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海外送金に関する税務調査が増加中。なぜ海外送金が税務署にバレる?

読了目安時間:約 6分

インターネットの発達、社会全体のグローバル化に伴い、海外送金に関する税務調査が増加しています。グローバル展開を進める企業や海外投資を行う個人投資家の増加と比例するように、海外と日本との税制の違いに目を付け、税負担を回避する動きが強まっているのです。このような背景をもとに、海外送金に関する税務署のチェックも厳しくなっており、海外送金を巡る税務調査も増加しています。

では、海外送金に関する税務調査は実際、どのくらい進められているのでしょうか。今回は、国税庁が令和7年12月に公開した「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」、

「令和6事務年度法人税等の調査実績の概要」をもとにしながら、海外送金や海外取引に関わる税務調査の実態について解説します。

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海外送金とは

海外送金とは、文字通り、日本から海外の国に資金を移動することです。反対に海外から日本へ資金を送付するケースもあるでしょう。では、どのようなケースにおいて海外送金が必要になるのでしょうか。日本から海外への送金が発生するケースと海外から日本へ送金するケースに分けてご紹介します。

日本から海外への送金が必要となるケース

海外送金が必要なケースとしては次のようなシーンが想定できます。

  • 授業料など留学費用の送金
  • 海外に住む家族への生活費の送金
  • 海外通販の支払い
  • 海外不動産の取得費用の支払い
  • 海外の株式や債券の購入費用の支払い
  • 商品の輸入や購入に関する取引の支払い
  • 海外支店や子会社の運営費用の供給
  • 現地スタッフへの給与の支払い
  • 海外企業への報酬の支払い
  • 海外口座への資金の移動

海外から日本への送金が必要となるケース

海外から日本へ送金が必要となるケースもあります。具体的には次のようなケースが考えられます。

  • 海外赴任者による日本の家族への生活費の送金
  • 海外赴任者が帰任後に国内口座に資金を移動させるケース
  • 海外投資の収益や償還金の受け取り
  • 海外取引先からの代金の回収
  • 海外子会社からの送金
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海外送金や海外取引に関する税務調査の実情

国税庁では毎年、個人事業主や法人に対して実施した税務調査の結果をまとめ、公表しています。令和7年12月に公表されている「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」、

「令和6事務年度法人税等の調査実績の概要」が現状の最新のデータです。

国税庁や税務署の行政機関である事務年度

事務年度という表現には馴染みがないかもしれませんが、国税庁や税務署では、税務行政を行う区切りを毎年7月1日~6月30日までとしています。そのため、税務調査の結果を公表する資料においても「事務年度」という言葉が使用されています。

本記事でご紹介する令和6事務年度の情報は、令和6年7月1日~令和7年6月30日までの調査結果を示したものです。

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海外取引をしている個人に対する税務調査の実施状況

国税庁では、富裕層に対する税務調査を積極的に実施していることを公表しています。中でも海外投資を行っている富裕層に対しては、より厳しい調査が実施されているようです。

海外投資等を行っている個人に対する税務調査の状況

国税庁の発表によると、令和6事務年度に実施された海外投資等を行っている個人投資家に対する税務調査実施数は2,666件です。このうち2,360件に申告漏れなどの非違が発生しています。つまり、海外投資等をしている個人の88.5%が税務調査によって、納税額の不足を指摘されている状況です。

1件あたりの申告漏れ所得金額は3,459万円、追徴税額は866万円にも達しています。所得税に関する税務調査全体の1件あたりの追徴税額は299万円であるのに対し、海外投資等をしている個人の追徴税額は約2.9倍にも上っているのです。

税務調査の対象となった海外取引をしている個人の取引区分

国税庁では、税務調査の対象となった2,666件の取引区分の内訳も公表しています。「その他」が43.5%と最も多くなっていますが、次に多いのが「海外投資」の38.9%、そして「輸出入」が10.4%、「役務提供」が7.2%となっています。

「海外投資」に含まれるのは、海外の不動産や証券等に対する投資、預貯金等の海外での蓄財などです。また「輸出入」とは、事業に係る売上や原価に係る取引で、海外の輸出入業者との契約による取引のこと、「役務提供」は工事の請負やプログラム設計など、海外で行う労力や技術などの第三者に対するサービスの提供としています。「その他」には、海外で支払いを受ける給与など、海外投資、輸出入、役務提供などに該当しない取引が含まれます。

このうち、1件あたりの申告漏れ所得金額が最も高かったのは「海外投資」の4,567万円です。また「役務提供」も3,209万円、「その他」も3,124万円と続いています。

参照元:国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況

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海外取引法人等に対する税務調査の実施状況

国税庁では、法人に対する税務調査においても、消費税の還付を申告した法人、海外取引法人、無申告法人への対応を重点課題として位置づけ、厳正な調査を実施していると公表しています。では、令和6事務年度において海外取引法人等に対する税務調査は、どのような結果となったのでしょうか。

海外取引法人に係る申告漏れ所得は2,096億円

令和6事務年度において海外取引を行っている法人に対して実施された税務調査の件数は10,195件です。そのうち、海外取引等に係る非違があった件数は2,375件、不正な計算が見られた件数は304件となっています。

海外投資等を行っている個人に対する税務調査の結果と比較すると、非違割合は約23.3%とそれほど高い割合ではないように感じるかもしれません。しかし、海外取引等に係る申告漏れ所得金額は2,096億円、うち不正所得金額は214億円と、申告漏れの額は高額となっています。

外国子会社合算税制・移転価格税制に係る税務調査の実施状況

外国子会社合算税制とはタックスヘイブン対策税制とも呼ばれる制度で、日本企業が日本よりも税率の低い国や地域に設立した子会社を利用して税負担を不正に逃れる行為を防ぐものです。税務調査によって外国子会社合算税制に係る非違があった件数は、115件、申告漏れ所得金額は527億円となっています。

また、海外関連会社との取引価格を操作し、意図的に利益を海外に移転して日本における税負担を防ぐ制度を移転価格税制といいます。移転価格税制に係る税務調査において、非違があった件数は107件、申告漏れ所得金額は399億円です。

参照元:国税庁「令和6事務年度法人税等の調査実績の概要」

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海外送金に関して税務署が把握している情報とは

海外投資等を行っている個人に対する税務調査では、調査対象者の88.5%という非常に高い割合において、申告した税額の不足が指摘されています。ランダムに海外投資等を行っている個人を選び、税務調査を実施した結果にしては、非違割合が高すぎるように感じた方もいるのではないでしょうか。

実際、税務調査は何の情報もない状態で調査対象者を無作為に選んでいるわけではありません。税務署ではある程度、正しく申告をしていないという情報を掴んだうえで税務調査を実施しています。では、海外送金に関して税務署ではどのような方法で情報を収集しているのでしょうか。

国税庁では、海外送金や海外取引の実態について次のような手法で情報収集を強化しているとしています。

国外送金等調書の提出

海外に送金をする、または海外からの資金を受け取る際、その金額が100万円を超える場合には、送金に関わった金融機関が税務署に対し「国外送金等調書」と呼ばれる書類を提出しなければなりません。国外送金等調書には、送金をする人、お金を受け取る人、それぞれの氏名、住所、取引金額などが記載されます。

この制度は、国外送金等調書制度と呼ばれます。国外送金等調書制度がスタートしたのは平成10年のことです。つまり、税務署では脱税を目的とした海外送金を防ぐために、30年近く前から対策を実施しているのです。この制度によって税務署では海外送金の実態を把握できているのです。

この制度の対象となるのは、100万円を超える海外送金であり、100万円以下の海外送金については報告義務の対象外となっています。そのため、資金を100万円以下に小分けして送金すれば、税務署は把握できないのではと思うかもしれません。しかしながら、100万円以下の海外送金を繰り返し行っていた場合でも、海外送金の事実がバレないとは言い切ることはできません。税務署には金融機関に対して調査を行う権利を保有しているため、何らかの不審な動きが認められた場合は、金融機関へのチェックが行われ、海外送金がバレる可能性があります。

国外財産調書の提出義務

12月31日時点で合計5,000万円を超える海外資産を保有している場合、翌年の6月30日までに税務署に対し国外財産調書を提出しなければならない義務があります。

対象となる資産は外貨預金や外国株式、海外不動産、暗号資産などで、国外財産調書には提出者の氏名や住所、マイナンバーとともに、保有する国外財産の種類や数量、価額などを記載しなければなりません。

金融機関から国外送金等調書を見ると繰り返し海外送金が認められているにもかかわらず、国外財産調書の提出がない場合などは、事実確認のために税務調査に発展することとなります。

租税条約やCRS情報に基づく情報交換

租税条約とは、国際的な二重課税の回避、脱税や租税回避の防止を目的に、日本と外国が締結する条約のことです。日本は令和8年3月時点で157の国や地域と租税条約等のネットワークを構築しています。租税条約では、外国税務当局との定期的な情報交換がなされています。

また、OECD(経済協力開発機構)では、外国の金融機関を利用した脱税や資産隠しの抑制を目的に、金融口座情報を自動的に交換するCRSと呼ばれる仕組みを構築しています。これにより、日本人が海外に持つ金融口座の情報は、外国の税務当局から日本の国税局に定期的に提供されているのです。

国外送金等調書、国外財産調書などとCRSによる情報を照合すれば、海外送金以外の海外資産情報を把握できるようになります。また、CRS情報と確定申告の内容を照合し、資産を隠している疑いが見られる場合は税務調査を実施し、実態を確かめることとなるのです。

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海外送金に関するお尋ねが届く場合も

前述のように100万円を超える海外送金を行った場合、必ず税務調査が行われるわけではなく、税務署からお尋ねと呼ばれる書面が届く場合があります。

海外送金に関するお尋ねとは

海外送金に関するお尋ねとは、海外送金に関して何らかの確認事項が生じた場合に税務署より発行される書状です。海外送金に関わらず、相続税や不動産の売却、年金の受給などに対して確認が必要な場合にもお尋ねが送付されるケースが見られます。

海外送金のお尋ねが届いたときの対応方法

実は、税務署からのお尋ねが届いても、法律上、納税者に回答義務があるわけではありません。そのためお尋ねを放置しておいても犯罪になることはありませんが、回答を拒んだ場合、何らかの不都合な事実を隠しているのではと疑われる可能性が高くなります。その結果、税務調査に発展する恐れがあるため、海外送金に関するお尋ねが送付された場合には、正しく対応することが大切です。

まずは、送金の内容や目的を把握するために海外送金に関する書類をチェックします。そのうえで、お尋ねに対する正確な回答を記載して期限までに提出をするようにしましょう。ただし、どのように回答すべきかわからない場合などは税理士への相談をおすすめします。

海外送金に関するお尋ねがきたら税理士への相談をおすすめする理由

海外送金に関するお尋ねが届き、実は、申告が必要な海外資産があったことに気が付く場合もあるかもしれません。もし、正しく申告をしていない状態であれば、早急に税理士への相談をおすすめします。

お尋ねを無視すれば、税務調査に発展する可能性があり、税務調査で申告漏れが指摘されれば、過少申告加算税と呼ばれるペナルティが科されてしまうのです。しかし、お尋ねは税務調査には該当しません。そのため、お尋ねが届いた時点で不足していた海外資産などについて、自主的に申告をし直せば、過少申告加算税が課されることはないのです。そのため、海外送金に関するお尋ねが届いたときには、税理士へ相談し、適切に対応することをおすすめします。

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まとめ

単に留学している家族に海外送金をしたり、日本に暮らす家族のために海外から生活費を送金する場合に、税金が課されることはなく、税務調査の対象となることはありません。

しかしながら、海外投資を行っている人や海外取引を行っている法人などが、税負担を免れようと不正を行っている場合、税務調査によって事実を追及され、ペナルティが科されることとなります。

金融機関から提出される国外送金等調書、租税条約、CRS情報の共有などによって、税務署では海外送金の情報を把握しています。正しく申告をしていない自覚がある場合には、税務調査の対象となる前に早めに税理士に相談し、自主的に申告をすることが大切です。


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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

登録者20万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。
国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。
なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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