebサイトにある令和7年分の確定申告特集のページでは「こんな収入の申告漏れにご注意」として、納税者の申告漏れに対して注意喚起を行っています。国税庁が注意を促している事例をいくつかご紹介します。
副業解禁の動きに伴い、副業としてセミナー講師を務めたり、記事を執筆して収入を得ている人も増加しています。会社員がこれらの仕事をする場合、雑所得として確定申告をしなければなりません。
インターネットの普及に伴い、昨今ではフリマアプリやネットオークションに出品して差額を稼ぐせどりやアフィリエイト、動画配信、有料メルマガの配信などによって収入を得ている人がいます。そのほか、自宅の駐車場などの時間貸し、民泊、カーシェアリングなどで収入を得ている人も増加中です。
これらの活動で得た所得は、事業所得または雑所得として確定申告をしなければなりません。
太陽光発電設備を設置している人で、余剰電力を売却している場合には、確定申告をする必要があります。余剰電力の販売で得た所得は、雑所得に該当します。
暗号資産の普及に伴い、暗号資産による所得を得ている人も増加中です。暗号資産の売却によって利益を得た場合、原則として雑所得としての確定申告が必要となります。また、交換によって別の暗号資産を購入したとき、決済によって商品の購入に利用したとき、マイニングで得た通貨を受け取ったときなども、確定申告が必要です。
株式投資をしている場合、一般口座や源泉徴収なしの特定口座で譲渡益や配当が出た場合、確定申告をしなければなりません。また、株主優待の受領も確定申告の対象となる点に注意しなければなりません。
FXによる収入は、先物取引に係る雑所得に該当し、確定申告が必要です。国内のFX収入については、申告分離課税の対象となりますが、海外FXについては給与所得などと合算して課税額を算出する総合課税の雑所得に分類されます。国内FXか海外FXかによって課税方式が異なり、課される税率も変わってくる点に注意が必要です。
国税庁:令和7年分確定申告特集「こんな収入の申告漏れにご注意」
税務調査時に申告漏れを指摘された場合に科されるペナルティは「過少申告加算税」と
「延滞税」です。しかし、正しく申告をしていない場合、税務調査で科される恐れがあるペナルティには次のようなものがあります。
無申告加算税とは、期限内に申告をしていなかった場合に科されるペナルティです。無申告加算税の税率は、納税額によって変わってきます。
税務調査によって無申告状態が発覚した場合の税率は、税額が50万円以下の部分については15%、50万円超300万円以下の部分については20%、300万円超の部分については30%です。
また、税務調査の事前通知を受けてから自主的に期限後申告を行った場合は、税率が5%ずつ軽減され、50万円以下の部分は10%、50万円超300万円以下の部分は15%、300万円超の部分は25%となります。事前通知を受けずに、自主的に期限後申告をした場合の税率はさらに軽い5%です。
意図せず、申告内容が不足しており、申告漏れが発生した場合に科されるペナルティは過少申告加算税です。しかし、税務調査を実施したところ、うっかり申告が漏れてしまったのではなく、意図的に納税額を操作していたと認められた場合は、過少申告加算税ではなく、より税率の重い重加算税が課されます。過少申告加算税に代えて重加算税が課される場合の税率は、35%です。
同じ売上の計上漏れでも、知識不足などにより、うっかり期末の売上の一部を翌期に回してしまった場合などは、申告漏れとみなされ、重いペナルティが科されることはありません。しかし、税務調査を進めたところ、意図的に期末の売上を翌期にずらして計上しており、帳簿の書き換えなどがなされていた形跡が発覚すれば、悪質な行為としてみなされます。その場合に科されるペナルティは、過少申告加算税ではなく、重加算税なのです。
税務調査によって、仮装・隠蔽行為が発覚し、悪質な行為によって多額の脱税が行われていたと判断された場合は、刑事事件として裁判にかけられることとなります。裁判によって税法違反の罪が確定した場合、刑事罰として10年以下の禁固刑または1,000万円以下の罰金、もしくはその両方が科される可能性があります。
刑事罰のペナルティが科されると、社会的な信頼も揺らぐ可能性があり、今後の事業にも大きな影響を与えることとなるでしょう。
税務調査時に帳簿や書類が正しく作成または保管されていない場合、あるいは提示を拒否した場合などは、青色申告の承認が取り消される恐れがあります。また、重加算税が課される状況も正しく帳簿を管理していない状況にあるため、青色申告の承認が取り消される恐れが高いでしょう。
青色申告の承認が取り消される場合、最大65万円の青色申告特別控除を適用させることができません。また、青色申告者は個人事業主の場合は最大3年間、法人の場合は最大10年間、損益通算や繰越控除が認められていますが、青色申告の承認取り消しとなるとこの特例も適用されません。そのほか、少額減価償却資産の特例も受けられないなどさまざまなデメリットが生じます。
青色申告の承認が取り消された場合、承認の取り消し通知を受領してから1年間は再申請を行うことはできません。青色申告が適用されるのは、申請の翌期となるため、最短でも青色申告ができるようになるのは翌々期となります。この間、赤字が発生した場合は、翌期以降に繰り越すことができないため、事業を営む上で大きな影響が生じる恐れもあるでしょう。
申告漏れが発覚した場合には、ペナルティが課されます。また、税務調査時に申告漏れではなく、意図的な脱税行為に当たるとみなされれば、重加算税が課される可能性も0ではありません。そのため、不用な疑いを防ぎ、申告漏れによるペナルティを防ぐためには、日頃からこまめに記帳をすることが大切です。忙しいからといって作業を後回しにすると、申告漏れが起きやすくなります。また、税務に関する知識が十分でない場合などは税理士への相談も検討することをおすすめします。
申告漏れとは、意図して申告額を少なく抑えたのではなく、計算ミスや税法上の解釈の誤りなどによって誤った処理をし、結果として納税額が低くなっている状態を指す言葉です。意図的に所得を低く見せかけたわけではないものの、納税額が不足している状況にあるため、税務調査で申告漏れが発覚した場合は、ペナルティとして過少申告加算税と延滞税の納付が求められます。また、税務調査時に意図的に納税額を低く見せかけたとみなされれば、さらに税率の重い重加算税が課される恐れもあります。
申告漏れの発生を抑えるためには、日々、こまめに記帳を行うことが大切です。また、こまめな記帳はペナルティのリスクを抑えるだけでなく、事業利益やキャッシュフローの的確な把握にもつながります。記帳方法等に不安がある場合は、税理士への相談も検討してみましょう。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者20万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
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