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子供名義の口座と贈与税|名義預金にしないための実務ガイド

読了目安時間:約 8分

「子どもの将来のために」と、子供名義の口座に毎月コツコツ積み立てているご家庭は珍しくありません。ところが、口座の管理方法によっては、贈与税の対象になったり、将来の相続時に「名義預金」として相続税の課税対象になったりすることがあります。

本記事では、年110万円の基礎控除の基本から、2024年改正の生前贈与加算7年ルール、そして税務調査で指摘されないための具体的な実務ポイントまでを整理します。子を持つ親世代の方が、自分のケースに当てはめて判断するポイントをお伝えします。

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子供名義の口座と贈与税の基本

子供名義の口座にお金を入れる行為自体は違法ではありません。問題になるのは、入金の実態が「贈与」として成立しているかどうかです。本章では以下の3点を整理します。

  • 贈与税の仕組みと年110万円の基礎控除
  • 「名義預金」という考え方
  • お年玉・児童手当・お祝い金の扱い

贈与税の仕組みと年110万円の基礎控除

贈与税は、個人から財産をもらった人に課される税金です。暦年課税では、1月1日から12月31日までの1年間に受け取った財産の合計額から基礎控除額を差し引いた残額が課税対象となります。

  • 基礎控除額:年110万円(受贈者1人あたり)
  • 申告と納付の期限:贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日まで
  • 適用税率:直系尊属から18歳以上の子・孫への贈与は特例税率、それ以外は一般税率

基礎控除は受贈者単位のため、父と祖父からそれぞれ110万円ずつ受け取れる扱いではありません。年110万円を超えて贈与を受けた場合は、翌年2月1日から3月15日までに申告と納付を済ませる必要があります。期限を過ぎると、無申告加算税や延滞税が課される場合があります。

参考:No.4402 贈与税がかかる場合|国税庁

「名義預金」という考え方

名義預金とは、口座の名義人と、実際にお金を出した人や管理している人が異なる預貯金のことを指します。法律上の正式な用語ではなく、相続税の実務で使われる呼称です。国税庁は「相続税の申告で誤りやすい事例」のなかで、被相続人以外の名義の預貯金も以下の4要素で実質判定すると示しています。

  • 預入金の原資を出したのは誰か
  • 管理・運用をしていたのは誰か
  • 利息など財産の果実は誰に帰属していたか
  • 贈与の事実(契約書や受諾の記録)があるか

つまり名義だけ子ども、中身は親という状態の口座は、相続発生時に親の財産として相続税の計算に取り込まれることになります。

参考:相続税の申告で誤りやすい事例⑥|国税庁

お年玉・児童手当・お祝い金は贈与になるのか

身近な入金パターンの扱いを整理します。種類によって、もともと贈与税の対象外になるものと、積み立て方によっては課税リスクが出るものに分かれます。

  • お年玉・入学祝い:社会通念上の範囲であれば贈与税の対象外
  • 親や祖父母からの生活費・教育費:必要な都度の支払いは贈与税非課税(相続税法第21条の3第1項第2号)
  • 児童手当:本来の受給者は親。子供名義口座への積み立てが続くと、親から子への資産移転と評価される場合がある

児童手当の場合、毎月数千円〜1万円台の積立であっても、5年〜10年単位で残高が数十万円〜100万円を超えると、社会通念上の範囲を超えたと評価されやすくなります。お年玉や祝い金もまとめて高額になる年は、念のため記録を残しておくのが望ましいといえます。

参考:No.4405 贈与税がかからない場合|国税庁

関連記事:名義預金は税務調査で狙われる!相続税がかからないようにするための対処法を解説

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税務調査で見られる「名義預金かどうか」の5要素

名義預金の判定は、機械的に決まるものではなく、実務上は複数の要素を総合して判断されます。本章では現場で見られる5要素と、指摘される典型パターン、判定後の取り扱いを整理します。

  • 実質判定の5要素
  • 典型パターン
  • 名義預金と判定されたときに起きること

実質判定の5要素

税務調査の現場で預貯金の帰属を判定する際に、よく確認される項目は次の5つに整理できます。1つ欠けると名義預金になるわけではなく、5要素の総合判断となります。

要素 確認されるポイント
原資 そのお金の出所が誰の所得・資産か(親の給与口座からの振替履歴など)
口座開設 開設手続を行ったのは誰か、届出印の筆跡は誰か
管理 通帳・印鑑・キャッシュカードを保管しているのは誰か
入出金 実際にお金を動かしている行動主体が名義人か親か
果実帰属 利息や運用益が名義人の口座に入っているか、親の口座に戻っているか

5要素のうち3つ以上が「親」に振れているケース、特に「親の給与口座から毎月振替」「通帳と印鑑を親が保管」「子どもが口座の存在を知らない」の3点が揃うパターンは、贈与契約書があっても名義預金と評価されやすくなります。

参考:相続税の申告で誤りやすい事例⑥|国税庁

名義預金として指摘される典型パターン

税務調査で名義預金として高い確率で指摘対象に入るのは、次の4パターンが代表的です。いずれも「贈与の合意・履行・管理移行が形として残っていない」点が共通しています。

  • 親が子どもに無断で毎年100万円を入金していた(受諾の記録なし)
  • 子どもが独立後も通帳と印鑑を親が保管し続けていた
  • 祖父母が孫名義の定期預金を作り、孫は口座の存在を知らなかった
  • 贈与契約書もなく、資金移動の目的・時期の記録もない

国税庁が公表する令和5事務年度の相続税調査の概要では、実地調査件数8,556件・追徴税額735億円が報告されています。申告漏れ財産の約7割が現金・預貯金と有価証券で占められており、金額の大小にかかわらず預貯金は重点的にチェックされる項目です。

参考:令和5事務年度における相続税の調査等の状況|国税庁

関連記事:相続税の税務調査が入る割合は約15%|対象になる人の特徴とは

名義預金と判定されたときに起きること

名義預金と判定されると、口座残高が相続財産に加算され、相続税額が増えます。あわせて以下のペナルティが課される場合があります。

加算税の種類 税率の目安
過少申告加算税 追加納付税額の10%(一定額超は15%)
無申告加算税 納付税額の15%(50万円超部分は20%)
重加算税 仮装・隠ぺいと評価された場合に35%(無申告なら40%)
延滞税 納期限の翌日から年7.3%程度(特例基準割合により変動)

参考:加算税の概要|財務省

「贈与税の時効(原則6年)を超えれば逃げ切れる」と考える方もいますが、名義預金は贈与として成立していない扱いとなるため、贈与税の時効を援用できません。贈与者の相続発生時点で相続税の課税対象として丸ごと取り込まれるため、20年以上前からの積立が対象になることもあります。

参考:相続税法|e-Gov法令検索

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贈与を「実態あるもの」にするために

名義預金にしないための対策は以下のようなもので、すでに口座を運用中のご家庭でも今から取り組める内容となっています。

  • 贈与契約書の作成(未成年者は親権者が関与)
  • 通帳・印鑑・カードの管理移行
  • 定期贈与と判断されない工夫

贈与契約書の書き方と親権者サインの実務

贈与契約は口頭でも成立しますが、税務調査の場で記録のない口頭合意を立証するのは困難です。1回の贈与ごとに契約書を作り、贈与者と受贈者の双方が署名押印する運用が望まれます。記載しておきたい項目は次のとおりです。

  • 贈与者・受贈者の氏名と住所
  • 贈与する金額
  • 贈与の年月日
  • 振込先口座(贈与の履行方法)
  • 署名押印

受贈者が未成年者の場合、単独で贈与契約をすることはできず、親権者が法定代理人として受諾します。書き方は子どもの年齢に応じて2パターンに分かれます。

  • 子どもが自書できる年齢:子が自ら署名捺印→その下に親権者が署名捺印
  • 子どもが幼く自書できない:親権者が代筆→氏名の下に「親権者○○が代筆」と明記

親権者以外(祖父母など)が代筆した場合、後日の調査で「合意が成立していない」と評価される原因となります。親権者の法定代理が形式的にも整っていることが重要です。

参考:相続税法|e-Gov法令検索

関連記事:生前贈与は税務調査に注意!節税効果や税務署に指摘されないための対策とは

通帳・印鑑・カードの管理を子側へ移す手順

契約書を整えても、通帳・印鑑を親が保管し続けていれば、名義預金の色は残ります。子どもが幼い間は親権者が保管していても直ちに名義預金とは評価されにくい一方、成長段階に応じて管理の移行を進めるのが実務的です。

  • 子どもが成人した直後:口座の存在と残高を本人に伝える
  • 進学や結婚などで本人がまとまった金額を使う節目:通帳と印鑑を本人に引き継ぐ
  • 本人名義の他の金融機関口座を作るタイミング:資金を段階的に本人管理へ移す

子どもが成人後10年以上経っても親が通帳と印鑑を握り続けているケースでは、管理を子ども側へ移す実態がないと評価されることがあります。本人が口座の存在を知り、自分でお金を出し入れしている記録が積み上がる状態が望ましいといえます。

参考:相続税の申告で誤りやすい事例⑥|国税庁

毎年同じ日・同じ金額は危険?定期贈与と判断されない工夫

110万円ずつ毎年贈与する暦年贈与は一般的な節税策ですが、契約や実態によっては「定期贈与」と判定され、全期間分の贈与額が初年に一括課税されるおそれがあります。国税庁の見解でも、毎年100万円ずつ10年間にわたり贈与を受けることが契約されている場合、定期金給付契約に基づく権利の贈与として、初年に1,000万円相当の贈与税がかかるとされています。

  • 贈与契約書は1回ごとに作成し、年ごとに日付と金額を変える
  • ある年は贈与を見送るなど、機械的な繰り返しを避ける
  • 金額が110万円を若干超える年に、あえて贈与税申告をして記録を残す

毎年同じ日付・同じ金額の振込が10年以上続くと、定期贈与と評価されやすくなります。なお、過去分の贈与契約書を遡って作成する行為は文書偽造に該当する可能性があり、調査で発覚した場合は重加算税の対象となります。過去分を整理する場合は、現在の日付で「確認書」「覚書」を作成する形にとどめるのが実務的です。

参考:No.4402 贈与税がかかる場合|国税庁

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2024年改正が子供名義口座に与える影響

令和5年度税制改正により、贈与税と相続税の関係が大きく見直されました。子供名義口座を使った生前贈与に影響が大きいのは次の3点です。

  • 暦年課税の生前贈与加算が3年から7年に段階的延長
  • 延長された4年分は合計100万円まで加算対象外
  • 相続時精算課税に年110万円の基礎控除が新設

暦年課税の7年ルールのスケジュール

改正後は、相続開始前7年以内の暦年贈与が相続税の計算上、相続財産に加算されます。改正前は3年以内が加算対象でしたが、2024年1月以降の贈与から段階的に期間が延びていく仕組みです。

相続開始の時期 加算対象期間
2026年12月31日まで 3年(改正前ルール)
2027年1月〜2030年12月 3年超〜7年未満で順次延長
2031年1月以降 7年(完全施行)

参考:令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし|国税庁

延長された4年分(相続開始前3年超〜7年以内)は合計100万円まで加算対象外です。1年あたり100万円ではなく4年間の合計枠である点は、誤解の多い部分です。

参考:No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)|国税庁

相続時精算課税の基礎控除110万円と使いどころ

相続時精算課税は、原則として60歳以上の父母・祖父母から、18歳以上の子・孫への贈与を対象とした制度です。令和6年1月1日以降の贈与から、累計2,500万円の特別控除とは別に基礎控除が設けられました。

  • 基礎控除:年110万円(暦年課税の基礎控除とは別枠)
  • 特別控除:贈与者ごとに累計2,500万円まで贈与税なし、超過分は一律20%
  • 相続時の取り扱い:基礎控除110万円を控除した後の金額が相続財産に加算

基礎控除110万円の範囲内であれば贈与税が非課税で、贈与税の申告も不要です。暦年課税の7年加算ルールが適用されない点が特徴で、長期的な財産移転を計画する場合は年110万円の基礎控除の積み上げによる節税効果が期待できます。

参考:No.4103 相続時精算課税の選択|国税庁

孫への贈与は加算対象外?世代をまたぐ贈与の整理

生前贈与加算は、相続または遺贈により財産を取得した人にだけ適用されます。相続人でない孫は、原則として加算対象外となるため、祖父母から孫への贈与は7年ルールの外側に置けます。

  • 孫が代襲相続人となる場合(孫の親が先に亡くなっているケース)
  • 遺言で孫に財産を遺贈する場合
  • 孫が祖父母の生命保険金の受取人となっている場合

上記3パターンに該当すると、孫は原則加算対象外の例外となり、過去7年以内の贈与が相続財産に加算されます。祖父母→孫ルートでの贈与は有効な節税策ですが、相続設計全体との整合を取るのが望ましいといえます。

参考:No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)|国税庁

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計算例と選び方|数字で見る影響

具体的な税額イメージを数字で押さえます。本章は意思決定のための最小限の数値と観点に絞ります。

  • 暦年課税の計算例(特例税率)
  • 相続時精算課税を選ぶケース
  • 選択を誤らないためのチェック観点

贈与税の計算例(暦年課税・特例税率)

直系尊属から、贈与年の1月1日時点で18歳以上の子・孫への贈与には特例税率が適用されます。基礎控除後の課税価格と税率の関係は次のとおりです。

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% 0円
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

計算式:(贈与額 − 基礎控除110万円)×特例税率 − 控除額

18歳以上の子に親から贈与する場合の目安は次のとおりです。200万円なら(200万円 − 110万円)× 10% = 9万円、300万円なら(300万円 − 110万円)× 10% = 19万円、500万円なら(500万円 − 110万円)× 15% − 10万円 = 48.5万円となります。

参考:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

相続時精算課税を選ぶとどうなるか

相続時精算課税と暦年課税の主な違いを比較すると次のようになります。

暦年課税 相続時精算課税
基礎控除 年110万円 年110万円(R6〜)
特別控除 なし 累計2,500万円
生前贈与加算 7年(段階施行) 基礎控除超過分を加算
選択後の変更 自由 暦年課税に戻せない

参考:No.4103 相続時精算課税の選択|国税庁No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)|国税庁

相続時精算課税は一度選ぶと暦年課税に戻せないため、選択前に長期的な贈与計画を確認しておく必要があります。

選択を誤らないためのチェック観点

暦年課税と相続時精算課税のどちらを選ぶかは、家族構成や贈与の規模・期間によって結論が変わります。実務でよく確認される観点は次の4点です。

  • 将来の相続財産の規模と相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)の見込み
  • 贈与を始めてから相続開始までの想定年数
  • 一度にまとまった金額を動かす必要があるか
  • 受贈者が相続人となる子か、加算対象外の孫か

選択は一度選ぶと長期にわたって影響します。早い段階で税理士に試算を依頼し、家族構成・資産規模に合わせた判断を行うことが望ましいといえます。

参考:令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし|国税庁

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まとめ

子供名義の口座は、口座の名義ではなく原資・口座開設・管理・入出金・果実帰属の5要素で実質判定されるため、親が通帳と印鑑を保管し続けたままでは名義預金として相続税の対象になります。是正策の柱は、贈与契約書の作成・通帳の管理移行・定期贈与回避の3つです。2024年改正で生前贈与加算が最長7年に延長され、相続時精算課税にも年110万円の基礎控除が設けられたことで、制度選択の影響もこれまで以上に大きくなっています。

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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

登録者20万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。
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