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個人事業主やフリーランスとして所得が増えてくると、税務署から「予定納税額の通知書」が届くことがあります。前年の所得税額が一定以上の方を対象に、その年の所得税の一部を前払いで納める仕組みであり、通知書の数字だけを見て「なぜこの金額になるのか」が分かりにくいという方も少なくありません。
本記事では、予定納税額の意味と計算式、年収レンジ別の目安、通知書に書かれた金額の読み方までを、初めて受け取った方向けに整理します。
目次
予定納税額は、その年の所得税および復興特別所得税の一部を前払いする仕組みです。本章では「額」の正体を3つの観点から整理します。
予定納税額は、前年分の申告納税額をもとに算定された予定納税基準額のうち、第1期分と第2期分の合計として納める金額を指します。趣旨は、納税者の負担を時間的に分散することと、国の歳入を平準化することの2点です。
予定納税額は前年所得税のおよそ3分の2を7月と11月に前払いする金額であり、残りの3分の1は確定申告で年間の納税額と突き合わせて精算する流れになります。
参考:No.2040 予定納税|国税庁
通知書には「予定納税基準額」と「予定納税額」の両方が記載されているため、用語の関係を整理しておくと数字の意味が読み解きやすくなります。基準額は計算のもとになる金額、予定納税額は実際に納める金額であり、別物として扱われます。
基準額×1/3が1期分・×2/3が予定納税額の合計という関係であり、通知書の上段に並ぶ「基準額」と下段の「各期納付額」は計算上のセットで眺めるのが基本です。
予定納税額は所得税と復興特別所得税を合算した金額として算定されており、別途復興特別所得税を納める仕組みではありません。復興財源確保法により、平成25年から令和19年までの所得税には2.1%の復興特別所得税が加算されます。
なお、通知書の予定納税額には復興特別所得税2.1%がすでに含まれているため、納付後に追加で復興特別所得税を求められることはありません。
参考:所得税法|e-Gov法令検索
本章では、予定納税基準額がどの数字を組み合わせて算出されるのかを4ステップで整理し、ご自身でも逆算できる手順をご紹介します。
予定納税基準額は、前年分の課税総所得をもとに所得税額を求め、源泉徴収税額を控除し、復興特別所得税を加算するという4ステップの計算式で求められます。
基準額=(前年所得税−源泉徴収税)×1.021という1行の式で全体像を捉えると、通知書の数字を逆算しやすくなるのではないでしょうか。なお、譲渡所得・一時所得・雑所得・配当所得(申告分離)・山林所得・退職所得・変動所得・臨時所得は基準額の計算から除外されます。
計算式を分解すると、課税総所得・所得税率・源泉徴収税額の控除の3要素で予定納税基準額が決まる構造が見えてきます。※各要素は前年の確定申告書から得ることが可能です。
参考:No.2260 所得税の税率|国税庁 関連記事:経費で落とすとどれくらい得になる?よくある誤解や注意点を解説
予定納税基準額は課税総所得・所得税率・源泉徴収税の3要素で決まると覚えておくと、通知書を見たときに「どの数字がどう動いた結果なのか」を把握しやすくなります。
通知書が届く前に予定納税額を試算したい場合は、前年確定申告書の控えと源泉徴収票・支払調書をもとに数字を組み立てる手順が有効です。前年確定申告書の控えが手元にあれば、概算はすぐに確認できるでしょう。
前年確定申告書の控えと源泉徴収票で予定納税基準額は逆算可能であり、通知書到着前に納税資金を準備したい方にとっては早めの試算が有効な選択肢となります。
具体的な金額イメージを持つために、4つの年収レンジで予定納税額を試算します。実例を通じて目安を確認していきましょう。
事業所得の金額別に予定納税基準額を試算すると、所得が増えるほど累進的に基準額も増える構造が見えてきます。所得控除110万円(基礎控除+社会保険料控除等の標準的なケース)、源泉徴収税額0円を前提とした年収レンジ別の目安額です。
参考:No.2260 所得税の税率|国税庁
事業所得500万円なら基準額は約36万円・予定納税額は約24万円が目安であり、所得控除や青色申告特別控除の有無で実額は前後する点には留意が必要です。
予定納税額は年に2回、第1期と第2期に分けて納付します。各期の金額は基準額の3分の1であり、円未満は切り捨てて計算されます。
※令和8年のカレンダーを元に記載
参考:主な国税の納期限(法定納期限)及び振替日|国税庁
第1期・第2期それぞれが基準額の3分の1として計算され、円未満切り捨ての影響で第1期と第2期の金額が1〜2円ずれるケースもあります。
第1期・第2期で納める予定納税額は基準額の3分の2にとどまり、残りの3分の1は翌年2月16日〜3月15日の確定申告で精算されます。年間の所得税額が前年と変わらない前提なら、確定申告での追加納付はおよそ基準額の3分の1分です。
参考:No.2020 確定申告|国税庁 関連記事:無申告のペナルティ「無申告加算税」と「延滞税」はどう違う?
予定納税額の合計が年間所得税を上回れば還付・足りなければ追加納付という単純な突合で精算が行われ、所得が前年より大きく下振れした場合は還付が発生する流れになります。
通知書の構成と、想定と異なる金額が記載されていた場合の確認ポイントを、実務上の対応も合わせて整理していきましょう。
予定納税額の通知書は、6月中旬に納税地の所轄税務署から送付されます。
参考:予定納税等通知書・減額申請の承認等通知書に係る電子通知について|国税庁
e-Taxで申告書を提出している場合は電子通知への切替が可能であり、紙の通知書を待たずに6月中旬以降に随時確認できる流れに移行しつつあります。
6月下旬を過ぎても通知書が届かない場合は、いくつかの原因が考えられます。通知書の不送付は必ずしもエラーとは限らず、対象から外れた結果であるケースも少なくありません。
参考:No.2040 予定納税|国税庁 関連記事:税務署からのお尋ねって何?来たときにはどう対応すればよい?
基準額が15万円未満なら通知書は届かないのが原則であり、前年所得税が15万円を下回っていれば予定納税自体が発生しないと考えて差し支えありません。
自分で試算した金額と通知書の金額が大きく違う場合は、前年に想定外の加算項目が含まれていた可能性があります。よくある原因は、変動所得・臨時所得の扱いの誤解や、源泉徴収税額の計算漏れです。
参考:A1-3 所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続|国税庁
想定外の加算は前年の臨時所得や控除漏れが反映された結果であることが多く、当年の業績が下振れする見込みなら減額申請という選択肢を視野に入れる流れが一般的です。
予定納税額は前年の確定申告内容をもとに自動的に算出される金額のため、通知書の数字をそのまま受け入れるだけでも納税自体は完結します。一方で、計算式の構造を理解しておくと、当年の所得が下振れした際に減額申請を判断する材料が手元に揃い、確定申告での精算額の見通しも立てやすくなります。納期限を過ぎると延滞税が加算されるため、6月中旬の通知書到着時点で資金繰りを確認し、第1期・第2期の納付タイミングを早めに把握しておくことが安心につながるポイントと言えるでしょう。
税理士法人松本では、確定申告の実務支援から税務調査対応まで、個人事業主・法人のお客さまをきめ細かくサポートしています。申告の進め方だけでなく、将来のリスクを減らす帳簿づくりや、税務署とのやり取りの考え方までご案内可能です。「申告が不安」「過去の処理が正しかったか心配」という段階でもお声掛けください。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者20万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
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